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顧客リスト№70 『レオナールのコンサートダンジョン』

人間側 とある陰キャっ娘と偶像③

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「超★絶★楽しかったぁ~ッ! うぇ~い皆っ★今日もレッスンライブにお仕事、バッチバチに決めてるぅ~っ!」


レッスンが終わり、ネルサ様は皆さんへ…トレーナーさん方や見に来てくださっていたプロデューサーさん方、ミミックさん達へもハイタッチを! 当然のように私にも…ひゃっ…! ウインクとグーサインまでしてくださって…!!


「や~★もっと沢山お喋りしたいコトあったんだけど、つい歌い過ぎちった★ もうそろ約束の時間になっちゃうし、名残惜しいけどあーしも行かなきゃ★」


と、ネルサ様はそう仰りつつ、プロデューサーさん方へ軽く目配せを。すると皆さん、いつの間にか居らしたwaRosウォーソのプロデューサーさんも含め、心得たようにこのライブ会場から何処かへと。


どうやらプロデューサーさん方を集めた会議があるみたいなんです。なのに皆さん、こうして私達のレッスンを覗きに来てくださるなんて…! しかもネルサ様に至っては…!


「でもそん前に★改めて! しれらんシレラにゅかちーニュカるっきールキ! 祝★ユニット結成~っ!!」

「「「有難うございます!」」」

「にひひ★仮決定だし気負わんといてだけど、こんままデビューイケそうかもかも★」


はい! 私達ももう一度盛大に拍手をしながら頷きます! 実はネルサ様、先ほど皆で歌った後、その素晴らしい発表をしてくださったんです! シレラさんニュカさんルキさんによる、新アイドルユニット!!


今からの会議で正式に取り決められる話だったみたいですが、ネルサ様の特権で先行して披露されたと言いますか…! とはいえ相性の確認等がありますので、仰られている通り暫くは仮結成ではありますが……ふふ!


「ええ、私達はそのご期待に応えてみせます!」
「うん! 二人と一緒なら絶対楽しいもん!」
「気負ってたら私が力抜いてやるってねぇ~♪」


こうも互いに信頼し合った笑顔で返せるお三方であれば! きっと問題なんてありません!! ネルサ様もそう感じてくださったのでしょう、ファンの人々すら凌ぐような、キラキラの瞳な笑顔を!


「んも~★三人共最強に頼もしくて大好き! デビュー公式決定したら、あーし盛大にお祝いパーティー開いちゃうかんね~★ ケーキももっとドンッておっきいの用意しちゃってさ★」

「ふふ! 頂いたお祝いのケーキ、美味しく頂きます!」
「なんなら今すぐ食べたいぐらい! あ、お腹鳴っちゃった…!」
「ちょいちょ~い! オネカさんに預けて置いて正解か~?」

「にっひっひ★ べぜたんあっすんの推しパティシエのめっちゃ頬落ち確定ケーキだし★気ぃつけてね~なんちって★」


わぁ…! 結成発表の際にプレゼントされていたケーキって、ベーゼ様アスト様の…!? 後でシレラさん達に見せて頂けないかお願いを……!


私もユニット結成できたら、同じようにケーキを頂けるのでしょうか……。デビューできるかすら怪しいんですけどね……あはは……。あ…気づけばまた話が盛り上がってます…!


「――わおっ★寮をパーティー会場に! 良いじゃんガチ良いじゃ~ん★」

「思いつきでしたのに…! でも皆さえ良かったら!」
「みんな、どおどお? え、良い!? やった!!」
「よっしゃぁ、私の隠し芸に期待してもろて~♪」

「懐かしいわね、デビュー決定パーティー!」
「知り合い色々呼ばせて貰って、派手にやったわ♪」

「あ、そうですね! 誰を招待するか決めとかないと!」
「お母さんお父さんでしょ、友達でしょ、それから~!」
「とりま、ミミックの皆さんには絶対来てもらわんと~!」

「おや! ボクらもかい?」
「あらぁ~! 良いの~?」

「「「勿論!!!」」」

「ヤバ超楽しみ~っ! そだ! あーし、今度普通に寮へ遊びに行きた~いっ★」

「「「「「是非!」」」」」

「にっひっひ★約束やくそく~! 皆で★指切りげ~んまん!」


ひゃわわっ…! ネルサ様が小指を立てて、皆も小指を合わせて! わ、私も! ……あ、あれ? そういえば話し込んでしまっていますけど、ネルサ様マズいんじゃ……!


「って、あ! もう行かんとマズじゃん! りーだんリダおねかんオネカ、皆をヨロ~★」

「お任せあれ、ネルっさん!」
「しっかり送り届けるからね~☆」

「サンキュ★ んじゃ★またね~っ! ゆっくり休んでね~い!」


最後にウインクとポーズをパチリと煌めかせ、ネルサ様は颯爽と去っていかれます。登場から退場までのその御姿は、まるで流星スターのよう…いえ、そのものですっ!


そんなネルサ様が見えなくなるまで手を振り返していますと、waRosのお二方が号令をかけてくださいました!


「さ、アタシ達も今日〆だし!」
「一緒に寮へ帰りましょうか♪」


「「「「「はーいっ!!」」」」」








「皆、ボクからはぐれちゃわないようにね、なんてね☆」
「んふふ~☆ お姉さんが見ているから安心よ~♪」


前方のリダさん、後方のオネカさんに挟まれる形で、私達は寮へと。ふふっ、レッスンエリアから寮エリアまでは慣れた道ですから、幾ら私でも迷いはしません。…まあ信用ないでしょうけど…あはは…。


「ね! ねね! ユニット名何にする~!?」
「もう、気が早いわよ。でも、そうね…ふふ」
「こん時のため色々考えてたのはお互い様ぁ♪」


と、ニュカさんシレラさんルキさんが…! 皆でワイワイとお喋りしながら帰るのはいつものことではあるんですが、やっぱり今日は三人のユニットの話で持ち切りです!


「――そういうのも素敵! 皆の発想凄いわね!」
「うわ~! 悩む~っ! どんなが良いんだ~!」
「むむぅ~…waRosはどう決めたんですかぁ?」

「アタシ達のは結構シンプルよ。アタシが元々戦士warriorで」
「私が魔法使いsorcererだったから、それを前後から、ね♪」

「「「「「へー!」」」」」


そしてwaRosのヒミツでも盛り上がる皆を見ていますと、こうして後方で見ているだけで楽しく――。


「ほっほ~う? 世にも珍しい後方腕組みベル、確保ぉ♪」

「ひゃっやわっ!?」


きゅ、急にルキさんが私をぎゅって!? でも腕組みなんて…! もしかして変に通ぶっているように見えてしまってました…!? そ、そんなつもりじゃ……!!


「なんかま~た変な勘違いしてるくなぁい? まいいや。ベルもアドバイスおくれ~♪」
「聞きたい聞きたーい! ねえねえベルちゃん、私達ってどんな感じ?」


ふえっ!? ニュカさんまで! え、えと…! ユニット名の参考になるようにですよね…! そ、その……!  


「ま、まず御三方とも見た目も性格も全く違いますから…それぞれの良さがありまして…! シレラさんは爽やかな気品があって、ニュカさんは天真爛漫で、ルキさんは気さくな幼馴染みたいで…! 推しポイントしかなくて…!」

「ふふっ…!」
「えへへぇ~!」
「や~照れんねぇ~…!」


おずおずと始めますと、シレラさんニュカさんルキさんはくすぐったそうに…! けれど、『もっと』と言いたげに…! なら、もっと、もっともっと…!


「けれどだからといってバラバラになることはなくて…! なんと言いますか……心は同じ色の強い輝きを放っていて、寧ろ互い互いにその光を増幅させている…あ、そうです、まるで夜空に並ぶ星みたいなんです…! キラキラとした瞬きが重なり合って、三つ合わされば誰もが目を惹かれるような……!」


「ほわ……その表現、良いわね…!」
「ね! やっぱベルちゃん…!」
「強いわぁ…。超良い参考に――」


「そ、それと…結構アグレッシブなところも、私は魅力的に感じていて…! 例えばシエラさんは、先程のダンスレッスンの最中も、新しい振付を模索なされていて…ニュカさんは、ミミックさんとの髪型探しのように1日中どんな時も…ルキさんは無気力に見せかけて、倉庫で歌うとか提案しだす、ちょっと悪な感じが…!」


「!? それ、ぶつかりかけちゃった時の…!?」
「すっごい見てくれてるぅ!?」
「私のにもそんな評価くれんのぉ…!?」


「そして、今しがたの実践レッスンも! まるで舞踏会で皆を虜にするシンデレラみたいで、とても綺麗で、ついつい見惚れちゃって、どんな大物相手でも不敵に挑んでいきそうな……――っあ…その、ぁう…!」


い、い、言い過ぎたかもしれません…! やっと気づきました……御三方が…いいえ皆さんが目を丸くしていることに……! す、すみませんすみません…!


「や、やっぱりなんでもないです! 私なんかが意見するなんて、しかもユニット名の参考だなんて…! き、聞かなかったことに…!」


慌てて誤魔化し、口を噤みます…! ぅう……やってしまいました……つい聞かれてないことまで…。絶対、ドン引きされちゃってます…皆ざわついてますし……。


あ…ほら…シレラさん達も、御三方でひそひそと話し合って頷き合って…。折角私なんかに優しくしてくださったのに、今のできっと幻滅させて――…。



「なら、ベル。4のユニットなら、もっと話せる?」



「…………へ?」


え……えと……? シレラさん……今、何と…? 4人…って……シレラさんニュカさんルキさんと、もう一人……って……――ッ!?!?


わ、わ、わ、私……そこまで察しは悪くないと自分では思ってます……! だから…ですから……シレラさん達の目で、表情で、先のお言葉が何を指しているかが……! 信じられないですけど……でも、シレラさんが、それをなぞる様に!


