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第11章 プロジェクト
第05話 エルフ中央部
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あのー、これって、あまり関わりたくないところに来てません?
先導する衛星を疑わずノワールに追わせていたら、来た事はないけどなんとなく見覚えのあるところに来てしまった。
しかも、状況としては絶体絶命と言ってもいいぐらいで。
『タマちゃん?』
『はい、すべて掌握済みです』
なにが? なにを掌握してんの?
俺達一行の前にはズラ~っと並んだエルフがいた。
手には思い思いの武器を持ち、正面を塞ぐように横列に何列も並んでいた。
チラっと見えてしまったが、俺達の両横にも伏兵が潜んでいるようだ。これだけの数がいるんだから、たかだが四人のために隠れる必要も無いと思ってるんだろう。
うん、俺も正解だと思う。
「エイジ様? これはどういう事か説明はもらえるのよね?」
「排除しますか、逃げますか? 殺りますか」
「お任せください」
なんで逃げる以外は肯定になってんだよ! 排除と殺るは同じ意味だし、決定してるし!
俺に聞く意味あるの?
「ちょちょちょーっと待ってね。今、確認するから」
向こうも並んでるだけで通さなくしてはいるけど、今のところ何のアクションも無い。
いきなり攻撃されると困るけど、まだ動く気配は無い。
『タマちゃん! タマちゃんの誘導通り森に降りたら囲まれたじゃない! さすがにこれはヤバいよ! なんでこんなとこに連れて来たの!』
『すべて掌握済みです』
『だから何を掌握してんの!』
『エルフです』
『エルフ? エルフってこの目の前にいるのは全員エルフだよね? 凄く睨まれてるんだけど?』
『問題ありません。すぐに解決します』
すぐに解決するって、俺達が負けて解決じゃダメなんだよ?
「エイジ様? 確認って誰に?」
「あー、いやー、そのー、なんだ。状況の確認って意味だよ」
「そんなの見たまま以外に何があるの?」
「そうだよね、たしかにそうだ。大勢のエルフに囲まれちゃってるね」
「だから殺るって了解待ちなんだけど」
「や、殺らない殺らない! ぜーったいに殺らないよ。殺っちゃダメだからね!」
「だったら逃げるの? 私達は逃げないわよ?」
「うん、逃げるのもナシ。もう解決するはずだから!」
タマちゃんがそう言うのだから俺としては信じるしかない。
だよね? タマちゃん。信じてるよー!
解決する宣言をしてから三秒。たった三秒なのに、非常に長い長い三秒だった。
悪魔の三人は、もう堪えきれずに飛び出しそうになっていたし、踏みとどまれーと気が気じゃなかった。
しかし、その時は来た。エルフ全軍が急に跪いた事で事態が急転したのだ。
見ると両サイドの伏兵まで跪いていた。これが俺達にとって、いいのか悪いのか分からないが、戦闘になる危機は去ったと見ていいかもしれない。
正面のエルフ軍の真ん中が割れ、奥から何人かの偉そうな人達が歩いて出て来た。
特徴的な尖った耳からエルフだろうとは分かるけど、エルフの偉いさんか? 俺、そのエルフの偉いさんから逃げて来たんだけど。
やっぱりアカン展開か?
「よお、お越しやす。話は聞いてますさかい、こっちにおいなはれ」
「「「「……」」」」
何語?
