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閑話⑫
アストの奇妙な一日:グリモワルス女子会⑬
しおりを挟む「「「はっ……!?!?」」」
「えー!? ししょー!? なんでぇ!?!?」
困惑に困惑を重ねるネルサメマリアルーファエルデ…! そしてベーゼだけはそんなことを! やっぱり! ベーゼが教えを乞うほどの、ルーファエルデが認めるほどの幻惑幻影魔法魅了魔法を扱う師とは…オルエさんのことだった!
「はぁあん♡ 流石グリモワルスの娘達ね♡ みぃんな超高得点♡ とぉっても美味しそう♡ うふふふふ♡」
……ただ、私もそれ以上は頭が回らない……。矢継ぎ早過ぎるのだ。だって、紅茶やお茶菓子といったティーセットが並ぶ悪魔星の円卓の中央に宝箱が乗っかってきていて、その中からみちっと社長とオルエさんが身体を出していて、しかも周りにはまだルーファエルデが召喚した騎士や刃が予断なく煌めいていて……。
なのにオルエさんは身を官能的によじりながらぺろりと舌なめずりをして、社長はオルエさんのほぼ丸出しなお尻を頬に押し付けられて仏頂面を浮かべているなんて……どこからどう切り出してツッコむべきなの……?
「ほらオルエ。早くチャーム解除しなさいよ」
グリモワルス女子会メンバーが全員頭にハテナマークを浮かべている中、社長は仏頂面のままにオルエさんのもう一方のお尻を触手でぺちん。オルエさんはきゃぅん♡と可愛い…というか楽しそうな声を上げた……。
「あら♡ そういえばまだ完全に解け切ってなかったわ♡ ごめんなさ~い♡ ――ちゅっ♡」
そして口元に指パッチンを近づけ、唇を指でぷるんっと震わせるように、キス音と指弾き音を混ぜ合わせた音を。すると――。
「……わ!? なんか急に頭が回りだしたんだけど!?」
「バエル様のインテリアではなかったのね……」
「私としたことが……。こうも簡単に騙されてしまうなんて……」
「へへ~! ししょー凄いでしょ~! ……でもなんでここに?」
皆、一斉に正気を取り戻したらしい。現状を理解し、それぞれ驚きの表情を浮かべている。その様子を笑顔で見ていたオルエさんはベーゼにウインクを向けた後――。
「あ♡と♡ このギンギンでてらてら輝く危ないモノも♡ びゅうっ♡と鎮めちゃいましょう♡ ふう~♡」
今度は口を指で作った円で囲み、艶めいた息を飛ばして…? 宝箱の中で器用に周り、ルーファエルデの召喚騎士と召喚刃に回しかけるように……なんだか桃色の吐息と言うべきな……――って!?
―――ドサッ ドサササササッッ
嘘……! オルエさんの息が吹きかかった召喚騎士が、軒並み骨抜きになったかのように床に倒れていって!? 宙に浮かんでいた召喚刃も、ふにゃふにゃに萎びて落下していってる!!? どういう魔法!?
「なっ……!? そんなっ!?」
当然、ルーファエルデも驚愕の表情を。いくら警戒を解き気味だったとはいえ、こうも容易く戦闘態勢の兵達が無力化されるなんて予想外にもほどがあろう…! なんとか操ろうと集中する彼女だが、騎士も刃もぴくんとも動かず……。
「くっ……! これほどの魅了魔法……! 何者ですの!?」
結局召喚解除するしかなく、全消滅。それでもあれが魅了魔法だとは見抜いたのはさするふぁだと思う……。そうだったんだあれ……。と、そんなルーファエルデへ、オルエさんはにっこり。
「私はオルエ。サキュバスよ♡ 実はベーゼちゃんの敏感な身体に、じぃっくりと魔法を教え込んでるの♡」
「言い方なんとかしなさいな。才ある彼女の師匠役をしているだけでしょう」
彼女の自己紹介に社長がツッコミを。ベーゼもニッコニコでうんうん頷いてるから間違いはなさそう。いやまあそれは良いのだけど、だからなんでこの場に……。
「……何故この場に侵入なされたのかはわかりませんが…せめて卓から降り、もう少々服を纏ってくださいませんこと? サキュバスだとしてもその服装は激し過ぎますわ」
せめてベーゼ程度に露出を抑えてくださいませ。と促すルーファエルデ。確かに、まずはそれ。まあベーゼも中々に露出が多いのだけど……オルエさんのもう紐だか糸だか全裸なんだかわかんない恰好に比べれば全然だし。
「はぁい♡ 女子会に折角つぷっとお邪魔したんだもの、まともな格好をしなきゃダメよねぇ♡」
まともじゃない自覚はあったんだ……。――!? オルエさんをピンクの靄が包んで……薄霧に溶けるようにして消えた!?
