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顧客リスト№62 『笑いの神の笑ってはいけないダンジョン』
人間側 とある芸人達と使い⑧
しおりを挟む「――あ゛あ゛うぁぁ……。 ちょっと眠なってきたわ……」
「ふぁあうぅぅ……。 そっすねぇ……」
「うわもうこんな時間すか……」
「だいぶ経ったなぁ……」
「もうかなりこなしましたよねぇ……」
【―――時は刻々と進み、夜の帳が下りた頃合い。五人もあらゆるイベントをこなし、お疲れムード】
「いやしかし、色々ありましたねぇ…」
「ホンマな。各所のネタ披露はもとより……」
「今回もやりたい放題やったなぁ…。 芸人対抗のバトルあったし…」
「恒例の身体張り合戦もありましたね……」
「僕達の秘密暴露もありましたわ……しんどぉ……」
【先程までを振り返る彼らだが……ここに来て、あのイベントが五人を…もとい、彼を襲う――!】
『――緊急連絡! 緊急連絡ぅ!! ダンジョン内の全ての魔物に連絡!』
『只今、全魔物に向け招集命令がかけられました。各員、速やかにホールへ集合してください。 繰り返します、只今―――』
「うわなになになに!?!?」
「急にサイレン鳴りだしたやん!?」
「隊長と副隊長のアナウンスが……!」
「何が起きたんすか!?」
「集合しろって…!?」
「――皆、今の聞いたな? どうやら何か重大事件が起きたらしい。 集まるで」
「あ。フジラワさん…!」
「え、怖っ…。何が起きたんすか…?」
「とりあえず行くかぁ……」
「せやな……」
「嫌な予感するんすけどぉ……」
【ということで、五人はホールへと。 そこで待ち受けているものとは――】
「おわー…。えっらい数集まっとるわ…」
「んで、厳戒態勢やん…」
「ほんとっすね…。ピリピリしてますわ…」
「お、ミミック達も綺麗に整列してますね」
「…どっちかというと、整頓って感じやなあれは…」
「じゃ、五人共順番にそこに座って貰えるか」
「当然の如く一番前の席やな」
「これは……」
「あれっすね……」
「あれやな……」
「嫌やあ!」
【フジラワに指示された席に渋々座る五人。次の瞬間、急に辺りは暗くなり――――】
「――ガァッデムッッッ!!!」
「うわぁ出た!!」
「やっぱ出たぁ!」
「災難やなぁホーセ。 ……ホーセ?」
「…………」
「言葉失ってますねこれ……」
【盛大なスポットライトやスモークと共に姿を現したのは、もはやホーセの天敵、『チョノ』。今回も御多分に漏れず、ビンタが飛ぶのか――?】
「……ん? なあおい、チョノの恰好……あれって……?」
「へ? いつものサングラス姿じゃ…?」
「服装の方やろ。お仕置き部隊の服…じゃ、ないな」
「そういえば……。それに普段なら、チョノさんこそお仕置き部隊隊長とかの肩書持ってそうですのに」
「隊長も副隊長も、アナウンス役やもんな…?」
「全員集まっているようだな! 俺はチョノ、魔王軍所属の者だ!」
「……ですってよ…!」
「魔王軍…!? そういえばあのエンブレムはそうやな…!」
「ええんかそんな名乗って…!?」
「あでも、ドラルク公爵でてはりますし…!?」
「……絶対なんかあんなぁ……」
「お前達に集まって貰ったのには理由がある! 実は先程、俺達が守る宝物庫から、ある物が無くなった!」
「なんや…?」
「なんでしょ…?」
「んー…?」
「ある物…?」
「…………」
「だが付与されていた追跡魔術により、それがこのダンジョンに、もっと言えばこの中の誰かが持っていることが判明した!! …そこの五人! 何か覚えはあるか?」
「いや…ないっす」
「ないですわ…」
「特に心当たりは…」
「わからないっす…」
「…………」
「ん? おい、そこのスライム。 お前だお前、ホーセとか言ったな。 何か様子がおかしいなぁ」
「い、いや……僕も、特に、何も……!」
「あー? にしては目が泳いでるんじゃないかぁ?」
「そん…わけ…ないじゃないですかぁ! 何言うてはるんすかぁ!?」
「ふっ…! 必死か…!」
「ガン見しあわなくとも…!」
「目ぇ逸らしたら負けやと思ってるんちゃうか?」
「頑張りますね……ふふっ…!」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUTぉ!』