なーんとなく意味は分かるんだけど何語なんだ? この世界の言葉とは思えないんだけど。
「あれ? うちの声、聞こえてまへんか?」
「「「「……」」」」
「はれ、おかしおすなぁ。声は届いてますやろぉ?」
「えーと……もしかして京都弁?」
「やーっぱり聞こえてるやないかー。あんさん、よぉ知ってまんなぁ。でもな、京都弁やあらへんねん、大阪弁や。それにな、京都弁て言えへんねやで、京言葉って言いまんねや。うちのもな、商い言葉って言うたりしまんのやで」
「「「「……」」」」
どーでもいいわ! 一気に場の緊迫感が無くなったよ。
「あっ、こいつらの事は気にせんといてや。こいつらには出迎えろっちゅーただけやのに、なんや物騒な格好しとるさかい、うちの言うた意味がよぉ分かっとらんのやろうさかいな。アホはほっとけっちゅーこっちゃ」
敵意は無いと見ていいのかな? 話しだけでも聞いてみようか。
「ところで、どちら様なんでしょうか。エルフの方ですよね? 僕はエイジと言いますが、もしかして……」
「エイジはんか、ええ名前やないか。うちはな、花子言いまんのや。あんさんの思-たはる通り、うちとあんさんは同郷やでぇ。それとな、エルフでええねんけど、正確にはホーリーエルフちゅーやつみたいやで」
この展開のいじり方が分からない。どう対応すればいいんだ? ホーリーエルフ……聞いた事が無いな。
この女の人、まぁエルフ―――ホーリーエルフらしいんだけど、今まで見たエルフの中では最高に美しい。今まで俺の中での上位はマイアかアッシュでナンバーツーかスリーだったんだけど、この人はその上を行くか。
ナンバーワンはもちろんトレーズ様だよ。
でも、この話し方で損してるよね。美しさが半減だよ。もうギャップが激しすぎて。美女エルフがコテコテの大阪弁って…無いわ。
「あの、そのハナコさんが僕達に何か用なんでしょうか」
いきなりエルフ軍に囲まれたのも気になるけど、同郷のしかもエルフが出てくるなんて予想外すぎて、何の用があるのか思い浮かばないよ。
「まぁ、ここではなんやし、席も用意してるさかい、まずはおいなまし」
おいでって事でいいかな? 付いて来いで合ってるよね?
「付いて行けばいいんですね?」
「そやそや早よ行こ。こんなとこおっても何ーんも出ぇへんで」
「はい、分かりました。じゃあ……ん? アッシュ?」
「……無理かも」
「どうしたの? 顔色もあまりよくなさそうだけど」
さっきまで普通だったのに、急にアッシュの具合が悪くなったみたいだ。
ザガンとダンタリアンも青い顔をして震えてるように見える。
どうしたんだ? さっきまで『殺る』とか物騒な事を言ってたのに、急に大人しくなっちゃって。
「あー、それはうちのせいやな。安心しい、うちは争い事は好かんやさかい何ーんもせえへんえ。あんたらも一緒においなはれ」
「あなたのせい? なんですか?」
「はれ? エイジはんは分からしまへんか? うちはエルフの中でも聖の属性っちゅーのがえらい強いらしいんやわ。ほれ、なんちゅーたかな…せや、ハイエルフや。そのハイエルフっちゅーやつよりツーランクぐらい上らしいで。スリーランクやったかいな?」
鑑定しはったらええねん。という言葉をもらったので遠慮なく鑑定させてもらうと、種族がホーリーエルフとなっていた。
ステータスを見ると、全てにおいてアッシュの1.5倍から2倍あった。
俺の知る中ではトップだったアッシュの1.5倍から2倍なのだ。そりゃ悪魔達もビビってしまうか。
「そっちの人らは悪魔はんやろ? うちとは相性最悪やさかいビビってはんねやね。怖ないさかい、一緒においなはれや」
ホーリー―――聖なる。そうか、聖属性だから悪魔にとっては苦手なんだ。そういやプーちゃんと会った時にもそれらしい事を言ってたな。
苦手属性で更にステータスでも敵わないんだったらビビってしまうか。
「ビ、ビビってなんかないわよ! お前達も行くわよ!」
「は、は、はい……」
完全にビビってるね。いつも偉そうにしてるアッシュがビビる姿って新鮮だな。
「な、なに笑ってんのよ!」
「……いえ、なんでもありません」
怒られちった。ビビっててもアッシュはアッシュだったよ。
花子さんの先導で付いて行く俺達。
俺を先頭にアッシュが震える腕を組んでくる。
その後ろを重い足取りでザガンとダンタリアンが付いて来て、最後尾からノワールが付いて来る。
そして連れて行かれたのは、前に行ったエルフの村と同じく巨大な樹のある場所だった。
