灰色の冒険者

水室二人

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第4章 臆病者の砦

冒険者の仕事 仲間を集める

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「私たちを、精霊猫にしてください」

 メトロ・ギアにて、再会を喜んでいたノノとナナの二人が、頭を下げながらそう言いました。

「何故です?」

「グランドマスターが、私達に何もしていないという保障はありません」

「知らない間に、体に爆弾を仕掛けられていても、おかしくないのです」

「あぁ、それなら私は、勝手にノノに発信機を埋め込んでいましたね」

「え?」

「そのおかげで、ギルド本部の場所がわかりました」

「・・・」

「大丈夫です、こちらで確認しましたが、二人には何も仕掛けられていません」

「その言葉は、信じたいのですが、あの人のことです、何があるのか、不安なのです」

 話を聞くと、ギルドのグランドマスターは、異世界人のようです。人体実験が趣味で、体の改造が出来るとこのこと。

 世界のためと言う名目で、色々な人間から能力を奪い、植え付け、利用しているそうです。

「過去には、大勢の子供から魔力の元を奪い、1人の人物に植えつけるという事もしていたそうです・・・」

 虹色小隊の子供たちは、魔力がありません。なんとなく、これは関係あるきがします。

「トウゴウ様には、色々とご迷惑をおかけしたのに、このようなことをお願いするのは、心苦しいのですが、お願いします」

 精霊猫に転生することで、ギルドの束縛から逃れたいという事でしょう。

「十色、お願いできますか?」

「仕方ないにゃ。ただ、元には戻れないけど、いいですにゃ?」

「ノノと一緒なら」

「ナナと一緒にいられるなら」

「了解したにゃ。なら、ついて来るにゃ」

 二人は、十色に連れられていきました。ギルドの中で、かなり仲の良かった姉妹だったそうです。

 ノノをこちらで捕まえたとき、情報と引き換えに、妹を助けて欲しいと懇願されました。

 妹を人質に取られているとのことなので、こちらも条件を出しました。

 偽りがあれば、命を落とす。また、助けた後はこちらに所属するようにと言うと、すぐに了承されました。

 ギルド本部にいるということなので、先日の作戦を実行。最初に渡したギルドカードは、ノノからのメッセージでした。

 ナナを解析してて似れた能力、人形遣いと言うのも中々有益でした。現状、本人が使用すれるには魔力不足だったので、今回の出来事は渡りに船でした。

「お待たせしたにゃ」

 十色が戻ってくると、その後ろに2匹のキジトラの猫がいました。

「ご苦労様、無事に出来ましたね」

「ありがとうございます」

 2匹の猫が頭を下げます。

「早速ですが、二人に仕事を頼みます」

「何でしょう?」

「ナナの人形遣いの能力で、人形を作ってもらいます」

「どのような人形でしょうか?」

「身代わり人形です」

「それは、魔力が足りなくて、作れません」

「今の貴方なら、出来るはずです」

「え?」

 身代わり人形とは、ダメージを変わりに受け取る人形です。呪いにも対応しています。

「にい達がサポートしてくれます。メトロ・ギアのメンバー全員の分をお願いします」

「解りました。やってみます」

「ノノには、別のお願いがあります」

「はい」

「今まで、侵入した場所、監視した相手、暗殺した出来事を報告してください」

「・・・」

「任務だった事は、私も承知しています。強要されていた事も知っています。貴方に罪がないとは言いません。ですが、貴方の任務が何だったかを知る事は、今後のためになります」

「今後の?」

「正直、グランドマスターと言う人物の行動が読めません。元々、私はそれほど賢い訳ではないですからね。でも、馬鹿なりに、調べられる事は調べておきたいのです」

「解りました、量が多いので、まとめてから報告でもいいですか?」

「よんに手伝うように行ってあります。協力して行動してください」

「はい」




 新しく仲間にした二人は、それぞれ与えた役割をこなしてくれました。ナナの身代わり人形は、呪いとか、即死級の攻撃を受けたときに、身代わりに砕けてくれる優れものです。一人ひとりの、魔力を注がなければ機能しないので、各員一づつ用意して、メトロ・ギアに収納しました。