「「「「あ゛だっ…!!」」」」
「―――ふん、まあいいだろう。すぐにわかることだからな。 まずは何が無くなったかを明かしてやろう!」
「あ、大きめのフリップ運ばれてきましたよ」
「布かけて隠してあんな」
「何が書いてあんねやろなぁ」
「なんでしょうねぇ…。ふふっ…! あ。 痛っあっ!」
「………………」
「白を切る犯人のために、探し物の図を見せてやる! これだ!!!」
「お、布が外されて……ふははっ!」
「あー…! そういう…! ふっふふっ…!」
「変だと思ったら……! あははっ…!」
「盛大に巻き込みましたね…! ふふふっ…!」
「嘘やん……嘘やあん…!!」
「「「「「『世界の半分をあげる券』やんか!!!」」」」」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUT!』
「痛てて…なるほどなぁ…。サンタさん巻き込んでたんかぁ…。 何させとんねんマジで……」
「まあ薄々そんな気はしてましたけども……」
「言われてみれば、確かにサンタさんらしくなかったしなぁ…」
「それにやけに仰々しい代物でしたしねぇ。何ですか、世界の半分をあげるって」
「………………」
「なんだ? おいそこの五人! 今これを見て、やけに反応したな? 明らかに知っている素振りだったな? そうだろう!?」
「あー…えー……いやまあ、そうっすね…」
「心当たりはありますわなぁ……」
「バリバリにあります……」
「というか、持っとるでしょうし……」
「ちょっと…!! こっち見ないでくださいっ…! 前向いたままで…!!」
「やっぱりお前達の中に犯人がいるのか! どいつだ!?」
「……探されとるでホーセ」
「だから今、話振らないでくださいって…! でも今回は大丈夫です…!」
「? やけに自信満々じゃないですか?」
「だって俺、そのチケット部屋に置いてきたんやもの…! 証拠は無い…!」
「えっ!? それ大丈夫なんですか…!?」
「俺がビンタされないことが一番大丈夫な結果に決まっとるやろ…! フフフ…俺の勝ちや…!」
\デデーン/
『ホーセ、OUTぉ!』
「うっ……! だぁっ…! けど、ビンタに比べればこんぐらいぃい……!!」
「ふっ…! そこまでかいな…!」
「どうなりますかねぇ……」
「――どうやらお前達のいずれかが持っているらしいな。チェックさせてもらうぞ。 まずは…鬼族のマツトモからだ」
「うわめっちゃ近い……持ってませんてば」
「ふぅむ。どうやら本当に持ってなさそうだな。 なら次は、イエティ族のハダマだ」
「同じく持っとりませんわ。…毛の下に隠してもいないですって!」
「まあ良いだろう。次は…河童族のタカナだ」
「お二人と同じく持ってませんよ…。 別に皿は捲れませんから」
「そうか。 その次は…エルフ族のエンドオだな」
「僕も持ってません。 ……ですけど」
「皆まで言わなくていい。 ――スライム族のホーセ。どうせ、今回もお前だろ」
「なんで僕にだけそないな聞き方なんですか!? 他の人が持っているかもしれないでしょお!?」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』
「狙いはしっかり定められとるなぁ…。 あぐっ…!」
「だあっ…! 逃がしはしないって感じですねぇ…」
「まあでも、策?というか、現物はここにないみたいですから…」
「もうはよ諦めて叩かれてくれんかなぁ…」
「――と、お仲間は言っているが?」
「いいや知りませんね!! あんなチケット、見たことも聞いたこともありません!」
「本当か? 嘘を言ったらただじゃおかないぞ?」
「本当ですとも! 特にあのフリップの図みたいな、でっかいチケットは知りません!」
「馬鹿かお前。見やすくするために大きく描いてあるだけに決まっているだろ。 …待て、つまり小さいチケットは見たことあるということか?」
「…………ッッ!! …み、見たことありませんねっ!! ええ見たことないです!!」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』
「いやだから……睨み合うなって…! だぅっ…!」
「しかもテンパったのか、変な事口走りましたね…。 あがっ…!」
「もう目が震えまくってますわぁ…。 うっ…!」
「はよ降参しぃよ……。 づぁっ…!」
