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顧客リスト№62 『笑いの神の笑ってはいけないダンジョン』

人間側 とある芸人達と使い④

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「ものごっつ疲れたわぁ……」

「とりあえず終わって良かったですけど……腹減りましたよ……」

「なんやいつもよりキツさ増してへんかったか…?」

「増してたと思います……」

「俺……まだ酔ってますわ……うぇっぷ……」

「「「「ふっ…!」」」」



\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、ホーセ、OUTぉ!』






【『捕まってはいけない』訓練を何とか凌ぎ、部屋で休息をとる五人。 と、そこへ――】




「――ん!? なんやこの音…!?」

「えっなにっ…!」

「す、鈴の音っすよね…!? 神社とかにある……」

「なんも祈ってませんよ!?」

「良い音やけど、何が起こるか怖いわぁ…!」



【突如響き渡る、霊験あらたかな鈴の音。 清らかなその響きは、そのまま少し鳴り続け――】



「……あ。止まった」

「なんだったんですか?」

「えーと、ひぃふぅ………12回鳴りましたね」

「12回? ……そういや昼時やな」

「えっ、じゃあ今のって時報ですか?」



「その通りどすえ。 正しゅうは、お食事時を知らせる鈴でありんすよ♪」






「んっ!? 今の声…!?」

「あ、入って来て…………えっ! 嘘ぉ…!!」

「イナリ様やん!!」

「泉の女神様にイダテン神様に続いて、イナリ様まで…!?」

「マジやん……! 神様級、酷使し過ぎやろ…!!」




【姿を現したのは、神社ダンジョンの主、天狐のイナリ様。 神様である彼女が今回もたらすのは御加護ではなく――】



「さぁさ。御新参の皆さん方。 わっち達厨房担当が腕によりをかけてこさえた料理、召し上がっておくんなんし!」



「イナリ様に給仕なんて、何畏れ多い事させとんねん……」

「割烹着、えっらい似合ってますね……。 九尾の尻尾もふもふで…!」

「わ、妖狐のお巫女さん達がカート運んできた…!」

「あれ、でも一つだけですねカート…。乗ってるのも箱一つだけ……」

「うわまさか、昼食取り合いの勝負とか……?」



「嫌やわぁ。そんな浅ましい真似、わっちがするとでも?」



「あ、いえ…! すんません失言でした…!」



「宜しおす♪ わっちは吝嗇坊けちんぼうでも、ましてや守銭奴でもござりんせん。寧ろ、世話焼きな天狐でありんす。 御承知でありんしょう?」



「それはもう存分に…! 毎年お世話になっています…!」



「コンコン♪ 清らかなる祈りあれば、わっちの加護を授けたも♪ ただし此度授けるんは、美味しい御膳にござりんす♪」



「……イナリ様もノリノリですね……」

「な。 あ、箱から料理を……おぉー!」

「豪華や…! お刺身にお肉に天ぷら、煮しめになます、焼き物にお漬物、茶わん蒸しにお吸い物、ちっちゃい鍋まで…!」

「稲荷寿司やきつねうどん、デザートに竹筒羊羹や団子まで…! 美味しそ…!!」

「わぁ嬉し…!! イナリ様、本当に頂いて宜しいんですか…!?」



「えぇ勿論。 ――と、言いたいところでありんすが…………皆さんの顔を見ていたら、わっちの悪戯心がコン!と鳴いちゃいんした♪」








「ぅわ……。 やっぱなんかあった…」

「マジすかぁ……。 なんやろ……」

「取り合いの勝負ではないと仰ってくださいましたし、まぁ……」

「なんかそんな大変じゃないものを…! 頼んます…!!」

「さっきエンドオが受けたイダテン神様のお仕置きよりも軽く……!!!」




\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、ホーセ、OUT!』


「もぅええねんホーセその話は! だァッ…!」





「――そうでありんすねぇ。 ひとつ、皆さんにはわっちの遊戯に付き合って頂きんしょう♪」



「痛てて……。 どんな、遊びなんですか?」



「題して…『間違ってはいけない! 目利き格付けチェック』でござりんす~♪」







「うわもう……!」

「は、ハダマさん…! あ、笑っちゃった…!」

「め、目利き…?」

「すご…! イナリ様も巫女さん達も、尻尾で拍手しとる…! モッフモフや…!」

「ふふっ…!」




\デデーン/
『マツトモ、タカナ、OUTぉ!』


「「だぁっ……!」」




「――ま、言うて格付け要素はありんせん。要は目利き遊戯でありんす」



「いや無いんかい!」

「「「「ふっ…!」」」」



\デデーン/
『マツトモ、タカナ、エンドオ、ホーセOUT!  全員、OUT!』


「「「「「ぐぁっ……!」」」」」










「さて説明に移りんしょう。 これより三問、座ったままで料理の目利きをしてもらいんす。片方は本物、片方は偽物。 偽物を選んだ場合は食べる価値無しと御膳から取り上げ……――」



