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顧客リスト№59 『巨大昆虫のムシムシダンジョン』
人間側 ある冒険者達と虫罠
しおりを挟む「そーっと……そーっと……」
俺は息を殺し、虫網を構える。出来る限り音を出さぬように近づき…近づき……今だ!
「そらっ!」
瞬きの間よりも早く、勢いよく虫網を振る。狙いは、木に張り付いているあの虫。どうだ…!?
「――よしっ! 捕まえたぞ!」
捕まえた虫を網から出し、虫かごへと入れる。はっはっは、抵抗しても無駄だ。その小さい身体で人間様に勝てるかよ!
さて、お次は……。お。
「こっちも捕まえたぞ、綺麗な蝶だ!」
「くわぁーっ!!黄金のクワガタを捕まえたー! まっ、まぶしーっ!」
「俺も面白いのゲットしたぞ!なんか、足が車輪のヤツ! えっと確か…トムキャットなんとかカブトムシってヤツだったっけな?」
パーティーメンバーの三人も、続々と捕獲の声をあげる。いいぞいいぞ!捕り放題だ!
――冒険者の癖に、少年みたいに虫取り遊びに興じてどうすんだって? おいおい、甘いな。樹液みたいに。 樹液舐めたことないが。
ここは『ムシムシダンジョン』。多種多様の虫がたっぷりと生息している森型のダンジョンだ。そしてその虫たちの中には、金になる奴らが幾らでも混じっている。
武具用、魔法薬用、鑑賞用……使い道は様々だが、ものによっては一匹あたり数万なんてくだらない高値がつくヤツすらいる。まさに『金の虫』ってな。
だからこうして、虫網と虫かごを装備して来ているっていうわけだ。決して童心に帰っているわけではない。……まあ、結構楽しんでるんだが。
とはいえ…ここは虫取り遊びに興じられ、なおかつ金儲けまで出来る楽なダンジョン…では決してない。
寧ろ、危険度は並大抵のダンジョンより高い。事あるごとに周囲を警戒する必要がある。 ―なんて説明しているこの瞬間とかに……!
ブワヴヴヴッッッ!
「ほら来た! 急いでスプレーを撒け! そして逃げるぞ!」
嫌な羽音を聞くやいなや、俺はメンバーにそう命じる。一方のそいつらも俺の声を聞く前に動き、腰につけたスプレーを取り外す。そして――。
プシュウウッ!!
勢いよく、周囲に中身を散布する。更に隙を突き、その場を即時離脱だ!
――ふぅ。この辺りで良いだろう。籠に入れた虫は…よし、問題なく生きてるな。
今しがた撒いたのは、虫よけのスプレーだ。どんな虫にも効くように魔法的調合を施した特別製の。それを撒き、迫ってきた虫が怯んでいる間に逃げる。このダンジョンで虫取りをする時の鉄則だ。
虫相手にそこまでするなんて警戒し過ぎ? 甘いな。花の蜜のように甘い。 まあ花の蜜も舐めたことは……いや、あったかな。子供の頃とか。
とにかく、そうだな…。 虫を倒した経験はあるか? 例えば、蚊だ。
あれを一匹パチンとやるのに、どれぐらいかかる? 運が良ければ一発だが…。大体は何回も何回も失敗するだろう。そして見失った隙に、チクリだ。
それがもし、何十匹相手だったら?それ以上だったら? 一匹ですら面倒なのに、そんな蚊柱が攻めてきたらもう太刀打ちできない。
更に虫がハチやサソリのような毒虫だったら?そしてそれも大量に迫ってきたら? もはや泣いて逃げるしかないに決まっている。
だがしかし、俺達人間は対虫最強兵器を持っているじゃないかって? そう、『殺虫剤』と言う名のな。 あれを使えば無双状態に……なんてなれるわけがない。
考えてもみろ。一直線に突っ込んでくるならいざ知らず、不規則に周りを飛び回る虫にどうやって当てられるんだ? 無茶言うな。普通の時だって、壁に止まってる隙を突くってのに。