「このまま続けても良い事はないぞホーセ。早くゲロれば、そのぶん早くお仕置きが終わるんだぞ?」
「だから僕は皆目見当もつきませんよーだあ! そんなチケットのことなんて! なんなら、身体検査でもしてみればいいじゃないですか!!」
「お。とうとう伝家の宝刀引き抜いたで」
「わぁすっごいしたり顔…! まあそのせいでケツ叩かれとんの、本末転倒すけど……」
「……部屋に探しに行かれたらどうすんでしょ?」
「あー…。そん時は俺らに頑張って擦り付けようとすんかもなぁ」
「――なら、望み通り身体検査をしてやろう! 先に聞くが…もし出てきたらどうする!?」
「そん時は…………大人しく罰を受けますよ! ええ受けてやりますわあっっ!!!」
「怒鳴るなやもう……」
「売り言葉に買い言葉っすねぇ…」
「もし出てきたらどうすんねやろ」
「さあ……。でも間違いなく置いてきたみたいですし……」
「よし! 言ったな! そのへらへらした顔で言ったな! 男に二言は無いぞ!」
「へらへらしてるのはこのスライム着ぐるみの顔だけですよ! しかも目線引かれてるからそんな―――」
「おいなんだこれはァ!!!!!」
「え゛っ!?」
「なんや…!?」
「チョノさんどうしたんすか…!?」
「あ゛っ! ホーセさんの着ぐるみのチャック部分…!」
「どこや…? ――あ。 ぶふはははっ!!」
「どういうことだホーセェ! お前の中からミミックが出て来て、『世界の半分をあげる券』を差し出してきたじゃないか!!!」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUTぉ!』
「そーかぁ……そういうことかぁ…!」
「確かにアレなら、どう足掻いてもホーセさんに責任負わせられますね…」
「あ、てか…! 最初ヘルメーヌ様に会った時の、別のスライム着ぐるみ……!」
「あー! あん時ミミック入ってたわ! あれも伏線やったんか…!?」
「スライムの身体の中にチケットを潜ませ隠すなんて、良い度胸してるじゃないか! なあホーセ!!」
「へ……へぇ…?? えっ…確かに部屋に置いて来たのに……なんでぇ……???」
「ふっ…! あまりに予想外過ぎて、放心気味っすよホーセさん…」
「いつから潜んでたんやろなぁ、あのミミック…」
「恐ろしい種族っすねぇ……」
「おぅホーセ、もう逃れられへんのちゃうか?」
「そういうことだ。 大人しく檀上まで来てもらおうか!」
「いやちょっ…! 待って待って! 違うんすよこれはぁ! 違うんですって!!」
「何が違うんだ? あぁ?」
「いやそれは…貰いもんなんです! サンタさんから貰ったんです!」
「あー…言いおったで」
「サンタさんに責任押し付けましたね」
「いやまあ事実ではあるんですけど……」
「でも無駄ちゃうか。 どうせ――」
「お前、子供じゃなくて結構なオッサンだろ! それに今日サンタクロースが来るわけないだろうが! もっとまともな嘘をつけ!!」
「ほんとなんですってぇっ!!!!」
「まあそうなるわなぁ……」
「そのための配役でしょうしねぇ…」
「突然にあわてんぼうのサンタクロースが現れた言われても…」
「信用されんわなぁ……ふふっ…」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』
「――ったく。なあホーセ、お前さっき言ったな? この『世界の半分をあげる券』が出てきたら、大人しく罰を受けるって? なあ?」
「……言ってません……!」
「あ゛?」
「言ってません! 聞き違いじゃないですかあ!?」
「うわ無駄な抵抗しくさって…」
「こっから長いですよ……」
「今回はどんぐらいごねるんでしょうね……」
「……――ん? あれでも……チョノのヤツ、笑ってへんか?」
「クックック……。 そうか、そういう態度をとるのか。 そうかそうかァ」
「……な、なんですか…!?」
「えっらい怪しいんやけど……」
「すごいニヤリって感じですわ…」
「なんかあるんですね…対策……」
「怖ぁ……」
「実を言うと、そのチケットは然る御方の宝物でな。だから俺が動いてるんだが――」
「おっ? チョノ、檀上に戻っていったで?」
「ホーセさんはおろか、チケットまでそんままで……」
「……何故か、心臓バクバクしてきたわ……」
