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帰還

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「ヴァンクラフトくん…」

「ああ…。こんな情けない姿を見せてすまない…」

「情けないなんて思っていないよ。ルドが見つからない事に焦る気持ちはわかる。でも、ルドは聖者であり歴代最高の魔道具師なのだから、早々簡単に殺されたりはしないよ…。だから、時間が掛かろうとも一緒に探しに行こう?」

ギレスタの考えは貴族らしい考え方ではあったが、最もな回答でもあった。
聖者は各国が喉から手が出る程欲しい人材であり、聖者がいれば国が潤うという迷信があるぐらいに高貴な扱いをされる。

酷い扱いをされるとなれば魔族の国だと思われているが、実際の魔族の国は歴史がしっかりと受け渡しされており聖者が、闇者の番である事を知っている為丁重な扱いがなされる。
それこそ、魔族の王族よりも高待遇を受ける用意までされている。

国交が開いているわけではないから、この魔族の状況はヴァンクラフトを除き誰も知る者はいない。

「申し訳ない…。が、もっとしっかりとルドの事を捕まえられていたらよかったのに…」

「私の責任だよ。影で長年私のどんな命令でも聞いてくれているからと、安心しきっていた私が一番悪いんだ。ルドの事をあれだけ可愛がっていたのに…、どうしてルドを悲しませるような行動を行ったんだろう」

「アイツは…、叔父上が思っているような人じゃない…。アイツは、ずっとルドに、聖者にと同じ様に酷い執着心を見せていた。だが、紛れもなくアイツはルドに何かしらの被害を齎す」

「そんな…。一体何が起こるというんだい?」

「それはー…」

「大変です!ル、ルド様が、、ヴァンクラフト様と…あれ?」

ヴァンクラフトの部屋にノックする事なく、侍従が入ってきたがヴァンクラフトの名を叫びながら目の前に居るヴァンクラフトを見つけてポカンとした表情を浮かべた。

「ルドがどうした?」

「そ。それがヴァンクラフト様らしき方に抱えられながら、お戻りになられたのですが…かなりご様子がおかしいのです…」

侍従は次の言葉を言いにくそうに口をまごまごとさせている。

「一体どうおかしいというの?」

「私たちが存じ上げるルド様は、大人らしく我慢強い方だと覚えていたのですが…。お戻りになられたルド様は、かなり子供っぽくなっておられ…、身体もおかしい所が見受けられたのです…」

侍従の言葉にギレスタは首を傾げる事しかできなかったが、ヴァバリアスの表情はかなり険しいものに変わっていた。

「ヴィシャス…あいつ、まさか…」

ヴァバリアスは下唇を強く噛み、あまり言う事を聞かない体に鞭を打ちながら玄関まで走らせた。
普段であれば息切れもしない距離に息を切らしながら走った。

ようやく到着した玄関では小さく啜り泣くルドと、泣いているルドをあやすヴィシャス。
その二人の周りをどうする事もできずにいる侍従達が困惑した状態で、囲んでいる状況を目にしたヴァバリアスは目をその光景に目を見開いた。

「もしかして…、お前なの、か…?」

ヴァバリアスの小さな声を聞いたルドは泣き腫らした顔を上に向けた。

「ヴァバリアスが…二人…?」
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