「と♡こ♡ろ♡で♡ ルーファエルデちゃん♡ 噂は聞いているわ♡ なんでも武者修行と称して各地をマワっているとか♡ よかったら今、私がお相手しちゃおうかしら♡」
「こらオルエ! 止めなさい! せめて後になさい!」
すぐに別な所からオルエさんの声が…! そして私の膝上に移動してきた社長の目線を追うことで把握できた! オルエさん、ルーファエルデの背後に回ってる! わっ!? なにあの恰好!?
オルエさんなのに……変態チックな服じゃない!? それどころか、露出を抑えた服を着ているメマリアよりも露出が無い! どこに出ても恥ずかしくないような美しきドレスと、かなりつば広のストローハットを纏っている! まるで高貴なる淑女のような姿をしてる!!?
……ただ、だというのにどこか匂い立つセクシュアルさとインモラルさを放っているのは気のせいだろうか……? 全く露出がないのに、何故……?
肩や胸や腰とかにドレスがぴったり張り付き、ボディラインがまざまざと浮き出るほどに強調されているから……? それとオルエさんのどこか艶やかで蠱惑的な立ち方や脚運びのせい……? サキュバスクイーン、恐るべし……!
「ちょっとだけ、さきっちょだけよミミン♡ ずぅっと待ってて、なんだかお預けされちゃった気分なんだから♡」
「こうなるから連れて来たくなかったのにぃ……。ルーファエルデちゃん、無視して構わないからね?」
私を含めた皆がそんなオルエさんに見惚れてしまっている中、社長だけは溜息交じりに顔を伏せ触手を準備。ルーファエルデが戦闘拒否した瞬間にオルエさんを捕えるつもりらしい。けど……――。
「いえミミン様とやら。オルエ様とやらも貴方様と同じほどの戦闘力! 私の魔眼ですら超える猛者との試合なんて、願ってもない申し出ですわ!」
まあルーファエルデならそう言うよね……! となると無理に止めることはできず、社長は諦めたかのように触手をひらひら。それを許可と捉え、ルーファエルデはくるりとオルエさんへ向き直って――。
「では早速修練場へと――」
「いいえ♡ ここでヤっちゃいましょう♡ 闘技場も要らないわ♡ ふぅっ♡」
「ひふんっ!?」
わわっ……! いつの間にかオルエさん、ルーファエルデの真横に移動して耳に息を…! 反射的にルーファエルデは剣を――!
「ハッ!」
見事な一閃! しかしオルエさんには当たらない。またも桃霧に溶け、少し離れたところに登場したのだ。
「もう……! オルエ様、御人が悪いですわ! この場を破壊するわけには参りませんの!」
「あら♡ その熱ぅいリビドー♡ぜぇんぶ受け止めてあげるわ♡ 私の胸に獣の如くいらっしゃあい♡」
息を吹きかけられた耳をくすぐったそうに気にするルーファエルデへ、オルエさんは自身の胸をたゆんたゆん揺らして煽る……! エキシビジョンマッチの開幕……! ……で良いのだろうか…?