「タカナ、このチケットはよ受け取れ! さっき交換したいって言ってたやろ!」
「いやそれは…! あ、待ってください…! チョノさんが…跪いて……!?」
「その御方が、今この場にいらっしゃっている! ホーセ、面と向かって言い訳してみろ!! ――お願い致します!」
「は…!? なんでそんな恭しい態度……――っぁ…!?」
「な、なんですこの地響き…!? いや…震え…!? み、耳鳴りが……!」
「ダンジョン全体が…波動で揺らされているような……!? 身体が…重い…っ!?」
「うわっ…!? なんか厳かで、恐ろし気な音楽まで聞こえ始めたで…!? 怖怖怖…っ!!!」
「あぁっ! 見てください! 壇の奥の壁全体が……とんでもなく歪んで……―――!」
「『God damn!!』――とな。 そこなる五人の魔物達よ、余の顔に覚えはあるか―?」
「……は……?」
「…………へ……?」
「……え……え……え……!!!!?」
「嘘…………やん………!???」
「………………ッッッッッッ!!!!?!?」
「「「「「せ…先代……先代魔王様ぁ!?!?!?」」」」」
「は……へ…………え……へぇ……????」
「え…幻覚とか見せられとる訳……ない……よな……?」
「いやですけどあの御姿……! それにこの潰されそうな圧……凍てつくような波動というか……!」
「身体とか心とか魂とかに、えげつなくビシビシ突き刺さってきとるわ……!」
「本物……じゃない、御本人……ご、御前様?? ですよね間違いなく…!!」
「如何にも。余は『オウマ・ルシフース・バアンゾウマ・ラスタボス・サタノイア84世』。知っての通り、今は隠居の身であるが、な――」
「こ、答えてくださって……! は、はい…! 勿論存じておりますぅ……!」
「どうすればええんやこれ…!? とりあえず敬服の姿勢とるべきやろ…!!」
「――って! ビビり過ぎて気づいとらんかったけど…周り皆、跪いとります…!」
「ミミックに至っては、宝箱の姿に戻って震えとりませんか…!?」
「はよ…! はよ傅きましょ…!!!」
「無用だ。皆、首を上げ先の通り席につくが良い――。 私語を含めた会話も、構わぬ」
「は、ははあっ!!!」
「有難うございますぅ…!!」
「……先代魔王様まで出演なさるって…今回えげつなくないか……?」
「はい本当に…! 神様方の出演もヤバかったですけど……!」
「もう笑いごとやないで……。……アカン、ちびってもうた……」
「――ということだホーセェ! その『世界の半分をあげる券』は彼の御方、先代様の宝物だ! さあ、申し開きをしてみろ!」
「ヒッ……!?」
「無茶いうなや……!」
「うわホーセさん、口から泡吹いとりませんか…?」
「そりゃそうなるわなぁ……」
「本当によかったぁ……あのチケット貰わんといて……」
「ホーセよ。今しがたチョノが口にした通り、それは余の宝。 それが何故、其方の手元にあるか―、克明なる釈明を求める」
「っあ……えっ……どっ……そ、その……あっ…あっ……」
「可哀そうなぐらいどもっとるなぁ……」
「というか…今回ばかりはマジで可哀そうかもしれへんわ…」
「相手がとんでもなさすぎますものね……」
「下手な回答したら跡形もなく消されそうですし……」
「そ……そんのですね……あの……実は……さ……サン……が……」
「――ふむ…?よく聞こえぬ。 もっと声を張るが良い」
「ふえぁぅっ…!? え、へえっと…! そ…そひょのですねぇ…!!」
「……ふぅむ。 まだよく聞こえぬ。 なれば、余も――、よっと、な」
「ふぁっ!?」
「―え゛っ!?!? ……ふっ…!」
「魔王様が……巨躯の御身をお曲げになられて…!?」
「身を乗り出すような感じで…耳、こっちに傾けてくれとるやん!!」
「や……優しい……!!」
\デデーン/
『ハダマ、OUTぉ!』
「はっ!? 嘘やんこれ継続なんか!? ばあぁっ!」
「魔王様にケツ向ける形で叩かれんのかぁ……」
「うわぁ…恐ろしい……」
「言うて笑って良い雰囲気じゃないですよ……」
「どうしたホーセ! もっと先代様に伝わるように話せ!」
「そ、そないなこと言われてもぉ……!」
「はよ言えってホーセ……!」
「ほら先代魔王様、ずぅっと耳を傾けてくれたままやん…! 不敬やぞ…!」
「ホーセさん…! マジで頼んます…!」
「――あ…!? 先代魔王様が体勢お戻しになられて……!?」