これだけ巨大な樹なのにある程度近くまで来ないと見えないのは、認識阻害の何かをしてるのだろうな。
ここは村と違って巨大樹が一本だけあった。
ただ、村の五本を合わせても足りないぐらいの巨大樹だった。と思う。
衛星が比較図を紙で出してくれたけど、目の前にいたらどっちも壁にしか見えないし、どっちも凄く大きいでいいと思う。
ただ、案内されたのは巨大樹を取り囲んでいる集落の一室。そこにある豪華な客間に通された。
用意されたソファーに腰掛け、改めてそれぞれの自己紹介をした。因みにノワールは外で待機だ。
いつもなら何処かに行ってしまって、呼び出すと再び現れるんだけど、ここでは外で待ってるそうだ。
「まぁ、あんまりお構いできまへんけど、ゆっくりしとくんなまし」
「あ、ありがとうございます。それで、何か用があったんでしょうか」
「まー、よぉけ惚けはってからに、テンゴがうまいでんなぁ。いけずな性格しとったらモテしまへんで? こんだけの事されただけで、性格の悪さが滲み出てまんのに」
そう言う花子が示す先には、書類が山積みしてあった。
見たところ紙の山のようだったので、紙を使うって珍しいなぁと思った程度だった。
「えーと……なんの事でしょうか」
「もうええっちゅーに。しかしまぁ、これだけよぉ調べはったわ。細かい性格してはりまんのやろなぁ。各村の人口にその内訳やろ? 上層部の汚点の数々に棲家の弱点。あとは何や知らんけど、改善策まで書いてあったなぁ」
聞くところによると、これだけ調べつくされたら一夜にしてエルフが滅んでしまうぐらいの事が書かれてたようだ。
俺には全く身に覚えが無い。という事は…衛星だな。悪魔も関わるはずがないもんな。
山となった書類を一部見せてもらい、納得した。
本当に細かく詳細に調べ上げられていた。
種族としては、下からエルフ、ハイエルフ、エルダーエルフ、セイントエルフ、ホーリーエルフとなっていた。
一番下のエルフから数えるとホーリーエルフは四つも上じゃないか! 何が二つか三つだ! この人もかなり適当な人だぞ。
まぁ、それは置いておくとしても、エルフは魔力が苦手なのか。
聖属性と魔属性は対極の存在だもんな。でも、アッシュが苦手なんだったら、花子さんも苦手なんじゃないの?
それも書いてあった。
彼女達エルフはこの巨大樹のある聖域では魔属性が効き難く、聖属性が増幅される。しかもいくら使っても底が無く、際限無く使えるのだそうだ。
逆に、テリトリーから離れると弱体化するようだ。一ヶ月程度なら問題は無いらしいが、それからは徐々に弱体化して行くみたいだな。
そこで、彼女達を守っているのが、聖なる巨大樹のようで、この巨大樹が聖なる気を発してるようだ。
備考にはアッシュ達悪魔なら近寄るだけでダメージを負うような事も書いてある。
それで、その聖なる巨大樹は、魔力を吸収して聖なる気を排出してるようなんだけど、取り込む魔力が無くなると枯れてしまうのだ。猶予としては一年。一年間魔力を吸収できなければ枯れてしまうのだ。当然、魔力が吸収できなくなると聖なる気も出さなくなるから、枯れるまでの一年間は猶予にならない。
周囲から魔素を排出する樹を無くしてしまうだけで滅んでしまうようだ。一度伐られてしまえば、大きな樹に育つまでどれだけ時間が掛かるかという事だな。
単に周辺の樹々を伐ると言っても、物量的に半端無いだろうし、エルフだって死活問題だから邪魔をするだろう。
そういう問題があっても、樹々の全伐採は可能だと書いてある。
まぁ、衛星ならできそうだな。というか、この巨大樹そのものも伐ってしまいそうだよ。
それでも、それで滅んでしまうのは一番底辺のエルフだけ。猶予も一ヶ月以上ある。それにハイエルフ以上になればなるほど猶予期間は長くなるようだ。
それまでに新天地を見つければいいのだけど、これだけ巨大な聖なる気を発する樹は無いだろうね。結局は滅びる事になるだろうね。
う~ん、非常に詳細に調べ上げたのは分かった。タマちゃんも俺の護衛を悪魔に任せて調べてたぐらいだからね。
で? だから? エルフを脅して何がしたいんだ?
俺はエルフを脅したいとか、無理やり言う事を聞かせたいとかっていう要望はないよ?
そりゃ、あの…誰だっけ。長老部のファ…なんとかって人の横暴な態度にはウンザリして逃げたけど、エルフを滅ぼそうなんてこれっぽっちも思ってないからね。
衛星はどういうつもりなんだろ。俺に何をさせたくてこんな事までしたんだろ。
俺は拠点を探してただけなんだけど?
