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「アデライト?」

「そうだね君を閉じ込めてしまえば誰も寄ってこないよね?」

目の前で話している存在が本当にアデライトなのか疑ってしまう。

「ねえ、ホロもいいよね?私の為にずっと家の中で居てくれるよね?」

アデライトの瞳からは完全に光が消え失せている。
こんなアデライトを私は見たことがない。

「正気になれ。私はまだお前の物では…」

「何を言っているんだ。君は私の婚約者だろう?」

完全に正気を失っている。
どうすればこのアデライトを正気に戻すことができるんだろうか。

「ねぇホロいいよね?」

「よくない。そもそもここがどこなのか忘れたのか?」

「学院でしょ?そんな事もわからない訳ないでしょ?」

あー、これ気絶させないといけないやつか?

「とりあえず一回寝とけ」

睡眠の魔法をアデライトに掛けて無理矢理気絶をさせるような感じで寝かせた。
まだ道中でもあったから魔法で体を強化しながらアデライトを担いで寮の中に入った。

アデライトの許可なしでは部屋に入る事もできないから、私の部屋で一時的に休ませる事にした。
自室に戻れば体調が回復したのかイディがリビングのソファに座っていた。

「ホロおかえり…ってそいつはどうしたの?」

「勝手に暴走したから寝させた」

「そうなんだ。ソファから降りるからそこに寝させてあげて」

「ありがとう」

アデライトをソファに寝転がせた。
ぐっすり眠っていて先ほどの感じは寝顔から感じられない。

「そういえばイディはもう動いても大丈夫なのか?」

「うん、今日一日休んだお陰で調子が戻ったよ。それよりも今日は何も問題は起こらなかった?」

「そういえばイディに伝えなければならない事が何個かあるんだ」

「こいつが寝ているから、僕の部屋で話そっか」

「そうだな」

イディの部屋に一緒に訪れると中は綺麗に片付けられていて、本当にイディの調子が戻ったのだとわかった。
ベッドに腰かけるように促されたからそこに腰かければ、隣にイディが腰を下ろした。

「それで何があったの?」

「私がSクラスに上がれない体術の授業を置き換えられるようになったんだ。その分内容自体はかなり難しくなるようだが、私にとっては難しいものではないものが多いから、次のテストにはイディと同じSクラスに上がれると思う」

「そうなんだ…。ようやくホロと一緒のクラスになれるんだね」

嬉しそうに笑うイディ。
私もイディと一緒に授業が受けれると思うととても嬉しいよ。

「それで次なんだが…その、めんどくさい者達に目をつけられてしまったようでな」

「めんどくさいのって?」

「Aクラスに転入してきた令嬢がいるのだが、本当に何故か分からないのだが目の敵にされているようで、会ったばかりにも関わらず冤罪を掛けてくるようなのがきたんだ」

「それで次は?」

「これは公にはできないことではあるんだが、王子殿下から求婚を申し込まれてしまったんだ。直ぐにその場で断って無かったことにできたとは思うが、その…アデライトを無理矢理寝させた理由にもなるのだが王子殿下に不敬を働いてしまってな…」

「そうなんだ。でもホロの事は簡単に王族も手出しはできないと思うよ。ホロはお母様と同じで精霊の愛し子なんだから下手に手を出すと、精霊に嫌われて嫌がらせをされてしまうから何もしてこないと思うよ」

「それならば良いんだが…」

「それよりも問題なのは編入してきた令嬢じゃないかな?でも、高等部になってから編入してくるのはあってもいきなりAクラスに編入してくるのは可笑しな話だよね」

「ああ、確かハーレライトと言っていたが…」

「ハーレライト子爵だね。子爵家の令嬢がAクラスに編入できるなんて相当賢い子なんだろうか」

「賢ければかり私を嵌めるための行動があそこまで杜撰だとは考えられないのだが」

賢ければまず家格が上の貴族を嵌めようとするのであれば、杜撰な行動をせずに緻密な計算をして痕跡を残さないように動くだろう。
だがあの女からはそんな賢さの欠片は全くと言って良いほど感じられない。
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