「余の耳が遠くなった故か、其方が口を噤んでいる故か、どうにも聞こえぬな――」
「い、いえ…! ぼ、僕が口を噤んでいるんで…! あいえ、そ、その……!」
「このままでは埒が明かぬ。 どれ――」
「へ…!? うわわわっ!?!?」
「うおっ!? ホーセの身体が浮き上がった!?」
「魔王様のお力ですよ…! 指先ひとつで…!」
「そんで招くように、クイッて…!!」
「あぁっ! ホーセさんが壇上に引っ張られて…魔王様の目の前に!!」
「これで聞き取りやすくなったか。 さて、ホーセよ――」
「大変申し訳ございませんでした魔王様ぁああ!! お返しいたしますぅううう!!」
「―ぶふははっ! 速攻で土下座して返却したであいつ!」
「いやまあそうっすよねぇ…。 チョノさん相手のいつものとは違いますし……」
「綺麗な土下座やなぁ…。 ふっふふ…!」
「こっち睨んできとりますやんホーセさん…! ははっ…!」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』
「「「「づぁあっ…!」」」」
「ホーセよ。余の宝、確かに我が手に。 ――して、仔細を聞こう」
「は、ははぁっ!! そ、それが……僕にもわからないのですけど…! サンタさんが間違えて持ってきてらしく……! それで僕にプレゼントとして…!! 魔王様の宝物とは露知らず…!! 盗む気なんて更々なくて……!」
「ふっ…! さっきまでのモゴモゴはなんだったってぐらいの早口やな……」
「頭床に打ちつけながらよう言うで…」
「魔王様相手だとこうも正直なんすね……」
「あれ? ホーセさん、こっち向きましたよ?」
「そんで! その場にはあの四人もいました! 証人です! いえ、連帯責任です! どうか僕を処すのであれば、あいつらも、一緒に頼みますぅっ!!!!」
「はああアア!!?」
「うーわ…いつも通りとはいえ……」
「最低最悪な道連れの方法選びおったなぁ……」
「――あれ…? 魔王様、さっきみたいに御身体を縮めて…耳をホーセさんに向けて…!?」
「ふぅむ…。 やはり余が年老いた故か…。 すまぬがホーセ、よく聞き取れなかった故、もう一度頼む――」
「へ…へぇ…? は、はぁ…わ、わかりました…。 えっと……」
「サンタクロースが其方にプレゼントをし、その目撃者たる四人も同じく処して欲しい――。とまでは聞こえたのだが、な」
「いや全部聞こえてらっしゃるやないですかぁ!!?」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』
「もーまた、もーまたぁ…!! だぅっ…!!」
「ヘルメーヌ様に続いて、またぁ…! あがっ…!」
「だからぁ…! 何させとんねんよ!! づぅっ…!」
「色々アカンくないすかね、魔王様のそのネタ…! でぁっ…!」
「フッ…。 ホーセよ。余が今しがた繰り返した内容は、まごうこと無き事実であろうな?」
「えっ、あっ、はいぃっ!! 事実です! 事実でございます! ですから、どうか罰は…――」
「面を上げよ、ホーセ。 ―――処を下す」
「ヒッ…! は、ははぁ…! どうか…どうかお許しを―――」
「――――許そう。 全てを、許す」
「……えっ…?」
「は…?」
「へっ…!」
「おっ…!」
「おおおっ…!?」
「余の名を以て、此度の一件、水に流す。 そう宣告をしたのだ」
「えっ…えっ…!? よ、宜しいのですか!? 水に流して頂いて、宜しいのですか!?!?」
「構わぬ。其方に嘘をついている様子はない故な。 かのサンタクロースがなされたことだ。凡そ悪事の意思の欠片もなく、何かの手違いであろうよ」
「っ……っ……よ…よかったぁ……! さ、流石魔王様ぁ……!」
「ホーセ、今度は倒れ伏したで。寧ろ失礼ちゃうかあれ」
「いやしかし、良かったです…! こっちも思わず安堵しちゃいましたもん」
「――なら、今回はビンタ無しっちゅうことか?」
「……いや……控えていたチョノさんが動き出しましたよ…」
「先代様! 寛大な御心遣い、敬服するばかりでございます! ということは、仕置きは無しということで?」
「無論だ」
「なれば! 僭越ながらおひとつご提案がございます! この者に、ホーセに! 今回の分として、『禊のビンタ』を与えてやっては如何でしょうか!!」