先導する衛星を疑わずノワールに追わせていたら、来た事はないけどなんとなく見覚えのあるところに来てしまった。
しかも、状況としては絶体絶命と言ってもいいぐらいで。
『タマちゃん?』
『はい、すべて掌握済みです』
なにが? なにを掌握してんの?
俺達一行の前にはズラ~っと並んだエルフがいた。
手には思い思いの武器を持ち、正面を塞ぐように横列に何列も並んでいた。
チラっと見えてしまったが、俺達の両横にも伏兵が潜んでいるようだ。これだけの数がいるんだから、たかだが四人のために隠れる必要も無いと思ってるんだろう。
うん、俺も正解だと思う。
「エイジ様? これはどういう事か説明はもらえるのよね?」
「排除しますか、逃げますか? 殺りますか」
「お任せください」
なんで逃げる以外は肯定になってんだよ! 排除と殺るは同じ意味だし、決定してるし!
俺に聞く意味あるの?
「ちょちょちょーっと待ってね。今、確認するから」
向こうも並んでるだけで通さなくしてはいるけど、今のところ何のアクションも無い。
いきなり攻撃されると困るけど、まだ動く気配は無い。
『タマちゃん! タマちゃんの誘導通り森に降りたら囲まれたじゃない! さすがにこれはヤバいよ! なんでこんなとこに連れて来たの!』
『すべて掌握済みです』
『だから何を掌握してんの!』
『エルフです』
『エルフ? エルフってこの目の前にいるのは全員エルフだよね? 凄く睨まれてるんだけど?』
『問題ありません。すぐに解決します』
すぐに解決するって、俺達が負けて解決じゃダメなんだよ?
「エイジ様? 確認って誰に?」
「あー、いやー、そのー、なんだ。状況の確認って意味だよ」
「そんなの見たまま以外に何があるの?」
「そうだよね、たしかにそうだ。大勢のエルフに囲まれちゃってるね」
「だから殺るって了解待ちなんだけど」
「や、殺らない殺らない! ぜーったいに殺らないよ。殺っちゃダメだからね!」
「だったら逃げるの? 私達は逃げないわよ?」
「うん、逃げるのもナシ。もう解決するはずだから!」
タマちゃんがそう言うのだから俺としては信じるしかない。
だよね? タマちゃん。信じてるよー!
解決する宣言をしてから三秒。たった三秒なのに、非常に長い長い三秒だった。
悪魔の三人は、もう堪えきれずに飛び出しそうになっていたし、踏みとどまれーと気が気じゃなかった。
しかし、その時は来た。エルフ全軍が急に跪いた事で事態が急転したのだ。
見ると両サイドの伏兵まで跪いていた。これが俺達にとって、いいのか悪いのか分からないが、戦闘になる危機は去ったと見ていいかもしれない。
正面のエルフ軍の真ん中が割れ、奥から何人かの偉そうな人達が歩いて出て来た。
特徴的な尖った耳からエルフだろうとは分かるけど、エルフの偉いさんか? 俺、そのエルフの偉いさんから逃げて来たんだけど。
やっぱりアカン展開か?
「よお、お越しやす。話は聞いてますさかい、こっちにおいなはれ」
「「「「……」」」」
何語?
