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第1章 冒険者ギルドの契約職員なのです!

冒険者の悩みを聞くのもお仕事なのです―その16

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「ラジオをお聞きの皆さま、こんにちは。ただいま、アルカディア大劇場から実況をお送りしてますぅぅ、うわああ」

 ぶん。

「アルカディア大劇場ではミチオ氏による新作衣類『ふんどし』のっ、発表会が開催、ちゅう、なのですが、おっと」

 ぶん。

「ご覧の通り……じゃ、なくて。お聞きの通り、体にとてもフィットしていましてっ、きゃあああ」

 ぶん、ぶん。

「い、いまのは危なかった、なのです。いつもより多めな時でもご覧の通り安心です。……あっ。被弾的な意味で、なのです、うわああ!」

 ぶんっ!

「か、かすりましたよ、かすっただけで焦げ臭い、なのですよ。……え、ええと。そ、それでいま、わたしたちはっ、『破戒僧』のセンキューさんの豪腕から、必死に逃げつつ、ふんどしのフィット感をみ、みなさまに、み、見てもらおうというき、企画を、ですねっ」

 ぶーんっ!

「おおっと、センキューさんの豪腕をっ、『合法』のサチコさんが受けた、受けましたなのです! わたしは、サチコさんのうしろから実況をさせていただきますなのです」

 ぜーはーぜーはー。
 はう、し、失礼しました、なのです。
 安全地帯にはいれたようなので、現在の状況を説明します。
 
 『セフト』のミサさん発案の「『ふんどし』一丁での演武を見てもらおう」企画……これって企画なのですか? が開催されてます。

 ふんどし一丁のセンキューさんの豪腕から、逃げつづけるのですが……。
 なんとセンキューさん、一瞬で間合いを詰めてくるのです。
 そして、相手がルーキーのまりあさんだろうと、ギルド受付職員のわたしだろうと、等しく拳を向けてくるのです。

 い、いえ。ダメージはもらわないです。
 そういうお約束なので。
 ただ、センキューさんの豪腕や貫手ぬきてに当たれば「わたしたちが来ている上衣が破壊される」のは間違いなく。
 その点ではセンキューさんとわたし、まりあさんの間にある技量の差がありがたいです。
 それにセンキューさんってばこのような催しでもガチの真剣な顔で挑まれてますし。

 それにしても。
 こんな状況なのですが『合法』のサチコさんも『セフト』のミサさんもすごい、のです。
 センキューさんの拳をギリギリでかわしてます。
 そうするとですね。
 サチコさんもミサさんもお胸が豊かな方なので「ぷるん」と揺れるんですよ。
 もう擬音とかのレベルじゃなく、ほんとうに音が聞こえてくるんです。「ぷるん」とかの音が。その豊かなお胸がおなかを打ち付ける「ぱちん」とか「ばちん」とかいう音が。
 観客、大盛り上がりですよ。
 下品とかいう声も聞こえてくるんですけどね。
 それはそうなのでしょうけど。
 双方、手を抜くと大けがになるこの状況ですと、必死にやってることだけは伝わっているみたいで、みんな目をそらさないのですよ。
 いえ、そらせないのでしょうね。
 センキューさんの貫手ぬきてを両手でブロックするサチコさんから。
 センキューさんの拳を開脚でしゃがみ込みそらすミサさんから。

 一流の冒険者が見せる演武なのですから。

 それに。
 先ほどからまりあさんの動きが変わってきているんです。ミサさんの身のこなしやサチコさんの防御を真似しようとしているみたいで。
 いえ、体術の技量自体は全然変わっていないのですけど構えというか。

 わたしが気付くくらいだからほかの冒険者はみんな気付いているようです。

 いえ。もしかしたら。
 今回の依頼の発端は「冒険者なのに冒険に出られない」まりあさんの悩みでした。
 それをここに集まっている冒険者の皆さんが。
 皆さんが全員、もし知っていたとしたら。
 知っていて、じゃあ、どうしたら勉強させられるのかを考えていたんだとしたら。

 何も考えていなかったのは。
 もしかしたらわたしだけ、だったのかもしれません。

 ……考えすぎ、でしょうか?

 はじまってからまだ5分しか経ってません。
 ですがわたしも、まりあさんも上衣はぼろぼろです。
 シャツの原型はなくなり、上はほぼ、びきに水着。
 サチコさんもミサさんも同様です。
 えろい、です。
 とってもえろいです。

 でも観ている人の視線にあまりイヤラシいものは感じません。

 あっ……。

 きゃー、という悲鳴が観客席から聞こえてきます。

 わたし、ついに被弾しました。
 致命的なのを。
 これが戦闘だったらわたし。
 ほんとうにおわったんですね。

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