それに、ここは森。鬱蒼としているとはいえ開けた場所だ。対策スプレーを撒いたところであっという間に霧散してしまう。あの高性能殺虫燻煙剤だって、密閉空間じゃなければ意味がないんだぞ。
しかもだ。このダンジョンには、やれ火を吐く虫や突風を起こせる虫、砲弾の如き勢いで突撃してくる虫とかすらいる。そんな奴らは殺虫剤なんて容易く吹き飛ばす。
あと…虫よけ程度ならまだしも、全ての虫を殺す殺虫剤なんて俺達にも悪影響が出るだろう。虫を殺すために撒いたのに俺達まで殺されるなんて洒落にもならない。
というか…殺虫剤なんて使ったら、捕まえた虫が死んじまう。殺虫剤で死んだ虫は、質が一気に下がる。儲けるためにはあんまり使ってられない。
まあ…中にはそれ込みで殺しまくる冒険者とかいるし、かく言う俺達も最終手段として特製品を持ってきてはいる。だがな……。
……それを使えば、もっとヤバい虫が出てきてしまう。ここの支配主である、人よりも大きな巨大昆虫たちが…。そいつ狙いならまだしも、そうじゃない限りは使わぬが吉。
だからこそさっきみたいに虫よけスプレーに留めたり、今身体に塗っているような虫よけ塗り薬だけでで済ましているってわけだ。
…………なんか痒いな…。 あ゛っ…蚊に刺されてる…! 塗り残しあったか…!
いやしかし…今日は運が良い。なにせ、その巨大昆虫たちが少ない。
実を言うとこのダンジョン、時折その巨大昆虫たちが戦闘を繰り広げている。恐らく縄張り争いみたいなものだが…。
その闘い方が独特で、さながら剣闘士の如く、決まったステージ…超巨大切り株の上で一対一のバトルを行っている。しかもそれは、おおよそ虫とは思えないド派手戦闘。
そして幸運なことに、今日はその日のようだ。ダンジョンの中心部辺り、そのステージがあるところから衝撃波や雷とかが発生しているのが見える。…あれでも虫同士の闘いらしい。
それを観戦するために、警らしている面倒な虫たちも少ない。勿論俺達が狙うべき虫も少なくなっているが、充分な数だ。
だから虫取りが捗って仕方がない! さあ次は、どの虫をとっ捕まえて…――!
ボトッ
……なんだ?何かが落ちてきたぞ? あれは…。
「セミ…だな。やけにデカいが…」
突然目の前に落ちてきたものに警戒しつつ、正体を確かめる。どうやら、大きいセミのよう。しかも…―。
「死んだ…のか?」
腹を出し、足を閉じてピクリともしない。落ちてた木の枝で軽く突いても、動きは無しと…。
「脅かしやがって…」
変に襲ってくる虫じゃなくて良かった。 俺が枝をポイっと捨てると、それと同時にメンバーの1人が進み出た。
「確かセミを魔法薬の材料に使うってヤツがいたな。死にたてならあんま価値下がらねえだろ」
どうやら拾って帰る気らしい。俺はちょっと茶化してやる。
「気をつけろよ。死んだと思って近づいたら、急に暴れ出すかもな…」
「ヘッ、足閉じてるから死んでるぜ。よっと…」
俺にそう返しながら、屈んで拾おうとするそいつ。 ――と、その瞬間だった。
パカッ!
「シャアアッ!!」
「はぁっ!? へ、蛇!? ぐあっ…!」
なっ!? セミの死骸が綺麗半分に割れて…中から蛇が出てきた!?
「あばば…ばばば…」
そしてセミに近づいていたメンバーは噛まれ、麻痺状態に…!
ブヴヴヴッッ!
―しまった…! 今の騒ぎを聞きつけ、何かが飛んでくる…! くっ…一旦逃げるしか…!
「な…なんだったんださっきの…。なんであんなとこに蛇が…」
「蛇って『長虫』とも言うみたいだから…いてもおかしくない…か…?」
「そうなのか? …いや、それ以前の問題だろ!」
虫よけスプレーからの離脱で逃げおおせた俺達は、息を整えながらそう話合う。…いや本当に、それ以前の問題だ…!