なーんとなく意味は分かるんだけど何語なんだ? この世界の言葉とは思えないんだけど。
「あれ? うちの声、聞こえてまへんか?」
「「「「……」」」」
「はれ、おかしおすなぁ。声は届いてますやろぉ?」
「えーと……もしかして京都弁?」
「やーっぱり聞こえてるやないかー。あんさん、よぉ知ってまんなぁ。でもな、京都弁やあらへんねん、大阪弁や。それにな、京都弁て言えへんねやで、京言葉って言いまんねや。うちのもな、商い言葉って言うたりしまんのやで」
「「「「……」」」」
どーでもいいわ! 一気に場の緊迫感が無くなったよ。
「あっ、こいつらの事は気にせんといてや。こいつらには出迎えろっちゅーただけやのに、なんや物騒な格好しとるさかい、うちの言うた意味がよぉ分かっとらんのやろうさかいな。アホはほっとけっちゅーこっちゃ」
敵意は無いと見ていいのかな? 話しだけでも聞いてみようか。
「ところで、どちら様なんでしょうか。エルフの方ですよね? 僕はエイジと言いますが、もしかして……」
「エイジはんか、ええ名前やないか。うちはな、花子言いまんのや。あんさんの思-たはる通り、うちとあんさんは同郷やでぇ。それとな、エルフでええねんけど、正確にはホーリーエルフちゅーやつみたいやで」
この展開のいじり方が分からない。どう対応すればいいんだ? ホーリーエルフ……聞いた事が無いな。
この女の人、まぁエルフ―――ホーリーエルフらしいんだけど、今まで見たエルフの中では最高に美しい。今まで俺の中での上位はマイアかアッシュでナンバーツーかスリーだったんだけど、この人はその上を行くか。
ナンバーワンはもちろんトレーズ様だよ。
でも、この話し方で損してるよね。美しさが半減だよ。もうギャップが激しすぎて。美女エルフがコテコテの大阪弁って…無いわ。
「あの、そのハナコさんが僕達に何か用なんでしょうか」
いきなりエルフ軍に囲まれたのも気になるけど、同郷のしかもエルフが出てくるなんて予想外すぎて、何の用があるのか思い浮かばないよ。
「まぁ、ここではなんやし、席も用意してるさかい、まずはおいなまし」
おいでって事でいいかな? 付いて来いで合ってるよね?
「付いて行けばいいんですね?」
「そやそや早よ行こ。こんなとこおっても何ーんも出ぇへんで」
「はい、分かりました。じゃあ……ん? アッシュ?」
「……無理かも」
「どうしたの? 顔色もあまりよくなさそうだけど」
さっきまで普通だったのに、急にアッシュの具合が悪くなったみたいだ。
ザガンとダンタリアンも青い顔をして震えてるように見える。
どうしたんだ? さっきまで『殺る』とか物騒な事を言ってたのに、急に大人しくなっちゃって。
「あー、それはうちのせいやな。安心しい、うちは争い事は好かんやさかい何ーんもせえへんえ。あんたらも一緒においなはれ」
「あなたのせい? なんですか?」
「はれ? エイジはんは分からしまへんか? うちはエルフの中でも聖の属性っちゅーのがえらい強いらしいんやわ。ほれ、なんちゅーたかな…せや、ハイエルフや。そのハイエルフっちゅーやつよりツーランクぐらい上らしいで。スリーランクやったかいな?」
鑑定しはったらええねん。という言葉をもらったので遠慮なく鑑定させてもらうと、種族がホーリーエルフとなっていた。
ステータスを見ると、全てにおいてアッシュの1.5倍から2倍あった。
俺の知る中ではトップだったアッシュの1.5倍から2倍なのだ。そりゃ悪魔達もビビってしまうか。
「そっちの人らは悪魔はんやろ? うちとは相性最悪やさかいビビってはんねやね。怖ないさかい、一緒においなはれや」
ホーリー―――聖なる。そうか、聖属性だから悪魔にとっては苦手なんだ。そういやプーちゃんと会った時にもそれらしい事を言ってたな。
苦手属性で更にステータスでも敵わないんだったらビビってしまうか。
「ビ、ビビってなんかないわよ! お前達も行くわよ!」
「は、は、はい……」
完全にビビってるね。いつも偉そうにしてるアッシュがビビる姿って新鮮だな。
「な、なに笑ってんのよ!」
「……いえ、なんでもありません」
怒られちった。ビビっててもアッシュはアッシュだったよ。
花子さんの先導で付いて行く俺達。
俺を先頭にアッシュが震える腕を組んでくる。
その後ろを重い足取りでザガンとダンタリアンが付いて来て、最後尾からノワールが付いて来る。
そして連れて行かれたのは、前に行ったエルフの村と同じく巨大な樹のある場所だった。
これだけ巨大な樹なのにある程度近くまで来ないと見えないのは、認識阻害の何かをしてるのだろうな。
