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6終わらない夜の歌と、星の巫覡
6- 1.終わらない夜の歌と、星の巫覡
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その日は、隣国のイグドラム国からの要請により、北の国境付近へ向かったとされる逃亡者の追跡に駆り出されていた。
不審な武装集団が、三觭獣の生息域である山脈を抜けた先にいるとの情報があった。
中央から数千規模の人員が派遣され、山狩りが行われた。
また近隣の村の避難誘導を行い、自分の隊は現在、運悪く避難途中で三觭獣に出くわして分断され、山中に取り残された者たちの救助に当たっていた。
要救助者のほとんどが子供たちだ。
有鱗人や蛇足種は、子供たちが集まって行動し、その中の年長者が、年下の者達の面倒を見る習性がある。
中央から駆けつけた隊の最年少で、一番の実力者でもあるウッパラは、子供たちのリーダーに、何故子供が隊服を着ているのかと、絡まれている。
紺色の長い髪に幼い容姿は、少女のように見える。
だが、彼は国家元首の甥で三觭獣対策のために呼ばれたのだった。
ウッパラはその武器となる声を封じ、構う子供たちを鬱陶しそうに黙って眺めている。
有翼人のような声量や、広い音域をもつ舌構造ではないものの、特殊な器官によって発生させる波長により、三觭獣の脳からの身体への指示を一時的に分断することが出来る。
先に襲われた際も、ウッパラの歌によって三觭獣から逃げる時間を稼いだのだ。
とりあえず、山小屋に避難してきたが、三觭獣が付近を離れた隙を狙って、下山して安全圏に逃げるつもりで付近の様子を伺っていた。
地響きから、他の山へ移動したとは思う。
だが、あの獣は基本的には温厚だが、怒らせると執拗に追いかけてきて、その方法が騙し討ちなど、狡猾であることが確認されている。
有翼人のように、空から確認できればいいのだが、ここにはナーガ族の隊員と子供たち、それと自分を含め二名のクールマ族の隊員しか居ない。
ナーガ族の隊員が空砲を喉から発し、跳ね返って来る音で三觭獣の位置を計ろうと試みるも、それらしい物体が特定できない様子だ。
近くに隠れ潜む生き物を温度で見つける事には長けているが、遠くを見渡す視力はそれほど良くないため、そういった索敵には向いていない。
山小屋へ戻ると中では、子供たちが騒いでいる。
「どうした? 何か問題か?」
「用足しに抜け出した、子供数人が帰ってこないようです」
子供たちのリーダーが、今にも外に飛び出さんとしているのを、隊員が止めている。
褐色の肌に、燃えるような金色の髪に瞳、蛇足部分も金色の鱗に覆われていて、頭部には既に角も生え始めている。
南方に生息域があるナーガ族でもかなり強い力を持つ種で、この北側で暮らしている者は珍しい。
建物が傾ぐほどの揺れが起こり、子供たちの中に悲鳴が起こる。
隊員が幼い子供たちを守ろうと動いた隙に、リーダーの子供が山小屋を飛び出した。
「三觭獣はこの山にいるようだ、子供たちを連れ戻そう」
リーダーの子供が頻りに空砲を打ちながら、山中の道を躊躇いなく進んでいく。
応えがあるのか、分岐を迷わず進んで、やがて崖下の僅かな足場に子供が三人固まっているのを見つけていた。
子供に追いつき、崖下を覗き込む。
「よく見付けた。だが、勝手な行動はとるな」
「うるせえ! いいから早く助けろ」
牙を見せ威嚇音を発する子供。
「分かっている」
子供たちの臂力や脚力では這って上がることが難しい角度と高さで、取りつける木もない。
大ナーガであれば、子供らを背に乗せて這って移動できるが、大ナーガに変態する種のウッパラも、まだその年齢に達していない。
風魔法を用るにも、子供たちがいる位置が微妙である。
直ぐに胴に紐を巻き付け、端を太い木に括り、他の隊員に持たせて崖の降下を開始する。