「ハァアッ! フッ! そこですわッ!!」
闘技場を作り出さなくとも、この部屋はまあまあ広い。だからああしてルーファエルデが剣を振り回せる余裕はある。当の彼女もそんなに気負わず、手加減無用の空を裂く剣戟を繰り出しているのだが……。
「きゃあん♡ 良いテクニックぅ♡ ちょっと擦れちゃったかも♡ うふふっ♡」
オルエさんはその全てを容易く回避……! ああは言っているが、わざとドレスや胸やお尻や羽や尾を揺らし、ギリギリまで躱さず掠らせにいっているのだもの……! スリルを求めているのか煽っているのか……。
「良いわねぇ♡ クーコちゃんよりも断然逞しくてスゴイとこ奥まで突いてきて、とぉっても気持ちいいわぁ♡ 最も、直接交わった時から大分変わっているらしいけど♡ それでもまだルーファエルデちゃんの方がイイかも♡」
「剣技の話よ。勇者一行の騎士、クーコと比べてのね」
ツッコミがてら場の皆に注釈を入れる社長。そんな彼女用に紅茶とお菓子を取り分けてあげて、と。
「危なくなったらオルエさんを止めてくださいね」
「勿論よ。でも多分すぐ終わるわ。 ――あ、この紅茶美味し!」
そういうならもう少し観戦を。しかし……あれだけ私達を苦しめたルーファエルデが、オルエさんの前ではまるで少女の如き扱い。あの一刀、私達じゃ回避も防御も難しい代物なのに。
こう言っちゃ悪いけど……なんだか遊戯会を見ているような気分…。それだけルーファエルデはオルエさんに翻弄されているのだ。あのルーファエルデが。先程まで無双を果たしていた彼女が。完全にあやされてしまっている。確かにこれならすぐに終わってしまいそう……――。
「くっ……! そちらからも攻めてきてくださいまし!」
「あら良いのぉ? うふ♡ 私の攻め、どんな娘も『もう許して』って叫ぶぐらいよがっちゃうわよぉ♡」
――と、逃げ回るオルエさんに痺れを切らしたのか、ルーファエルデがそんなことを。対するオルエさんはペロリと唇と指を濡らして……なんだかダメな予感が……!
「やり過ぎたら止めるわよ」
「は~いミミン♡ じゃ♡あ~♡ イッちゃいましょうか~♡」
攻めに転じたオルエさん! まるで闘いの最中とは思えない、しかし彼女らしい妖艶なステップでルーファエルデへと近づき――!
「いただきま~す♡♡♡」
「――ハアァアッッ!!」
「きゃあっっ♡」
ルーファエルデの剣が文字通り光輝き、魔力の奔流を宿した渾身の一刀がオルエさんを両断!!? ――ううん、また霧に溶けて消えた! また別のとこから出現するはず――……
「読めておりますわ! ハッ!」
なっ……! 瞬間的にルーファエルデも消えて、少し離れたところに!? 剣の残した軌跡が鮮やかに映るほどの高速移動! そしてそれと同時にオルエさんもそこへ現れ――!
「もう見切りましてよ! そこッ!」
「あら……♡」
ルーファエルデの光湛える剣刃が、彼女の正中線をなぞるように――っ!!
―――ぽよぉっんっ♡
……ん? へ? なに今の音……? ザンッッとかズバッッとかならわかるけど……ぽ、ぽよんっ……?
「なっ……!?」
「うふふふ♡ どうかしらぁ♡ ミミン直伝、真剣白乳取り~♡」
わっ…!? ルーファエルデの輝く剣が……! オルエさんのドレスの胸元に…というより、オルエさんの胸に挟まれて止まってる!? 城の壁すらプリンの如く柔らかいものに成り果てそうな一刀が、オルエさんのぷりんっとした胸で止められてる!!?
「私がその技を教えたって吹聴するの止めてくれないかしら……?」
「違うんですか?」
「できると思う? 私に? 私が教えたのは箱の蓋で挟んで剣を止める技よ!」
憤慨気味に答える社長。まあ、確かに社長の幼女体型ではあれはどう足掻いても無……ゴホン。ともかく、あんなことができるなんて……! しかも……!
「くっ……!? ぬ、抜けませんわ!? 一体どのような力でして!?」
「やん♡ そんなに擦っちゃだぁめ♡ もっと丁寧に扱わないと♡ あん♡」
剣が胸の間から外れなくなってる! ルーファエルデは力ずくで引き抜こうとしているが、全く抜ける気配がない! オルエさんは何一つ動じている様子が無いし、胸に手すら添えられていないのに!
