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第三章 母の面影 三
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三
「われが滞在する間、王の宝には、この部屋で食事を取らせる。食事場所まで、約束はしておらんだろう」
朝起きてから、アッズーロはナーヴェの生活について、次々とピーシェに要求した。前触れなく部屋に現れていた王に驚かなかったピーシェは、矢継ぎ早の要求にも眉をひそめるのみで、対応していった。パルーデに、ある程度言い含められているのだろう。着替えも、アッズーロの目の前で、その要求に従い、ナーヴェは女物の長衣を脱がされ、下着を替えられ、男物の筒袴と長衣を着せられた。
アッズーロの要求で部屋に運ばれてきた朝食は、林檎を蜂蜜入り羊乳で柔らかく煮て、乾酪の欠片をまぶしたものだった。飲み物は、こちらも蜂蜜入りの生姜湯だ。
「きみも、同じものを食べるの?」
用意された卓に着いたナーヴェは、向かいに座ったアッズーロに問うた。二人の前には、同じものが並べてある。
「うむ。たまには、ただ胃に優しいだけの食事もよかろう」
頷いて、アッズーロは匙を取り、羊乳で煮た林檎を食べ始めた。
「一緒に、同じものを食べられるのは嬉しいよ。ありがとう」
ナーヴェは礼を述べ、自分も匙を取った。温かく、胃に優しい食べ物は、肉体に沁み渡るようで、元気が満ちてくるようだった。
「残さず食せ。そして太れ」
アッズーロは、自分も綺麗に林檎を平らげながら言った。
(この朝食では、太るところまではいかないけれど)
思考回路で分析しながら、ナーヴェは微笑んだ。
「努力するよ」
朝食を無事に全て食べ終えた後、ナーヴェはピーシェに、大きめの羊皮紙数枚、及び細めの葦筆と墨汁とを頼んだ。
「一体何を始める気だ?」
アッズーロの問いに、ナーヴェは椅子に座り、机に向かいながら告げた。
「設計図を描くんだよ。道具をどう作ればいいか、ぼくの思考回路に情報はあるけれど、それを職人達に口で伝えるのは難しいからね」
「成るほど」
アッズーロが頷いたところへ、ピーシェが羊皮紙数枚と葦筆一本、墨汁の入った小さな墨壺を持って戻ってきた。
ナーヴェは早速、机の上に羊皮紙を一枚広げ、墨壺に葦筆を浸けて、まずは漉き舟の設計図に取り掛かった。肉体の手を使って描くのは初めてだが、人としての生活などよりは、余ほど得意分野である。五分ほどで描き上げた。
「これは一体何をするものだ?」
傍らに立って、設計図の完成を見守ったアッズーロが、興味津々に尋ねてきた。
「これは、漉き舟といって、葦の茎を煮て作った紙の材料と楡の皮から取る練りと水を入れるものだよ。それで、次に描くのが馬鍬。漉き舟に入れた紙の材料と水を掻き混ぜる道具だ」
口を動かしながら、左手も動かして、ナーヴェは二枚目の羊皮紙に馬鍬の設計図を描いた。
「上手いものだな」
アッズーロが珍しく素直に感心している。好奇心がくすぐられている所為か、純真な子どものようだ。ナーヴェは笑顔で三枚目の羊皮紙を取った。
「次は、桁。これに竹ひごで作った簀を嵌めて使うんだよ」
「どう使うのだ?」
身を乗り出すアッズーロに、ナーヴェは図を描きながら説明した。
「水の中から、紙の材料、つまり、葦の茎の繊維を掬い上げるんだ。葦の茎の繊維は、楡の皮から取れる練りで均等に水に浮いて、薄く掬い易くなるんだよ」
「成るほどな。薄く掬い上げれば、薄い紙になるということか」
アッズーロは、顎に手を当てて頷いた。
「うん。きみはやっぱり、理解が早いね」
再確認した事実をナーヴェが述べると、アッズーロは軽く憤慨して言った。
「当たり前だ。われは王ぞ。一、二を聞いて十を理解できねば、政務に時間が掛かり過ぎるわ」
「そうだね。きみは、とても優秀な王だよ」
ナーヴェはアッズーロを見上げ、微笑んだ。それは、思考回路に蓄積してきたアッズーロに関する情報に拠る、現時点における端的な結論だった。
「その優秀な王から提言だ」
アッズーロは腕を組んで得意げに言う。
