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第07章 チームエイジ

第25話 魔族達の紹介

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 騒いでたと思ったら、考え込むように押し黙る四人の魔族。

「あのさ、さっき言ってた鉱物素材の場所って……」
「それだ! そうです、エイジ様も一緒に鉱物素材を取りに行きましょう」
「なるほど! そうだな、そうです、エイジ様。一緒に行きましょう」
 なんだ? こいつら。いい事思いついた、みたいに言うけど、そのいい事は俺にとっては悪い事じゃない? ビビリセンサーにビンビン来てるんだけど。

「うーん、もちろん場所は知っておきたいけど、先にやらなければならない事が沢山あってね。エルダードワーフの件は、優先順位が低いんだよ。【星の家】と【星菓子】と居住区が優先順位は上だし、砂糖の件もある。調味料をフィッツバーグの町に普及させる件もあるし、俺が動けるのは少し先になるね」
「分かりました。では、明日連れて行って頂けるという居住区で我々も最大限ご協力させて頂きます」
「左様ですね。早速今からでも下見に行ってきます。さっさと終わらせてしまいましょう」

 なんだなんだ? いつも以上にやる気を出してるね。場所も分からないのに、どうやって行くのか知らないけど、そこまで慌てなくてもいいんだよ。あそこはヨウムの力と衛星の力で、余所者は辿り着けないようになってるからね。

「俺は生産に関しては役立たねぇからな。他にやるこたぁねーのかい?」
「ヘリアレス! もう少し言葉を弁えろ! 不敬すぎるぞ」
 そうだそうだと言うレギオン族の二人も含めて、別にいいからと俺が諌めた。
 一応、奴隷にはなってるけど、俺は奴隷なんて望んでないから。成り行きでそうなってしまったけど、もっとフレンドリーに話してくれてもいいんだよ。

「そうだなぁ、剣術や槍術を教えるのが上手いって聞いてるから、本当なら【星の家】の子供達に教えてもらうのがいいのかもしれないけど、今はプリやシェルもいるからね。ゼパイルさんの工房でも行って武器のアイデアでも考える?」
「それは面白そうですね。では、その子供達の鍛錬を見学してから工房を覗いてみましょう」
「俺もそっちの方がいいな。必殺技でも教えてやるか。【抜刀微塵斬】あたりがいいか。ビランデルも【疾風五連突】を教えてやればいいんじゃねーか?」
「それでは容易すぎるだろう。【旋空乱撃】あたりがいいだろうな」
「お~? オーガの群れを一蹴できる【旋空乱撃】か。だったら俺は【二刀乱鬼閃】あたりにするか」

 盛り上がってるとこ悪いが、たぶんうちの子達にはどれもできないと思うぞ。
 程々に頼むよ、剣豪を目指すんじゃないんだからね。

「…明日ちゃんと決めるけど、ビランデルとヘリアレスは明日はここでいいかな。ガレンダとタレランは居住区だね。あとは今夜からの寝る場所だけど……」
 クラマとマイアをチラ見したが、ここで一緒に寝かせるのに賛成するはずもなく別で家を建てるしかないな。

「レッテ山の山頂でよいじゃろ。此奴こやつらは目立ってはいかんのじゃろ? ならば山頂に住めばいいのじゃ。あそこなら誰も来ぬし、エイジの結界でも施してやれば安全じゃろ」
「レッテ山の山頂って…強い魔物がうじゃうじゃいるんじゃ。寝るのはいいとしても、往復の道のりはどうするんだよ。確かに目立たないのはいいと思うけど」

 レッテ山って上に登れば登るほど魔物が強くなるんだろ? いくら魔族が強いと言っても、そりゃ可哀想だよ。死ぬんじゃないぞ、関わりたくなかったとはいえ、死んで欲しいなんて思ってないからな。

「ほほぉ、この辺りで最凶と噂されるレッテ山の山頂ですか。修行には打ってつけの場所ですね」
「ああ! そりゃ楽しそうなとこだな。俺はそこでいいぜ」
「私も魔族の端くれ、一人では無理でもタレランと協力すれば行けるでしょう」
「そうですね、エイジ様に頂いた武器もある事ですし、なんとかなるでしょう」

 ホントか? そこまで言うなら用意はするけど、死ぬなよ。

「安心せい。レッテ山の元主のわらわが許可するのじゃ。此奴こやつらなら大丈夫じゃ。但し、言うておくぞ。山の向こう側には行ってはならぬからの」
 山の向こうか。そういえばどうなってるんだろ。行くなと言われれば行きたくなるのが人の性だよな。俺は行かないけど、こいつらなら行っちゃうんじゃない? 特にラングルド族の二人なんか行きそうだよね。
 だって、もう顔がニヤついてるもん。