「ベル、良かったら私達のユニットに入らない?」

「っっッッ!!」


っっや、やっぱりです!?!?!? へ、え、ふぇっ!? 本当に!? その突拍子も無いまさかの提案に、周囲の皆はざわつきますが……御三方はそれを一身に受けて尚…いえ、寧ろ殊更に胸を張って!?


「前から話してたんだ~! 組むならベルちゃんも連れてってあげたいなって!」
「ほらベルって歌もダンスも光ってっし、何より守ってあげたい感あるしぃ♪」


何一つ声が出せない私の前へ、まずはニュカさんルキさんが…! そして、最後にシレラさんが手を差し伸べて…! 


「ネルっさんへは私達からお願いするわ。だから、ベル。貴女さえ良ければ――」


こんな…こんなことが……っ!! こんな私が、こんなお誘いを受けるだなんて…! こんな私を、スカウトしてくださるなんて! 


私、夢を見ている気分で…! 現実で、目の前で起きていることは思えなくて……! だから、だからつい、その手を取りたく、なります――――けどっ!!



「それは、駄目ですっッ!!!」






「「「え…っ!?」」」


っあ…! お、思ったよりも大きな声が…! そのせいでシレラさん達がびっくりなされて…いえそれだけが理由じゃないのはわかって…! あ、あの、違うんです! 


「嫌な訳じゃ、ないんです…! 寧ろそのお誘いは、すごく、すっごく魅力的で、まるで救いの手のようで、とっても嬉しいんです! ネルサ様にスカウトして頂いた時と同じぐらい!」


慌てて取り繕ったように聞こえてしまうかもしれませんが…本当に私、それぐらいに心が弾んでいて…! 出来ることなら、あの時と同じように肯きたかったです。けれど…!


「けれど、私が…私なんかが御三方のユニットに混じってしまえば、間違いなく魅力を潰してしまいます。絶対にシレラさん達の足を引っ張って、邪魔をしてしまうんですっ!! だから――!」


だからこのスカウトは受けちゃいけない…断らなくちゃならないんです! 


「ベル……」
「でもぉ…」
「おぉう…」


っあ…ぅう……! シレラさん達のお顔が、差し伸べてくださっていた手が、固まって……! か、悲しませてしまって……! 折角誘ってくださったのに、私、私、なんてことを……! でも、でも――。


「――アタシ達もベルに賛成ね。勘違いしないで、アンタ達は良いアイドルになれるし、別にネルっさん達の決定が絶対だなんても考えてないから」

「えぇ。ただ私達も、三人とベルちゃんは別の形でアイドルになるのが合っていると思うわ。ベルちゃんが庇護欲をそそるのはわかるけれど、ね♪」


っ! リア様、サラ様!! はい…はい! そうなんです! 私についてはともかく、私もシレラさん達は三人なのが一番素敵だと感じるんです!


御三方ともとても優しいですから、私を想って誘ってくれたんだと思います。けれど、それは良くないんです。シレラさんもニュカさんもルキさんも優しいからこそ、どうなっても私を見捨てないでしょう。どれだけ失敗してしまっても、きっと。


でもそうして私のためにパフォーマンスが割かれてしまえば、御三方の本領は上手く発揮できなくなってしまいます。あの見ていて楽しくて、笑顔になれて、元気を貰える魅力が、最大限には輝かなくなってしまうんです!


私はそんなの嫌です…! 許せないんです! シレラさん達には一切の憂いなく、輝きを振りまくアイドルになって頂きたいんです! ……仮に私が上手くやれたとしても、あの輝きの中に影が…陰ができるだけですから……。あはは……。


「「「っ……」」」


ぁぅ……。waRosのお言葉を受け、シレラさん達はようやく手を引いてくださいました。けれどその表情は複雑で、どう続ければ良いかわからないという様子で……。えと…えと……へ? この、カカンッというリズミカルな音は?


「フフッ! そう心配しなくても良いさ☆ まだ相性確認の期間なんだから!」
「そうよ~。もしシンデレラフィットだったら、すぐベルちゃん追加加入よ~☆」


思わず音の鳴った方を見ますと、そこには軽い宝箱のステップを刻み終え朗らかに笑うリダさんオネカさんが…! と、リダさんが私へ――。


「でも良いのかい、ベル? 宣戦布告してしまって!」

「ふぇっ!?!?!?」

「だって今のそれ、つまりは『シレラ達とは別に、立派なアイドルになってみせる』という宣言じゃないか!」


えっいやそのっ!? そういう訳じゃ…そういう風に聞こえてもおかしくはない…実際確かにそうなのかもしれませんけど! そ、そんな意図は――。


「あらあら~☆ なら、三人も応えないと~♪」

「「「っ!!」」」

「同寮の親友として、最高のアイドルを目指す戦友として、そしてライバルとして、共に助け高め合う。んふふ~♪これからワクワクしちゃうかも~♪」


って、シレラさん達の方にはオネカさんが! 待っ…あ、あれ? シレラさんもニュカさんもルキさんも顔を見合わせクスリと笑い、オネカさん達へ一礼してから…こちらを…!


「わかったわベル。ならこれから…ううん、これからも一緒に頑張りましょう!」

「私達が先に行って、ベルちゃん引っ張る! あ、もしかして逆になるかも!?」

「ちな、もし加入してくれんなら常にバッチこいだかんね~? そこはヨロ♪」


わ…わわ…! 御三方が、手を私の前に……! 差し伸べてくださるのではなく、重ね合って!


ハッと気づきリダさんへ、オネカさんへ、waRosの御二方へ視線を動かしますと、皆さんパチリとウインクを! っふふ…! 私も一礼を残して――!


「はい! よろしくお願いします!」


シレラさん達の手に私も重ね、えいえいおーっと! わだかまりもなく、仲良く! 助けてくださった皆さんも、巻き込んでしまった皆も、微笑んでくださってます!


なら、次は私が頑張りませんと…! 私のせいでちょっとぎくしゃく気味になってしまった空気を、なんとかして元通りに……! えと、えと、何か話題を…―― 


「おや丁度いい! ここで皆へ贈り物だ!」
「waRosからよ~。は~いこっちおいで~☆」


へ? またもリダさんオネカさんがカカンとステップを? そして通路の先へ向け手招きを…あ! あちらから跳ねて来るのって!


「差し入れ配りのミミックさん!」






うん、そうです! レッスンに向かう際に見かけた、あのミミックさんです! 蓋からかけたプレートを揺らして、私達の傍までぴょんぴょんやって来てくださいました!


「へえ、ホントタイミング良いじゃない! ほら皆!」
「今日のも美味しいわよ。受け取って頂戴な♪」


そんなwaRosのお二人の合図の元、ミミックさんは皆へお菓子を渡していきます。貰った子は喜んだり、ブランドを見て目を輝かせたり、早速食べ始めちゃったり! ふふっ!


そして私の前にも、でも……あっ! ミミックさん、カカンカカンと上手な宝箱ステップの披露を! まるで『もう渡したから、代わりに』と言わんばかりに! 私がここにいることを驚く様子なく! もしかして私のこと、本当に覚えて……!


「ん? ベルも受け取んなさいよ!」

「あ、その…! 私はさっき頂いたので…! 会場から移動する時に…」

「あら、もう食べてくれたのかしら?」

「いえ、仕舞ってあります…! その、夕ご飯の後に頂こうかと…!」

「うふふっ、また大切にし過ぎて腐らせちゃわないようにね♪」

「はぅ…! その節は失礼なことを……。今回はしっかりと味わわせていただきます…!」


平謝りいたしますと、サラ様リア様はクスクスと笑ってくださって…! あ、その間に差し入れ配りミミックさんは、オネカさんの元へ。そして…わっ、沢山お菓子を出して渡しました!


「わ~んふふ~☆ ありがとね~♪ は~い、皆もwaRosにお礼して~」


そうオネカさんが箱を軽くポンポンと叩くと、中からは今日レッスンをお手伝いしてくれたミミックさん達が飛び出して! waRosのお二人へ感謝を伝えるように跳ね、嬉しそうに一人一つ貰っていきます! ふふ…可愛い…!


「わあ~お洒落なデザイン~☆ リダも貰った~?」
「うん、今日最初にね! 味もとっても美味しいよ☆」


そしてオネカさんリダさんも! 次には二人揃って!


「リアちゃんサラちゃん、いつもうち達にまで有難う~!」
「ミミック皆の分まであるなんて、感謝してもしきれないよ!」

「トーゼン! アンタ達もアタシ達を支えてくれているスタッフなんだから!」
「けれど、いつも迷っちゃうのよね。群体型の子に一つで良いのかしらって」

「大満足よ~☆ 群体型の子は身体が小さいから~」
「うんうん! 分け合ってお腹いっぱいさ!」


そのまま楽しそうに会話をなさる、waRosとリダさんオネカさん…! そのお姿もずっと見ていられるぐらいですが…! 丁度差し入れを配り終えたようで、あのミミックさんがwaRosへ報告するようにぴょんぴょんと。


「お。終わった? 渡しそびれはないわね? よーしよし!」
「良い子良い子♪ 余りは好きにしちゃって良いわよ♪」

「おや? 皆も早速戻って食べたいのかい?」
「んふふ~良いよぉ~。今日はお疲れ様~♪」


その言葉を受け、差し入れ配りミミックさんとレッスンを手伝ってくれたミミックさん達は、一緒にぴょんぴょん跳ねながら帰っていきます。こちらへ手を…蓋を?振るようにしながら! 私達も揃ってそれに返します! 有難うございました!


おかげでぎくしゃく気味な空気もいつの間にか元通りになっていますし、本当ミミックの皆さんには感謝してもしきれません! 私も見倣って、今度こそ何か話題振りをしませんと! えぇと…!


