20 / 92
コミュ障のつぶやき。
20話
しおりを挟む
俺には、年上の恋人がいる。
彼女は社会人だ。
だが、高校生の俺から見ても彼女は頼りない。
司書をしているが、あれでよく採用試験に通ったものだと感心する。
おっとりとして、果てしもなくドジな彼女が職場でどうしているのか。
気になって、時おり学校の帰りに覗きに行く。
なんとなく保護者になったような気がする。
職場での優衣は、髪をひっつめにして、化粧も薄い。
薄いというより、ほぼ無いに等しい。
もっとも化粧が薄いのは、いつものことだ。
デートのときには(本人に言わせると)多少、気合が入っているらしい。
服装もジーパンにトレーナー。
たぶんそれが、動きやすい格好なのだろう。
その上から作業用のエプロンをしているが、ポケットにはペンやメモ帳などをいっぱいに詰め込んで、ときどき落としている。
うちの学校の司書教諭は確か白衣を着ていたはずだが、公共の図書館には制服はないようだ。
大量の本を抱えて、あちらの棚。こちらの棚へと、ちょこまかとよく動く。
側で見ていると、もう少し効率よくできそうなものだが。
だが、あのハムスターのように館内をくるくると回っているのがよいのか。
しょっちゅう子供や年寄りに声をかけられている。
そのたびに愛想良く答えているのだが、呼び止められるのは、たいてい優衣だけだった。
どうも彼女は、声をかけられやすい雰囲気があるようだ。
普段でもよく人に道を聞かれているが、職場においても似たような状況らしい。
仕事中にのみ使われている丸い黒ブチの眼鏡が、真面目な女子学生のようもあり、どこか間が抜けているようでもあった。
彼女は、近視で話をするときには、こちらをじっと見つめるのが癖らしい。
その様子があまりにも真剣で、彼女自身の誠実さが滲みでてくる。
それでいて堅苦しくないのは、優しい人懐っこい目とのんびりとした口調のせいか。
カウンターには他にも、司書がいるのに作業中の優衣にばかり人は行く。
なんとかの本はどこにあるかとか、新刊は入っていないのかとか……。
彼女は手を止めて、一緒に本のある場所まで探しに行ったり、カウンターに戻ったりと忙しそうだが、どんなに忙しくとも迷惑そうな顔をしない。
癒し系のオーラが全開なのだ。
服装や髪型がきちんとしていて、表情が穏やかで、姿勢が良くて、頼れそうな優しさがあって……。
例えるなら、司書というより幼稚園の先生か。
とにかく、いつも機嫌よさげに、にこにこ笑っている。
彼女は社会人だ。
だが、高校生の俺から見ても彼女は頼りない。
司書をしているが、あれでよく採用試験に通ったものだと感心する。
おっとりとして、果てしもなくドジな彼女が職場でどうしているのか。
気になって、時おり学校の帰りに覗きに行く。
なんとなく保護者になったような気がする。
職場での優衣は、髪をひっつめにして、化粧も薄い。
薄いというより、ほぼ無いに等しい。
もっとも化粧が薄いのは、いつものことだ。
デートのときには(本人に言わせると)多少、気合が入っているらしい。
服装もジーパンにトレーナー。
たぶんそれが、動きやすい格好なのだろう。
その上から作業用のエプロンをしているが、ポケットにはペンやメモ帳などをいっぱいに詰め込んで、ときどき落としている。
うちの学校の司書教諭は確か白衣を着ていたはずだが、公共の図書館には制服はないようだ。
大量の本を抱えて、あちらの棚。こちらの棚へと、ちょこまかとよく動く。
側で見ていると、もう少し効率よくできそうなものだが。
だが、あのハムスターのように館内をくるくると回っているのがよいのか。
しょっちゅう子供や年寄りに声をかけられている。
そのたびに愛想良く答えているのだが、呼び止められるのは、たいてい優衣だけだった。
どうも彼女は、声をかけられやすい雰囲気があるようだ。
普段でもよく人に道を聞かれているが、職場においても似たような状況らしい。
仕事中にのみ使われている丸い黒ブチの眼鏡が、真面目な女子学生のようもあり、どこか間が抜けているようでもあった。
彼女は、近視で話をするときには、こちらをじっと見つめるのが癖らしい。
その様子があまりにも真剣で、彼女自身の誠実さが滲みでてくる。
それでいて堅苦しくないのは、優しい人懐っこい目とのんびりとした口調のせいか。
カウンターには他にも、司書がいるのに作業中の優衣にばかり人は行く。
なんとかの本はどこにあるかとか、新刊は入っていないのかとか……。
彼女は手を止めて、一緒に本のある場所まで探しに行ったり、カウンターに戻ったりと忙しそうだが、どんなに忙しくとも迷惑そうな顔をしない。
癒し系のオーラが全開なのだ。
服装や髪型がきちんとしていて、表情が穏やかで、姿勢が良くて、頼れそうな優しさがあって……。
例えるなら、司書というより幼稚園の先生か。
とにかく、いつも機嫌よさげに、にこにこ笑っている。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法
栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
【完結】一夜の関係を結んだ相手の正体はスパダリヤクザでした~甘い執着で離してくれません!~
中山紡希
恋愛
ある出来事をキッカケに出会った容姿端麗な男の魅力に抗えず、一夜の関係を結んだ萌音。
翌朝目を覚ますと「俺の嫁になれ」と言い寄られる。
けれど、その上半身には昨晩は気付かなかった刺青が彫られていて……。
「久我組の若頭だ」
一夜の関係を結んだ相手は……ヤクザでした。
※R18
※性的描写ありますのでご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる