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第五章 妃となる道 一

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     一

「男か女かは、分かるのか?」
 アッズーロの問いに、朝日を浴びたナーヴェはあっさりと頷いた。
「うん。きみの分身が運んできた染色体がYだから、男の子だよ」
「そうか。王子か……!」
 別にどちらでも嬉しいのだが、性別がはっきりすると、生まれた後、育っていく過程への想像が膨らむ。
「侍従や馬も、幼い頃より用意してやらんとな。妃は、どの家より迎えてやるのがよいか……」
「ちょっと待って」
 ナーヴェが心配そうな表情で言う。
「そもそも、ぼくを妃にするというのは、本当にできることなのかい? 大臣達は、まだ全員が賛成している訳ではないだろう?」
「何、子どもができたのだ、反対する理由はあるまい?」
「あるよ」
 ナーヴェは冷静に告げる。
「ぼくは、人ではないんだから。幾ら王の宝だと言っても、王家に得体の知れない血を入れるのは、やっぱり反対が多いと思うよ。それに、きみには何人か、お妃候補がいたはずだ。ペルソーネもその一人だろう? 彼女達は納得するのかな?」
「全て黙らせていく」
 アッズーロはきっぱりと言い、寝台から下りた。すべきことは山ほどある。
「そなたは安静にしていよ。腹の子の世話を最優先にし、障りがあるなら接続もするな。よいな?」
「うん。分かったよ……」
 ナーヴェは素直に、だがどこか不安そうに頷いた。


 アッズーロに接続すれば、その間、肉体は小脳に任せた状態になる。
(この作り物の、しかも月経が始まったばかりの体が、受精卵を保持し続けられるかは、心許ない……)
 ナーヴェは、寝室の美麗な天井を見つめて、溜め息をついた。アッズーロは明らかに焦っている。子どもができたことを喜んでくれるのは嬉しいが、どうにも事を急ぎ過ぎている。
(政治は、みんなの納得がないと、上手く進まないものなのに……)
 アッズーロには、そもそも独断専行を好む癖がある。チェーロを廃した時も、レ・ゾーネ・ウーミデ侯領へお忍びで来た時もそうだった。
(何か手を打っておかないと、きみは、いずれ孤立する。でも今きみは、ぼくの言葉にあんまり耳を貸そうとしない……)
 そもそも接続がままならないので、話す機会すら少ない状態だ。
(今のぼくに、できること――)
 ナーヴェは頭を動かし、寝室の隅で、静かに衣装箱の中身を整えているフィオーレを見た。
(今のぼくは、アッズーロ以外の人と話すことができる――)
 アッズーロは、ナーヴェの勝手な行動を怒るかもしれないが、事態が悪化するのを静観してはいられない。
(ぼくは、きみに守られたいのではなくて、きみを守りたいんだから)
 ナーヴェは、立てた計画をもう一度思考回路で精査してから、口を開いた。
「フィオーレ、頼みがあるんだけれど」
「はい。何でございましょう?」
 フィオーレは手を止め、素早く寝台脇へ来てくれた。
「アッズーロの従姉のヴァッレに会いたいんだ。ここに彼女を呼ぶことはできるかな?」
 ナーヴェの問いかけに、フィオーレは困惑した表情を浮かべた。
「ここは、陛下の寝室でございますから、陛下のお許しがなければ、お呼びすることはできません……」
「なら、ぼくがここから出ればいいのかな?」
 ナーヴェは、フィオーレが困るのを承知で、寂しく微笑み、尋ねた。
「それは、いけません……!」
 フィオーレは必死で止める。
「お体のことを、お考え下さい……! お子に何かあれば、陛下がどれほど落胆なさるか……!」
「なら、ヴァッレをここへ呼んでほしい。どうしても、彼女と話したいことがあるんだ」
 ナーヴェはきっぱりと告げた。