「ふむ、良い案だ。 ……ということだホーセよ。覚悟を決めるが良い」
「………………はぇえ……??????????????????」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUTぉ!』
「は…え……はぁあああ!? ちょっとぉ!? チョノさん!? 何ちゅうこと言うんですかあ!?」
「痛てて…。そーくるんかぁ…! それは読めんかったなぁ……」
「結局ビンタは変わらないんすね…。 ふっふ…!」
「……いやてか、流れ的に魔王様がビンタ役やるんか…!?」
「という…ことっすよね…!? そもそも、禊って……?」
「先代様。先程この者は、釈明のついでに仲間を売りました! しかもここ最近は毎回、巻き添えを増やそうと画策しております!」
「うむ。余としても、その様は毎度視聴し、把握しておる。 そろそろ一度、性根を清める時であろう」
「……えっ! 今、さらっとエライ事言わへんかったか…!?」
「先代魔王様…これをいつも見てくださってたんですね…!?」
「マジか…! お見になられるんか……!」
「ご出演なされた理由、分かった気がしますわ…! …ホーセさん、今それどころじゃないですけども……」
「ま…待ってください魔王様!! ビンタって…その、大きな御手で、です…よねぇ!?」
「如何にも。さあ、『気をつけ』の姿勢を取るが良い――」
「まままま待ってください待ってくださいぃ…! サイズ的にお力的に、ビンタされたら僕の頭吹っ飛ぶと思うんですけど…!!?」
「フッ…。安心するが良い、ホーセよ。既に其方の身には、余が防御魔法をかけておる。 痛みはチョノのビンタ……よりかは多少痛いぐらいで済む」
「いつの間に……!? い、いやそういうことじゃなく…!」
「ふむ。加えて、身体ごと大きく宙を舞うであろうが…華麗に着地ができる魔法も付与しておる故な」
「はぇ……!? で、ですからそれ以前の話で…!」
「ホーセ、先代様の御前でこれ以上の狼藉を働くんじゃあない! では先代様、宜しくお願い致します!」
「チョノさんは黙っててくれませんかねえ!? あっ…! 身体が…勝手に……気をつけの姿勢にぃ……!」
「では―。 ホーセよ、我が一撃、その身に受けるが良い」
「ひぃいいいっ!!? 待って待って待ってえ! 嫌です嫌です嫌イヤイヤ!!」
「『このビンタを禊とし、彼の者を悪たるスライムの道から引き戻さん――。』 ―――いざ参ろう。 ハァアアア――!」
「イヤアアアアアアアアッッッッッ!!!! 僕…僕ぅっ!!! 悪いスライムじゃないですよおおおおっっッッ―――!!!」
「喝ッッッ!!!」
「――グッッッッッバッハアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!」
「ッッああ…!! と…とんでもないビンタ……ホンマにビンタなんかあれ!?」
「うわうわうわぁ!! マジでホーセが宙舞っとるやんか!?」
「ひぇええっ……!! ――あ、あ…! おおっ…! スタッて着地した…!!」
「けどそのまま倒れましたよ!?」
「ではこれにて、先代様はお帰りになられる! ガァッッッデム!!」
「God damn!! 余は我がむす…我が子、当代魔王85世に叱られてくるとしよう。 さらばだ、皆の衆。 フッフッフ…ハッハッハッハ!!」
「先代魔王様、チョノと一緒に帰っていかれはった……」
「えっ…当代魔王様に内緒で御出演なされってことですかあれ…?」
「これの放送、本当に出来るんか……?」
「……っと、ホーセさんは……。 ふっ…! 這いながらこっちに……!」
「…………………………」
「あーと…。大丈夫ですかホーセさん?」
「今まで史上一番キツイビンタでしたよね多分……」
「まあほらあれやろ。直々にビンタされるなんてある意味名誉やろ……ぶふっ…!」
「わかったからその恨みがましい顔やめーやもう! 禊、なんも意味なしてないやん!」
\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、エンドオ、OUT!』
【ということで、まさかの先代魔王様御参加の恒例行事もこれにて終了。 そろそろ、大詰めが迫っている――】
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