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ストーリーが開始されました!

ゲームと違う攻略対象者

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サミュエルのあの顔を思い出すだけで、気持ち悪くなり胃の中が空っぽの筈なのに吐き気を感じる。
胃の中が空っぽでもこんなに吐き気を感じる物なんだ。

お昼休憩いっぱいこの吐き気を耐える事しかできないんだろうか。
食堂のご飯楽しみにしてたんだけどな…。

虚しい気持ちだけが心の中で広がって、心がズンッと重たくなった。
誰も通らない事が救いで、落ち着くまでは一人で居る事ができると思った。

「お前がサミュを幼少期から虐めていたのか」

俺の前にラインハルトが現れたせいで、落ち着ける場所が無くなってしまった。
俺を見下ろしてくる視線は完全に軽蔑していて、何を言ってもこれは俺の話は聞いてくれない、それだけは良くわかった。

「何か言ったらどうだ。先程もサミュに酷い態度を取って悲しませた事も理解していないのか?」

ラインハルトは軽くのつもりだろうが、腰に入れられた蹴りはかなり痛い。

「今までは俺たちがいなかったから好き放題できたのだろうが、今後は俺たちが平民のお前を許さないと思え」

最後におまけと言わんばかりに思いっきり腰に蹴りを入れてからラインハルトは俺から離れていった。
蹴られた腰はズキズキと痛んで立てる気がしない。

こういう時の為に作っておいた治癒の魔道具が役に立つ時がきた。
アンクレットにしている治癒の魔道具の魔石の部分を撫でれば、黄緑色の治癒の魔石はほんのりと淡く光り、少しずつではあるが腰の痛みが引いていく。

治癒の魔道具を準備していてよかった。
まさかサミュエルから被害を受けるんじゃなくて、攻略対象者から被害を受けるなんて思っても見なかった。

今回俺を蹴ってきたラインハルトは騎士を目指していたのもあって、手加減をされても一般人の本気に近い力が発揮されているからかなりこたえた。
サミュエルの中身が変われば、その影響を受けて攻略対象者も変わってしまうのだろうか。

ゲームのラインハルトは正義感が強くて、サミュエルに惚れていても公平さを守るそれぐらい正義感が強い人だった。
それなのに、その公平さは全く感じられなくて、サミュエルの話だけを鵜呑みにして俺を悪だと決めつけている。

ラインハルトが公平さを重要視する様になった、あの事件がサミュエルの手によって起こらなかったのだろうか。
サミュエルの手によって段々と原作が壊されている。

原作が壊されてしまったら対応しようが無くなってくる。
本当に対処できる内容があの本だけになってしまう。

唯一原作知識で対処できる内容はイベントぐらいだろうか。
ゲームを進める為に必要な出来事も多くあるから、流石のサミュエルもイベントは進めようとするだろう。

あの本に書かれている未来を対処しながら、サミュエルが進めるイベントの対処までしないといけないと思うと全く気が進まなかった。
嫌な考えがずっと頭の中に居座り、授業の開始時間の鐘の音を聞くまで立ち上がる気力すら湧かなかった。
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