……というか、なんだかあれ…………。光に包まれている剣が、ルーファエルデの押し引きに合わせ多少上下に動き、それと一緒にオルエさんの胸もたぱんたぽん多少揺れているこの光景は……ちょっと…………。
「なんだかひわ~い!」
「そ……そだね……★」
「………………。」
きゃっきゃと笑うベーゼと、顔を赤くしだすネルサ、視線を外し扇子で自らを扇ぐメマリア……。いや、わかってる。ただ剣が胸に挟まれているだけなのだけど、なんだか、その……。多分、オルエさんのフェロモンというか色気というかにあてられちゃって……!
「ああん♡ もうちょっとで抜けちゃうかも♡ 頑張れ♡ 頑張れ♡」
さらに胸をむにゅうっと剣に押しつけ、応援…?をするオルエさん。ルーファエルデもそれに合わせ力を籠め――……
「隙ありですわッ!」
「きゃんっ♡」
えっ!? ルーファエルデ、力を籠めたと同時に魔法剣を生成し、横一線に振り抜いた!!? オルエさんは剣を離し、またも霧散して回避を!
「ふふふ♡ やるじゃなあい♡ ちょっと遅かったら私がヤられちゃってたわ♡」
「この不意の一撃すらも難なく回避なさるなんて……! もはや頓着している場合ではございませんわね……!」
真剣と魔法剣の二本を構えながら、一度深呼吸をするルーファエルデ。そして、私達へ声をかけた。
「皆様方! どうかいつでも防御の出来る態勢をお取りくださいまし! そしてアスト…お手数ですが、私とオルエ様の周りに出来る限りのバリアを!」
「…! えぇ!」
彼女の指示通り、皆は警戒を強め、私はバリアを展開……! ルーファエルデ、やる気だ……! この部屋の破壊を恐れず、全身全霊を持ってオルエさんに立ち向かう気だ!
「もしバリアが破れても私が皆を護るから安心して頂戴な! ――ま、そうはならないだろうけど」
社長ももしもに備えてそう宣言を。……でもなんだか楽観的。まるでオルエさんが勝つことを信じて疑わないかのような。
なら、ルーファエルデの力を見て頂こう! 私達が束になってもかなわない彼女の力を! 軍総帥バエル家令嬢たる彼女の力を!! 『最強トリオ』の一角を脅かしてみせて、ルーファエルデ!!!
「はぁああああアアアアッ………!!!」
剣を下に向け交差させ、全身に力を漲らせてゆくルーファエルデ……! 彼女の纏うオーラは揺れ、空間はうねりを……!! 剣の輝きは増し、全てを払うかの如く……!!!
「では、参ります! その胸、お借りいたしますわ!」
「良いわよぉ♡」
そして再度剣先をオルエさんへ向け……! 始まる――!
「いざ! ハア――」
―――むにゅん♡
「むぐっ!!?」
「胸を貸してあ♡げ♡る♡」
……へっ!? ちょっ……!? ルーファエルデが動き始めた刹那、オルエさんが一瞬にして剣の構えをすり抜け彼女に肉薄! ぎゅっと抱き留め、ルーファエルデの顔をむにゅっと胸の中に沈めこんだ!!?
「むー! むー!? …ぷはっ!? そ、そう言う意味ではございませんわ!?」
「あら残念♡ そういうイミの方が好みなのだけど♡ で♡も♡ 身体はどうかしら♡」
「――!? か……身体が……動きませんわ!!?」
驚愕の表情を浮かべるルーファエルデ……! そんな彼女を再度胸に埋めよしよしと撫でさするオルエさんは、サキュバスの尾をしゅるりと蠢かせ、その穴あきハートの尾先で剣先をキャッチ。そのまま自身の口元にまで器用に持ってきて……!
「ちゅっ♡」
剣にキスを……! ――わっ! 剣がさっきの召喚刃のように萎びてふにゃふにゃに!? 魔法剣の方にも同じく!!
