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「海賊たちの凱歌」編
152話 「ア・バンド殲滅戦 その5『僕の名は』」
しおりを挟む「リンウート! まだやれるか!?」
「はっ! 牽制くらいならばやってみせます」
「皆も一人で戦うな! 最低でも二人で当たれ! あのリーダー格は僕とバンさんでやる! まだ負けていないぞ! 気勢を上げろ!」
「おおおおおお!」
今は数の有利を生かして、テイカーたちと渡り合うしか方法はない。新兵たちも必死に応戦する。
ただし、やはりシダラが危険だ。
「なんだ? 本当にこんなもんか? さっきみたいなやつがいると思って警戒した俺が馬鹿みたいじゃねえか。兵士の練度もバラバラだし、やる気があるのかよ? まあいい。こっちはいつも通りいくか」
シダラが大盾を構えて、爆発集気。
凄まじい戦気が集まる。
「バンさん、潰すよ! 何かやってくる!」
「了解」
技の態勢に入ったシダラをスーサンとバンテツが止めにいく。
だが、真横から仮面を被ったブレイカーが跳んできて、スーサンを叩き落とす。
(新手! どこに潜んでいたんだ!?)
スーサンの誤算の二つ目は、サープ率いるブレイカーの存在だ。
テイカーが真正面から戦っている間に、ブレイカーは影に隠れてハピ・クジュネ軍の左右に回り込んでいた。
短期間のアジトとはいえ、ここは相手のホームタウンだ。建造物の場所も把握しており、どこに死角があるかも熟知している。
そして、スーサンたちの意識が正面に向かったところで左右から奇襲を開始。
テイカーと斬り合っている新兵の背後に近寄り、貫手で背中を突く。
「ぐぁっ! なんだこの仮面の集団は! 待て! この!!」
新兵がブレイカーを追うが、彼らは素早く逃げて再び土砂に隠れる。
「余所見はいけねぇな! お前らの相手は俺たちだぜ!」
再びテイカーが乱戦を仕掛け、また隙ができたらブレイカーが背後に忍び寄って攻撃してくる。
ブレイカーの数は七人と少ないが、全員が手練れであり、彼らの参入によって一気に戦況が変わってしまう。
(数の有利が崩された! 新兵では対応できないか!)
これが精鋭部隊だけの構成ならば焦ることなく対処できただろうが、新兵では経験が浅くてすぐに混乱に陥ってしまう。
ただし、これは偶然起きたことではなく必然。
シダラたちは奇襲を受けたにもかかわらず、いきなり逃げ出すのではなく、ハピ・クジュネ軍が攻めてくるのを待ち伏せていたのだ。
こうなれば立場は逆転。こちらも個の力で打開するしかない。
バンテツがブレイカーたちを強引に振り払いながら、シダラにたどり着く。
「技は出させん!」
戦槌で攻撃し、シダラは大盾でガード。
受け止められたものの、これで技は妨害できたように見えた。
が、手に違和感。
「…【鎖】?」
攻撃したバンテツの戦槌に鎖が絡まっていた。
直後、大盾から鎖が大量に放出。
バンテツだけではなく次々と他の海兵に向かって飛んでいき、手や足、あるいは胴体を束縛し、身動きを封じる。
剣王技、『鎖盾』。
盾から剣気で生み出した鎖を放ち、相手を拘束する因子レベル2の盾技である。
これを全方位に放出する技を『全囚鎖盾』と呼び、必要因子レベルは3に上がる。
シダラが使ったのはこちらであり、爆発集気を使って生み出した鎖は極めて頑丈で鋭い。バンテツの腕も鎖で縛られる。
「これしきのことで!」
「剣気で出来た鎖だ。無理やりちぎろうとすると腕のほうが切れるぞ」
「知ったことか!」
「一本じゃ足りないなら、もっとくれてやるぜ」
バンテツが力を込めるものの、盾からはとめどなく鎖が放出され、一度や二度引きちぎったくらいではどうにもならない。
そして、ここで最悪の敵が登場。
ブレイカーの幹部であるサープだ。
彼は無手ではなく、肘で固定するタイプの剣を両腕に装備していた。
特筆すべきは、その長さだ。
ぱっと見て七メートル以上はありそうな極めて長い刃を―――回転
鎖に絡まって動けない海兵の首が、一瞬で四つ宙に飛ぶ。
その次にサープが回転して刃を振るった時には、また三つほど首が飛んだ。
(馬鹿な…! 一瞬でこれだけの数を! 警備兵じゃないんだぞ! 訓練を積んだ海兵なんだ!)