何が良いでしょう……先程良いタイミングで入って来てくださった差し入れ配りのミミックさんや、リダさんオネカさん、waRosを参考にすればきっと……あ。


「…あ、あの…! 急に話は変わっちゃうんですけど…! さっきのレッスンの時…リダさんとwaRosのお二人っていつから待機なされて…? オネカさんとトレーナーさんは事前にご存知みたいでしたし…」


「あ、それ私も気になります! 絶妙なタイミングでの乱入でしたし!」


気になっていたことを思い出し口にしますと、シレラさんを始めとした皆も賛同してくださいました…! やっぱりあの乱入はビックリしましたし、格好良かったですから…!


「おや、気になっちゃうかい? それじゃ、種明かしといこう☆」
「トレーナーさんへはうちからこっそり伝えたんだけど、実は~♪」


そんな私達の視線を受けて、リダさんオネカさんは軽く溜めて――waRosへと! そして満を持して、リア様サラ様はフフン♪と笑みを!


「最初からよ! ずっとリダの中からこっそり見てたわ!」
「邪魔しちゃ悪いもの♪ 皆、素敵なカバーだったわよ♪」


はうっ…!! な、なんかそんな気はしてましたけど……まさか本当に…! でも、私のお耳汚しだけをご覧になられてなくて良かったです……!


「えへへぇ…! 御本人登場ってあんなこそばゆいんだぁ…!」
「「「ね…!」」」


ニュカさん達、waRosの曲を披露した皆は揃って可愛く照れたように…! ルキさんもなんだかくすぐったさから逃げるように私へ!


「しかも最後はネルっさんとwaRosのコラボとか、ベルは私達以上にテンション上がったんじゃな~い?」

「ふふっ、はい! それはもう! 夢のようでした!!」 


waRosに、ネルサ様に引っ張って頂いたあの時だけは、なにも怖がらず強張らず、ありのままに想いの限り歌えた気がして! …それがレッスンで出せれば本当に良かったんですけど……――っ…!?


「あ、あの…! 流石にないとは思いますけど……ネルサ様って、いつから……」


「おや! ベルったら勘が良いね! 実は彼女も最初から、魔法で隠れてこっそりとね☆」
「なんなら一番乗りしてたかしら~。でも諸々のお喋りでそのこと話しそびれた感じよ~♪」


え…ええええええええっ!? や、やっぱり!?!? それに気づいているなんて、流石はミミック……。って、ということは!!!


「じゃ、じゃあ私の……ネルサ様にまで……!?」


「ま~…そういうことになるわね!」
「頑張ってる姿、可愛かったわよ♪」

「ぁぅぁぅぁぅぁぁうぅ……!」


リア様サラ様がすかさずフォローをしてくださいましたが……わ、私……顔を赤くして良いのか青くして良いのかわかりません……! スカウトしてくださったネルサ様に、なんて姿を……!!


はぅぅぅぅ……。せめて皆が笑ってくださるのが救いですぅ……。







「――間違いないし! あのシャウトならダンスも振り切っていいし!」

「えぇ、私もそう思うわ。痺れるシャウトだったもの! ベルはどう?」

「は、はい同じく! あれ、雷に触れたと思うぐらい全身にビリビリ来ましたし! そのままエネルギッシュなダンスが続いたら、もう痺れに病みつきに!」

「ナハハ!大袈裟だってベル! あーでもその通りだよねぇ。けど息が続かなくて体苦しくてさぁ」

「へえ? ならwaRos流呼吸法レッスン教えてあげるわ! 寮着いたらボイトレルーム行くわよ!」


で、でも……話を振った甲斐はありました…! 皆さん今しがたのをきっかけに、話題は先程の実践レッスンに。それぞれの良いトコや直すべきトコを皆で言い合ったり、現役なリア様達からアドバイスを頂いたり…!


しかも、そこに私も交えてくださるんです。あんな醜態を晒してしまった身なのに…! ですから私も、まっすぐそれに応えまして…! こんな私の意見なんて参考になるかはわからないんですけど…それでも…!


そして私も、皆さんへアドバイスをお願いさせていただきまして…! 主に緊張しないコツを…! 皆さん色々意見をくださり、とても参考になって…!!


例えば、先輩アイドルの立ち姿の真似をしてみる、とか…最初から自分の世界に入っちゃう、とか…緊張している自分を受け入れて寧ろアピールポイントにする、とか…! 難しそうですけど、それが出来ればきっと…!


更には、緊張に慣れるまでの練習に付き合ってくださるという方まで……と言いますか、その場の皆さん全員が、本当に一人残らず立候補してくださって! 嬉しいと言いますか畏れ多いと言いますか私なんかに手間を割いて頂いて申し訳ないと言いますか…でもやっぱり、とても嬉しくて!


そう、本当に一人残らずだったんです! はい、ですから…リダさんオネカさんもそう言ってくださったんです! 勿論、社交辞令かもしれませんけど……それでも有難くて!!


あ…ふふ…! さっきのを思い出してしまいました…! リダさんオネカさんの…! その緊張しないコツを皆さんにお聞きしました際、王道の対処法も勿論挙げてくださったんです。例えば、手に人を書いて飲み込むとか、『アマリリス』を三度繰り返す、とか…!


その中で、観客をカボチャだと思う、というのも挙がったんです。これもよく聞く対処法ですけど…私、ちょっと上手くできなくて…。カボチャでもジャガイモでも、その、違和感が……。


でも、リダさんオネカさんが面白い変更案を出してくださったんです! それはなんと…『観客を宝箱だと思う』というアイデアで!


はい、何が違うのかというツッコミもごもっともで。実際それを聞いてすぐは皆さん首をお捻りになられてましたし、何を隠そう私もでした。けれどリダさんオネカさんは微笑み――。


「フフッ、ベル? 社長とアストちゃんの…M&Aミミン&アストのライブと紐づけてご覧?」

「M&Aの……あっ!? ぼ、『ボックス席』!?」

「んふふ~☆大正解~♪ ど~お? M&Aの気分になれるかも~♪」


そう真意を明かしてくださったんです! そうです…かのM&A初ライブの、関係者席! ミミックで、宝箱で埋め尽くされた、ミミックボックス席! 宝箱観客アイデアは、それと同じになるんです!


ですからつまり、先輩アイドルを…M&Aの立ち姿を真似しやすくて、あの素敵なM&Aになれる気分で挑めるかもしれないんです! それなら、難しそうな緊張に慣れるコツの一つも、実践しやすそうで! 次の機会で、絶対試してみます!


…ふふふっ! ここでもリダさんオネカさんに救われてしまいました。何度でも思います、お二人はやっぱり凄いって! しかもそう感じているのは私だけじゃないんです。他の皆もなんです!


「ダンスと言えばさ、あれヤバかったよね! リダさんのダンス!」
「うん! スタイリッシュで、リアさんに合わせるように守るようにで!」
「『やるわね!』『そちらこそ!』って目で会話しててね!」
「お二人共恰好よかったぁ…♡ 私、歌飛んじゃったもん…!」

「だってさリダ。アンタも罪作りねぇ?」
「フフッ、リアには負けるさ☆」

「リダさんもだけど、私はオネカさんのダンスにもびっくり!」
「わかる! あんな動き出来たんだってぐらい、情熱的で綺麗で…!」
「でもその間には、サラさんと一緒に私達の手を取って…!」
「優しくダンスのリードをしてくれてね…!! きゃー♡」

「あらあら♪ オネカ人気も競ってきたわね♪」
「あらぁ~。うちは別に良いのに~んふふ~…☆」


ほらあんな風に、皆がリダさんオネカさんを推すぐらいに! それだけ凄かったんです、それだけ凄いんです、あのお二人は! ふふっ、私のことじゃないのになんだか誇らしくなってしまいます!


へ? もやもやしないのかって? いえいえいえ!? お二人の凄さが私だけじゃなく皆に知れ渡ることも、私なんか以上に脚光を浴びることも、とっても嬉しい事です!


ですから……良い機会ですし、もっとお二人の凄いところを、私の知っている限り、皆にお伝えしましょう!








「――それで、先程のライブ直前も! 俯いていた私と顔を合わせるように、椅子の下からひょっこり華麗に現れてくださいまして! ライブへと誘ってくださったんです!」

「へぇ! そんなことしてたとはね!」
「ミミックらしい素敵な登場じゃない♪」

「本当そう思いました! びっくりで憂鬱さも吹き飛びましたし、椅子下から出てこられる所作を追って自然と顔を上げられましたし! そしてちょっと揶揄うような、けれど格好いい台詞と微笑みが、まるで華麗な騎士様のようで…!」

「成程…参考になりそう!」
「騎士様って感じわかる!」
「もっと詳しく詳しく~♪」


ということで、まずはリダさんから! 今まで、今日の先程に至るまでの感動したエピソードをかいつまんでお話いたしますと、リア様達もシレラさん達も皆さん聞き入ってくださってます! なら、もっともっと――!


「あはは…そこまで語られちゃうと流石にくすぐったいなぁ…」


っは…! や、やり過ぎてしまいました…!? リダさん頬をお染めになって、身体をなんだかいつもより箱にお隠しになって…! ご迷惑となるようでしたら、これ以上は……。


「んふふ~☆ もっと褒めたげてベルちゃ~ん♪」

「ちょっオネカ!?」


えっ!? まさかの後押しが来ました!? 驚くリダさんを余所に、オネカさんはふふん♪とお胸をお張りになって自分のことのように。


「リダは優秀なのよ~☆ 訓練でも皆を率いてくれて、優良ミミックの社長表彰を幾度も受けたぐらいなんだから~」


ふふっ! 優良ミミックの基準は私には分かりませんが…それでも、その表彰がリダさんへ送られてしかるべきものだということはわかります! それに――!


