灰色の冒険者

水室二人

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第2法 裏編

臆病なくらいがちょうどいい

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 異世界で、私が何をしたいのか?

 まずは、私に仕掛けられた毒針を何とかすることだろう。十色の協力を得られた今、何とかなる希望が持てた。

 私にされたことの、報復をすべきだろうか?

 強力な能力を持った相手を、上手く扱う方法として、この国のやっている事は、一応筋は通っている、

 と言うか、異能者を扱うには、絡めてしかないだろう。どんな能力を持った相手が来るのか解らない異世界召喚は、諸刃の剣だ。危険な博打でもある。それを差し引いて得られる利益を考えて、特になると考えた結果だろう。 

 ちなみに、十色が自爆したときに、部屋にいた執事は粉々になって発見された。

 この部屋は、かなり強力な結界が張ってあり、内部からの爆発は、外に影響しなかったらしい。

 国としては、不祥事を隠したいらしく、一色十色は、一足先に元の世界に帰ったと言う発表があり、ほかの人はそれを信じた。

 私は、真実を知っているが取りあえず、沈黙を貫いた。まだ、行動に出るときではない。

 十色本人も、それで言いとっている。

「刈谷さん、この続きを見せてください」

「はぁ・・・」

 研究室の中で、十色はくつろいでいた。十色の協力で、倉庫の中にあったTVとDVDを再現した。

 ソフトも色々と出してある。さすがに、猫グッズは倉庫に無かったので、クッションを用意して、その上に寝転んでDVDを見ている。

「刈谷さんは、結婚してかかなにゃ?」

「どうして?」

「元の世界に、未練は無いのかなと・・・」

「私は、独身だったよ。色々と、つらいことがあってね」

「つらいこと?」

「付き合っていた彼女が、子持ちで、その子供が私の勤め先で万引きをした」

「ぅえぇ・・・」

「私は、彼女に子供がいることは知らなかったし、捕まえた子供が、私を共犯と言うんだよね・・・」

 今思い出しても、ひどい出来事だった。

「念のため、会話を最初から録音しておいたので、すぐに私の無罪は証明できたんだ」

 でも、その彼女とはそれで破局。子連れでも一緒になってもいいかと思ったけど、この時色々と無理だと思う出来事があった。

「小売店にいるときは、色々と人の醜い部分を見たからね、この出来事とあわせて、結婚とかどうでもよくなったよ」

「苦労したんですにゃ」

「したのかな?この辺は、多分私の心が壊れていた時期だからね。いっそ、異世界で暴れるのもいいかな」

「元の世界は、どうでもいいのですにゃ?」

「そうでもないよ。続きの気になる作品はまだまだたくさんあるし、クリアしていないゲームと、作りかけの模型もある。と思ったけど、模型とゲームは、再現できそうか・・・」

「何で、刈谷さんはこんなことできるのでしょうね?」

「それは、私も知りたいですね。後心残りは、両親のことでしょうね」

「どういうことです?」

「突然いなくなれば、心配するでしょう。年老いていますし、晩年を心配だけで過ごすなんて、寂しいじゃないですか」

「それも、そうですにゃ・・・」

「この辺も、何とかできないか調べてみましょう。この世界には、無理なことを可能にする魔法がありますから」

「うにゃ」

「と言うわけで、演算機を使って、色々と作るので、協力してくださいね」

「私の、体が目的にゃのね」

「否定はしませんよ」

 尻尾の付け根をぽむぽむとたたき、十色を悶絶させる。

「必要なのは、エネルギーと、情報と、戦力だな」

「ね、猫のための道具も、おねぎゃいするにゃ・・・」

 どうやら、この国の猫の間に伝染病がはやっているらしい。十色の協力の条件に、それの解決がある。

「解っています。それを含めた物を、考えましょう」




 最初に作るのは、エネルギーを集める手段。魔力充電器を作ることにした。先に作った魔力電気も改良して、容量を増やすことにした。

 難しい技術は解らない。だから、物凄くシンプルな方法で、容量を増やす。

「戦いは、数だ!」

「そうなのですにゃ?」

「単純だけど、正しいことの一つでもあるよ」

 数を馬鹿にしてはいけない。物量作戦は、立派な作戦の一つ。一つの魔力電池を、今出来る最大の数字で縮小する。それをたくさん集めて、繋げる。もっと上手くできる方法もあるだろう。でも、今はまだ時間が無いのでこの方法しか取れない。

「後は、情報収集用の道具を作らねば」

「ドローン?」

「あれは、目立つから、今は使えない。目立たない物から、考えよう」

「考えるだけ?」

「私たちが、どうやって監視されているのか、わからないからね。下手なことは出来ない」

「監視されてる?」

「私たちが、この研究室に入ると、誰かが外の部屋に中にいる。この中を調べようと、色々と試行錯誤している気配があるんだ」

「監視カメラでも、作ってみては?」

「部屋の中に、隠しておいたボールペンに気づいたんだ。後、部屋を出る時に仕掛けておいた物全てに対して、一度接触した形跡がある」

「・・・」

「こちらのわからない方法で、調べているから、性質が悪い」

「魔法ですかにゃ?」

「おそらくそうだろう。魔法に関しては、早急に調べるしか対策は無い」

「刈谷さんは、慎重ですにゃ」

「前も言ったけど、臆病なだけだよ。臆病だから、失敗したこともあるし、助かった事もある」

「なら、どうするにゃ?」

「情報よりも先に、戦力を優先するしかないだろう」

「戦力?」

「まずは、お金からはじめよう」

「お金は、戦力ですか?」

「資金力も力だよ。ただ、この国の人は欲しがっている情報をお金に買えるのは止めておく」

「ケーキの作り方で、昔の異世界人がの一人が巨額を得たらしいですにゃ」

「異世界生活の定番だな。私はその手の知識が無いから、まず無理だけど、再現した辞書だけでもかなりの利益になりかねない」

「使わないのですか?」

「この国の連中の、利益になりそうなことはしたくない」

「にゃっとく」

「でも、ある程度の資金は必要だから、変わった物を作ってみた」

 複製機を作動させ、出来上がったものを取り出す。

「これぞ、秘策の特性ポーションだ!」

 完成したのは一見普通のポーションだ。売店で売っている物をそのまま再現している。だけど、中身は別物だ。

「毒は無いから、安心していいぞ」

「麻薬?」

「その手の中毒性も無い、健全なポーションだ」

「それなのに、特性?」

「まずは、試しに飲んでみな」

 猫皿に、ポーションを入れてあげる。

「うみゃ!!」

 十色は、一なめして、そう叫ぶ。

 後に、この国が滅んだ原因の一つと言われる、特性ポーションが完成した瞬間だった。


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 小説家になろうでも投稿中。
 なろうのほうが進んでいるので、こちらも順次投稿予定です。




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