「「「「「えぇっ!?」」」」



「―――なんてことはいたしんせん♪ ただ、今のようにお尻をペチンと叩いて頂きんしょう♪」



「あぁ…まあそれなら……」

「良かった、比較的楽ですね……」

「安心したわぁ……」



「因みに、終わるまで笑ってはいけないのも継続でありんす。 さ、用意してたも」



「あぁ…料理が一旦箱に仕舞われてく……」

「で、箱の中からAとBの札と、小皿に乗せられた何かが出てきたで…。 あれは……」

「竹筒…っすね。 羊羹の……」



「では、第一問! ココン♪  片方は羊羹。もう片方は、わっちの眷属、管狐。 さあ、本物はどちらでありんしょう?」



「うわ…! そう来たかぁ……!」

「管狐って、普段竹に入ってる狐ですよね…。 うわ難し…!」

「えぇ…! わっかんなぁ…!」

「ちょっと遠いからわからん……いやこれ近の席でもわからんな…」

「動け…! 動け…! …動いてくれませんよねぇ……」



「制限時間は、わっちの九尾が全部ぴんと立つまでにいたしんしょう。 そぉれ、ぴんっ♪」



「「「「「ふふふっ…!!!」」」」」




\デデーン/
『全員、OUTぉ!』


「「「「「ぐぁっ…!」」」」」








「……――ここのつ、ぴんっ♪ さぁさ、時間になりんした。 お答えは……ハダマさん、マツトモさんがA。タカナさん、エンドオさん、ホーセさんがBでありんすね」



「「頼んます……!」」

「「「合っててください……!!」」」



「はてさて、正解は~~。 ほれ飯綱いづな、出て来てたもれ」



「お…!? お!! よし正解Aや! Bから狐がにゅるんって出てきたぞ!」

「よっしゃぁ!」

「「「あー……」」」



\デデーン/
『全員、OUT!』



「「は!? なんで!? 正解したやろ!?」」

「「「いや思いっきし喜んで笑ってたやないすか!」」」









「ほほほ♪ 本末転倒いと可笑し♪ 続けて第二問に参りんしょう。 お次は稲荷寿司でありんす」



「ったた……。 これは、どのような……?」



「片方は本物。片方は……カグヤ姫イスタ姫率いるバニーガール特製の細工団子でござりんす。 そぉれ尻尾ぴんっ♪」



「ふふっ…! あっ!  痛あっ……!」

「はー…! カグヤ姫様達のお団子かぁ…! 流石やなぁ…!」

「うわ精巧ですね…! わかんない…!!」

「じゃあどっちかは甘いんやな……」

「……いや稲荷寿司も甘くないですか?」



\デデーン/
『全員、OUTぉ!』


「んなツッコミで笑っちゃうのイラつくわぁ…。 うぁっ…!!」










「……――こんちきちん♪ お時間でござりんす。 此度の解答は……ホーセさん以外がAでありんすね」



「え゛っ…!?」

「「いやわからんから……」」
「「正直、勘です……」」



「では答え合わせと参りんしょう! ではちょいと恥ずかしながら――」



「おぉお…!?」

「イナリ様が…胸元から匕首を…!?」

「すご……! 格好いい…!!」



「そぉれ! ココン、コン♪」



「そんで、見事な太刀筋…! 両方ともスパッと両断されて…!!」

「達人やん…!  あ、で正解は……。 うわマジかぁ…!」



「見ての通り、正解はB! Aは黒餡入り団子でありんした♪」




\デデーン/
『ハダマ、マツトモ、タカナ、エンドオ、OUT!』