「それに、歌も上手だし~♪ カラオケで歌う時は必ず高得点だったでしょ~?」

「へえ! それは初耳ね!」
「歌までお上手なんですか!?」

「そうなんです! 私と一緒に歌ってくださって、とっても綺麗な歌声で…!」


オネカさんの一言に驚く皆さんへ、私もそう頷いてみせます!だってハミングに入ってくださるだけでも、清らかさと麗しさが伝わって来るほどなんですから!


「いやいや…! ボクは他の子に誘われて歌うぐらいで…! キミ達プロと比べたら大したものじゃ……」


皆さんの視線を浴び、流石のリダさんもまだお照れになったまま。そこへオネカさんが間髪入れず…!


「んふふ~☆ 歌ってみてあげたら~?」

「ぇと……恥ずかしいよ…! もう!」


ぁぁ…。却下されてしまいました。残念ですけど、仕方ありません。無理強いしてまで歌って頂く訳には――。


「あら~。もしかして、ソロの気分じゃない~?」

「そういう問題じゃないってば! …それもちょっとあるけどさ」


って、オネカさん食い下がってます!? そ、その、これ以上はリダさんにご迷惑がかかりますから…かかりますし……かかりますけど……――いえ…でも……!


「な、ならえと…! 私と一緒なら、どうですか? いつもみたいに…!」

「えっ!? ベル!?」


は、はい! 私です、立候補しました! リダさんの、デュエット役に! オネカさんがこっそり合図してくれたのに乗っかった形なんですけど…その…!


リダさんにご迷惑をかけたくはないのはそうなんですが……それと同じぐらい私、リダさんの素晴らしさを皆さんに知って頂きたくて! あとは、そもそもこんな話になってしまったのは私のせいですから、話を振ってしまった責任的な感じで、ですから…あの……。


「……駄目で、しょうか…?」

「だって~リダ。どうかしら~☆」

「オネカまさか…! ――けど…フフッ…!」


オネカさんを軽く睨むリダさん…! ですが、すぐに私の方を見て嬉しそうに微笑まれて!


「こんなに安心できるお誘いはないね! よし、ボクも勇気を出そう!」


リダさん、普段の調子に戻られました! そして紳士のように私へ手を差し出してくださって!


「一曲、いつものようにお付き合い願えるかな?」

「――! はい、喜んで!」


その手に、私も手を重ねてお応えして…あ、いつものようにですから…よいしょ!


「きゃっ!? べ、ベル?! 何するんだい!?」

「へっ!? あ、ご、ご迷惑でしたか!? その、いつもみたいに…」


良かれと思いまして、抱っこを…! リダさんが珍しい悲鳴を…! あわあわしちゃっていますと、オネカさんが…!


「あらあら~♡んふふ~♡ そ~んなことしてたの~♡」

「ぅっ…!」

「いつも言ってたもんね~。社長みたいな抱っこされたいって~☆」

「オーネーカぁ…!」


な、なんか弄られてます…! いつも慈愛の塊のようなオネカさんの珍しい小悪魔フェイスに弄られて、いつもクールで騎士のようなリダさんが乙女のように頬を染めてます……!


隠されていたんですね、この抱っこのこと…! ご、ごめんなさい私のせいで、すぐ降ろしま――。


「…いや、このままいこうベル。バレてしまったものは仕方ないしね」


ふぇ…リダさんお顔を伏せて手でお隠しになって……。迷惑に迷惑を重ねてしまってごめんなさ――。


「けれど、責任は取って貰おうか。いつものように、ボクを抱きしめ包む素敵で楽しい歌声、期待してるよ?」

「ひゃ、ひゃい!?」


リダさん、いつのまにか私の方を向いて、私の唇へそっと触れて…! 先程までの乙女っぽさは何処かへ消え、クールで騎士様のリダさんに早戻りしてます! あ、でもお耳がまだ真っ赤で…! へ、ひゃ…!?


リダさんのお耳を見ていたら、私の耳にリダさんの唇が……!! な、何か耳打ちを…!? ――は、はい、はい…ふふっ!


「わかりました! えっとそれでまずは、何を歌いましょう?」

「そうだね、キミも大好きな『箱から飛び出た宝物』にしようか!」

「はい! では――1、2、3、4!」









「「――キミこそが♪ 宝物♪ そのまま真っ直ぐ♪飛び出してゆっけ!!♪」」

「「「「「おおお~っ!」」」」」


リダさんと一緒に一番を歌いあげ、M&Aのようなポーズを取って決めてみせます! 良かった…! 楽しく歌えました! 皆褒めてくださいます! 


「リダさんマジで歌ウマ~!」
「アカペラで格好良すぎ!」
「二人とも息ピッタリ!!!」

「突発ライブかと思った…!」
「あの子デビュー前なのよね?」
「ってあの人、リダさんじゃ?」


しかも、今のを聞きつけ近場のスタッフさん達まで顔を出されて! 皆さん拍手を! あはは……! なんだか私までくすぐったいです…!


「んふふ~☆ なんだかうちも鼻高々~☆」


そしてオネカさんもまた、にこにこと微笑まれています。――それでは、リダさんと頷き合いまして!


「さあ、オネカの番だよ! 準備はいいかい?」

「ふぇ? へ~~~!????」

「『子守歌のオネカ』さんのあの歌声も、是非皆さんに!」


先程耳打ちでお聞きしましたオネカさんの異名を交え、私も続きます! オネカさんは目を丸くなされて!


「なんでベルちゃんがそれを…~!? リダ~!?」

「フフン♪ ボクのことをバラしたんだ、次はキミの番だろう?」

「それは~…まあ~…そうかもだけど~…。でもうちはそんな~…」

「おっと! 逃がさないよ!」


言うが早いか、リダさんは私の腕の中を飛び出して行きます! そして後ずさりしていたオネカさんの背後へ瞬く間に回り込み!


「まずはキミも、ベルの抱かれ心地を味わうといいさ!」

「ひゃああああ~~~!?」


カンッとオネカさん入りの宝箱を弾き上げ、空中で弧を描くようにポーンッと飛ばしました! その落下位置には――キャッチ!


「捕まえました!」

「べ、ベルちゃん~!?」

「ふふ…! お姫様抱っこのお礼、と言いますか…!」


腕の中で、オネカさんを優しく抱き留めます! リダさんへするように丁寧に、あの時助けて頂いた感謝を込めて、ぎゅううっと! そして、お願いを…!


「今度は失敗しませんから、どうか二番を一緒に…!」

「もう~…二人共~。うちを手玉にとって~…!」


くすぐったそうに、けれど何処か心地よさそうに肩を竦めるオネカさん。そっと私の腕に手を重ねて…あ、優しくリズムを刻んで! 乗って来てくださいました!


「そうなのよ! オネカさんも歌が上手で!」
「さっきベルちゃん助けてたぐらいだし!」
「まあ聞いてみそ~☆ 慈愛の歌声に驚け~♪」


シレラさん達がオネカさんの実力を他の皆へ広めてる中、私とオネカさんは皆さんへ向き直ります! そして二番イントロを始めてくださっているリダさんから引き継ぎまして――1、2、3、4♪









「――それでね、どんな猛っているミミックも、オネカの歌の前では子供のように穏やかにうとついてしまうんだ。その腕から、よく宴会カラオケのトリを任されていてさ!」

「だから『子守歌のオネカ』!」
「すっごぉ! でも納得な二つ名~!」
「そりゃぁ私もコロッと寝れちゃう訳で♪」

「勿論ミミックとしての腕も確かなものだとも! それにアストちゃんから訓練支援役リーダーに抜擢されていてね! その腕は遺憾なく発揮しているだろう?」

「はい、それはもう! 繰り返しになっちゃうんですけど、さっき私を探しに来てくださった時なんか、もうまるで女神様のようで…!」

「女神様感わかる! ホント良い時に助けてくれるんだから!」
「レッスン中、どれだけ慰めて励まして貰ったことか!」
「ママやお姉ちゃんみたいに撫でてくれるの好き…♪」


ふふっ! 皆さん、オネカさんを褒めに褒めちぎってます! つい先程のオネカさんの歌も、万雷の拍手で終わるぐらい素敵でして。その興奮が、普段お世話になっている想いを溢れ出させてしまっているんです!


「もう~…ごめんてば~リダぁ…。許してよぉベルちゃん~皆ぁ~…」


その勢いに押され、オネカさんは身を縮ませてしまっています! 比喩ではなく本当にです。私の腕の中で、箱の中にほとんど隠れてしまっていますから! そんなお照れになった姿も普段とのギャップで可愛らしくて、まさに――。


「ほらほら~。やっぱオネカさんアイドル向きじゃん?」
「ルキ正しいわ! 優しいし歌もダンスも上手だし!」
「リダさんも絶対アイドルやれそう! 格好良さ担当!」
「どっちがデビューしても人気確定だし、推せる~♡」

「も~……!」
「んっ!? えっ、ボクもかい!?」

「はい、私もそう思います! オネカさんは愛情たっぷりに背を押してくださって、リダさんはそのスタイリッシュさで手を引いてくださって! 見ている方々を…私のようなファンを、前へ進ませてくださるアイドルになれると思います!」


私が大好きな、私の救いになってくれた、最高なアイドルの方々のように!……とまではちょっと恥ずかしくて言えませんでしたけど…! 私も心の底からの想いを、お二方へ――あ…。


ちょ…ちょっと興奮し過ぎたかもしれないです…。お二方揃って…オネカさんは箱に籠り気味のまま、リダさんも蓋を少し被るようにして、沈黙を…! ぁぅ……また私が空気を悪くして――。


「コホン! ところでオネカ! ベルの抱かれ心地はどうだい?」

「…んふふ~☆ それも謝らないとね~。ベルちゃん最高~♪」


ひゃっ!? 急にリダさんが蓋を開いて、オネカさんも身体をお出しになって!? ……あれ、お二方共、お耳がちょっと赤…あれ、普通に? 気のせいでしょうか…?