「下処理かんりょーう♡ さぁて♡ どう攻め立ててあげようかしら♡」
「ひゃんっ……?!」
ルーファエルデの動かなくなった手から萎びた剣を回収し、つつぅ、と彼女の背を指でなぞるオルエさん……! ルーファエルデは身悶えをしてしまって――……
「……くっ! ここまで身体を縛る魅了魔法……! そして私の剣にかけた幻惑魔法……! オルエ様…貴方様は誉め言葉すら無粋なほどの至上のサキュバスですわ!」
「あら♡ 魔法の種類を見抜けるなんて流石♡ それにそこまで褒められるなんて…ビクンビクン来ちゃ――」
「――ですが! ハッ!」
「いやんっ♡ まあ♡ すごいテク……♡」
「この私を……ルーファエルデ・グリモワルス・バエルを見くびらないでくださいませッ!!」
おおっ! ルーファエルデがオルエさんを弾き飛ばし、拘束から抜け出した!! そして僅かな間に呼吸を整え剣を生成し直し――!
「今度こそッ! ――ッ!」
消えた! ルーファエルデが消えた! さっきの高速移動……ううん、これはその前に私達を薙ぎ払った、『風林虎山』の改良版!! 姿を消し、攪乱し、虚を突く必殺の―――!
「はぁい♡ つーかまーえた♡♡」
「むひゅっ!?」
―――えぇええええええええええっっ!!?
嘘……! 今度はさっきの逆! 消えたルーファエルデをオルエさんが捕えた! そしてまた胸にぎゅむっと!!
「こ……これすら見切りますの……!?」
「うふふ♡ ミミンで超早イのは慣れちゃっているの♡ ごめんなさいね♡」
「なんかちょっと意味合い違くない!? 字が違くないかしら!? 私の気のせい!? というかそうだとしても違うでしょ!!?」
社長の怒号を余所に、オルエさんはルーファエルデをやっぱりヘンな手つきでなでなで。そしてまた剣と、今度は手甲までもを回収して――。
「また逃げられないように、じっくりゆぅっくり、這いまわってそのカ♡ラ♡ダ♡に教え込みましょう♡ 抵抗できるかしら♡」
「なにを……!? ひんっ!?」
わわ……!? オルエさんがくるっとルーファエルデの背に回り込み、密着……! いやそんな一言じゃ済まない、あれ……! 身をこすりつけ擦り寄らせるように…抱擁し包み込むように……う、ううん……もっとなんというか……!
美しきドレスを…もとい、その奥に秘めやかに忍ぶ柔肌を、その全てを余すことなく相手と重ね合わせて……! も、もっと言えば……重ね溶け込ませる――、相手と自らの垣根を溶かし交あわせているような……!!
「良いのかしらぁ♡ このままだと、堕としちゃうわよぉ♡」
「お…お待ちに……あ…あんっ…くぅふぁっ……!」
脚を、細木に纏わりつき精気を吸い尽くそうと息づく蔦の如くルーファエルデの足に絡みつかせ……!
手を、草食獣の柔らかき肉をぐちゅぐちゅになるまで咀嚼する肉食獣の如くルーファエルデの手に絡みつかせ……!!
顔を、まるで逃れ得ぬ生物本能を代弁し淫欲への堕落を誘うかの如くルーファエルデのうなじへ迫らせ甘い吐息を絡みつかせ……!!!
肌温や脈動すら、まさしく文字通り骨の髄まで這いずり楽しみ味わっているかのよう……! しょ、正直、直視をしているとこっちまで火照ってきて……!
「くっ……あっ……ふぅっうぅっ……! え、詠唱が……何も……! 思考も……出来な……! あっ……んあっ…!」
「ふふふ♡ どれだけ強い子でも、行動する前に手籠めにしちゃえばこの通り♡ ねぇ~♡」
「ひぁぁっ!? お、お止めに……はぁ…んっ……!」
オルエさんの細指がルーファエルデの指先から腕、肩、首、顔の輪郭を舐め撫でるかのようにつつぅ…となぞって……! 最後は唇にかかり、だらしなく開き始めた彼女の口の中に指先をちゅぷりと……!!
