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顧客リスト№45 『魔王軍の中級者向けダンジョン』

人間側 ある中級勇者の冒険

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あっ! おひさ! みんな私のこと、覚えてる? 『初心者向けダンジョン』を攻略してる時以来かな!

そ、『勇者』! なんかよくわからないけど、王様からそんな存在だって言われ、魔王を倒すために旅立った村娘!




結局あの後、王様から装備類を貰って、簡単めの色んなダンジョンを周ってたんだ。

私が持ってるらしい『魔物にやけにダメージが入る』特効が良い感じに働いてくれて、どこでも結構戦えてる!どんな魔物も剣でズバッと!


…………え……ミミック……? やめて、その名前を出さないで…。 あの時のあれ、ちょっとトラウマ気味なんだから…!







そんな感じで修行的なものを積んできたんだけど…いくら特効を持っていても、流石に一人じゃ大変。

これからもっと難しいダンジョンとか行かなきゃいけないのに、強制ソロプレイはちょっと、ね…。




ということで、パーティーを組むことにした。ギルド酒場で募集をかけたり、王様が頑張ってくれたりして、なんと3人の仲間が加わってくれました!



まず1人目、魔法使いさん! 名前は『アテナ』さん。

さっきも言った通り、ギルド酒場で募集をかけて待ってみてたんだけど…私、お酒飲める歳じゃないから居心地悪くて…。

そんな時に丁度現れたのがアテナさん。目を引いたのが、コーヒーを頼んでいたのと、ちょっと変わった魔法使いのローブを着ていたこと。

普通の魔法使い達はぶ厚めのローブを着ている人が多くて。防御力はありそうだけどゴワゴワしてそうなのを。 けど、アテナさんは違った。

かなり薄手で、風通しも良さそうで、滑らかそうなローブを纏っていた。その姿にちょっと惹かれちゃって、つい話しかけて見ちゃった。


そしたら、案外馬が合ったというか、すぐに仲良くなれちゃった! アテナさん、『A-rakune』という服が好きらしくて、すっごく語ってくれた。あのローブもそのブランドらしい。

私ずっと小さな村にいたからファッションに疎くて…。アテナさんの話は全部新鮮だった。実はこの間、コーディネートをして貰っちゃったし。


ほら、この服とかもその『A-rakune』ブランド。 見せないけど、下着もそれにしてみた! お洒落だけど軽くて肌触りよくて、思わず「あっ楽…!」って呟いちゃった! …見せないからね!?




2人目は、僧侶さん。 名前は『エイダ』さんというみたい。

王様が紹介してくれた、とある教会のシスターさん。私は行ったこと無いけど、『カタコンベダンジョン』というダンジョンの近くにある教会らしい。

なんでも、そのダンジョンに棲むスケルトン達を浄化しようと頑張っている方らしく、他の僧侶さんや冒険者とのパーティープレイも経験しているんだって。


…ただ、ちょっとそれも難航…というか最近失敗続きみたい。変な色をした蜂とか蛇とかに噛まれて、麻痺させられて追い返されているんだって。

アテナさん曰く、それも『ミミック』らしいけど…そんなのもいるんだ…。こわ…。


そのせいか、エイダさんと初めて会った時は、彼女ちょっと不機嫌気味だった。お話を聞いてみると、王様と神父様に命じられたとはいえ、私達に同行してしまうとスケルトン達を助けられないからって。

私も無理強いはしたくないけど…エイダさん優しい方だし、仲間になってくれると心強そう。だから、「魔王を倒せば、もしかしたらスケルトン達も解放されるかも」って言ってみた。

そしたら、「そうかもしれませんね!」って凄い勢いで食いついてきて、パーティーに加わってくれた。有難いんだけど、ちょっとチョロ…なんでもない。





そして最後の1人なんだけど…。凄い人が加わってくれた。『クーコ・ロセイク』さん!

…え、知らない? 私でも知ってるのに?? あの女騎士様を???


彼女は並み居る兵や他の騎士を優に凌ぐほどの技量を持ち、並ぶ者のないほどの実力者として名を馳せる騎士様。

清廉潔白、容姿端麗、なにより格好いい! 皆の憧れのまとな方である。


そんなクーコさんが、私の前に現れてくれただけではなく、パーティーに加わってくれるなんて…!嬉しくて仕方がなかった! アテナさんとエイダさんもすごく驚いて喜んでくれた!