ここはダンジョンだ。メインに棲みついている魔物以外もいるのはわかる。というか蛇なんて、下手すりゃどこにでもいる。
だが…だがな…! 何をどう間違えたら、死んだセミがパカッて開いて、中から蛇が出てくるんだ!? 気味が悪い!!
というかだ…!あの蛇の色は…『宝箱ヘビ』…! つまり、ミミックだ…! 寄生虫でもなんでもない、普通は宝箱に潜んでいる魔物だぞ…!
なんでこんなとこに…そしてなんでセミに…! セミの最後の悪あがきよりもビビっちまった…!
クソッ…。これから先は死骸にも気をつけなければいけない…。……いや、何か悪い予感がする。虫の知らせ的な…。
今回はこれ以上深入りせず、帰るべきだと告げている気がする。…だが、その前にやらなければいけないことがある。
「予定変更だ。昨日しかけていた『アレ』を先に回収しよう」
二人に減ったメンバーを連れ、俺は森の中を進む。無論、警戒しながら。
恐る恐るの進軍だが、問題はない。今から向かうところは、あらかじめ付与しておいた魔法が示してくれている。この先の…あれだあれだ。
見てみろ。大木にべっとり塗られた蜜を。そして幾つか仕掛けてある罠箱を。そしてそこに集まり、嵌った虫たちを!
ムシムシダンジョン素人は、虫網を闇雲に振り回すだけ。しかし俺達のようなベテランは、こうして前日に罠だけ仕掛けておく二段構えだ。
今日が巨大昆虫たちの剣闘日と知り、好都合だと俺達もさっきみたいに虫網を振っていたが…この罠の成果によっては、回収するだけで儲けもの。
そして今回は…大収穫だ! わんさか集まってるじゃないか! よぅし、これを回収しておさらばといこう!
早速俺が罠に近づき、取り外しにかかる。するとメンバーのそれぞれが、偶然にも何かを見つけた様子。
「お、あれって…虫かごか? ご丁寧におがくずまで敷いてある。しかも中に居るの、レアな虫じゃねえか!」
1人が見つけたのは、地面にポツンと落ちてた虫かご。恐らく同業者の物のようだが…。 もしかしたら、俺達の罠を見つけたヤツがちょっと盗んだのかもしれない。
全く…人が設置した罠には触れるなっていう暗黙のルールを知らないのか。 まあ虫かごを落としているということは、やられたか、慌てて逃げたかだ。ざまあみろだな。
「おーっ! こっちの木陰に置いてあるの、宝箱だ! 葉っぱまみれだけど間違いない!」
もう一人がみつけたのは、古ぼけた宝箱らしい。こんな虫だらけのダンジョンの宝箱なんて、精々が虫の巣になってるぐらいだと思うが……。
……ん…? 待てよ……。何かがおかしい気が…。 何か重大なことをスルーしている感じがする…。
そうだ、『何故、こんなところに虫かごが落ちているか』という点だ。 誰かが俺達の罠を荒らしたのは置いとくとして、なんで虫かごを落としていったかだ。
それはつまり…『落とさざるを得ない状況になった』ということ。恐ろしい虫か何かに襲われて、だ。
あと…昨日ここに罠を仕掛けに来た際、周囲の安全を出来る限り確かめた。その時には、宝箱なんて無かったはずだ。特にあの位置、俺が何度も調べた場所だしな…。
……。………。……―――ッ!! ヤバいっ!
「お前ら! 今すぐそれから離れるんだ!」
「「は?」」
パカカンッ!
「「ぐえぇっ!?」」
…なんてことだ…やっぱりか…! 虫かごのおがくずの中から触手が…! 落ちてた宝箱が開いて牙が…!!
さっきのヘビと同じく、ミミックの擬態だったという訳だ…! やられた……っあ!?
ブウウウウッッ!ブウウウンッ!
―な……! 俺の目の前にある、設置していた虫罠が勝手に開いて…中身の虫たちが全部飛び出していく…!?
色とりどりの羽、様々な形の昆虫たちが…次々と羽ばたいて空に…! 綺麗…だが…何故だ…!?