「ルーファエルデちゃん♡ さっきの名乗り、格好良かったわぁ♡ で♡も♡ 私、そんな娘が蕩けてゆく姿のほうが大好物なの♡ だからここからは……うふふふふ♡♡♡」
「ひゃあ……っ……! な、なにをなさる気ですの……ぉっ……! か、身体が……勝手にうごかされてぇ……!?」
そのまま二人羽織のように、オルエさんがルーファエルデの身体を押し操り……円卓の方に!? でもバリアが……!
「え~い♡」
「きゃうっ……!?」
「このまま皆に見てもらいながらぁ…♡ 貴女の清く濃厚な色香をいぃっぱい♡さらけ出しちゃいましょう♡」
わわわ……!! 私が張ったバリアに、ルーファエルデの胸がむにゅっと押し付けられて……! 手もお腹もガラスに貼り付けになったかのように!
「お……! お止めくださいましオルエ様ぁ…! このような恥辱は…………!」
「うふふぅ♡ そんなに抵抗しないで♡ 貴女の心の奥底の濡れ、私に魅せて♡ ほら♡くりくりくり~♡」
「ふぁんっ……!!」
そう……。ルーファエルデ、抵抗しているのだ。それも恐らく、全力で。それが蕩けかけながらも必死な表情からわかる。けど……けど……。
その……傍から見ると、完全に身を委ねているようにしか見えない……! オルエさんに壁に押し付けられながらも、しな垂れかかり身も心も任せているような感じにしか……! あのルーファエルデが、ストローハットとドレスを纏う淑女に押し負けている姿はなんとも……! 相手は全く淑女どころじゃないんだけど……!!
って、このままだと彼女の尊厳がマズい……! ば、バリア解除!!
「あら♡ 折角イイ体位だったのに♡ ふふ♡ スケスケな壁が無くなっちゃったからぁ…♡ 何かもたれかかるモノが必要ね♡」
「ひぅっ……!? こ、今度はどこへ……な、何故卓の方へ……はぅんっ……!?」
ちょっ……!? ルーファエルデとオルエさん、絡み合ったままこっちへと!? な、何を……ルーファエルデの椅子に!?
「ここに手を置いて♡ ぎゅうっ♡と掴んじゃって♡ じゃないともうトんじゃいそうでしょう♡」
「ぁく……! ふーっ……! ふぅっ……!」
「はぁい♡ じゃあもっと激しくイクわね♡」
「ひっ……! はぁぅっ……!? ぁ……ぁあ…く…♡」
ルーファエルデに椅子の背もたれを掴ませた後、オルエさんは更に背中から力をかけて、彼女を前屈姿勢に……! お尻を突きださせて……その上にぴったり重なるように乗って体重をかけて……!
「エッチねぇ♡ 帽子、あげるわ♡ こりこりこり♡ くちゅくちゅくちゅ~♡」
「あぁっ……♡ ひぁんっあっ♡ そ、それ以上は……ふぁあんっ♡ んはっ……くぅうっっはうんっ♡♡♡」
…………ルーファエルデに被せられたストローハットのつばの広さと、椅子の背もたれが丁度邪魔となって何が起きているのかよく見えない……! けど……どう考えてもアウトなことをしているのは間違いない!! これもうダメでしょう!!!
「ししょーすご~い!! ルーちゃんエッチ~♡」
「ぁぅ……ちょっ……」
「……………………。」
興奮気味のベーゼ、あわわ…と顔を隠すも指の隙間覗きをしているネルサ、扇子で光景を完全に遮り私に目で訴えてくるメマリア。その間も聞こえてくるルーファエルデの嬌声…! 限界!!!
「社長!」
「ま、そろそろね。もう抵抗する気も無くなっているみたいだし、このままだと…」
ケーキを呑み込みながら了承する社長。そして箱の内から触手を幾本かくねらせ……――。
「はふぅ…♡ はぅんっっ…♡ くふんっっ…♡」
「もう頃合いかしら♡ じゃ♡あ♡そろそろ…♡ 本格的にいただきま~……」
「させないわよ!」
―――ギュルッ!