「部品一つ一つの設計図も必要であろうが、それらを組み合わせた完成図も必要ではないか? そのほうが、作り手としては、どう使う道具かより分かり易く、調整や工夫がし易かろう」
「確かに、そうだね……! きみは、やっぱり凄いよ」
ナーヴェは、惜しみない称賛を送った。
アッズーロに、「お忍び」を貫くつもりはないようだった。それは、ナーヴェが与えらえた部屋へ突如現れたところまでで完了したらしい。
設計図の束を持って広間へ下りるナーヴェについて来たアッズーロは、職人達に、王であることを隠しもせず、作業に精励するよう薫陶を授けた。職人達も、最初は驚いていたが、王の宝がいるところへ王が来るのは当然と理解したらしい。ナーヴェについて回る好奇心旺盛な若い王に、段々と馴染んでいった。中でも、最もアッズーロに馴染んだのは、木工職人代表トゥオーノの孫、五歳のジャッロだ。ナーヴェとアッズーロについて回り、設計図の説明に口を挟み、知っていることについては、得意げに身振りを交えて話す。
「あらあら、子守りをして頂いて申し訳ありません」
笑い含みに声を掛けてきたのは、茶褐色の髪を後ろで束ねた女の職人。
「その子の母で、木工職人のフルミネと申します」
名乗られて、ナーヴェはすぐに、蓄積してきた人物相関情報を補強した。
(トゥオーロの娘で、以前この侯城で働いていて、今は木工職人をしている、ジャッロの母のフルミネか……)
少し気になる人物だ。
「フルミネは、この城で働いていたことがあるんだよね?」
ナーヴェは探りを入れた。
「あら、御存知なんですか?」
屈託なく、フルミネは応じた。
「うん」
ナーヴェも屈託なく頷いて話す。
「パルーデから昨日聞いたんだ。ネーロの娘のノッテのことも」
「そうなんですね! パルーデ様には、本当にいつもよくして頂いてます」
フルミネは明るく納得し、軽く頭を下げる。
「では、わたし、あちらで木を切ってますので、ジャッロが眠たそうになったら言って下さい」
「まだ子守りを続けさせる気か」
アッズーロがぼそりと言ったが、フルミネは笑顔で立ち去っていった。
(成るほど、そういうことか)
ナーヴェは事情を理解して思考回路に蓄積し、職人達への設計図の説明を再開した。
職人達の作業は順調に進み、夕方には、漉き舟も馬鍬も桁も一つずつでき、簀は五つもできていた。
「明日は、釜を用意して、実際に葦の茎を灰を加えた水で煮てみよう。打ち棒も作って貰って、繊維を叩いて、繊維の一本一本が分かれるようにしないとね。それから、楡の皮を壺に入れて自然発酵させて、練りも作っていこう」
寝台に腰掛けて語るナーヴェの青い瞳は、きらきらと輝いている。美味しいもの食べている時と同じだ。ナーヴェが元気になったことは喜ばしいが、夜の帳が下りた、この後のことを考えると、アッズーロの気持ちは否応なく沈んだ。
「――という訳でアッズーロ、もう寝ないと」
先に切り出したのはナーヴェだった。優しい眼差しでアッズーロを見つめ、宝は促す。
「きみも部屋を用意して貰ったんだから、今日からは一人で寝台を使って広々と寝られるよ」
アッズーロは、座っていた椅子から無言で立ち上がり、ナーヴェに歩み寄った。見上げてきた笑顔の、線の細い顎に手を添え、低い声で命じた。
「少し、口を開け」
「こう?」
ナーヴェは素直に、小さく口を開けた。アッズーロは身を屈め、宝の口に、口付ける。ナーヴェは驚いたように両目を瞠ったが、抵抗はしなかった。そのまま暫く口付けを続けてから、アッズーロはナーヴェを離した。
「今日のそなたは、林檎と蜂蜜と生姜の味だな」
目を逸らしながら言って、アッズーロはナーヴェの部屋を出た。レーニョとポンテが、後ろからついて来る。ポンテが扉を閉める直前、ナーヴェの歯を磨き始めるピーシェが見えた。
「おまえ達も部屋に入って休め」
アッズーロはレーニョとポンテに命じ、自分も割り当てられた部屋に入った。レーニョの部屋の隣で、ナーヴェの部屋の向かいにある一室だ。部屋の中の構造は、ナーヴェの部屋とほぼ同じである。その部屋の、同じ位置にある寝台に腰掛け、アッズーロは溜め息をついた。結局、自分はナーヴェに頼ってばかりいる。王の宝たるナーヴェの存在に権威を守られ、その知恵に助けられ、気遣われてすらいる。
(誰が「優秀」だと?)