十数メートルを滑落したであろう子供たちは、一人が気を失っている。他二人は気丈に救難の叫びをあげていた。
まずは気を失っている子供を、紐で背中に括り付け、残りの二人を腹側にしがみ付かせ、子供たちの蛇足が上手く絡みついてきたのを確認し、垂直に近い斜面に足を掛ける。
まだ角が生えていないのが救いだ。
ナーガは雌雄ともに角が生えるため、腹に抱えると角が当たって、さぞかし痛いことになっていただろう。
クールマ族の背中は堅強だが、腹はそこまで強度がない。
「隊長、急いでください! 高温反応が近づいて来ます!」
上にいる隊員たちの紐を引き上げる速度が増す。
振り返らずとも分かる、背後から強烈な威圧を感じる。
急いで崖を登り切り到達した先で、硬直した隊員たちの視線の先を辿る。
それは、思いの外近くにいた。
崖下からこの場所まで、闇が立ち昇り黒い壁となって視界を覆う。
突き出した獣の鼻先の奥、巨大な目が、太陽のように燃え滾ってこちらを見ていた。
子供たちが悲鳴を上げる。
いや、その場にいた者すべてが叫んでいたかもしれない。
一番気丈だったのは子供たちのリーダーで、人の尻を蛇足を鞭のように撓らせて叩き、早くこの場を離れるようにと叫ぶ。
二人の子供を下ろして、一人をそのまま背負い、来た道を引き返す。
ウッパラが殿となり、リーダーの子供を押しやる。
「おい! ふざけんな! 逃げろよ!」
ウッパラは子供の声に首を振る。
黒い毛に覆われ、鼻先と頭部に合計三本の角を持ち、四足歩行の獣の前に立ち塞がる。
子供がウッパラの腰に足を絡めて引くが、ウッパラその場離れようとせず、目を閉じて首の付け根を上向かせ頤を開いた。
音が、津波のようにいくつもの塊になって、ぶつかって来る。
ウッパラの歌は、ナーガの空砲や威嚇音を発する器官と、人語を話すときに利用する舌の両方をつかって魔力で増幅させて発している。
三觭獣の目が閉じられていき、やがてその場にひっくり返ってしまった。
眠っているようだ。
「すげえ・・・・・・・」
「惚けていないで、急いで麓へ逃げるんだ」
ウッパラの素の声で彼が少年と気づき、驚きながらも子供は付き従う。
不審な武装集団が、三觭獣の生息域である山脈を抜けた先にいるとの情報があった。
中央から数千規模の人員が派遣され、山狩りが行われた。
また近隣の村の避難誘導を行い、自分の隊は現在、運悪く避難途中で三觭獣に出くわして分断され、山中に取り残された者たちの救助に当たっていた。
要救助者のほとんどが子供たちだ。
有鱗人や蛇足種は、子供たちが集まって行動し、その中の年長者が、年下の者達の面倒を見る習性がある。
中央から駆けつけた隊の最年少で、一番の実力者でもあるウッパラは、子供たちのリーダーに、何故子供が隊服を着ているのかと、絡まれている。
紺色の長い髪に幼い容姿は、少女のように見える。
だが、彼は国家元首の甥で三觭獣対策のために呼ばれたのだった。
ウッパラはその武器となる声を封じ、構う子供たちを鬱陶しそうに黙って眺めている。
有翼人のような声量や、広い音域をもつ舌構造ではないものの、特殊な器官によって発生させる波長により、三觭獣の脳からの身体への指示を一時的に分断することが出来る。
先に襲われた際も、ウッパラの歌によって三觭獣から逃げる時間を稼いだのだ。
とりあえず、山小屋に避難してきたが、三觭獣が付近を離れた隙を狙って、下山して安全圏に逃げるつもりで付近の様子を伺っていた。
地響きから、他の山へ移動したとは思う。
だが、あの獣は基本的には温厚だが、怒らせると執拗に追いかけてきて、その方法が騙し討ちなど、狡猾であることが確認されている。
有翼人のように、空から確認できればいいのだが、ここにはナーガ族の隊員と子供たち、それと自分を含め二名のクールマ族の隊員しか居ない。
ナーガ族の隊員が空砲を喉から発し、跳ね返って来る音で三觭獣の位置を計ろうと試みるも、それらしい物体が特定できない様子だ。