…そういえば、クーコさんのことでちょっと気になってたことがあったんだ。何故か最近、急に騎士としての活動を聞かなくなってた。

もしかしたら体調不良とかだったのかも。なにか呪いみたいのをかけられちゃって、浄化していたとかいう噂も流れてた。

私が勇者になってからだったから、ちょっと残念だった。会えるかもと思ってたのに。けど、今はこうして仲間に加わってくれたんだから問題なし! 


そうそう。クーコさん、何故か『【サキュバスの淫間ダンジョン】には絶対足を踏み入れるな』って凄い形相で言ってくる。行く気は毛頭ないんだけど。サキュバスって結構強い魔物だし。

でもあまりにも繰り返すから、なんでですか?って聞いたこともある。そしたらいつも凛々しいクーコさんがやけにしどろもどろになって、顔を真っ赤にして「とにかく駄目だ!」って言うばかり。

…あと、ビクッて体を震わせて、ちょっと甲高めの声を漏らしてたけど…。なんだったんだろ。




以上3人、それに私が加わった女4人パーティー! いいメンバーが揃って良かった! それに、私達には共通点があるみたい。

それは、『ミミックにやられたことがある』ってこと。…まあ、あんま良いことじゃないけど。

私は知っての通り宝箱型のミミックにやられちゃったし、エイダさんはさっき説明した通り、蜂型のミミックとかにやられている。

アテナさんもミミックに復活魔法陣送りになった経験があるみたいだし、意外だけどクーコさんもミミックに不覚を取ったことがあるんだって。

全員がおんなじ魔物にやられたことがあるなんて、なんか仲間意識が芽生えちゃう。




…へ? 私の名前? そう言えば名前教えたことなかったっけ。「ユーシア・トンヌーレ」、覚えといてね!


……名前と、『勇者』の語感が似ている? だから勇者に選ばれたんじゃないかって? 

そんなこと…!ないとは言い切れない…のかな…? だって王様、最初私に棍棒と旅人の服と50Gしかくれなかったし…。

いや、その後に鋼の剣と良い装備くれたんだけどさ。王様としてどうなの、あれ。











さて、そんな私達は幾つかのダンジョンを巡った後、『中級者向けダンジョン』という場所に来ている。

ここの宝物の中に『魔王城への地図』が隠されていると聞いたからだ。ちょっと難しいけど、クーコさんを始めとした仲間がいるからなんとか…!


…けど、幾度か潜って未だに見つからない。こういう宝探しは根気がいるものらしいけど…。

…あと、私達がミミックを警戒し過ぎているのも問題なのかもしれない…。宝箱を見つけるたびにビビッて、一個空けるのに結構な時間がかかっちゃってるから。


まあでも、仕方ない。安全第一だよね。じゃあ今日も、ダンジョンにレッツゴー!








「ほいさっさ! ―おっと! ちょっと掠っちゃった…!」

「ユーシア、一旦退け! アテナ、右を頼む! 私は左を倒す!」

「はい、クーコさん! エイダさん、その間に…!」

「えぇ!回復いたします! ユーシアさん、こちらへ!」


突撃した私を司令塔役のクーコさんが止め、スイッチするように敵を肩代わり。

アテナさんも攻撃魔法で支援してくれているおかげで、安全にエイダさんの元に回復に戻れた。

そして再び前線へ。クーコさんと肩を並べて、特効付きの攻撃を…とりゃあ!!

「いぇい! 一丁あがり!」

こんな感じであっという間に勝利! 皆とハイタッチ!


やっぱり、パーティーを組むとダンジョン攻略が楽! 皆強いし、簡単にクリア…



…できないのが、ダンジョン。罠は幾つもあるし、奇襲を仕掛けてくる魔物や、チームで挑んでくる魔物もいる。一筋縄ではいかない。

それに、皆ちょこちょこ色んな相手に引っかかるのだ。例えば…。




~~~魔法使いアテナの場合~~~

「うっ…!アラクネ…!」

「どうしたの、アテナさん?」

「いえ…ちょっと倒すのが忍びないかなーって…思っちゃいまして…」




