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聴取者はあの人でした

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部屋の真ん中に椅子が3脚あるだけでそれ以外は何も置かれていなかった。
部屋の構造上もっと家具があってもいいはずなのに置いてないって事は、この部屋を聴取会場として部屋を整えたんだろうか。

少しずつ意識が鮮明になっていって、ぼんやりとした感覚がなくなっていく。
会って間もないヴァンクラフトに対して異常な執着心があったのが不思議でたまらない。

でも確かにヴァンクラフトに要らないと言われた時は、心臓がバクバクと鳴り異常な程の焦りと不安が押し寄せてしたのは間違いなかった。
考えたくないけど寝ている間に催眠でも魅了でも掛けたのかと思うぐらいだ。

「やぁ、待たせてしまったね」

部屋に入ってきたのは俺を魔道具士にすると言っていた金髪の貴族ラクレルだった。

「兄上定刻より時間が過ぎております」

兄上?
もしかして貴族だと思っていた人が王太子殿下?

そんな人に対して俺結構な事を言った気がするんだけど…。

「ヴァンよそこまで堅苦しい事を言うんじゃない。ただでさえ堅苦しい公務で息が詰まっておると言うのに」

「本日の聴取相手は体調が不安定です。早めにお越しになられて早めに聴取を終わらせるべきではありませんか」

「叔父上のご子息だろ?そこまでひ弱な訳が…」

「ラクレル王太子殿下」

「なんだバラルトロイ」

「第五王子殿下の申される通り、もっと早くお越しになられるべきです。死にかけられたのにたった3週間でここに居られること自体が奇跡だとお思い下さい。ラクレル王太子殿下のご要望でこの場所で聴取がお決まりになられましたことも、十二分に理解をされてと思っておりました」

「お前はここまで来て小言を言いに来たのか」

「ラクレル王太子殿下。苦言は後でお聞き致します。先にどうぞ聴取者からお話をお聞きください」

「ふん!言われなくてもやってやるさ。従兄弟殿そこの席に座りたまえ。ヴァンもその隣に座るが良い」

「ありがとうございます…」

ラクレル王太子殿下は言葉の強さとは違い、椅子には優雅に座り所作が体の芯にまで染み付いてるのが分かる。
俺とヴァンクラフトはラクレル王太子殿下の前にある椅子に腰掛けた。

フレット先生とクルドは俺たちの後ろに立って待機し、バラルトロイはラクレル王太子殿下の後ろにスっと背を伸ばしながら立つ。

「それでは聴取会を始める。まずは被疑者より聴取した内容から伝える。反論すべきことがあれば内容を全て伝えた後に反論するが良い」

ラクレル王太子殿下から話されていく内容は事実と乖離し過ぎて、一体何を聞かされているのか分からない程だった。
サミュエルは俺から長年虐げられており、暴力や暴言は当たり前で学校に入学してからも辞めてもらえなかったとの事。

そして金銭要求も酷くこの10年で金貨500枚は超える金銭を脅し取られた。
最後にトドメに聖者になれなかったのは俺のせいであると言っていた。

身に覚えはあるが、全て俺がされてきた方の内容だ。

「それでは反論があれば話しても良いぞ」

本当に証拠と共に話せるのか、そんな含みのある視線をラクレル王太子殿下から向けられるのにイラッときてしまった。
そんなに証拠が見たいのであれば見せてやる!!
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