「フフッ、ボクが内緒にしたがった理由もわかるだろう?」

「わかる~☆ もう少し抱っこして貰っちゃおうかしら~♪」

「あ、はい! それは全然、是非!」


いくらでもオネカさん抱っこします! 少しでも日頃の恩返しになれば幸いですし! ――ですけど…。


「おっとベル、ボクの分も残しておいてくれよ? なんてね☆」


リダさん……やっぱりいつも通りに気丈に振舞われていますが、なんでしょう…。何処か少し、ほんの少しだけ、残念そうな感じが……――えと、オネカさん、お耳にご相談が…!


「なぁに~? ――ふんふん、お~♪んふふ~♪ ベルちゃん優しい子良い子良い子~♪ えいっ☆」


早っ!? 私を撫でてくださりながら、オネカさんは手を触手にして勢いよく伸ばします! その先は――。


「ふぅ、さて! そろそろ皆を寮へお連れしないと――わっと!?」


リダさんです! 触手はリダさんを掴み、こちらへ勢いよく引っ張り……よいしょ!


「わぷっ…! なんだい急に!? って、えっ……!?」

「リダボロボロよ~☆ ベルちゃんにまで隙を突かれちゃって~♪」


隣に到着し、目を丸くなさっているリダさんへ、オネカさんはクスクスと。そうです、リダさんが引っ張られた先は、私の胸、腕の中。私は今、リダさんとオネカさんを同時に抱っこさせて貰っているんです!


別に抱っこするのは誰か一人だけというルールはありませんし…! お二人同時に抱っこできれば、お二方ともに喜んで頂けるかなと考えまして……っとっと…!


「ちょっ、ベル大丈夫かい!?」
「無理しなくて良いのよ~?」


い、いえ! 無理なんかは! 重くもありませんし! ただ、宝箱を二つ抱えるのは……片腕で1人ずつ支えるのは……慣れてませんからバランスを…とるのが…ととと…!


で、でも、絶対落としません! 何があっても、お二方を抱っこし続けます! ただ、その、当たり前ですけど本末転倒ですけど、流石に両手での安定具合と比べてしまったら――……。


「抱かれ心地は……悪いですよね」

「そんなことは……あれ、本当に…!」
「あら~? 変わらない抱かれ心地~!」


えっ…!? ほ、本当ですか!? 俄かに信じがたいですけど…お二方に嘘をついている様子はありません…! それぞれ片腕だけでも、ミミックさんが落ち着く抱え方が出来てるんです!?


「「「「「頑張れ~!!」」」」」


わっ、皆さんからも声援が…! は、はい! 頑張ります! バランスさえしっかり掴めれば……こんな……感じで……っと!


「「「「「おおお~っ!!」」」」」
「ベルちゃんスゴ~!カッコいい~!」
「こりゃ~両手に花ならぬ~?」
「両手に箱って? ふふっ確かに!」

「これは驚きだよ! テクニクシャンだね!」
「アストちゃん超えのミミックたらしかも~♪」


ピシリと立つと、皆さんから歓声を頂いて…! ふふ、やりました…! お二方を一緒に抱っこすることが……これ、抱っこでしょうか?


「面白いじゃない! それ、実践レッスンに活かしなさいよ!」
「うふふっ♪ 手始めに、このまま寮まで凱旋しちゃう?」


リア様、サラ様…!! 名案を有難うございます! これを基礎にすれば、ミミックさんの乱入を捌けて、警戒し過ぎる必要はないかもしれません! そのための訓練として…ぇと…。


「フフフッ! エスコート、宜しく頼むよ☆」
「身体伸ばしてないのに視線高~い♪」


――っ! はい!! リダさんオネカさんの御厚意に有難く甘えさせて頂きます! 腕はまだ全然保ちますし、このまま進んで――。


「ん? ベル、もっとこっち寄んなさいな」
「そこ、花瓶あるわ。ぶつかっちゃうわよ?」


え、あ、本当です…! 高めのテーブルの上に花が飾られてました。お二方を抱っこしている分、視界がちょっと狭くて。それとまだ歩くのは慣れていないので、気づかずふらふらと寄ってしまっていたみたいです。


リア様サラ様が教えてくださってなければぶつかってしまっていたかもしれません。――いえ、多分それがなくとも…!


「もしもの時はボク達が守るさ☆」
「守ってくれてるお返しよ~♪」


ふふっ! リダさんオネカさんがいらっしゃいますから! とはいえ花瓶に近いと危ないのは変わりないですし、皆さんの元へ寄りませんと。ちょっとくるっと回って向きを―くにゃっ!?


「「「「「あっ!?」」」」」


あ、足が縺れ――身体が倒れ―…!? 駄目――転―…でも―正面に倒れるのだけは―絶対――!


「わっと…!?」
「あら~…!?」


間に合っ――! 身体捩って――後ろへ――! 背中から―なら――っあ…花瓶――!?


「ベ――!」
「待っ――!」
「ちょ――!」

「「「「「危なっ――!」」」」」



「きゃあああああっっっ!!!」











「っい…! やっちゃった…!?」
「背中からいっちゃってた……!」
「しかも思いっきり花瓶に――!」
「な、なんかでも一瞬で花瓶と台…?」
「音もそんな…。ってそれどころじゃ!」
「大丈夫!?怪我してな――わぁ…!」
「おぉおおおおおおおおぉお~!!?」


ぁぅぅ……。て、天井が見えますぅ……。それと、次々と覗き込んでくださる皆さんのお顔も……へ…? 何故か皆さん、感動寄りの興奮と言いますか…エモさを感じているようなお顔を…はぱ…!?


な、何か顔に降ってきました…!? あ、誰かがとってくださいました……あれ、これって花…? あっ! か、花瓶の!!!!


ど、ど、どうしましょう!! もしかして花瓶を割ってしまって!? 弁償しませんと! いえそれよりも! 破片がリダさんオネカさんに刺さってしまってたら……あ、あれ?


でもそういえば……花瓶が割れたような音はなかった気が…? それに……身体、全く痛くないです。花瓶の破片が刺さった痛みどころか、転んだ痛みすらありません。寧ろなんだか、むにゅんと反発した何かの感触が、まるでベッドみたいに――。


「ごめんよ、ボク達としたことが……」
「反応遅れちゃって…怖かったよね~…」

「ひぁん!? ……えっ!? えっっ!?!?!?」


こ、声をかけられて……両耳にほど近い位置で囁かれ、ようやく気付きました…! リダさんとオネカさんが……倒れた私を腕枕するように!?


もしかして…この背中の感覚、お二方の手…もとい手が変じた触手!? お二人共身を挺して私を守ってくださって……!? そ、それじゃあ台と花瓶は…!?


「安心して。両方ともこの通り無事だとも」
「お花大分撒き散らしちゃったけどね~」


あ…! お二方のもう片手のそれぞれに、台と花瓶が掴まれてます…! どちらも欠けることなく床に安置されていて…! と…いう事は……私が倒れるまでの一瞬の内に、台と花瓶をどけて、且つ私を守って――お花? わわっ!


本当です…! 花瓶に入っている花は大分減っていて、私やリダさんオネカさんの周りに散らばっています! 起き上がって拾わないと――ひゃわっ…!


「痛いところない~? 良かった~…本当良かったぁ~…!」
「ふぅ…! 花のように美しいキミを守れてよかったよ」


お、オネカさん頭撫で撫でがいつもより過剰というか…! リダさんも私の頬のラインを、花を摘まんだ手で優しく……ハッ…!


み、皆さんがエモみに溢れた顔をしている理由がようやくわかった気がします…! こ、この状況…! 多分、多分ですけど……横たわった私を腕枕で寝かしつつ可愛がるリダさんオネカさんが花々で彩られているこの状況が――!


「なんかエモ度高ぁ~♡」
「カッコ可愛い……!」
「最強の怪我の功名だー!」
「ベルちゃん風に言うと~」
「騎士と女神が守るお姫様!」
「まんまポスターにできそう!」
「お願い一枚撮らせて!」

「リダとオネカをぎゅっと抱えてるのがまた…!」
「まるで大切な花束みたいでね♡ ポイント高いわ♪」


や、やっぱりですぅ!? 皆さん、リア様サラ様まで…! はぅぅ……リダさんオネカさんはともかく、私のはただのドジですからぁ……ぁぅぅぅ……!


「フフッ。それにしてもベル、よくボク達を離さなかったね。それどころか――」
「うち達を守るために、身体の向きまで変えてガードしながら倒れちゃって~」


顔を真っ赤にしてしまっていますと、リダさんオネカさんが私を立ち上がらせてくださいながら、箱を抱える私の腕をそっと支えてくださいながらそんなことを。それは……。


「その、絶対に落とさない、って…何があってもお二人を抱っこし続けるって、心の中で誓ってまして……。お二人が安らいでくださる抱っこですから、それだけは崩しちゃいけない、守らなきゃって、無我夢中で……」

「「……!」」


……でも、結局守ってくださったのはリダさんオネカさんの方で…。寧ろ手間どらせてしまったかもしれなくて、転んだ私の責任なのに――あ…もしかしたら…。


私がこうしてお二方を手放さなかったから、ミミックにとっての足である箱を抑えてしまっていたから、対処が遅れて……。なら、守るつもりが私、最悪な事を……その、ごめんな――ひゃむ…!?


「――ううん、ベル。その誓いが何よりも、この世の何よりも一番嬉しいよ。惚れてしまうぐらいに」


り、リダさん…!? 手にしていた花で、その裏に隠した人差し指で私の口をそっと止めて…!? そのまま今度は頭を撫でてくださって……!?