 フィオーレは決断すると素早かった。女官仲間にヴァッレ付きの女官もいるということで、さっさと連絡を取り、ナーヴェが頼んだ日の午後には、アッズーロが謁見を行なっている留守を狙って、ヴァッレを寝室に招き入れた。
「寝転んだままでごめん。でも、どうしてもきみと話したかったんだ」
 ナーヴェが寝台から話し掛けると、ヴァッレは部屋の入口で恭しく礼をし、跪いて応じた。
「御体調が優れぬとか。そのような折、このような場所で、わたくしに何の御用でしょう?」
 異例のことで、随分と警戒されているようだ。ナーヴェは苦笑して答えた。
「単刀直入に言うと、アッズーロは、ぼくを妃にしたがっているんだ。でも、ぼくを妃にするとなると、いろいろと問題が多い。アッズーロもそれは分かっているはずなんだけれど、今、彼はあんまり冷静ではないように見えるんだ。それで、きみの意見を聞きたい。どうしたら、彼を冷静にさせることができるかな?」
「『どうしたら、あなた様が王妃になれるか』ではなく、ですか?」
 ヴァッレは、軽く眉をひそめて問い返してきた。
「うん。そこは、みんなの意見に任せるよ。ぼくは人ではないから、あんまり妃に向いているとは思えないしね……」
 正直にナーヴェが告げると、ヴァッレは拍子抜けしたような顔をした。
「畏れながら、あなた様は、王妃になりたい訳ではないのですか?」 
 この問いにも、ナーヴェは正直に答えた。
「アッズーロの望みを叶えたいとは思うよ。でも、ぼく自身が妃になりたいかと問われれば、そんなこと、二週間前までは考えもしなかったし、今でも、アッズーロが先走っているとしか思えないよ」
「……そうでございましたか……」
 ヴァッレは考え深げに一度目を伏せ、それからナーヴェを見据える。
「差し出がましいことではございますが、あなた様の御不調の理由を、教えて頂けませんか」
「妊娠だよ」
 率直に、ナーヴェは答えた。ヴァッレは大きく目を瞠ったが、すぐに小さく息をついて言った。
「それで合点が行きました。陛下は、確かに冷静ではありません。明らかに焦っておいでです。けれど、あなた様が妊娠なさっているのなら、そうもなりましょう――」
 ヴァッレはまた視線を落とし、考える様子だ。ナーヴェは、アッズーロの従姉の意見を、静かに待った。
 やがてヴァッレは顔を上げ、述べた。
「陛下が冷静さを欠く理由は、強固な反対が予想される、まさにその一点に尽きるかと思われます。ゆえに、陛下を冷静にさせるには、それほどの反対はない、急いで既成事実を作って強引に事を進めなくともよい、と思わせる必要があろうかと存じます」
「『既成事実』に似たものは、もうできているけれど……」
 ナーヴェは掛布の下で下腹に手を当てながら呟き、溜め息をつく。
「それは、とても難しいね……」
「わたくしも、大臣達の内、話の通じ易そうな者から順に、ナーヴェ様が如何に王妃に相応しいかを説いて回ります。ですので、ナーヴェ様御自身も、できる限り多くの者に、あなた様が王妃に相応しいことを、示していって頂きたいのです」
 ヴァッレの真摯な眼差しに、ナーヴェはぽかんと口を開いた。
「ええと、きみは、ぼくが妃に相応しいと思うの……?」
「はい。つい先ほどから、心底そう思っております」
 ヴァッレは、理知的に微笑んだ。


 午後の最初の謁見者は、ヴルカーノ伯フェッロだった。
「本日は、陛下にお願いしたき儀があり、罷り越しました」
 頭を下げて堅苦しく述べ、フェッロは王座のアッズーロを見上げた。その眼差しが、以前より心持ち鋭い。
「うむ。申せ」
 アッズーロは目を眇めて応じた。
「畏れながら、鉄砲作りに欠かせない鉄の原料となる鉄鉱石が、わが国ではそれほど産出されません」
 フェッロは熱意を込めて語る。
「しかしながら、テッラ・ロッサ王国では、あの赤い沙漠で多く産出されると聞きます。どうか、国としてテッラ・ロッサ王国と交易を行ない、鉄鉱石を継続的に手に入れて頂きたいのです」
「いつ敵となるやもしれん国と、交易せよと申すか」
 アッズーロが呆れて見せると、フェッロは眉間に皺を寄せて主張した。
「互いに敵とならぬためにも、交易をするのです。共存共栄できれば、敵とはなりません」
「あちらも、そう考えてくれればよいがな」
 アッズーロは、皮肉な口調で、更にフェッロを試した。現在、オリッゾンテ・ブル王国とテッラ・ロッサ王国の間に、正式な国交はない。民間での細々とした交易があるのみだ。
 フェッロは、自信を覗かせて答えた。
「わが国が骸炭を売ればよいのです」
 骸炭とは、石炭を蒸し焼きにして硫黄成分を取り除いたものである。鉄鉱石即ち酸化鉄から鉄を作るには、骸炭を使って還元する必要があるのだ。そして石炭は、オリッゾンテ・ブル王国で多く産出される。
「互いに足りぬものを補い合い、共存せよと申すか」
 アッズーロが先回りして言うと、フェッロはわが意を得たりとばかりに頷いた。
「さすがは英明なる陛下。その通りでございます」
「たわけ」
 アッズーロは顔をしかめて吐き捨てた。フェッロは唖然とした顔になる。アッズーロは重ねて言い放った。
「鉄は強力な武器となる。おまえの鉄砲然りだ。それを互いに作って、何とする。より多くの犠牲を強いる戦争をせよと申すか」
「いえ、そのようなことは! 鉄は農具にも建材にもなる頗る有用な資源です。わが国とテッラ・ロッサ王国とは、交易を通して豊かな鉄資源を得ることで、必ず共存共栄できます」
 フェッロは力強く言い切った。
(臭うな……)
 アッズーロは眉をひそめ、手を振った。
「分かった。次の大臣会議で検討させよう」
「ありがたき幸せにございます」
 フェッロは優雅に一礼し、近衛兵が開いた扉から出ていった。
「レーニョ」
 アッズーロは即座に階段下に控えた侍従を呼びつけた。
「はい」
 レーニョは心得ていて、すぐに階段を上がってくる。王座の傍まで来て膝を着いた侍従の耳に、アッズーロは囁いた。
「ヴルカーノ伯をおまえの配下に見張らせよ。テッラ・ロッサの工作員と接触の可能性がある」
「仰せのままに」
 レーニョは緊張した面持ちで答え、素早く階段を下りて、近衛兵が開いた扉から出ていった。その後ろ姿を見送り、アッズーロは王座の肘掛けに頬杖を突いて、小さく息を吐いた。こちらからテッラ・ロッサへ工作員を送り込む前に、先手を打たれたかもしれない。
(全く、ロッソ三世め、やりおるではないか……!)
 ナーヴェを妃にするため忙しくしたい時に、余計な横槍が入りそうなことが気に喰わなかった。