これだけでもスーサンにとってはショックだが、さらに衝撃的な言葉が出てくる。
サープはシダラが生み出した鎖の上に立ち、周囲を見回すと―――
「シダラ、敵の本隊はどこだ? こいつらは偵察兵か?」
「―――っ!!」
彼にとってみれば、この程度の相手は『軍隊』の範疇には入らないのだろう。
「わからん。この先にいるのかもしれねぇな」
「さきほどのような怪物がまだいるやもしれぬ。雑魚にかまっている暇はなかろう」
「わかってるよ。これから始末するところだ」
「だが、雑魚とはいえ軍隊だ。こうした相手と戦うのも懐かしいものだな。『元騎士団長』としては高ぶるものか?」
「ふん、こんな生ぬるい戦場で何の感傷に浸れってんだ。あの地獄に比べれば、ここはお遊びの場だぜ!」
「では、さっさと終わらそうか。指揮官を殺して瓦解させる」
サープが跳躍して狙ったのは、剣気の棘で身体中から出血しているリンウートであった。
弱った相手を狙う意味もあったが、この中で一番経験が豊かで落ち着いている者が彼だったため、指揮官と認識したのだろう。
サープが剣で攻撃。鋭い刃が袈裟懸けに襲ってくる。
リンウートは槍で防御するが、体力が低下していて完全には防げない。
ざっくりと肩が斬られて、さらに出血。
「ぬぐっ…力が入らぬ…」
「リンウートはやらせない!」
ブレイカーに邪魔されたおかげで鎖に捕縛されなかったスーサンが、リンウートの前に立つ。
他の者はテイカーたちを相手に手一杯なので、今この場で満足に戦えるのは彼だけだ。
「若様…ここは撤退を!」
「嫌だ!」
「やつらの強さは異常ですぞ! もはや盗賊レベルではありません! 我らが殿を務めます!」
「断る! それでは悪を逃がしてしまう!」
ここでスーサンの若さが出た。
優れた戦術眼を持っているはずだが、仲間がやられたことに感情が抑えきれず、正しい状況判断ができなかった。
そんなスーサンにサープが冷たい視線を向ける。
「戦士に年齢は関係ない。わが前に立つのならば死ぬがいい」
サープが横薙ぎの剣でスーサンを攻撃。
スーサンは無刃剣で防御。
素早い反応で、何度も襲ってくる刃を剣で打ち払う。
(鋭く速いけど、あの鎧の男よりも軽い。これならば僕でも対応できる!)
