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第1章 冒険者ギルドの契約職員なのです!

冒険者の悩みを聞くのもお仕事なのです―その10

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 アイコさんとモモさんのカップルは、傍目をはばからずいちゃつく……ようなことはしませんでした。
 なんていうの、です?
 こういうのを「とても初々しいカップル」っていうの、です?
 周りから祝福されている感じです。
 いーなー。
「ティアさんにもすぐにいい人ができますよ。そう、わたしにだって!」
 まりあさんがすっっっっごく、あっけらかんと言ってくれやがりました、なのです。
 あと「フラグを立てやがったな」とかここで言わないでください。ね、サチコさん。

 わたしのどんよりした空気と対照的に白側のほうは祝福ムードになごんでいる空気でした。
 その空気をぱんぱんと、拍手ふたつで締めた人がいます。
 百花繚乱のリーダー、ミユキ様なのです。

「はいはーい、みんなー、おしごとですよー。とー言うことでーティアさん。白組はーモモも参加してー。『大漁旗』さんもも白に入るからー」

 ミユキ様は赤側のメンバーを見回しました。
「おひさしぶりー、ね。『破戒僧』のセンキューさん。きょうもご一緒できてー、うれしいわー」
「息災でなによりだ『一丈青』。先日の魔獣討伐での破壊ぶり。拙僧の二つ名がかすむほど見事さだった」
「いえいえー魔獣の討伐ではー。まーたーご一緒できたらー、うれしいですー」

 おふたりはどうもお知り合いだったようですね。
 道すがら『破戒僧』のセンキューさんとお話をしてきたのですが、センキューさんはチームに所属しないソロらしいのです。
 いえ、ソロのチームと言うのが正しいのでしょうね。

 ちなみにわたしのいる冒険者ギルドでは、依頼は「チーム単位」で受けてもらうということは滅多にありません。
多くの場合は「こういう依頼があります」という告知文を掲示板に貼り付ける、またはギルド職員がギルドに来ている冒険者に声をかけ、依頼を受けてくれる人を集めます。
 ですから当然チーム所属どころか技能編成もバラバラで依頼が受諾されるのがざらです。
 最近、ヒューマンの世界からわたしたちの世界に来た新人冒険者さんからは「足を引っ張るような新人は、依頼を受けている最中にパーティーから追い出されたりすること、ないの?」と結構深刻に相談を受けるのですが、そういうことは杞憂です。絶対ありえないです。

 しかしなんであそこまで深刻に考えちゃうのですかね?
 もしかしたら戦闘中にパーティーから追い出されたとか、そんなありえない事例がヒューマンの住む異世界ではあるのでしょうか?

「おーい、契約職員、返事しろー」
 またまたわたしは考えにふけっていたようです。
 気がつけばノノさんに体を揺すられていました。
 ちなみにノノさんはすでにお着替えは済んでおりました。
 異世界人が来てからこの世界の概念が変わった、とまで言われるミニスカートを履いてます、ノノさん。
 紺地で短めのスカート、それに白のブラウス。
 知的なノノさんにぴったりですが……
 ふんどしを見せる、という話はみじんも感じさせません。

「契約職員、お前の考えはわかっている。しかしこれでいいのだ。そっちには『セフト』のミサがいる。それに『破戒僧』のセンキューもついたのだろ。ならば白は白にしかできないプレゼンをするだけだ。たとえば日常でふんどしをどう使うのか、とかな」

 ノノさんはわたしの前でくるり、と反転し背を向けます。すると……ああああっ。

「とは言え、ドワーフに挑まれた以上、『魅了する分野フェッチ』でも遅れをとる気はない。『セフト』のミサが得意とする分野でもな。攻めさせてもらうぞ!」

 百花繚乱プラスモモさん、ジョータさんの着衣を見たわたしは、『智多星』と呼ばれる人の、本当の恐ろしさを知ることになります。
 が、それはまた次回に、なのです。です。
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