~~~僧侶エイダの場合~~~

「! あれは…スケルトン!このような場所にも…! 魔王に囚われてしまった皆様…!今お救いいたします…!」

「落ち着いてエイダさん!あれは『スパルトイ』…竜牙兵ってヤツ。魔法で作られたゴーレムのような魔物らしいよ」

「へ…?そうなのですか…? でも…。 ―! ぴっ…!?蜂魔物…!やぁっ!来ないでください!」

「うわっ!落ち着いて…! 聖水瓶を手当たり次第に投げつけないで…!!」




~~~騎士クーコの場合~~~

「―っ! そこかッ!」

「わっ…! …もう、クーコさん…。木箱とか見つけるたびに叩き壊していくの止めましょうよ…。戦闘中でも真っ先に壊しに行きますし…」

「うっ…。すまない…。ミミックが潜んでいないか不安になってな…」

「気持ちはすんごくわかりますけどぉ…。あっ!ほら!敵です!」

「よし、任せろ。 …む? あれは…さ、サキュバス……♡ ひぅんっ…♡」

「へ? なんです今のえっちな声…! なんでうずくまってるんです!?」





…とまあ、そんな感じにちょくちょく止まる。私がツッコミ役に回るなんて思わなかった。

…ぶっちゃけ私も、宝箱を見つけるたびに『初心者向けダンジョン』での出来事を思い出してビクついてるんだけども…。



でも、目的のために宝箱は開けなければいけない。そして今も、丁度見つけてしまったところなのである。










「じゃあ、開けるよ…?」

「任せろ…! 全員、準備は良いな…?」
「はい。周囲にも魔物はいませんよ…!」
「回復魔法の準備も整っています…!」


私が宝箱の前にしゃがみ、他三人が有事に備えて武器を構える。もしミミックだったら、即座に吹っ飛ばすために。

「すー…ふー…。…いざ! えいっ!」

深呼吸しつつ王様から貰った鋼の剣を片手で握り、蓋の隙間へザクッと刺し入れる。もし変な動きがあったら即座に退けるように…!

「…だ、大丈夫そう…かな…?」

ツッ…と少し刺す。変な様子はない…。 更にスッと差し込む…。…!揺れた…!? ちょっと飛び退く…! ……剣刺したから揺れただけだった…。



ヤバ…変な汗出てきた…。もう一度戻り、剣をもっと奥に…。…あ、カツンと一番奥にぶつかった感覚。ぐいぐい動かしても、引っかかる様子はない。

「はあああ…。よし、行くよ…!」

背後に控えている三人に目配せして、剣を軸に宝箱の蓋を弾き開ける。その勢いを利用し、私は箱正面から逸れ、三人が勢いよく攻撃できるように…!



「…ふぅ。大丈夫だ、ミミックはいない」

クーコさんの合図で、全員がほっと武器を降ろす。私も大きく息を吐き、宝箱の中をひょっこり覗き込む。

「んーー。ハズレ! ただの剣かぁ…」

入っていた物は、鞘に収まった長剣。王様から貰った鋼の剣みたいなやつ。

地図じゃなくて残念。でも、置いていくのも勿体ないし…。貰っておこうっと。


そう思い、手にしたその剣をよいしょっと腰に差した時だった。






「アッ…!」


「「「「ん?」」」」

変な声が聞こえて、皆揃ってそっちを見やる。ちょっと先にいたのは、一体のゴブリン。しかも頭の上に宝箱を抱えている。

「逃ゲル…!」

1対4は流石に不利すぎると悟ったのか、回れ右して去ろうとするゴブリン。私達は頷き合い、その跡を追うことに。







持ってる宝箱が重いのか、ゴブリンの足は案外遅い。おかげで追跡は簡単。いつ襲い掛かってやろうかとタイミングを窺っていると…。


「―む。待て」

とある曲がり角で、クーコさんが手で制してくる。彼女の指示に従い、気づかれないように顔を出すと…思わぬ光景が広がっていた。


「…なにあれ…?」
「ゴブリン達と…宝箱…?」
「何か詰めているようですね…」


曲がり角の先も広めの廊下が続いていたのだけど、そのど真ん中でおかしなことをしているゴブリン達が。

幾つかの宝箱を開き、何かをそこに入れているのだ。それだけでもだいぶ変なのに、もっと変なものが見える。


「…ねぇ…。私の目が確かなら…あそこの壁、扉みたいに開いてるよね…?」


私が恐る恐る聞くと、三人もコクコクと頷いた。石で出来たダンジョン壁のとある箇所が、ぱっかりと開いているのだ。内部が金色に光ってるのも確認できる。

そしてそこから出てきたのは、またもゴブリン数匹。彼らが抱えているのは…。

「「「「宝物…!」」」」