「ね~。うち達を身を挺してまで大切にしてくれるなんて~。本当、ミミックたらしなんだから~♡」


お、オネカさんも!? しかもさっきのリダさんと交代するように、私の頬から顎のラインをつうぅって…ひゃわぁああっ…!? そ、そこ首筋で……で……で……でも…!


「でも、落としませんん……!」

「おや! フフッ、やるね!」
「んふふ~堕とし返し失敗~♪」


今のでつい緩みかけた腕に、力を籠め直します…! あ、危ない所でした…! も、もう! お二方共!! 怪我しないよう守ってくださって有難うございます!!!


「――ね。話戻っちゃうんだけどさ…!」
「ん? どの話? あ、もしかして…!」
「もー。折角リダさんが話変えたのに?」
「けどさけどさ、やっぱ皆思うでしょ~」
「こんな見せつけられちゃったらね♪」
「わかる…! ビタハマりしてるの…!」


ふぇ…? リダさんオネカさんに花瓶と台を戻して貰ってから皆さんの元へと戻りますと、なんだかひそひそと盛り上がっています…? しかも私達のことみたいで、皆さんがなんだかチラチラと見て来て……な、なんかやってしまって……いえやってしまったんですけど……!


「ちゃうちゃうベル。そういう系じゃなくてさ~♪」
「さっきのリダさんオネカさんアイドルの話ー!」
「ふふ♪ 今のを見て、皆で感じたことがあるの」


つい身を小さくしかけていますと、ルキさんニュカさんシレラさんが。そういえばそのお話をさっきまでしていました。けれど、それが今のとどんな……。


と、お三方は皆さんと笑い合って。そしてまたも順番に、リダさんオネカさんへも――。


「もしお二人がアイドルになられるならぁ♪」

「ソロとかコンビでとかもアリだけどー?」

「ベルとユニット組んだら素敵かも、って!」


「ふぇっ……ええええええええっっっっ!!?!?!?」


「おおっと!」
「ぽよ~ん♪」


あっ…! び、ビックリし過ぎて腕に思いっきり力を入れてしまいました…! そのせいで箱が跳ねて、リダさんオネカさんがちょっとぽいんって、御免なさい…! で、ですけど!


「ほら今のとかも☆ 私ら完敗だわ~なんちて♪」
「デビューしてほしー! 絶対虜になる自信ある!」
「ちょっと二人共…! でも、異論なんてないわね♪」


いえいえいえいえいえ!!? ですからそんな、そんなことは! これがおしゃべりの延長線の他愛もない冗談話だってことは勿論わかってます! わかってますけど、そうだとしても!


「私なんかじゃお二方とは釣り合いませんし……! もしアイドルになられるなら、もっと良い御方が――」

「へえ? さっきあんなデュエット見せつけてきてよく言うわねぇ?」
「もしかして無意識かしら? ベルちゃんなら不思議じゃないけど♪」


えっ…!? リア様サラ様…!? そ、それはどういう……? 


「それぞれに合わせて声の調子大分変えてたでしょうが! リダに合うクール調、オネカに合うパッション調で、どんなズラシも平然とこなして! おかげで交替時もユニゾンもハモリも、違和感が欠片もないのにゾクゾクするったら♪」

「かといって盛り立て役に徹することなく、ベルちゃんらしいキュートさを常に、二人の誘いに乗って更に振りまいちゃって♡ だから膨らみのある心躍るハーモニーに仕上がっていたし、何より三人共、とっても楽しそうだったわ♪」


そ、それは……! お二人の素晴らしい歌声を120%活かすために、そうすべきかな、と……! かといって身を引き過ぎたら曲が台無しになりますから良い感じになるようにと、確かに心の何処かでは考えてはいましたけど……そ、そんな大それたものではなくて……!


結局楽しさに呑まれちゃって、しっかり出来てたかわかりませんし……! 結局は御二方に引っ張って頂いたから――。


「ハハッ! やっぱりそうだよね! あの時ボク達はリードして貰ってたんだ!」
「はへ~~! だからなんだか歌いやすかったんだ~! 流石はベルちゃん~☆」


って、リダさんオネカさんまで!? い、いえいえいえ!? わ、私じゃなくお二方が――へ…お二方が、微笑み合って……?


「――うん、やっぱり。ベルと一緒ならアイドルやるのも良いかもね♪」
「いっそネルっさんにスカウトして~って直談判しちゃう~? なんて~☆」

「ええええっ!?!!? そ、それは、その!」

「おや、ボク達とは嫌かい?」
「そんな~。うち達、寂しい~…」

「い、嫌なんかじゃないです! もし本当だったらとってもとっても嬉しいです! ですけど、ですから、私じゃお二方と釣り合わ――」

「ふむふむ、ならベルを釣り合わせれば良いってことかい?」
「んふふ~リダ名案~♪ ベルちゃんの凄いとこ言ってこ~♪」

「ひゅっっっ!?」

「じゃあボクからいこう! ベルはサラッと胸を打つことを言ってくれるんだ。その純粋な一撃にボクの照れ隠しが幾度返り討ちに遭ったことか!」
「うちの番~♪ ベルちゃんはシャイに見えて、実は心に芯がしっかりあって~♪ 怖いことがあってもへこたれなくて~♪」

「ちょっ、ちょっ、ちょっっ!?!? 待って、待ってください…!!!? お願いですから待って……!!」


慌ててぎゅうっと箱を抱きしめ直し、一旦お二方を止めます……! えとその、色々、言いたい、んですけど、あの、えっと、これは、それって、そうじゃなくて、あれ、この、多分、これって――。


「も、もしかして…し、仕返し…だったり、します!?」


「さあ?どうかな?」
「んっふっふ~☆」


わ、わ、悪い笑みですぅ!!? リダさんオネカさんの悪戯顔です!!! さっきまでの褒めちぎりの仕返しで当たってるみたいです!!!!!


「そうだ、皆にも聞いてみようか!」
「ベルちゃんを褒め殺しちゃお~♪」

「やるやるー! ベルちゃんは可愛いー! 良い子ー!」
「いよっ、褒め上手~♪ いつもの仕返し食らえ~♪」
「さっきの宣戦布告、キュンキュン来ちゃった!」
「あ、楽しそうに歌うで思い出した!さっきのレッスン!」
「ね! waRosやネルっさんとの歌、とっても綺麗だったよ!」
「失敗したのは別人って思うほどね♪ 聞き惚れちゃった」
「ノリノリになったら敵なしだよー! 自信もって―!!」
「そうやって照れてもじもじしてるのも超可愛いー♡♡♡」


ぁぅぁぅぁぅぁぁうぅ……ぁぁぁぅぁぅうぅ……! また私、まともに喋れなくなりますからぁ……止め…皆さん……止め……! ひゅぁぅぅ…きゅぅぅうぅん……――。










「――はい! あのシーンがポイントだとわかりました! ラブリーな中にチラッと見えるダークな感じが、胸を掻き乱されて虜にされる感じで……!」

「もーお、ベルちゃたら毎回お世辞上手いんだからぁー! でも超わかってくれてて、私――」

「お世辞なんかじゃないです! あの瞬間の、闇が渦巻くような、けれど燃えるような瞳がずっと私の目の奥に焼き付いていて、思い出すだけで全身が縛り上げられる感覚に陥って! もし奴隷になりなさいと命じられたら従っちゃうぐらいに好きが止まら――あ、あれ…!?」

「ベルちゃんストップストップ。また悶え死にさせちゃうよ~?」
「はいはい深呼吸♪ ベルちゃんリアコ勢に加入しとこうねー♪」
「駄目だよぉ! 1お返しすると10になって返ってくるよぉ!」
「う~ん勝てんわ~☆ まさに『さすベル流石ベル』って感じ~♪」



「そうだリダさんオネカさん、お願いがあるんですけど…!」
「ベルちゃんついでに、私達にもレッスンして欲しいでーす!」

「ボク達でよければ喜んで! 手取り足取り…いや箱取り、教えるよ☆」

「わーいっ! あ、私も箱を靴にしたら二人みたいに踊れるかなぁ?」

「んふふ~☆お揃いは嬉しいけど~、危ないからメッよ~? うち達は箱が靴なだけだから~」

「――閃いたかも…! 靴を、箱みたいな模様とか形にすれば!」
「おお~!! アリじゃん、ミミックモチーフのミミックダンス!」
「楽しそ~! 絶対流行るよ! リダさんオネカさんから学ぼ~!」



皆さんと一緒に、和気藹々と…! 帰り道を歩いて行きます…! へ……さっきの褒め殺しはどうなったか……? ひぅ……あんまり思い出させないでくださいぃ……! 


その……皆さんから滝のようにお褒めの言葉を授かって、授かりすぎてしまって…。それで逃げ出したくなるぐらい顔が熱くなって、壁の方にまたふらついてしまって……。今度は自販器に…コーヒーとかを自動で淹れて販売してくれる魔導器なあれにぶつかりかけてしまいまして……!


でも有難い事に、リダさんオネカさんがブロックしてくださいましたから…! あの時の私、それこそ出来立てコーヒーみたいな湯気出てたみたいで……。そのおかげか褒め殺しも終わりまして…悶え死にするかと思いましたぁ……。


その後は気づけば、皆さんが私達を囲む形になって、こうしてリダさんオネカさんを抱っこしたまま楽しくお喋りを。多分皆さん、私がまたフラフラしないように守ってくださってるんです。腕が疲れてないか気にかけてくださったり、後少しで寮だと応援してくださったり、とっても優しくて――。


「――おや。もう、か。名残惜しいけど…ベル、甘いひと時を有難う♪」
「んふふ~うちが寝かしつけられちゃいそうだった~♪ またお願い~♪」


へ? あっ…! リダさんオネカさんが、私の腕から飛び降りていってしまいました…! そして皆が見つめる中、一番前へと進み出まして。


「皆、一旦足を止めて貰って良いかな?」
「お口もチャックよ~。し~~っ……♪」


そんな合図を。もうこの先の角を曲がって真っ直ぐ行けば寮に着くのですけど……あ。


「「「「「そうだ…!」」」」」
「「「「「いつもの…!」」」」」


皆さんも理解されたみたいです…! 手を口に当て、忍び足に…! そして、こっそりこっそり…角から顔を出して……!