「嘘でしょ…! だぁっ…!」

「わからないもんですね…! うっ…!」

「いやぁすごいなぁ……。 はうっ…!」

「がぁっ…! ……あ。 ちょっとお仕置き隊長さぁん? あいつ笑っとりますよぉ?」




\デデーン/
『ホーセ、OUTぉ!』


「ちょっとハダマさん密告は無しで…あぐぅっ!?」









「――とうとう楽し寂しの最終問題♪ 最後はこの、きつねうどんでござりんす」



「おーほっかほか…!」

「良い匂いするわぁ……」

「……今んとこ、料理全部あの箱から出てるんですけど…どうなってるんすか?」

「わからん…。 イナリ様の力ちゃうか?」

「因みにこちらは、偽物は何を……」



「それは……秘密でありんす♪」



「えーそんなぁ!」

「既にわからんのに……!」



「仕方ないでありんすねぇ。 ならばちょいと尻尾を見せんしょう。 具材やお出汁、器はどちらも本物どすえ♪」



「え、ということは…うどん?」

「はぁ…? 違うんか……?」

「使われてる小麦粉の産地が違うとか…?」

「いや流石に無茶やろ…。 せめて麺の種類が違うとかちゃうか?」

「えー…? いやそんな感じも……」







「……――こん、こん、こん、こぉんっ♪ これにて刻限、終了♪ 答えは……あら、全員Bでありんすか」



「いや全くわからへん……」

「勘で全員揃っちゃいましたね……」

「もはや一蓮托生やなぁ……」

「正解するか、ケツ叩かれるか……」

「神様イナリ様、どうか当たりますように……!」



「さあ答えが出揃ったところで発表を。 ――あ、そうそう折角でありんすから…」



「「「「「???」」」」」



「コホコンコン。すぅっ……!  けっかはっぴょーっっっ!!!  なんし♪」




\デデーン/
『全員、OUT!』


「ずるいやろそこでそれはぁ…! あがぁっ!」









「――では改めて、答え合わせと洒落こみんしょう。 ささ、正体を見せておくんなんし」



「へ? 正体? ――うおっ!?」

「Bのうどんが……勝手に持ち上がった!?」

「しかもうねんうねんいっとるぅ…! なんやあれぇ……!」

「は、え!? 触手かあれ!? どういう……!?」

「……あ゛。 触手…そんでうどんに擬態……もしかして…!?」



「残念全員大外れ! Bはなんと…白粉おしろいはたいたミミックちゃんでありんすよ♪」




\デデーン/
『全員、OUTぉ!』


「うどんにも擬態出来るんかミミックって……。 ぐあっ…!」

「もうミミック、何でもありですね本当……。 ひぐっ…!」

「わかる訳ないやろ……。 なぁっ…!」

「お出汁のお風呂感覚なんすかね…? じぁっ…!」

「かもなぁ…。 あ、ミミック油揚げ食っとらんかあれ…? むう゛っ…!」










「――ふっふっふ♪ 遊んでいただいて、わっちも満足でありんす♪ さあそのお礼に、特製御膳を……と、その前に」



「なんやねん……。 まだ何かあるんですかぁ…?」

「また悪戯心発動っすかね……」

「もうお預けはキツイです……」



「さっきからお尻をペシンペシン、痛そうでありんすねぇ。 どれぐらいの痛みなんでございんしょう?」



「うわようわからんこと言い出したで……」

「一体何を……?」



「『百聞は一見に如かず』がこの世の常。 ちょいと、お仕置き部隊が副隊長さん。わっちにもペシンと一発、宜しくたもれ♪」


