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帰りの馬車は父上と二人きりだった。

「さて…私にはホロから聞きたい事があるが質問の内容は分かるか?」

「精霊についてか?」

「そうだ。なぜ精霊が見える事を黙っていた?」

黙っていたか。
それは私もよく分かっていない。

最初は言わない方が面白いだろうと思って話さなかった。。
今は家族という存在を護りたいから切り札として誰にも話さなかった。

最初の考えと今の考えとは違いがありすぎて簡単に話す事が出来ない。

「きっとホロの事だ最初は特に考えていなかったのだろう?だが、今は私たちの事を考えて何も話さなかったと思っているが、私の考えは間違っているか?」

父上からは思っても見ない言葉が出てきた。
私の考えそのままで驚きしかない。

「その表情を見れば私の言っている事はどうやら間違っていなかった様だな。変なところはネヴィに似たんだな」

「私が母上に似ている?」

「ああ、そっくりだ。私はあまり多くの事を話す事が仕事上難しいが、イディの事もホロの事もネヴィからも、侍従からも全て聞いている。そんな私がネヴィに似ていると言っているのだから間違いない」

父上は母上の事を考えているようで表情が緩んでる。
本当に二人は相変わらず過ぎて目も当てられない。

「今回はホロが居てくれたお陰で全てが簡単に解決した」

頭を撫でられ褒められる。
父上も母上も滅多に怒らないけど、沢山褒めてくれる。

怒らないのも決して私に改善すべき点がないのではなく、必ず話を聞いてくれて私の意見を理解しようとしてくれる。
その上で私の考えが悪ければ訂正をしてくれる。

だから今回も怒られるというか…訂正をされると思っていた。
それなのに父上から出てきた言葉は私を褒める言葉に近い。

「ホロはイディが辛い目にあって悲しかったか?」

「悲しいはまあわからない。だけど、心が痛んだ」

「その感情は辛いって言葉になる。そしてホロは人の為に心を痛める事ができる優しい子だ」

世界を壊そうとした魔王の私が優しい?
イディだけではなく父上も私の事を優しいというか考えているのか?

「わ、わた…私は…」

優しい、その言葉がまだ理解出来ない。
思った通りに行動しているだけなのに、その言葉を投げられると何故か心がぐちゃぐちゃになる。

「まだわからなくてもいい。沢山学んで、沢山知っていけばいい。それを私もネヴィもイディも望んでいる」

父上の柔らかな声はストンと心の奥底に落ちてきた。
私は人の考えを覚えなければならないと勘違いしていた。

そうか覚えるんじゃなくて知る必要があるだけなんだ。

「ホロは覚えようと頑張っているのは知っている。だけど感情というのは覚える物ではなく…」

父上の膝の上に乗せられ、私の手を取り心臓の所に置いた。

「心で感じる物なんだ。これを私に教えてくれたのはホロとイディの母上のネヴィだ」

母上は父上を人にした存在なんだ。
それだけ母上は強い人で、優しい人なんだ。
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