思わず全員で声を揃えてしまった。ゴブリン達が取り出してきているのは、金銀財宝なのだ。それを宝箱に詰め込んでいるのである。

「もしかしてあそこは…宝物庫!?」

こんな場所にあったとは…! これは絶好のチャンス。欲しい『魔王城までの地図』もそこにあるかもしれない。なら、どう侵入するかだけど…!


「来タゾ! 冒険者来タゾ!」

あ。私達が追いかけてたゴブリンが、箱詰めしているゴブリン達に叫んだ。すると―。


「ホントカ!? 逃ゲロ!逃ゲロ!」

その場にいたゴブリンが全員逃げ出した。宝箱を放置したまま、宝物庫の扉もあけっぱで…!!





「やった! 行こ行こ!」

超幸運! 私達は急いで近づき、宝物庫の中を覗き込む。

「わぁ…。箱まみれ…!」

中には、大小さまざまな箱が並べ重ねられていた。その全部に、魔王軍の紋章みたいのがデカデカと。そして、箱から溢れる形でキラキラの宝物が…!


この中のどこかに、地図が。そうでなくとも…!


「「お宝取り放題!」」


私とアテナさんは勢いよく飛び込む。こんなの、身体が勝手に動いちゃう!

冒険者ならば我慢できないに決まってる。…私、冒険者になったばっかだけど…!



「お、おい! 不用意に入るな!」
「そうですよ…! 何があるのかわからないのですから…!」

クーコさんとエイダさんは警戒しているが、そんなのお構いなし! 箱の一つをガサゴソ…お!

「エイダさんこれ見て! すごく魔力が籠められたロザリオっぽいよ!」

「え…! み、見せてくださいな…!」

私がとりだしたお宝に、エイダさんもふらふらと引き寄せられる。クーコさんもやれやれと頭を抱えるようにし、宝物庫の中に。


――その瞬間だった。






ギィイイ…ドスゥンッ!



「「「「なっ…!?」」」」


突然宝物庫内に響き渡ったのは、扉が閉まる音。全員でハッと見ると、ぱっかり空いていた石扉が完全に閉じていた…!

そして、扉を掴んでいたのは…触手…!? どこから伸びているかと言うと…扉近くの箱…!?

「*おおっと!*  *罠のなかにいる*  ってね!」

そこからひょっこり顔を出し、ニヤついてるのは女魔物…!あれ…もしかして…! もしかしなくても…!!


「「上位ミミック!!」」

クーコさんとアテナさんが同時に叫ぶ。やっぱり、そうだよね…!私初めて見たけど、あれ、やっぱりミミックだよね!!!?





って…! 罠…!? これ、罠だったの…!? ということは…!

「さっきのゴブリン達…! 逃げたのはこのため…!?」

「正解! わざとアンタたちを誘って、ここにおびき寄せるのが目的だったのよ! 言わば協力技ね」

外に残した宝箱だけで満足すればよかったのにねー。欲張りすぎは身を亡ぼす! そう言い、上位ミミックはケラケラ笑う。


「全員戦闘態勢!」

と、上位ミミックの嘲笑を弾き飛ばすように、クーコさんの号令が。私達は急いで武器を構えた。

そうだ…! 罠ならば切り抜けてしまえば良いだけのこと! 上位ミミックは強いらしいけど…!こっちは4人だし!



―が、そんな私達の動きを見た上位ミミックは、慌てもせずに自身が入っている箱をゴソゴソと。剣二本取り出し…

「さ、皆! 教えた通りにやっちゃえ!」

キィンッ!と打ち鳴らした。 刹那―!




ボスンッ! ジャリンッ! ズルッ…! 

「へ…へぇえぇええっ!? 箱の中から…!ミミックが大量に…!?」


周囲の宝満載な箱の中から、次々と飛び出してきたのは…!ミミック達!!! も、モンスターハウス…! いやミミックハウス!?






「ぴっ…!は、蜂ミミック…! あば…あばばば…」
「ひっ…!み、ミミック触手ぅ…! ひぐっ…♡」

あぁっ…! エイダさんとクーコさんがトラウマが刺激されて動けなくなって…!瞬く間にミミックの山の中に…!どんだけ居るの!?


「ゆ、ユーシアさん…! 逃げ…きゃあっ…!!」

ああぁっ…!! アテナさんまでも…! な、なんとか助けなきゃ…! 



「おっと!させないわよぉ?」

「きゃっ…! しまっ…!剣をとられ…!」

一瞬の隙を突かれ、上位ミミックが伸ばしてきた触手に剣を奪われてしまった…! 武器がないと、いくら特効もってても…!


「! そうだ! さっき拾った剣を…!」

ふと思い出し、腰を探る。さっきの宝箱から入手した長剣がまだあったはず…!それさえあれば…! 

「! よし…!」