 衛星に頼んで山頂に大きな館を作ってもらい、【星の家】のように魔物が入って来れないようにしてもらった。
 麓で頼んだのでレッテ山には登ってないけど、衛星なら抜かりなく作ってくれてるだろう。
 場所だけは魔族の四人に伝えて、後は自力で行ってくれと言ったんだけど、それでよかったみたい。明朝に来てもらうように頼んで四人の魔族を見送った。
 クラマが言うから大丈夫だと思うけど、レッテ山ってキッカ達も山頂までは行ってないはずなんだけどな。死ぬなよ。

 翌朝、フラグを立てまくってやったにも関わらず、魔族の四人は元気な顔を見せた。
 朝食を済ませると、魔族の四人にクラマとマイアを伴って、居住区へ向かった。
 あ、昨夜、魔族を見送った後に、エルダードワーフのコウホウさんに何と言われて引き止められていたのか、クラマとマイアに尋ねたんだけど、二人共頑なに教えてくれなかった。
 今度、コウホウさんに会ったら絶対に聞いてやろう。

 居住区に行き、ロジャーとロイドに連れて来た六人を紹介した。初めの顔合わせだから念の為、魔族は全員連れてきた。【星の家】には夕食の時の方がいいだろ。ついでに区長も決めておいた。ロジャーにやってもらう事にした。ロイドには副長としてお願いした。
 二人共恐縮仕切りだったけど、二人ならなんとかやってくれるだろう。

 クラマとマイアは【星の家】で見知っていたけど、あまり話す機会もなかったようので改めて紹介しておいた。
 その後は食堂に行き、料理担当者と話をつけた。
 エルダードワーフとの交換に使う分だ。ここで作られる料理は調味料をふんだんに使っているから俺も美味しいと思える出来映えだ。既にシスターミニーもここの料理係に任せて【星の家】に引き上げている。

 毎日、少しずつでいいから収納バッグに貯めてもらって、数を確保してもらうのだ。その方が種類が豊富だし、同じ料理ばかりにならなくていいとガレンダが進言してくれた。
 本当に彼らは頭がいいのだ。思い込みすぎる分と、使う方向さえ間違えなければ凄く頼りになるのだ。

 次に、酒蔵を覗いた。
 ここでもエルダードワーフとの交換分を確保してもらうように言って、専用の大樽を確保した。日本酒はこの世界に無い酒だからアルコール度数が低くてもエルダードワーフも喜んでくれるだろう。

 醤油蔵については、自分達で楽しむだけにして、他には出さないようにした。たぶん、誰にも真似だろうから供給が追いつかなくなると思うんだ。もっと大規模にできるようになったら世に広めてもいいけど、自分達の分は確保しないとね。
 ウイスキーやブランデーも同じ理由で広めたくないけど、少し出すだけなら希少価値も出ていいかもしれないので、領主様だけに少し融通しようと思ってる。領主様には今回も色々とお世話になったし、今後もお世話になるだろうから、少しはゴマをすっとかないとね。寝かせれば更に価値が上がるのがこういった発酵商品だから、余ったら地下室でも作って貯蔵すればいいかな。

 最後に調味料工場に行って、ある程度在庫も貯まって来たのを確認した。そろそろ出荷してもいいだろう。
 魔族の四人には、出来る限りこの居住区に顔を出してもらうようにして、ここからの輸送も頼む事にした。
 これで魔族達の仕事は、バーンズさんとエルダードワーフの繋ぎに、ここからフィッツバーグの商業ギルドへの配送と、時間のある時に【星の家】の子達の指導。あとは、居住区のロジャーとロイドの事務補佐をしてもらうように決めた。
 移動はヨウムの補助があるから楽だし、事務と指導は二人ずつ分かれて分担するから仕事量としては然程多くない。
 居住区には空き家も多いので、こちらで寝泊りする事も了承した。ガレンダとタレランがここを拠点としたいと願い出たからだ。事務処理の書類を見た時からウズウズしてる様子はあったが、二人はこういう仕事が好きなのだろう。人手不足で困ってるこっちとしては大歓迎だ。
 しかし、方向性を間違わないように見張る仕事が増えたロジャーとロイドにとっては、助かった部分と面倒な部分で、どっちがよかったのか。二人にはいい経験になると思うので、これからの糧にしてほしいもんだね。

 これだけ整えれば、放置してもいいかな。
 そろそろ地図の探索に行きたいんだよね。
 ビランデルにも地図に印は付けてもらったので目指す場所は十箇所。これが終わったら衛星がどれだけグレードアップするのか。興味深くもあり、恐ろしくもあり、だな。
 
 その後は、居残ろうとするレギオン族の二人を無理やり連れて【星の家】に戻った。
 【星の家】では、魔族である事はもちろん伏せて、院長先生に紹介して、夕食の時に全員揃った時に紹介した。
 あとは、【星菓子】と思ったけど、【星菓子】に砂糖や小麦粉を届けてるのは【星の家】の子達だから、態々紹介しなくてもいいだろう。

 後の事はそれぞれの担当者に任せて、明日から地図探索に出掛ける予定だ。
 お供はクラマとマイアの二人になるだろうな。


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