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「君自身私の理想そのものだったから、魔王としてなってしまった場合無垢な子供の面倒を見なければならないと思っていたから…。こんな最高な事があるとは思いもしなかった!」

私に気に入られたいのであれば先ほどの行動は控えるべきだろ。
そんな考えが頭の中でよぎりつつ、目の前で興奮したように話すアデライトの対応をどうしようかと頭を悩ませた。

「魔王が既に存在していただなんて…一体何があったんだ?」

「今は修道女となった聖女の事は覚えているか?」

「ああ。むしろあの女を忘れる方が難しいものだ」

「私の可愛いネヴィがあの女に殺されそうになった時に魔王がネヴィの中で生まれた」

「それは1回目の時か?」

「いいや、2回目の時だ。ネヴィが森の中で逃げ惑っていた時だ。あの時はネヴィが魔王の意識に乗っ取られた状態で、伯爵家に戻ってきた」

そうだったな。
あの時は母上の家族が魔王に乗っ取られたという絶望を突きつける為に戻ったのだったな。

うんうんと、頷いて話を聞いている。

「私のネヴィは本当に凄いもので魔王に意図的に意識の主導権を渡された途端に、魔王の力を封印して魔王の意識を表に出せないようにしたんだ」

父上よ話を端折りすぎた。
貴方は私が作り出した命のない魔族と戦闘を行っていただろう。

自身の話をするより母上を持ち上げる話ばかりを行っている。
現状脱線せずに話しているが、母上自慢ばかり続くのであれば止めさせてもらうからな。

「それならば何故魔王の存在を公表しなかったのだ」

「公表できる訳がなかろう。国王が認めた聖女が魔王を呼び込んだ原因になったんだ。その尻拭いを行いたくないが為に、国家機密にして話を広げないようにしたんだ。考えればわかる事だ」

「ああ…父上の行動が原因だったのか。例え可愛がっている甥が巻き込まれた事であっても、あの人にとっては権力の方が大事だったな」

あの国王はそんなに碌でもない人間だったのか。
あの碌でもない国王であったから、私の存在についての追求がなされずこうして紛いものの平和の中で生きていれるのだろう。

「封印後はネヴィが魔王と約束して我が子として産むことにしたんだ。だからホロは魔王としての記憶を持ったままこの世に生まれたんだ」

「そうだったのか」

「だからホロは既に魔王として存在しているが、力は全て封印されているから魔王の力は一切行使できないがな」

魔王としての力はなくとも膨大な魔力を持っているから、下手な魔導士よりも上の能力を持っている。

「それでも魔王としての思考があれば危ないのではないのか?」

「いや、ホロはこの世界に馴染もうと努力しているから危険性は全くない。だからホロを殺そうとか考えるんじゃないぞ」

「君を敵に回したくないからそんな事は考えないよ」

殺されるというのはどうやら無いようだ。

「理由もわかったようだから婚約はなかったことに」

「なかった事にはできない。一度書面を交わしてしまったから簡単には解消はできないよ」
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