「いたいたぁ…!」
「ちっちゃく見える…!」
「記者の人達だ……!」
「今日も沢山~…!」


バレない内にすぐさま顔を引っ込めつつ、皆で苦笑いを。えと、この先のダンジョンは野外になってまして、更に進んだところにまるで貴族の館みたいな建物と庭園、門があるんですけど…それが私達の寮なんですけど……問題なのは、その門の手前でして。


はい、そうなんです。寮へと帰るアイドル達を狙って、沢山の記者さんが待機なされているんです。いえ、皆さん正当に許可をお取りになっているはずです。首から本物の許可証を下げてますし、取材許可エリアであるあの場所からはみ出していませんし。


あの場所で張り込まれるのはちょっとアレですけど…。他の場所で待機されてレッスンの邪魔をされちゃう方が嫌ですし。あの位置だったら常に寮を守ってくださっている沢山のミミックさんが見張ってくれてますし、安心安全なんです。


因みに記者さんを全て出禁にしちゃいますと、寮住まいじゃないアイドルの方々が帰宅なさる時や、私達が実家や街に行く時を集中されて揉みくちゃにされてしまったり、ダンジョンにこっそり忍び込む記者さんが大多数になってしまうらしく。


それにあの方々が取材をしてくださらないと、アイドルも…特に私達みたいな新人はPRも売り込みも出来なくなってしまいますから。ああしてレッスン終わりの時間とか限定であの場所に集まって頂き、取材タイムを設けているんです。


ですから、私達も出来る限り取材を受けて欲しいと広報担当のスタッフさん方からお願いされていまして。けれど、私みたいなみすぼらしいのよりも、今回は――。


「ライブ後インタビューに居た連中まで混じってるじゃない。頑張るわねぇ」
「うふふっ♪ その粘り強さに免じて、追加取材を受けてあげましょうか♪」


ふふっ! waRosのお二方がいるんです! リア様サラ様は調子を整え準備万端! と――。


「さ、アタシ達と一緒に取材受けたい子は?」
「今なら私達がリードしてあげるわよ♪」


私達へそう誘いを…! 私への取材なんて無意味ですからともかく、他の皆は――。


「私ら昨日受けましたから……」
「疲れてるからパスでぇ~……」
「週刊モンスターの人いたよね?」
「いたいた。しつこいよねあの人達」
「まあ記者の人皆しつこいけどさ!」
「特にこの時間はねぇ…がっついてるよね」
「この間なんてプライベートを根掘り葉掘り…」
「お腹の音まで録音されちゃったんだけど!」


ほぼ拒否ムードです…! あはは…この時間が今日最後の取材タイムなので、記者さん方は必死なんですよね。……けれど、それを捌けるようになれないとアイドルには――。


「そ。でもシレラ、ニュカ、ルキ。アンタ達は強制よ!」
「デビュー決定したんだもの。避けては通れないわ♪」

「「「はいっ!」」」

「良い返事じゃない! ま、気楽になさいな」
「私達がついているし、困ったら…ね☆」


サラ様はパチンとウインクをリダさんオネカさんへ。ふふふっ! 実はここでも、ミミックさんが活躍されるんです!


結局のところ、取材陣に囲まれて何時間もインタビューされてしまったら外での揉みくちゃと変わりません。それに寮へ帰るにはやっぱり記者さん達の前を通る必要がありますから、普通でしたらこうして取材を受ける人を分けたところで全員巻き込まれてしまうでしょう。


でも、その問題を両方解決できる方法があるんです! と言いますか、その方法ありきのあの取材許可エリアらしくて。今の私達のように人数が多くても、リダさんオネカさんみたいな熟練のミミックさんにかかれば――!


「ならボクがリア達につこう! オネカ、そっちは託したよ」
「勿論よ~☆ は~い皆、うちの箱の中にいらっしゃ~い♪」


早速準備が始まりました! リダさんはリアさんのポケットの中へスポッと! そしてオネカさんは皆をご自身の箱の中にスポッスポッと招き入れて! 私もオネカさんの方へ、えいっ! 


「じゃあ行くわよ、全員――」
「ついてきなさいな☆」

「「「「「はーい♪」」」」」

「サーラーぁ!?」







「……ん? 今アイドルっぽい声が…!?」
「お、今回は肩透かしじゃないと良いけど」
「今日は何か収穫して帰りたいっすね」
「お前らwaRosライブで成果あったんだろ?」
「そっちこそ他の会場で収穫あったって――」
「はい止め。またタイムリミット前に追い出されるわよ?」


――……そんな記者さん方の会話が微かながら聞こえてきます。道を挟んで反対側では、また別の記者さん方が。


「しっかし、こうして寮前に張らせて貰えるのは有難いが…」
「わりかし逃げられますよねぇ……。気づいたら門の奥だ」
「汗だく姿一枚だけでも撮らせて貰えりゃあ文句なしなのに…!」
「だから逃げられるんじゃ? まあ…それあれば売り上げも…」
「寮出来るって聞いた時は入れ食いな囲み取材を期待してたのにぃ」
「ま、庭園でのキャッキャウフフを撮らせて貰えるからトントンか」


あはは……。えと、本当立派な庭園ですから皆でそこで遊んだり練習したりするんですが、時折その光景の撮影も受け付けている時がありまして。あ、でも大丈夫です。その時もミミックさんが見張ってくださってますから。その証拠に記者の皆さん、ほら――。


「やっぱりミミックがなぁ。なんで急に棲みだしたんだか」
「おっと、声潜めたほうが。多分見張られてますよ?」
「ちょっと粘ったり忍び込もうとするとすぐ現れるからねぇ」
「なんか打つ手ないんか、『週刊モンスター』の。専門家やろ」
「対策があったらもうやってますよ。それに、ここのも……」
「普通のよりも腕が良すぎる、てか。見たぜ、その特集記事」
「『各地で増殖する影のダンジョン支配者!?』ってヤツね」
「えぇ。まるでここのような腕利きのミミックが、という話で」


あんな感じでミミックを警戒されているんです。あれでも、今は別のお話に逸れて?


「となると…ここのトップのネルっさん辺りが関係してる?」
「その線で探ってはいますが……魔界大公爵グリモワルスですし、何より…」
「出来る限り彼女に嫌われたくないってね。わかるよ」
「じゃあアイドル相手にぐいぐい行くの止めたら?」
「ノルマ厳しいんですよ……。この間もイエティ探しに魔界奥地の吹雪く雪山に送り込まれた同僚いますし……」
「「「「「うわぁ……」」」」」


なんだか記者さん方も大変そうです……。やっぱり私達がもう少し記者さんに歩み寄って差し上げたほうが……。


「んふふ~いいのよベルちゃん~♪ アイドルも秘密いっぱいのミステリアスで、あの子のこともっと知りた~いって思わせるぐらいで~☆ でしょ~?」


と、オネカさんの声が。確かに……私が好きになったアイドルの方々も皆さんそういうところありますし……あれ、ということは…?


「つまり……アイドルも、UMA…?」
「んふっ…!」
「ベルちゃんちょっとぉ…!」
「笑わせないでよぉ……!」


はぅ…! 皆から怒られてしまいました…ふふっ…! あ、そろそろ気づかれる距離です…! 静かに静かに……――。


「来たぞ! waRosだ!」
「お!? 更に三人一緒だぞ!」
「あれは…確か、新人の子ね」
「シレラ、ニュカ、ルキ、だったか?」
「すみませーん! 取材良いですか!?」


気づかれました! 予定通り真っ直ぐ歩いてきたリア様サラ様、そしてシレラさんニュカさんルキさんが! すぐさま皆さん、あっという間に囲まれてしまいます。


「あら。また出待ち? 懲りないわね!」
「帰り待ちじゃないかしら? うふふっ♡」
「揚げ足とるなっての! ま、良いわ!」


流石リア様サラ様です…! まるで近づいて初めて取材陣に気づいたように話始めました…! そして、流れるように記者さん方の質問に答えていきます。しかも時には――。


「――アンタ達はライブ後来てたでしょ、一旦お預け!」
「うふふっ♪ しっかり答えてあげるから待ってて頂戴な♪」

「――アンタねぇ…。アタシらしく返すわよ? 蹴り飛ばされたいの!?」
「どうどうリア♪ けれど今のはノンデリ極まれりね。次はないわよ?」

「――は、はぁ!? ちょっ、なんでそれを……アンタも蹴られ――」
「それは本当よ♡ ギャップ萌えでしょう? しかも、部屋ではね…♡」
「あ゛ー!あ゛ー! このっ、サラぁっ!! 今回こそは許すかぁッ!」


と、記者さんを捌いたり、窘めたり、美味しい反応したり! そして当然のように――。


「えぇそうよ。大事な後輩よ! ほら、もっかい自己紹介!」
「三人共可愛いでしょう♡ かなり仕上がってきているもの♪」

「改めまして、シレラと申します!」
「ニュカでーすっ! いえいっ☆」
「ルキですぅ♪ 宜しくおねしゃーす♪」


シレラさん達をメインに立たせてくださって! そしてシレラさん達もそれぞれ、清楚なポーズ、爛漫なポーズ、軽妙なポーズをとって撮影して貰いやすく! わ、しかもその後に――!