一体どうやって開いて…!? 虫が開けられるような仕組みでは…―。
「ばーんっ! 『飛んで火にいる夏の虫』だぁ!」
――!? 虫罠の中から、女魔物が!? ってこいつ…!
「上位ミミック…!?」
「へっへっへぇ~! 当ったり~!」
髪飾り風にクワガタをくっつけたままの上位ミミックは、そう言うが早いか触手を伸ばし俺を縛る…!ぐ…苦じい……!
「君たちが置いてくれたこれ、案外心地いいね! 虫たちとずっと遊んで待ってたよ!」
ぺちぺちと俺達の罠箱を叩く上位ミミック。そして触手の一本をすいいっと伸ばし…。
「こっちも解放!」
あ゛っ!?虫かごを開きやがった! 折角捕まえた虫たちがぁ…! というかメンバー二人の虫かごも、それぞれのミミックによって器用に開けられてる…!
「さーて! お仕置きどうしてやろっかな~。 とりあえず……」
俺を縛ったままニヤニヤと笑う上位ミミックは、自分の頭に触れクワガタを剥がす。そしてそれを…。
「とりあえず~鼻にぃ、えいっ☆」
「痛だだだだだだっっ!!!?」
は…鼻に挟んできやがった!!? いだいいだいいだいいだい!!
「じゃ~ねぇ。また後で!」
はぁ゛…はぁ゛……。俺の鼻を挟み終えたクワガタを、上位ミミックはひらひら見送る…。…俺を復活魔法陣送りにする気はないのか…?
他二人も、縛られ噛まれてこそいるが、まだ普通に生きている。 なら、隙を見て逃げなければ…!時間稼ぎを…!
「上位ミミック…! なんでここに潜んで…!」
「だって、罠だから! ここに仕掛けたと言う事は、取りに来るってことだろ?」
チッ…それもそうか…。 俺達は虫をおびき寄せる罠として設置したが…ミミック達にとっては『必ず冒険者が回収しに来る』罠扱いか…。
だからこそ、こうして三種のミミックが潜んでいたというわけだな…。チクショウ…。
「あ~、苦虫を嚙み潰したような顔してるね! 言っとくけど、ここにはもっとミミックが潜んでるよ?」
「は…?」
俺の怪訝な声に応えるように、上位ミミックはひょいと触手を振る。すると…―!?
「!? 切り株…!? 蓑虫…!?」
近くにあった切り株が動き、木の上からは蓑虫が。その両方がパカリと動き、触手型と虫型のミミックが姿を…!
「あと、この子も!」
ボトッ
「なっ…セミ…!? ……これは…作り物か…!?」
落ちてきたのは、さっきメンバー1人を倒した蛇入りセミ。しかしよく見ると…死骸じゃなく、精巧な作り物だ…。本物みたいにしかみえないが…。
……はぁ…。これだけのミミックに囲まれていたら、逃げ場なんてないな…。もういっそ…。
「おい上位ミミック…早く俺達を復活魔法陣送りにしろよ…」
諦めたように、俺は上位ミミックへそう告げる。しかしそいつは、妙な台詞を口にした。
「んー。チャンス、欲しくない?」
「は…?」
「いやそれがさ? この間うちの社長と闘った時に、ここの王者さん達に火がついたらしくて。そこそこまともな冒険者達と闘いたいみたい」
「??? どういうことだ? そこそこまとも…?」
「うん。 詳しく言うと、殺虫剤を使わない冒険者だって。 あれを使っていたら問答無用でぶっ飛ばすけど、そうじゃなければワンチャンあげるってさ」
……よくわからないが…とにかく、すぐにはやられないらしい…。 使わなくてよかった…。
「でも、すぐに復活魔法陣送りにされたいならゴキッ☆ってやっけど…」
「いやわかった! そのチャンス?使わせてもらう!」
触手の力を強める上位ミミックにそう頼み、なんとか切り抜ける。しかし…―。
王者が闘いたい、ということは…察するに、ここの支配者である巨大昆虫たちが行っているあのバトルのことなのだろう。
それに参戦して、勝てたなら見逃して貰えるということで…いいのか? 俺がそう首を捻っていると―。
ブヴヴヴヴンッッッ!