スーサンの持ち味はフットワークの軽さと器用さだ。
武人のタイプでいえば、どちらかといえばハプリマン寄りといえるだろう。
剣技のキレも悪くなく、上手く対応できているように見えたが―――ガコンッ
剣が突如として折れたと思ったら、折れた側の刃がそのまま首に向かってきた。
「っ―――!」
スーサンは屈んで回避するも後頭部に鋭い痛み。
皮膚がばっさり斬られて、じんわりと血が背中に垂れてくる。
「今のを初見でかわしたのは、王を入れて何人目だったか。若き才能を殺すのは忍びないが、より強き者が生き残るのは世の必定。弱者は死ぬしかない」
サープが腕を振ると、ジャララっと剣がいくつもの小さな刃に折れる。
否、最初からこれは剣ではない。
よく中国武術で使われる多節棍のように、九つに分かれた刃が『節』によって繋がっている『九節刃』という特殊な武器である。
それを剣気を放出することで剣状にして使ったり、あるいは今のように節を使った変則的な鞭に近い動きをさせることもできる。
「次はかわせるかな?」
サープが九節刃でスーサンを攻撃。
スーサンは無刃剣で切り払う。ここまでいい。
しかし突然バラバラになった節が、死角から襲ってきて背中に被弾。
剣気の質が高いため甲冑すら簡単に切り裂き、中にまで刃が突き刺さってインナーが赤に染まる。
これでまだ致命傷に至らないのは、スーサンの戦気も同じく質が良いためだ。
「このっ!」
スーサンの武器は剣だけではない。
術式銃である『インジャクスマグナム〈無弾銃〉』を取り出し、サープに発射。
白いレーザーのような魔力弾がサープを襲うが、軽々と回避される。
それどころかシダラが作った鎖を足場にして、狭い空間を右に左に跳躍し、こちらに的を絞らせない。
そして、少しでも気を抜くと九節刃が襲ってきて被弾。
サープは両手に九節刃を装備しているため、左右から襲われるとどうしても反応が難しい。
いつしかスーサンの赤い鎧は、流れた血でより生々しい色合いに変わっていた。
(くっ…! 軌道が読めない! 銃も当たる気配がない! 強い…! この二人は別格だ! これが本物の武人の強さなのか! 訓練では兄さんたちは手を抜いてくれていたんだ)
スーサンには二人の兄がいるが、どちらも強い武人であった。
だが、目の前の敵は兄弟の情を持たない純粋な殺意の塊だ。思わず背筋が寒くなる。
「サープの旦那、俺にはあんなことを言っておいて、自分が一番遊んでいるじゃねぇかよ」
「あまりに弱すぎて何か策があるのかと疑っていただけだ。だが、ただの杞憂だったかもしれぬ。本格的に仕留めるとしよう。いつものアレをやるぞ」
「任せておきな。ぬんっ!!」
盾から発せられた炎が鎖を伝い、捕縛した相手を燃やしていく。
剣王技、『縛炎鎖盾』。
因子レベル4で使える盾技で、『鎖盾』で縛った相手を火の上位属性である『炎気』で攻撃する技だ。
動こうとすれば鎖によって削られ、動かなければ甲冑ごと焼かれる。一瞬で倒す技ではなく、じわじわと相手を弱らせるタイプのものだった。
だが、これが効果的なのは言うまでもない。
焦ってもがけばもがくほどダメージを負い、そうして隙を晒せばテイカーやブレイカーに攻撃される。
「こ、こんなところで…うああっ!」
「お、おれは……がはっ…」
「ハピ…クジュネに……栄光…あれ!」
あっという間に隊の数は半減。十五人程度にまで減ってしまう。
生き残った兵も傷を負ってボロボロ。バンテツも炎に包まれながら、シダラが鎖以外の行動を取れないようにするので精一杯だ。
(全滅…する)
スーサンの脳裏に絶望の影がよぎる。
想定以上に相手が強すぎた、やはり精鋭で臨めばよかった、アンシュラオンを待てばよかった等々、後悔の念ばかりが浮かんでくる。
そこにサープの九節刃が襲いかかる。
スーサンは無刃剣で弾くが、節で曲がった刃が―――リンウートを切り裂く。
「ぐうっ…!」
「なっ…リンウートを狙ったのか!」
「強くなければ生きている価値がない。戦場では弱者から死んでいくものよ」