柄を…掴んだ! 後は勢いよく振り抜けば…!

「えいっ! …へ…?」





予想以上に軽く、スポンと抜けた剣。嫌な予感がして…ギギギッと首を動かし見てみると…!

「け、剣先がない…!?!?」

な、なんで…! そりゃ確かめてなかったけど…!そこそこ重かったのに…!


反射的に、鞘を覗き込んでみる。刃の部分が折れてたりしてないかって。―え…!?



ギュルンッ!


「きゃぁっ…!? 鞘の中から…!ミミックの触手が…!? モガッ…!」


剣を入れる細い隙間から湧き出したのは…!ミミックの触手…! ぎゅっと縛られて…動けなく…!

あまりの謎の出来事に、床に転がされながら目を白黒。すると、剣の鞘からスポンと何かが…!え゛ぇっ…!? 上位ミミック…!?


「ざ…ざんねんでした…!」

鞘から出てきた上位ミミックは、ちょっとこわごわ。それに代わるように、入口の箱にいたミミックが宝箱に入り直して私の近くに…。

「ふふふ…! アンタは既に、私達ミミックに引っかかっていたのよ。そのままどこかで戦闘始めてくれてたら、その剣の子、すぐに仕掛けてたのに」

な……! そんなの…アリ…!? お宝自体に擬態するなんて…! ズルい…ミミックズルい!




いえー大成功!と鞘入り上位ミミックとハイタッチした教官ぽい上位ミミックは、フフンと鼻を鳴らした。

「今後はゲットした宝物をすぐに確かめることね。私達は、どこにでも潜んでいるのよ!」

ひぃっ…!そ、その言葉を合図に…! 私の仲間を倒し終わったらしく…た、沢山のミミックが…全部私の方に…!! 

鋭い牙…! 毒を湛えた針…! そして蠢く触手…!


「さて。じゃあ死んでもらおうかしら!」

そして眼前には、大量のおぞましき触手をくねらせ、背筋が凍り立つ笑みを浮かべた上位ミミック二体…!

…ま、また…ミミックにぃ…! や…いや…いやぁあああああっっ!!












「おぉ 勇者 たちよ  全滅してしまうとは 情けない」

「ですから王様…。そのような言い方は…」


聞き覚えのある王様、そして大臣の声を耳にし、私はガバッと起き上がる。ここは…王城…! 復活魔法陣の上…!

「くっ…またもミミックに不覚を…。 ぅっ…♡」
「私が復活魔法陣を利用する側になるなんて…主よ…」
「私の…『A-rakune』のローブぅ…。せっかく手に入れたのにぃ……」

横を見ると、クーコさん、エイダさん、アテナさんもいた。全員が装備を失い、ボロボロな状態。全滅しちゃったんだ…。



と、それを見兼ねたらしく、王様はゴホンと一つ咳払い。私達に向け口を開いた。

「勇者達よ。装備を失ったお前達に、とあるものを渡そう。精霊や神の加護の受けた装備一式だ」



「「「「え……」」」」

唖然とする私達。王様はそれを見て、さらに胸を張った。

「更に、仮にお前達が死んでも、共に復活魔法陣に戻ってくる魔法もかけておいた。喜んで受け取るが良い!」

明らかに自慢げな王様。……私は思わず、ポツリ。

「それを…」

「ん? 何か言ったか?」

良く聞こえなかったと、耳を傾ける王様。すると今度は…クーコさん達も交えた私達全員で、同じ台詞を…叫んだ!

「「「「それを一番初めに渡してください!王様ぁ!」」」」





「す、すまぬ…。だって…惜しく感じて…。お前達ならばなくても大丈夫かなって…」

「はああぁぁ…」

ビクつく王様と、溜息をつき呆れる大臣。と、彼はぐさり。

「だから言ったでしょう…。さっさと差し上げなさいと…」

「うっ…」

大臣に睨まれ、王様は縮こまってしまう。それを誤魔化すように、兵に指示を送った。

「と、とにかく持っていくが良い!  おい! 箱ごとでいい、持って参れ!」



王様の指示に、兵の数人がよいせよいせと何かを持ってくる。それは…。

「「「「!! ひぃっ…!!」」」」

私も、クーコさんも、エイダさんも、アテナさんも、全員揃って悲鳴をあげてしまう…!

だって、それ…王家の紋章が描かれた…箱…! だから模様こそ違うけど…さっきのダンジョンの宝物庫、もとい罠にあった、大量のミミックが潜んでいた…箱…!!


「ど、どうしたというのだ勇者達よ。 受け取るがよい」



ヤ、ヤダ…! 箱、怖い…!!!!! ミミック怖い!!!!!!!!!

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