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イディと会話を交わさなくなってから早一ヶ月も経過した。
学院に入学する時間も差し迫っている中、私の質問への返事はまだされていない。

「今日も上の空だね」

「すまない…」

母上の授業も最近は気もそぞろで聴くことが多くなった。
イディとここまで長い時間話さない期間を過ごした事はなかった。

私から言っておきながらこうも長い期間離さないと、私が逆に気にするようになってしまった。
私はここまで堪え性のない人間だったのだろうか。

「やっぱりホロもイディの事が気になるんだね。ラグから話を聞いているけど、イディも上の空でいる事が多くて授業もまともに受けられてないんだって」

イディも私と同じようになっているのか。
あの事を聞いた手前私からイディに話しかけ難く、こうしてお互いに話しかけない状態だ続いてしまった。

「お互い話したほうが良いのだろうか…」

「僕はイディとホロじゃないから二人がどうしたいのかはわからない。お互いの気持ちはお互いが話し合ってみないと答えには辿り着けないよ。お父様とお母様がそうだったようにね」

父上と母上がお互い話さない姿なんて考えつかない。
二人が喧嘩している姿も、精霊越しでも話を聞いた事がない。

「父上と母上は喧嘩をした事があるのか?」

「勿論あるよ。その時は屋敷が半壊するぐらいの暴挙を僕が起こしてしまってね。あの時はお祖父様とおばあさないとても怒られてしまったよ」

「それは私とイディが母上の中にいた時の事か?」

「そうだね。でもその大喧嘩の後はしっかりと話あって誤解もちゃんと解いたよ」

そうなのか。
仲が良い両親も私たちと同じように喧嘩をしたんだ。

私たちのは喧嘩と言っても良いのか分からないが、母上が言うようにこのままお互い話し合わなければ学院でもお互い話さない状態になってしまうだろう。
その状態は絶対に気まずいから学院に行くまでには今の状態をなんとかしたい。

「母上」

「イディは今お父様の近くで勉強をしているよ。場所は大図書館だよ」

「行ってくる。その、勉強は…」

「また後で同じ内容をするから安心して行っておいで」

母上の許可を得て私は母上の書斎から出た。
大図書館は別館にあるが別館はそこまで遠くないから私は体調に気をつけながら別館まで歩いて行った。

久々に入った別館は綺麗に掃除がされていて、問題なくここで過ごすこともできそうだ。
もしイディと気まずくなれば私が別館で過ごして物理的距離を取ろうと思う。

大図書館について扉をゆっくりと開ければ、大図書館の中央に設置されている机でイディと父上が勉強をしていた。
父上にはすぐに気が付かれ視線がすぐに合った。

イディは母上が話していた通りぼんやりとしていて、普段はすぐに私に気がつくのに今日は父上の授業もまともに聞かずにぼんやりとしている。
真面目が取り柄のイディがここまでぼんやりしているなんて…。

あの話をイディにするのはまだ早かったのだろうか…。
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