「そんな理屈、認めてたまるか! 弱い者を守ることこそ強者の責務だろう!」
「愚かなり。随分と甘い環境で生きてきたようだな。だから才能を生かしきれない。そのまま後悔して朽ちよ」
サープは常にリンウートを狙ってくる。
それを防ごうとスーサンが間に入るが、間合いが長いうえに変化する九節刃によって傷が増えていく。
「はぁはぁ…若様…。このままでは全滅です。私が仕掛けて動きを止めます。この老体ごと敵を…!」
「そんなことが…そんなことができるわけがない!」
「若様!!」
「っ!!」
「ハピ・クジュネに仕えて六十二年。十二分に恩恵を賜りました。私は何よりもあの都市が好きなのです。わが故郷のためならば、この命も惜しくありませぬ!!」
「待て、リンウート!」
リンウートは戦気を激しく燃やして突っ込む。
サープは九節刃で迎撃。
刃がリンウートを切り刻むが、それでも老体は止まらない。
傷ついた身体とは思えないほどの剛力で槍を振り回し、シダラの鎖を切り裂いていく。
「ちっ、死兵か。『オーバーロード〈血の沸騰〉』を引き起こしてやがる」
「この程度は問題ない。すぐに仕留める」
武人の因子の中には、戦いにおけるすべての情報が眠っている。
因子の覚醒とは、その眠った力を引き出すことであり、新たに覚えることではない。
であれば、強制的に因子の覚醒を促し、力を意図的に引き出すこともできるはずである。
その一つが、『オーバーロード〈血の沸騰〉』。
因子を暴走させることによって、【死を対価にして】普段以上の力を出す最後の手段だ。
一度過剰に読み込まれた因子は破壊されて二度とは戻らず、99%以上の確率で600秒以内に死ぬ。
誰にでもこれができるわけではないが、死を覚悟した騎士や兵士によく起きる現象であるため、まさに『死兵』と呼ばれていた。
だが、力を引き出したとはいえ、それ以上に強い力には勝てない。
サープによって強い剣気が練り込まれた九節刃が、紐のように身体に巻きつき―――
「若……さま……ご自分を信じるのです。あなた様はもっと強くなられる。ですから今は…」
―――切断!
バラバラになったリンウートが絶命。
人とはあっけなく死ぬのだと思い知らされる。
「ぁっ…ぁぁ……」
「ふっ、無駄死にだったな。だが、それもよかろう。死は強者であろうが弱者であろうが平等に訪れる。死に方を決められるのは幸運なことだ」
「ぐうううっ…!! お前たちは…! 絶対に…許さない!!」
「さぁ、向かってくるがいい。お前も同じようにしてやろう」
(リンウート…!! 僕のせいで!! 僕は、僕は、僕は!!!)
激しい怒りに頭がどうにかなりそうになる。
今すぐにでも向かっていきたい。激情のまま切り伏せてやりたい。
そんな感情に支配されそうになるが、ここで疑問を抱く。
(どうして向こうから来ない? これだけの技量ならば、僕を倒すくらいは簡単なはずだ)
当然アンシュラオンの存在を気にして、力を温存していることもあるだろう。
しかしながら、もっと直接的に攻撃してきてもいいはずだ。もっと大胆に攻めてもいいはずだ。
では、なぜそれをしないのかといえば―――
(まさか【僕を警戒】している? 自意識過剰かもしれないけど…あの盾の男もそうだった。あえてリンウートを攻撃しつつ僕を誘う動きをしていた。なぜだ? それは唯一彼らを倒せるのが僕だからだ)
アンシュラオンの評価からすると術具込みとはいえ、スーサンの能力はシンテツやバンテツよりも上である。
たしかにまだヒヨッコ。若輩者。元服したばかりの未熟者。だが、秘めた才能は別格だ。
強者は強者を知る。
サープの発言からも才能を警戒されていた節はある。だからこそ周りから削って若さによる短気を起こさせ、動きを単調にして弱体化させてきた。
サープにこれだけ攻撃されても、いまだ致命傷を負っていないことこそ、実に恐るべきことなのだ。
それに感づいたリンウートは、自ら命を絶つことで『枷』を外そうとしたのだろう。
(リンウート…すまない。…いや、違うんだ。違う! そうじゃない!)