「そしてーっ!! ぎゅー!」
「三人揃って~? はいシレラ?」
「えっ!? え、えと…と、とらいすたー…な、仲良し三人組?」
「でーす! 皆さん、宜しくお願いしま――」
「ちょいちょいちょいニュカ、タンマタンマ!? マジでそれになるて!」
「もう、二人共! 大体、三人でデビューできるかも決まってないでしょう」
「あ、そっか! でも仲良し三人組なのは当たってるもんね~♪」
「そうそう♪ こうしてハグし合うし、ここをプニッても――あいたッ☆」


三人で集まって、楽しそうにわちゃわちゃを! 見事です…お三方共…! それぞれの性格を素でアピールしながら、三人デビューの可能性を匂わせるだけで済ませて…! そのまま記者さん方の質問へ丁寧に答えていきつつ――。


「もうちょいセクシーあげたら~?」
「えぇ…恥ずかしいのだけど…!」
「あ、じゃあ私がやるー!」
「「いやいやいや!? ニュカはダメ!!」」
「えーなんでー? 私もセクシーポーズ研究してるよー! ほら、触手さんに色々してもらって――」
「ちょちょちょちょおっ!? なんか語弊あるって!!」
「ウィッグにして合うポーズ探してるだけでしょう!?」


ふふっ! こちらも美味しいトークも忘れずに! ありのままで、こんなに記者さん方を笑顔にさせるなんて。やっぱりお三方はアイドルの才があります! しかも――。


「え、さっきのリアさんのヒミツですか? えぇ~…!」
「どうしよー…! こっそり言っちゃう~…!?」
「私らから聞いたって内緒ですからねぇ~? ベッドでぇ…」

「させるかっての! アンタ達…覚悟は出来てんでしょうねぇ?」

「「「マズっ…!」」」

「そんな暴露りたいなら、アンタ達のヒミツ話したげるわよ!」

「ええっ!? ま、待ってください!?」
「まだ何も喋ってないよぉ!?」
「じゃあリサさんのなら――ヒッ…!?」
「あらあらあらあら、うふふふふ☆」

「ナイスサラ! そんまま抑えてなさい! シレラはね――」


ふふふふふっ! リア様サラ様と微笑ましい掛け合いまで! ご安心を、そこはwaRosのお二方ですもの。肝心の暴露内容はちょっと恥ずかしいぐらいのもの済ませつつも、シレラさん達の赤面照れ顔を引き出してみせました! 


はぁぁ…! アイドルとして初々しい輝きと共に一歩を踏み出したシレラさん達と、そのお三方を危険な質問から守りつつ負けじと煌めくwaRos…! このまま取材終了まで見ていたい気持ちではありますが……!


「そろそろ切り上げかしら~…☆ それじゃあ、門の奥で待ちましょ~…♪」

「「「「「は~いっ…!」」」」」


オネカさんがそう仰るということは、もうリア様サラ様もシレラさん達もウンザリしていらっしゃるのでしょう。では次は私達が行動する番です。まずは、早速移動して頂いて……へ?


私達が、何処にいるかって? ふふふ…実は、リア様達の傍にいるんです! 正しくは、取材に夢中な記者さん方が誰一人として気にしていない、足元!


取材バッグや折り畳み椅子、カメラケースが雑多に置かれているその横に、何食わぬ顔でオネカさんのはずです! そうです、私達はオネカさんの中に入って、こっそり隠れているんです!!


これが取材回避のミミック技、今回みたいにインタビューを受ける子がいる場合の対処法なんです! 記者さん方が惹き付けられている間、オネカさんみたいな凄腕のミミックさんが皆を仕舞ってこっそりと! 私達の取材対応の勉強のため、こうしてひっそりと!


後は、やはり記者さん方に気づかれないままに庭園の垣根とかから寮の敷地内へそっと入りまして。そして皆でしーっと、ちょっと心臓バクバク鳴らしながら箱から出て、抜き足差し足忍び足でこっそり門の内側まで来まして――!


「どれどれ~? あ~あ~…すぐ合図出ちゃいそう~」


「――こっちに目線を…ちょっと横入り!?」
「こっちが先だったろ! 引っ込みやがれ!」
「もう少し服捲った一枚だけ、撮らせて…!」
「ぶっちゃけ、デビュー日決まってるでしょ?」
「嫌いな先輩どんぐらいいます? こっそり…!」
「アイドル卒業はいつ頃のご予定で?」
「アンチについて是非、ズバッと一言を!」
「先程の握手会にもやはり迷惑客が――?」
「今度、個人的にインタビューを…!」


あぁ……。オネカさんと一緒に、聞き耳を立てていた私達も肩を竦めます。記者さん方、聞きたいことをほぼ聞き終えたからか、競争になってスキャンダルやゴシップを狙いだしたのか、過激な言動や厄介な質問が増えてきてます…。


当然、シレラさんニュカさんルキさんは答えるに答えられずに困惑状態。その盾となってくださっているリア様サラ様も呆れ果てて――あ!


「合図確認~☆」
「手伝います!」
「「「「「私達も!」」」」」

リア様がこちらへさっと目配せしたのを見止め、オネカさんは門扉へと! 私達も続いて手をついて――!


「「「「「せ~のっ、えいっ☆」」」」」


思いっきり、両方開き切るまで門扉を動かします! 勿論、そんなことをしたらキィイイイと音が鳴ってしまいますが……それが目的なんです!


「!? この音、寮門の!?」
「開いて、いや開けられて!」
「わっ! 新人の子達だ!」
「いつのまに! カメラを…あっ!」

一斉に、記者さん方の目が私達へ集まります! ということはつまり、リア様サラ様シレラさん達は完全フリーになったということ! ふふ、その隙を逃さないのは――!


「しまっ…! waRos達から目を――」
!? 忽然と!!?」
「やられたっ! 多分これ、また!」
「「「「「ミミックか!?」」」」」


「フフッ大正解! なんてね♪」


おお~っ! まさしく目にも止まらぬ技でした! 丁度記者さん方から見えない門の裏にやってきたのは、宝箱! その中からウインクと共に、リア様サラ様シレラさん達と共に飛び出してきたのは、はい、リダさんです!


あれが取材の拘束から逃げるミミック技、厄介なインタビューに辟易している方を助ける対処法です! 一瞬の隙を突き、取材を受けている子を箱の中へ回収! そして気づかれない内に寮の敷地内へと高速移動してきたんです! 


ここまでくれば大丈夫です。この寮門から奥は記者さん方の記事曰く、専用の取材許可をとらなければ入れない『不可侵の聖域』。ですので――!


「ということで、取材強制終了よ!」
「また明日にでもいらっしゃいな♪」

「「「「「お疲れ様で~すっ☆」」」」」


全員で横並びになり、軽くポーズをとって最後にサービスを! 記者さん方の悔しそうな表情と名残惜しそうな沢山のフラッシュを遮るように、リダさんオネカさんによって門はゆっくりガシャンと閉まり――これにて、幕引きです!


「「「「「ふうっ…!!」」」」」
「んふふ~皆お疲れ様~♪ 頑張ったね~良い子良い子~♪」
「悪い記者はいつも通り、ボク達から上に報告しとくよ!」


記者さん達に見えない聞こえない垣根の奥まで下がり、ようやく皆で一息。オネカさんに順番に頭を撫でて貰い、リダさんのエスコートでわいわいと寮の中へ。


「は~い三人共~♪ ケーキお返しよ~♪」
「冷蔵庫に入れるのを忘れないようにね☆」

「「「有難うございまーす!」」」


シレラさんニュカさんルキさんも、ネルサ様からの贈り物を手に、弾む心が抑えきれないと言うように楽しそうに――あっ!? ニュカさんケーキ振り回しかけ…ほっ、お二方が慌てて止めてくださいました…! 良かった……ふにゃっ…!?


「フフッ! ベル、良い子良い子☆」
「今日はよくやり通したね~♡」


リダさんオネカさんが揃って撫でてくださって……! こちらこそ、お世話になりっぱなしで…わわひゃぁ…!? も、もっと撫でるの強くなってぇ…!?


「さ、キミ達も良い子良い子だ!」
「逃げちゃダメよ~んふふ~☆」

「だからアタシは良いって……ああもう、サラ…」
「良いじゃないの♪ 身体は正直な癖に♪」


私を撫で終えた後は、最後にリア様サラ様も。サラ様に捕まりながら、リア様は不本意そうに撫で撫でを受け入れて――あ、私にせめてもっと離れろと手で…は、はい! ……ん?


「――さっきの、割って入るタイミングこっそり教えてくれてありがと…!」
「誘導と援護もね。ギクシャクベルちゃん達を防げて本当良かった…♪」

「フフッ、あれはキミ達のカリスマあってこそだよ…☆」
「うち達は二人に賛同しただけよ~…♪」


聞き耳を立てちゃいけないんですが……そんなリア様方の会話が……!? それって帰ってくる途中の、私とシレラさん達の…!?


ま、まさか…!? あの時waRosのお二方が絶妙なタイミングで挟まってくださったのも、音を立てて私達を引き付けたのも、リダさんオネカさんが私達に気づかれないように、隙を狙い澄ます力を活かして…!? 


「それじゃ、ボク達はこれで失礼するよ! また会おう!」
「ゆっくり身体休めてね~。でもストレッチは忘れずに~♪」


あっ! 息を呑んでいる間にお二方が! 真相を聞くことは出来ませんけど……せめて、感謝を出来る限り籠めて――!


「沢山沢山、有難うございました! 今日して頂いたことも、一生忘れません!」


頭を下げる私へ笑顔で大きく手を振ってくださりつつ、お二方は去っていきます。ふふっ、もう垣根に消えて見えなくなってしまいました。と、リア様サラ様もまた微笑みつつ、こちらへ――!


「さてベル! アンタ、アタシらのも忘れてないわよね?」
「うふふっ♪ ライブ感想、夕食時に聞かせて貰えるかしら♡」

「は、はい! 私なんかので良ければ!」


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