んっ!? 社長、触手をどこに!? そっちにはオルエさんはいない、というより真反対の、誰もいない何もない空間!? 何をして……――
「いやぁあんっ♡」
「「「「!!?」」」」
へっ!? その何もない空間に、触手が巻き付いた!!? 直後にピンク靄が湧き立ち……捕らえられたオルエさんが!?
「いいトコだったのにぃ♡ ミミンのいけずぅ♡」
「看過できるのはここまでよ。バエルの娘さん相手にどこまでやってんのよ」
「まだ味見よ♡ つ♡ま♡み♡食♡い♡ 出来ることならもぉっと♡じっくり♡調教したいとこだったけど…♡」
「そうね。アンタにしては抑えたほうね。直接じゃなくて幻影で相手していたんだもの。約束守ってくれて何よりよっ…と!!」
「きゃああああんっ♡♡♡」
そのまま社長、オルエさんを一本釣り! ルーファエルデ以外の皆が唖然とする中、宙に大きく弧を描きながら引っ張られ……私の膝の上、箱の中にすぽんっと仕舞い込んだ!!? ――って、幻影? あっ!
「あーっ! あっちのししょーが消えた!?」
「マジなん……!?」
「さっきから目を疑ってばかりね……」
オルエさんが仕舞い込まれたと同時に、ルーファエルデを拘束していたオルエさんも消滅した! 本当に幻影だったの!? あのレベルで!? ……オルエさん、さすオル……!
「はぁ……はふんっ……はあうっ…………くぅふっ……!」
っあ…! ようやく解放されたルーファエルデが、へなへなと力尽き、ぺたりと床にへたり込んで……!
「だ、大丈夫ルーファエルデ……?」
「…………」
顔を上げないまま無言で、手だけで救援無用を示す彼女……。最もその手を含めた身体はぴくんぴくん艶めいて震えており、肩で激しく息もしている……。今触れるのはアブなさそうである……。
「えーと……。ごめんね、ルーファエルデちゃん。アイツが……」
暫し場が沈黙した後、社長がおずおずと謝罪を。ある程度呼吸が整ったのだろう、ルーファエルデは頭を振り、ふらつきながらも立ち上がり椅子へと着席。そして机に両肘をつき、顔を覆い……。
「ミミン様……。そう謝らないでくださいませ……。全ては私が望んだこと。貴女様の忠告を聞かなかったのは私の方なのですから……」
そう訂正を。そして大きく息を吸い――。
「何一つ、抵抗できませんでしたわ……! 魔法を使えず、武器も振るえず、身体すら好きに弄ばれて、思考すらをも完全に塗り潰されて……! 不覚、なんて言葉では収まりませんわ……!! 圧倒的な……ただ圧倒的な実力の差……!!!」
顔を隠したまま、今の闘いを省みだした。その言葉の節々にはバエル家令嬢としての無念と羞恥、オルエさんへの畏怖と敬意が溢れ出していて……――。
「……っん♡ も…申し訳ございません、皆様方。どうか少し、お時間をくださいまし……。私のカラダが冷めるまで……ふぅっ……♡」
……火照りまで溢れ出してきてしまったらしい。姿勢をそのままに身体をビクンッと震わせ、強く深く甘い息を吐いたのを最後に彼女は沈黙しだしてしまった。いつもの彼女に戻るにはもう少しかかりそう……。
「本当ごめんなさい……。あなたの友達を、バエル家の跡継ぎを……」
「まあ、本人が望んだ試合でしたから……」
悪友の暴走に心痛める社長の口元を拭ってあげてと。更に召喚した使い魔経由でルーファエルデへ回復系魔法をかけ続けてあげながらと。うん、丁度良いタイミングなのかもしれない。オルエさんのつまみ食い()も終わり、時間に少し空きが出来た今が。
「まあこの一件はさておきまして……」
「へ? あ、アスト…? なんで私を降ろして……」
綺麗にしてあげた社長を、私の足元の床に設置。私も椅子を横向きに動かして、向かい合う形に。そして足と腕を組み――張り付いた笑顔を浮かべながら、社長を見下ろし睨んで。
「この間に少しばかりお話を伺っても? ミミン社長?」
「ぁぅ……。お、お手柔らかに……」
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