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―代表戦、本戦―

101話 いざ、試合開始

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いよいよ時間となり、代表生徒達はコロッセオ中央部に整列していた。

それを取り囲む観客席にはいっぱいの人、人、人。興行ではないため一般の観戦者はいないのだが、自らの国の代表を応援しようと駆け付けた友人達や関係者で溢れていた。

とうとう始まるのか…。さくらは緊張で思わず体がぶるるっと震えてしまう。それは他の代表達も同じようで、余裕そうな表情を浮かべる子は一人もいなかった。そんな彼らの前に、1人の女性が進み出てくる。

「では現時刻をもちまして、代表戦を開催させていただきます。事前説明は私、アリシャバージル王国広報担当が務めさせていただきます。とはいえ、ルールは予選と変わりません。胸につけていただいたゼッケンが剥がれ落ちることが敗退の条件となります。お気をつけください。また、治癒魔術の準備もございます。よほどの重傷でない限り、治すことはできますので各々怯むことなく全力をお出しください。ただし、死につながる攻撃等、危険と判断された際は係員が介入することがございます。その場合は指示にお従いください」

形式的な説明が済み、彼女は近くの観客席を指す。

「そして今回も『発明家』ソフィア様が代表を務めるダルバ工房から賞典を頂きました!」

そこには積み上げられた複数の賞金袋やトロフィー、豪華な武器。その前で手を振っていたのはソフィアの娘マリアだった。上手くいけば小遣いやバイト代の何十倍もの賞金が貰えるとわかり、生徒達は俄然やる気になった。



「では、皆様方。所定の位置におつきください」

広報担当の指示の元、各チームが壁を背にするようにして並び立つ。

「『火山国家ゴスタリア』や『海浜国家スキュルビィ』、『オーガの里オグノトス』『エルフの国ラグナアルヴル』『神聖国家メサイア』『獣人の里モンストリア』…。他にも沢山の国の猛者達。腕が鳴る…!」

クラウスはそう呟き、ほくそ笑む。瞑想の効果か、予選の時より威圧感が増しているように思えた。


「クラウス!お前の腕で軽くのしちまえ!」

「メスト様!頑張ってください!」

観客席から応援が投げかけられる。勿論、さくらにも。

「さくらちゃーん!頑張ってー!」

アイナとモカを中心に、さくらの活躍をする生徒達が駆け付けてくれていたのだ。その中にはエーリカやハルムの姿もしっかり見て取れた。だが、1人足りない。


「あれ?ネリーちゃんは?」

いくら探しても、彼女の姿は見えない。一際騒がしいあの子を見つけられないはずはないのだが…。きょろきょろと目を動かすさくらの肩をメストが叩いた。

「あそこみたい」

彼女が指した先にはエルフの女王。そしてその横には、ネリーが座らされていた。

「ほんとに気に入られてる…」

エルフの国の代表達は女王の横に見知らぬ子が座っているのに気づき、眉をひそめている。当の本人も場違いなのは重々承知なのだろう、気まずそうな顔をしていた。対して女王陛下は実に楽しそうだが。



様々な応援の声がそこかしこで響く中、係員の腕章を巻いた竜崎が説明役の女性の横に出てくる。目配せを交わし、コロッセオの中央空中になにかを放ち、静止させた。号砲代わりらしい。

「では。これより試合を行います。よーい、始め!」

彼女の声に合わせるように、ニアロンが小さな魔術を撃ちだす。それは空中の魔力球に当たり、爆発した。

ドオオォン!

盛大な音を合図に、各チーム一斉に動き出す。だが、その動きが異常であった。

「えっ!」
「そんな!」

アイナやモカ達、そして離れた席にいたネリーも思わず目を疑う。何故なら…。

「ここで勝負を決める!」

「あいつらを倒せば後が楽だ!全力でいくぞ!」

さくら達学園代表チームに対して、相当数のチームが示し合わせたかのように迫ってきたのだ。


「皆、逃げて!」

アイナ達はそう叫ぶが、円を狭めるように近づいてくるこの状況、逃げ道なんてない。まさに四面楚歌。このまま蹂躙されてしまうのか…!観戦者達は固唾をのんで見守るしかなかった。
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