 正直、呪いとか、魔術に関しては、規格外のものがあると思うので、用心に越した事はありません。




「艦長は、慎重なんだな」

「臆病者と思っていますよね?」

「これだけのものを、用意して、まだ不安と言うのが不思議だよ」

 メトロ・ギアの政策をしている間に、北川君は私の事を艦長と呼びようになりました。

「剣と魔法の世界に、これは反則なのでは?」

「機神というロボットと戦うための力です」

「ここまでのものが、必要?」

「過剰な戦力なら、それでもいいでしょう。負けるよりは・・・」

「これが、負ける姿を、想像できないよ」

「負けるつもりは、ありませんからね」

「こっちについて、正解だったと思うよ」

「他にも、協力してくれる人がいればいいですが・・・」

「それなら、俺に良い案ある」

「どういうのですか?」

 北川君の意見は、中々面白いものでした。

「それをやると、メトロ・ギアの完成が遅れますね」

 資材が若干足りません。プラズマエンジンの実験もまだ終っていませんし、やるべき事は山済みです。

「先にこちらを仕上げますか?」

「有益な手段があるのに、見逃す事はできません。先に、その案を実行します」

「了解」




 北川君の案は、チラシをばら撒くというものです。もちろん、普通のチラシではありません。

 地面に落ちると、解けて消える自然にやさしい成分で出来たチラシです。

 その内容は、パイロット募集のお知らせ。

 ある場所で、パイロットを募集していますというもの。応募条件は異世界人であること。

 現状、この世界の人間に操縦できる仕様ではありません。魔力が必要で、異世界人は比較的魔力が多いので、新作CATの操縦が出来るのです。

 チラシには、私たちの世界で有名なロボットが書いてあります。白い悪魔です。

「あれは設定上、空を飛べませんからね・・・」

「艦長の世界では、そうなのですか?」

「と言うと、北川君の世界では空を飛んでいたのですか?」

「自由自在に、飛び回っていました。それに、これは何ですか?」

「平成になって繰られたシリーズの機体をモデルに作った、CATですよ」

「平成ですか・・・」

 同じ日本人ですが、北川君の世界と私の世界は違う歴史を進んでいます。

「機体銘は?」

「リバティですかね」

「まんまじゃないのかな?」

「元を、貴方は知っているのですか?」

「僕は、色々な世界を渡っているからね。これは見た事あるかな」

 神出鬼没な始穣香が、やってきました。

「カラーリングや、武装は変更していますよ」

「それでも、見た事のある人はいるんじゃないのかな?」

「それが、今回の目的です」

 ある程度の人が知っているものを飛ばすことで、注目を集めます。

「なるほど、これを操縦できるとなると、仲間になりたいという人が出てきそうかな」

「乗りたいのですか?」

「それを、聞くのかな?」

 不満げに、始穣香は嘆きました。元々、アンディで釣ったような子です。これを見て、我慢できるはずがありません。




 CAT”リバティ”




 人型兵器です。大型魔力電池を搭載しています。平成の自由なロボットを基礎としています。もちろんストライクな方です。

 火力は増大です。分離して攻撃する奴も、再現しました。魔法科学と呼んでも良い作業が出来ています。

 北川君も、のりのりで製作に協力してくれました。彼の作る魔道具は、中々のものがあります。

 人型兵器を作るにあたり、ナナの強力も助かりました。人形遣いの能力で、稼動に関しての不具合や、操作に関する基礎を作ることが出え来ました。

 解析機で解析は出来ても、運用するためには、練習が必要です。私に出来ない部分をサポートしてくれる人がいることは、物凄く助かります。




 駄々をこねる始穣香に押し切られ、リバティでのチラシ作戦は、お願いする事になりました。

 銀河帝国と聖王国を敵にしないために、それ以外の場所を飛行して、チラシ散布します。

 銀河帝国からは、問い合わせがありましたので、正直に報告してあります。

 作戦後、何処にも所属していない異世界人が、新たに5名やってきました。

 身元を確認して、その全員をメトロ・ギアに受け入れます。

 男性3人の女性2人。本来募集していなかったこの世界の住人も、10人ほど受け入れています。




 人材集めとしては、それなりの成果を上げた作戦ですが、世界的に大問題を発生してしまいました。

 自在に動き回る機神の存在。この世界の人には、脅威と見られてしまいました。

 それにより、色々と動き出した出来事があります。

 それに巻き込まれた私たちは、自業自得なのでしょうか?



 


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 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。


 

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