「「「「「は!?」」」」」


『へっ!?!?』






「いやいやイナリ様! そんなことをされなくとも…!」



「ココンコン♪ 一度興味に狐火つけば、容易に消えぬ性質でありんして♪ ささ副隊長さん、命令をお早う♪」



『えっ…! は…あ、あの……えっ!?』



「ふふっ…! 副隊長の嬢ちゃん、明らかに聞いとらんって感じやん…!」

「すっごい困惑しとる…! はははっ…!」

「い、イナリ様のアドリブなんすかね…?」

「かなぁ…? もうしどろもどろやんけ…!」

「大変そやなぁ…!」




\デデーン/
『全員、OUTぉ!』


「うわ隊長の方は容赦ないんかい! ぼぁっ…!!!」





「さぁさ、アストちゃ…もとい、副隊長さん。 ほれほぉれ、隊長さんみたいに『ででーん!』と♪」


『え…え……あ…うぅ……。 ――は、はい!』



\デデーン/
『い、イナリ様、OUTっ…!!』




「おー…! 言っちゃった!」

「神様相手によう頑張った!」

「で、来たでお仕置きミミック…!」



「あらまあ。皆さん方にお尻を向ける形でと? 流石に恥ずかしゅうござりんす…!」



「ええっ…!? イナリ様、こっちに背中を向けなはって…!?」

「……いやでもあれ……」



「容赦は無用なんし。 さぁせぇので――! あら、もふん?」



「ふふふっ…! ほらやっぱり…! 立派な九尾が邪魔で叩けてないじゃないすかぁ!」



\デデーン/
『全員、OUTぉ!』


「「「「「いでっ…!!」」」」」






「もうミミックちゃん、これでは当たっていないも同義でありんす。 ほれ、もっとペシンペシンと……もふんもふん!」



「ふっ…! 尻尾ガードはズルいやん……!」

「モッフモフだからダメージ全部無効化されとるなぁ…」

「うわっ!? お仕置きミミック触手とバットを増やして、連撃を…!」

「……でも全部吸い込まれとるやん……!」

「って、あっ!? ミミックが…!」



「コンコン♪ あら失礼♪ 可愛らしゅうて、ついついぱくり♪」



「九尾の隙間に…ミミック取り込まれていってるんすけど!?」

「うわ器用に尻尾お動かしになって…! ミミックの触手に負けてないですやん…!」

「無効化どころか吸収されとるやんけ…!!」

「あぁとうとうすぽって中に…! そんで、ミミックがなんか幸せそうに震えて…くたぁって力尽きた……」

「モフモフ羨ましいなぁ……。なんか勝手に顔にやけて来るわぁ」



\デデーン/
『全員、OUT!』




「ではわっちはこれにてコンコン♪  お食事、ご堪能たもれ♪」



「やりたい放題して帰っていきはったなあ…。 たァッ…!」

「妖狐の巫女さんに後任せて、ミミック尻尾で捕えたまま行きましたね…。 のぅっ!」

「あれ!? 全員分の御膳、あの箱ん中から全て出てきてるんすけど!?  マゥっ…!」

「えぇ…なにあの箱どんな容量してんねん……。 でも冷めたりしてる様子すら無いやん…。 エぁっ…!」

「なんや、狐につままれた気分やわあ……。 も゛ぁっ…!」




【狐の嫁入りの如く気まぐれなイナリ様の遊戯をかいくぐり、ようやく食事にありつけた五人。 しかし、これは束の間の休息に過ぎない――】


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