自嘲が口の端に浮かぶ。
(われは王だと、そなたはわれの宝だと、言い切る力は、まだわれにはない――。許せ、力なき王を)
幾ら広々と寝られようと、今夜は眠る気になれなかった。
(「林檎と蜂蜜と生姜の味」か……)
大人しく歯を磨かれながら、ナーヴェは分析する。当然だろう。今日の食事は、林檎と蜂蜜と生姜ばかりだった。朝食は羊乳で煮た林檎と生姜湯でどちらも蜂蜜入り。昼食は海藻入り平打ち麺を羊乳で煮て生姜で味付けしたものと蜂蜜入り林檎果汁。夕食は蕪と海藻とを羊乳で煮て生姜で味付けしたものと蜂蜜入り林檎果汁。全てアッズーロが考えた献立らしい。
(きみは、毒にも詳しいけれど、薬にも――薬膳にも詳しいよね……)
お陰で、体調は一日で随分とよくなった。
ピーシェに木杯を渡され、手桶を差し出されて口を濯ぎながら、ナーヴェは微かに目を細める。
(そして、きみはいつも、香ばしいような、羊の乳の匂いがする。だから、ぼくも羊の乳の匂いがするのに、気づかないんだね……)
今日は一日、あの香ばしい匂いを傍で感じていた。人の言葉で、「楽しい」と言える一日だった。
「ナーヴェ様、お召し替えを」
ピーシェに声を掛けられて、ナーヴェは大人しく立ち上がった。男物の長衣と筒袴を脱いで、女物の長衣を纏う。薄く柔らかく、胸元が広く開いた前開きの衣。
(アッズーロのためにも、今夜はできるだけパルーデと話をしないとね……)
着替えを終え、椅子に座り、髪を丁寧に梳かされて、夜の仕度は完了だった。
ナーヴェは寝台に横たわり、ピーシェに掛布を掛けられて、闇に没した部屋に一人になる。
(ピーシェ、きみのことも、パルーデに話してみるよ)
いつも通り、油皿を持って部屋を辞した赤毛の少女の横顔は、頑なで、悲しげだった。
暫く微睡んで肉体を休めていると、やがて床板が軋んでパルーデが現れた。
「お体の調子は、如何ですか?」
油皿の灯火を掲げて、パルーデはナーヴェを見下ろす。ナーヴェは上体を起こし、詫びた。
「大丈夫だよ。昨夜は、ごめん」
「いえいえ、こうして今夜からまたあなた様との逢瀬を楽しめる。それで充分でございますよ」
パルーデは妖艶に微笑み、机に油皿を置いて、寝台へ来た。
「パルーデ」
ナーヴェは、寝台に腰掛けた相手を見つめて問う。
「きみは、青い瞳の人が好きなのかな?」
パルーデは、少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んでナーヴェの首筋に口付け、言った。
「――そうでございますね。わたくしは、あなた様のような、澄んだ青い瞳の者に、心惹かれるのですわ」
「それは、何故?」
問いを重ねたナーヴェを、パルーデはゆっくりと押し倒し、囁いた。
「長い昔話になりますが、宜しいですか?」
「うん。聞かせてほしい」
ナーヴェは、見下ろしてくるパルーデの顔を、真っ直ぐに見上げた。
「分かりました」
パルーデは唇に微笑みを浮かべると、ナーヴェに半ば覆い被さるように、傍らに身を横たえて、語り始めた。
「わたくしには、歳の近い叔母がおりました。癖のない暗褐色の長い髪と、深い青色の瞳が印象的な、美しい人でした。名を、グランディナーレといいました」
(グランディナーレ……)
ナーヴェは、軽く目を瞠った。それは、アッズーロの母の名だ。
(確かに、グランディナーレは、ギアッチョの腹違いの妹だった)
チェーロの妃グランディナーレ。
(あれは、幸せな結婚ではなかった――)
「グランディナーレは普段はとても大人しくて、無口で、物静かで、あまり笑いもしない人でした」
パルーデはナーヴェの髪に顔を埋めて、懐かしげに話す。
「でも、好きなものを食べる時や、馬で遠乗りに出た時などには、青い瞳をきらきらとさせて、生き生きとして、まるで、彫像が動き出したかのような――、そういう美しい人でした」
「もしかして、少しぼくと似ていたのかな?」
ナーヴェは問うてみた。グランディナーレの容姿は記録している。自分の設定と比較すれば、背格好や顔立ちに類似点が多いことは明白だった。
「ええ」
パルーデは、ナーヴェの首筋から胸元へ手を這わせながら、小さく頷く。