「僕はリンウートを誇りに思う!!」
「…あ?」
「死んでくれてありがとう!」
「なんだ…? 気でも狂ったのか?」
シダラたちが困惑しながらスーサンを見る。
死んでくれてありがとうなど、アンシュラオンがグラス・ギースの領主に言うような台詞だ。けっして親しい者に放つ言葉ではない。
だが、彼は紛れもなく正気であり、本気の目で『旗を掲げる』。
(リンウート、今僕はようやく思い出した! 僕たちの真なる戦い方を! それをあなたが教えてくれた! ありがとう、わが同胞よ! もう僕は迷わない!)
「誇り高き海の戦士よ! 旗を掲げよ! 掟を思い出せ! 一人殺されたら百人殺せ! 我らは海賊! 力によって海路を生み出す者だ! 母なる海原に旅立った同胞の魂を糧にせよ!」
スーサンの背中に【旗】が見える。
帽子を被った骸骨に剣、そして猛々しい歌が刻まれた海賊の誇り。
彼らは歌う。魂の歌を。
彼らは戦う。道のために。
彼らは死ぬ。明日のために。
その言葉に海兵たちがはっと顔を上げる。
リンウートが死んで気落ちしていた戦場に、スーサンの声が響き渡る。
いや、彼はもうスーサンではない。
「ハピ・クジュネ領主、ガイゾック・クジュネが第三子、第三海軍司令官である【スザク・クジュネ】が命じる! 誇り高き海の戦士たちよ、勝手にシマを荒らしたクズ野郎どもを―――」
―――「皆殺しにしろおおおおおおおおお!!!」
ドンドンドンッ!!
ドンドンドンッ!! ドンドンドンッ!!
ドンドンドンッ!! ドンドンドンッ!! ドンドンドンッ!!
真夜中の廃墟の街で、地鳴りが響く。
砲撃の音ではない。発信源は海兵たち、その足元。
鎖に縛られた者たちが大地に足を叩きつけ、力強く踏み鳴らしているのだ。
「感じる! 感じるぞぉお!! ガイゾック様と同じ力!! これが俺たち親分の―――心意気だぁあああああああ!!」
バンテツがシダラにしがみつき、持ち上げようとする。
鎖で縛られているので身動きが取れないはずだったが、何度鎖に絡まれようが火で焼かれようが、その勢いは止まらない。
両手でがっしり掴むと―――バックドロップ
シダラの顔面が大地に叩きつけられる。
「やろう…!! なめた真似を…!」
「なめた真似をしてくれたのは、お前らだ!」
バンテツが鎖を引きちぎり、戦槌でシダラの盾をぶっ叩く。
今までは簡単に防がれていたが、シダラの足が浮き上がり、三十メートルほど飛ばされて土砂に埋まった建造物に激突。
砂埃を上げながら壁に大きな穴が生まれた。
「バンテツに続け!」
スーサンもとい、スザク・クジュネが鎖を断ち切って海兵たちを解放。
「てめぇら!! よくもやってくれたなあああああ!!」
「ボコボコにしてやるぜ!!」
「おかしらの命令だ!! 全員ぶっ殺す!」
「な、なんだぁ!? こいつら、雰囲気が変わったぞ!?」
「死ねや、ごらぁああああああ!」
海兵たちのほうがゴロツキのような口調になり、荒々しく敵に襲いかかる。
攻撃も力任せで滅茶苦茶だ。これではどちらが賊かわからない。
がしかし、明らかに戦闘力が向上しており、ブレイカーが相手でも動きに対応してくる。
「バンテツ、そっちは任せる! 僕はこいつを殺す!!」
「了解です、おかしら!」
「さっさと降りてこい、仮面野郎! リンウートたちの仇だ! お前を切り刻んで死体を晒してやる! それから海に沈めて魚の餌だ!」
「ふん、どうやら眠れる獅子を起こしてしまったらしいな。だが、我らは罪あらざる者。けっして負けは許されぬ。負ければ罪を背負うことになるのだ」
「それならば、お前たちはやはり罪人だ! ここで死ぬんだからな!」
スザク・クジュネ、十五の夏。
荒ぶる海賊としての資質を開花させる。
世界はまた一人、新たな英雄を生み出した。
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