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母上の対処は的確でイディの顔色は少しずつ良くなっていっている。
私にももっと知識があれば…、イディをここまで苦しめずに済んだのに。

「ホロ変な事を考えてはダメだよ」

よく分からない。

「知らないことまで対処はできなくていいの。だから気負う必要がない。それよりも今回イディをこの様な目に合わせた人をどうするか考えておいで」

先にどうするか考える。
イディが辛いのに他の事を考えられない。

『こわいのにくさいのむらがってる』

「へぇ…僕が居ない時にラグに近寄るんだね」

母上がぐったりしているイディを抱き上げて、父上がいるお茶会の会場まで一緒に向かった。
多分帰る為に父上の場所に行くんだろうが、他にも釘を刺すつもりなんだろう。

子供同士の集まりは解散していて、親元で紅茶やジュースを飲んでいる。
そして何故か大きな日傘が全てのテーブルに設置されていた。

「ネヴィ帰る」

父上が他の人らを振り払い、私たちの元にすぐに寄ってきてくれた。
かなり居心地が悪かったのか、父上の表情は強張っている。

参加者の視線を見てみれば母上に対して嫉妬の視線を、父上に対しては欲情した視線を向けていた。
人妻でありながら、婦人達はそんなくだらない事を視線に込めている。

どれだけそんな視線を母上にも父上にも向けようとも意味をなさないというのに。

「そうだねイディの体調が良くないから家でゆっくりと休ませてあげよう」

『ほろこれー』

精霊が変な草を私に持ってきた。
色んな知識を蓄えているけど、この草は見たことがない。

『たいちょうわるくなるっていってたー』

体調が悪くなる草?
毒草の類の植物って事?

「父上これ…」

父上に草を渡すと父上の表情が強張った。

「ホロこれどこで拾った?」

「拾ったんじゃなくてあの…」

精霊が見える事を言っていなかったから少し口を噤んだけどイディの体調不良の原因がこれだから、本当は精霊が見える事を打ち明けることにした。

「精霊がこれを渡してきたの」

「精霊が?帰ってから聞くことにしよう。ネヴィ」

「どうしたの?イディの様子も少しおかしいから、早めに帰りたいんだけど…」

四阿では落ち着いていた筈の症状が何故かお茶会の会場についてから容態が悪くなっている。

「先にイディを連れて戻って。ホロは私が後で一緒に連れていくから。ここの敷地を出てから転移の魔法を使用してすぐに戻るんだよ」

父上が母上とイディの額にキスを落とした。

「わかった。ホロお父様をしっかりと見守るんだよ?」

「はい。母上の分までしっかりと見守ります」

母上はイディを連れてお茶会の会場から立ち去った。
さて母上もいなくなった事だから、私も少しは素を出しても問題ないだろう。

子供らしい表情を消して私は、父上に見惚れている婦人達を冷めた視線で見た。
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