ここは村と違って巨大樹が一本だけあった。
ただ、村の五本を合わせても足りないぐらいの巨大樹だった。と思う。
衛星が比較図を紙で出してくれたけど、目の前にいたらどっちも壁にしか見えないし、どっちも凄く大きいでいいと思う。
ただ、案内されたのは巨大樹を取り囲んでいる集落の一室。そこにある豪華な客間に通された。
用意されたソファーに腰掛け、改めてそれぞれの自己紹介をした。因みにノワールは外で待機だ。
いつもなら何処かに行ってしまって、呼び出すと再び現れるんだけど、ここでは外で待ってるそうだ。
「まぁ、あんまりお構いできまへんけど、ゆっくりしとくんなまし」
「あ、ありがとうございます。それで、何か用があったんでしょうか」
「まー、よぉけ惚けはってからに、テンゴがうまいでんなぁ。いけずな性格しとったらモテしまへんで? こんだけの事されただけで、性格の悪さが滲み出てまんのに」
そう言う花子が示す先には、書類が山積みしてあった。
見たところ紙の山のようだったので、紙を使うって珍しいなぁと思った程度だった。
「えーと……なんの事でしょうか」
「もうええっちゅーに。しかしまぁ、これだけよぉ調べはったわ。細かい性格してはりまんのやろなぁ。各村の人口にその内訳やろ? 上層部の汚点の数々に棲家の弱点。あとは何や知らんけど、改善策まで書いてあったなぁ」
聞くところによると、これだけ調べつくされたら一夜にしてエルフが滅んでしまうぐらいの事が書かれてたようだ。
俺には全く身に覚えが無い。という事は…衛星だな。悪魔も関わるはずがないもんな。
山となった書類を一部見せてもらい、納得した。
本当に細かく詳細に調べ上げられていた。
種族としては、下からエルフ、ハイエルフ、エルダーエルフ、セイントエルフ、ホーリーエルフとなっていた。
一番下のエルフから数えるとホーリーエルフは四つも上じゃないか! 何が二つか三つだ! この人もかなり適当な人だぞ。
まぁ、それは置いておくとしても、エルフは魔力が苦手なのか。
聖属性と魔属性は対極の存在だもんな。でも、アッシュが苦手なんだったら、花子さんも苦手なんじゃないの?
それも書いてあった。
彼女達エルフはこの巨大樹のある聖域では魔属性が効き難く、聖属性が増幅される。しかもいくら使っても底が無く、際限無く使えるのだそうだ。
逆に、テリトリーから離れると弱体化するようだ。一ヶ月程度なら問題は無いらしいが、それからは徐々に弱体化して行くみたいだな。
そこで、彼女達を守っているのが、聖なる巨大樹のようで、この巨大樹が聖なる気を発してるようだ。
備考にはアッシュ達悪魔なら近寄るだけでダメージを負うような事も書いてある。
それで、その聖なる巨大樹は、魔力を吸収して聖なる気を排出してるようなんだけど、取り込む魔力が無くなると枯れてしまうのだ。猶予としては一年。一年間魔力を吸収できなければ枯れてしまうのだ。当然、魔力が吸収できなくなると聖なる気も出さなくなるから、枯れるまでの一年間は猶予にならない。
周囲から魔素を排出する樹を無くしてしまうだけで滅んでしまうようだ。一度伐られてしまえば、大きな樹に育つまでどれだけ時間が掛かるかという事だな。
単に周辺の樹々を伐ると言っても、物量的に半端無いだろうし、エルフだって死活問題だから邪魔をするだろう。
そういう問題があっても、樹々の全伐採は可能だと書いてある。
まぁ、衛星ならできそうだな。というか、この巨大樹そのものも伐ってしまいそうだよ。
それでも、それで滅んでしまうのは一番底辺のエルフだけ。猶予も一ヶ月以上ある。それにハイエルフ以上になればなるほど猶予期間は長くなるようだ。
それまでに新天地を見つければいいのだけど、これだけ巨大な聖なる気を発する樹は無いだろうね。結局は滅びる事になるだろうね。
う~ん、非常に詳細に調べ上げたのは分かった。タマちゃんも俺の護衛を悪魔に任せて調べてたぐらいだからね。
で? だから? エルフを脅して何がしたいんだ?
俺はエルフを脅したいとか、無理やり言う事を聞かせたいとかっていう要望はないよ?
そりゃ、あの…誰だっけ。長老部のファ…なんとかって人の横暴な態度にはウンザリして逃げたけど、エルフを滅ぼそうなんてこれっぽっちも思ってないからね。
衛星はどういうつもりなんだろ。俺に何をさせたくてこんな事までしたんだろ。
俺は拠点を探してただけなんだけど?
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