上 下
21 / 120
1

21*

しおりを挟む
昨晩僕がわがままを言ってホロを抱きしめながら寝てしまったせいで、ホロは寝る事ができなかったんだろうか。
そんな考えが僕の頭の中をぐるぐると支配してくる。

抱きしめながら寝るのはホロにとって負担だったんだろうか。
もしかしてホロは今日一回も寝れていないんじゃないか。

ずっとそんな考え事をしていたら、お父様とお母様の仕事が終わったようで僕たちのそばに来ていた。

「ホロは昨日の魔力調整でまだ体が疲れているんだね」

違う僕がホロが寝るのを邪魔してしまったんだ。
普段なら抱っことかで直ぐに目を覚ますホロが全く覚さずに、お母様に抱き上げられている。

僕はお父様に簡単に抱っこされて、屋敷の玄関まで一緒に運ばれた。

「イディはどうして今日は機嫌が良くないのかな?お母様に教えてくれる?」

「ホロが…寝れなかったの、僕がわがまま言ったから寝れなかったんじゃないかって思ったら、ホロに申し訳なくて…」

「そんな事を考えてたんだね。でも、寝れたか寝れてないかはホロ本人に聞かないと分からないでしょ?それに、ホロはまだ子供では調節できない魔力によって体調を崩してたんだから、沢山寝ても疲れが取れない事だってあるの。だからイディが全部悪いわけではないからね?」

お母様に優しく諭されても心が全く晴れない。

「イディも賢い子だから本人から話を聞けば納得するだろうね」

出発の時間も迫っていたみたいだからホロを起こさずに僕たちは馬車に乗り込んだ。
僕はお母様の隣に座って、ホロはお父様が抱っこする形になった。

ホロはぐっすりと眠っていて気持ちよさそうな感じだ。
気持ちよさそうな寝顔を見ると余計に僕が眠るのを邪魔してしまったんじゃないかと思ってしまう。

伯爵領から抜けて数分したぐらいでホロが目を覚ました。
くっと腕を伸ばして伸びをしてから、ホロは僕たちの事を一通り見回した。

「おはよう…」

「僕ホロが寝るの邪魔しちゃったの?」

起きたばっかりでの唐突な僕の質問にホロがキョトンとした表情を浮かべたけど、直ぐにその表情は僕が知っている優しい表情に戻った。

「そんな事はない。私はイディと一緒に寝る事ができてよかったと思っている」

全く変わらない優しい表情。
本心から話してくれているんだろうか。

「その、僕に遠慮してない?」

「していない」

直ぐに返事をしてくれて、じっと僕と視線を合わせてくれる。
僕の言葉にしっかりと応えようとしてくれるその視線。

「イディは私の言葉を信じられないのか?」

「そ、そんな事ないよ!ホロは優しいから僕に話してくれないと思って…」

段々と不安が僕の中で膨れ上がって、ホロを真っ直ぐ見る事ができない。
優しい体温で僕の手が包まれ、その知っている感触に僕は顔をパッと上げた。

馬車の中は危ないのにホロは僕のそばに来てくれていた。
危ないそう言おうとしたら…

「私はイディに嘘を言わない」

そんな言葉に僕は目をぱちくりさせた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

処理中です...