近くに隠れ潜む生き物を温度で見つける事には長けているが、遠くを見渡す視力はそれほど良くないため、そういった索敵には向いていない。
山小屋へ戻ると中では、子供たちが騒いでいる。
「どうした? 何か問題か?」
「用足しに抜け出した、子供数人が帰ってこないようです」
子供たちのリーダーが、今にも外に飛び出さんとしているのを、隊員が止めている。
褐色の肌に、燃えるような金色の髪に瞳、蛇足部分も金色の鱗に覆われていて、頭部には既に角も生え始めている。
南方に生息域があるナーガ族でもかなり強い力を持つ種で、この北側で暮らしている者は珍しい。
建物が傾ぐほどの揺れが起こり、子供たちの中に悲鳴が起こる。
隊員が幼い子供たちを守ろうと動いた隙に、リーダーの子供が山小屋を飛び出した。
「三觭獣はこの山にいるようだ、子供たちを連れ戻そう」
リーダーの子供が頻りに空砲を打ちながら、山中の道を躊躇いなく進んでいく。
応えがあるのか、分岐を迷わず進んで、やがて崖下の僅かな足場に子供が三人固まっているのを見つけていた。
子供に追いつき、崖下を覗き込む。
「よく見付けた。だが、勝手な行動はとるな」
「うるせえ! いいから早く助けろ」
牙を見せ威嚇音を発する子供。
「分かっている」
子供たちの臂力や脚力では這って上がることが難しい角度と高さで、取りつける木もない。
大ナーガであれば、子供らを背に乗せて這って移動できるが、大ナーガに変態する種のウッパラも、まだその年齢に達していない。
風魔法を用るにも、子供たちがいる位置が微妙である。
直ぐに胴に紐を巻き付け、端を太い木に括り、他の隊員に持たせて崖の降下を開始する。
十数メートルを滑落したであろう子供たちは、一人が気を失っている。他二人は気丈に救難の叫びをあげていた。
まずは気を失っている子供を、紐で背中に括り付け、残りの二人を腹側にしがみ付かせ、子供たちの蛇足が上手く絡みついてきたのを確認し、垂直に近い斜面に足を掛ける。
まだ角が生えていないのが救いだ。
ナーガは雌雄ともに角が生えるため、腹に抱えると角が当たって、さぞかし痛いことになっていただろう。
クールマ族の背中は堅強だが、腹はそこまで強度がない。
「隊長、急いでください! 高温反応が近づいて来ます!」
上にいる隊員たちの紐を引き上げる速度が増す。
振り返らずとも分かる、背後から強烈な威圧を感じる。
急いで崖を登り切り到達した先で、硬直した隊員たちの視線の先を辿る。
それは、思いの外近くにいた。
崖下からこの場所まで、闇が立ち昇り黒い壁となって視界を覆う。
突き出した獣の鼻先の奥、巨大な目が、太陽のように燃え滾ってこちらを見ていた。
子供たちが悲鳴を上げる。
いや、その場にいた者すべてが叫んでいたかもしれない。
一番気丈だったのは子供たちのリーダーで、人の尻を蛇足を鞭のように撓らせて叩き、早くこの場を離れるようにと叫ぶ。
二人の子供を下ろして、一人をそのまま背負い、来た道を引き返す。
ウッパラが殿となり、リーダーの子供を押しやる。
「おい! ふざけんな! 逃げろよ!」
ウッパラは子供の声に首を振る。
黒い毛に覆われ、鼻先と頭部に合計三本の角を持ち、四足歩行の獣の前に立ち塞がる。
子供がウッパラの腰に足を絡めて引くが、ウッパラその場離れようとせず、目を閉じて首の付け根を上向かせ頤を開いた。
音が、津波のようにいくつもの塊になって、ぶつかって来る。
ウッパラの歌は、ナーガの空砲や威嚇音を発する器官と、人語を話すときに利用する舌の両方をつかって魔力で増幅させて発している。
三觭獣の目が閉じられていき、やがてその場にひっくり返ってしまった。
眠っているようだ。
「すげえ・・・・・・・」
「惚けていないで、急いで麓へ逃げるんだ」
ウッパラの素の声で彼が少年と気づき、驚きながらも子供は付き従う。
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