一際大きな羽音と共に、何かが俺達の前にズシンと着地する。それは…巨大なカブトムシ…!
(ムシャシャシャ! 吾輩と闘うのはこいつらか! 良い顔しとるでな!)
―っへ!? 喋ったぁ!? …いや、テレパシーかこれ!?
(で、どうするボウズたち? 吾輩と闘って勝てぬまでも、いい試合をしてくれたら、虫たちの抜け殻なり取れた羽なりを褒美としてやるでな)
…それは…! 願ってもない提案だ…! ……だが…。
ミミックの触手から解放された俺は、同じく解放された二人と顔を見合わせる。 どうやら同じことを考えているようだ。
ふ…フフフ…そんな褒美をもらわなくとも…目の前に最大級のお宝があるからな!
「フォーメーションで囲め! 相手は巨体だ、逆に俺達に利がある!」
俺はそう叫び、巨大カブトムシへ突撃する。メンバー二人も即座に応じ続く。手にしていた虫網を投げ捨て、隠して持っていた殺虫剤を構えてだ!
この巨大昆虫の素材は、丸々売れば豪邸が立つような代物! ここで倒せれば一気に大金持ち!
普通に戦っても不意打ちしても、本来ならまともに倒せないだろうが…この特製殺虫剤をゼロ距離で吹きかければ勝ち目はある!
捕まえていた虫も逃がされた今、何も恐れる必要はない! 食らえ――!
(良い奴らだと思ったんだがなぁ…)
ガパッ
――何…? 巨大カブトムシの羽が開いた…? 飛ぶ気か!? そうはさせるか…ぐはっ!?
「「ぐへぇっ!?」」
…俺も、メンバーも吹き飛ばされる…!? 何にだ…!? は!?ミミック触手!? 羽の内側から!?
(ムシャシャ! 良いでなぁ、このミミック達の護衛! 有難い有難い!)
テレパシーで笑う巨大カブトムシ…! いやいや…幾ら大きいからって、羽の裏とかにミミックを潜ませるってアリかよ…!
「「「うげっ…」」」
茫然のまま、地面に転がる俺達。するとそこに上位ミミックがスルリと近寄ってきて…―。
「そうか、そうか、つまり君たちはそんなやつなんだな」
と、呆れ顔で俺達を縛り、殺虫剤を没収…。やらかした……。
「どうしますか? やっぱりゴキッとやっときますか?」
ギリギリと俺達を絞めながら、巨大カブトムシに問う上位ミミック。すると―。
(ムシャシャシャ! 構わんでな! それぐらい卑怯な方が、吾輩としても張り合いが出るというもの!)
「だってさ。良かったじゃん! じゃ、ステージまで行こうか!」
(無論吾輩は、ミミックの護衛無しで闘うでな。ボウズたちも全力で面と向かってかかってこい!)
……もう逃げ場はない。 なら、全力で挑むしか…! やってやるぞっ!
………………で、どうなったかって? 聞くなよ…。今の俺達の恰好見ればわかるだろ…。
……勝負を挑んだはいいが、あんな巨大サイズのカブトムシに勝てる訳ないに決まってる…。しかもあいつ、変な特殊能力まで使って来たし…。
で、結局ステージから勢いよく吹き飛ばされて…。ダンジョン入口付近の切り株に頭から突き刺さっている状況だ…。三人並んでな…。
ただ…。あの巨大カブトムシは良い闘いをさせてもらったからと、約束通り褒美をくれるらしい。…くれるらしいんだが…。
「そうそう、そこらへんに上手く引っ掛けて! 良い感じだね!」
……さっき俺達を囲んでいた上位ミミック達がその役を仰せつかったらしく…。俺達の足を木に見立て、抜け殻とかを貼り付けていって遊んでやがる…。
なんだ…?俺達はよくお遊戯会とかで見る木の役ってか…? …というかもう虫の息だから、助けてくれぇ……。
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