 物事が全て、思考回路が弾き出した計算通りに進むことは殆どない。特に人相手はそうだ。ゆえに興味深くもあるのだが――。ナーヴェは美麗な天井を見上げて、また溜め息をついた。
(ヴァッレがぼくに妃の資質を見出してしまうのは、計算外だったな……)
 正直に、頼りなく振る舞ったつもりなのだが、当てが外れてしまった。だが、学べたこともある。
(アッズーロを冷静にさせるには、反対が少ないと思わせたらいい……。なら、まずはぼくが変わらないと駄目か……)
 アッズーロに対し、否定的な意見をぶつけている一人は、他ならぬナーヴェ自身だ。
(きみのためには、本気で、妃になることを考えないといけないんだね……)
 ナーヴェは思考回路の中で、新たな演算を開始した――。


 全ての謁見を終えたアッズーロは、夕日が差し込む二階の回廊を急いで歩き、自室へ戻った。
 寝室に入って真っ先にナーヴェの寝台を見ると、青い髪の妃候補は、仰向けに寝転んだまま優しい顔でアッズーロを見つめ返した。
「調子はどうだ?」
 歩み寄って問うたアッズーロに、ナーヴェは穏やかに答えた。
「特に異常はないよ。ずっとこの体に接続して、細心の注意を払っているからね」
「そうか」
 安堵して、アッズーロは寝台に腰掛け、ナーヴェの頬に手を触れた。そのままそっと頬を撫でると、ナーヴェは気持ちよさげに目を細める。アッズーロは身を屈め、その目元に口付けた。
「駄目だよ、アッズーロ。今は無理だよ?」
 ナーヴェが困惑したように窘めた。
「分かっておる」
 アッズーロは鼻を鳴らし、身を起こす。
「われにとっても、今は腹の子が最優先だ。そなたを抱けぬのは、なかなかにつらいがな」
「と月十日の間、我慢して貰わないと」
 ナーヴェが真面目に請うた。
「――長いな……」
 アッズーロは溜め息をつく。本気で、もっと抱いておけばよかったと後悔した。
「それで、アッズーロ」
 ふとナーヴェが口調を改めて言う。
「ぼくも、妃になれるよう、努力することにしたよ」
「ほう、漸くその気になったか……!」
 アッズーロの声は、思わず上擦った。ナーヴェ自身が乗り気でないことが、やはり心の重荷になっていたのだ。
「それはよい。われも大臣どもを口説く甲斐があるというものだ」
「うん。でも、きみはあんまり頑張り過ぎないほうがいい。こういうことは、急ぎ過ぎると、反発が余計に大きくなるから」
 ナーヴェは微笑み、言葉を重ねる。
「協力者を増やせるよう、ぼくが頑張るよ」
「いらん。無理をするなと言うておろう!」
 アッズーロは慌てて言ったが、ナーヴェは枕の上で首を横に振った。
「駄目だよ。きみは焦り過ぎている。ぼくが搦め手から攻めてみるから、暫くの間、任せてくれないかい?」
「『搦め手から』とは、一体どこだ?」
 アッズーロが眉をひそめて訊くと、ナーヴェは悪戯っぽい笑みを浮かべて告げた。
「マーレだよ。いつの時代でも、女を動かせば、男も動くものさ。そうして、世の中が動くんだよ」
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