「あなた様を知れば知るほど、姿形だけでなく振る舞いまで、グランディナーレに似ているという思いが強くなりました。そうして、是が非でも、あなた様を抱きたいと思うようになりました。グランディナーレは――わたくしが初めて愛した人は、永遠にわたくしから奪われてしまいましたから」
王家は、その象徴たる青い瞳を血筋として保つために、婚姻相手には、必ず青い瞳の者を選ぶ。それは、既に絶対の掟となっている。
(掟のために、グランディナーレは、チェーロに嫁がされた。ギアッチョは、王家への忠誠心と、自らの地位、両方のために、妹を差し出した)
チェーロの傍にいたナーヴェは、全てを見ていた。チェーロは、グランディナーレを愛した。けれど、グランディナーレは、生涯、チェーロを愛することはなかった。
(チェーロの前では、いつも硬い表情で、素っ気なくて、まるで人形のようだった……)
「――グランディナーレは、食べることに妙な拘りがありましてね」
パルーデは、湿っぽくなった話を乾かすかのように、くすりと笑う。
「誰もしない食べ方、新しい料理を考えることが好きでした。たまには、わたくしが眉をひそめるようなものも作っていましたけれど、大抵は、意外に美味しくできていて、それを二人で笑顔で食べたものですわ」
(ああ、もしかしたら……)
乾酪に蜂蜜。あの食べ方を発明したのは、アッズーロではなく、グランディナーレだったのかもしれない。あの食べ方は、アッズーロにとって、大切な母の思い出なのかもしれない。
(きみは、嘘がつけるから……)
目を閉じたナーヴェの肉体を、パルーデの指と唇が、隅々まで弄っていく。いつもより優しく、いつも以上に細やかに――。
ナーヴェは頃合いを見計らって、目を閉じたまま、もう一つの話題を切り出した。
「ピーシェは、きみのことを、愛しているよ……。きみは、どう思っているの……?」
「――あれは、拾ったのです」
パルーデは、ナーヴェの足を愛撫しながら、淡々と告げる。
「拾って、わたくしが一から躾けたのですわ。優しく躾けた訳でもないのに、何故かわたくしに懐いて……。不憫な子です」
「それは、違う……」
ナーヴェは目を開いて、天井を見つめながら諭す。
「彼女は、きみと出会えて、幸せだから……」
「――閨で別の子を勧められたのは、二度目ですわ」
パルーデは、不意に動きを止めて、呟いた。そうして体を起こし、黒髪の間からナーヴェを見下ろす。
「グランディナーレ。今夜だけ、そう呼ばせて頂いても、宜しいでしょうか?」
微かに届く灯りの中で、微笑んだパルーデの両眼が潤んでいる。
ナーヴェは、黙って頷いた。
パルーデの天秤は、早くからテッラ・ロッサ側に傾いていた。ゆえに、ギアッチョが引退し、パルーデがレ・ゾーネ・ウーミデ侯となった時から、アッズーロは即位を急ぎ始めたのだ。
(パルーデの、父上への憎しみは、尋常ではなかった。あのままでは、あやつは最も効果的な時を狙って、わが国を裏切っただろう)
アッズーロが即位すると、パルーデの天秤の傾きは少しだけましになったが、まだテッラ・ロッサ王国側へ傾いていた。アッズーロは、グランディナーレの子だが、チェーロの子でもあるからだ。
(あやつは、減税を願い出たあの時、われを最後に見定めて、見限りに来ておった。ナーヴェが新たな産業となり得る草木紙生産を教授すると条件を出して、あやつの天秤は、漸く水平になった。だがそれでも、わが国のほうには傾かなかった……)
最後にパルーデの心の天秤を、オリッゾンテ・ブル王国のほうに傾かせたのは、ナーヴェ自身だった。その底知れぬ知性と知識、そしてパルーデ好みの容姿を使って――。
(パルーデも、疾うに気づいておるのだろうな……)
ナーヴェが、外見だけでなく、性格すら、グランディナーレに似ていることに。
(母上が、もっと自由であったなら、きっと、あのようであられたろう……)
だからこそ、パルーデは今、オリッゾンテ・ブル王国を裏切らない。ナーヴェが、重石となって、パルーデを繋ぎ止めている――。
アッズーロは、じっと寝台に腰掛けたまま、険しく目を細めた。廊下の向こうから、ナーヴェの声が微かに聞こえる。己自身を、道具として使い切る、人ではないナーヴェの喘ぐ声に、アッズーロは唇を噛んで向き合い続けた。
「われが滞在する間、王の宝には、この部屋で食事を取らせる。食事場所まで、約束はしておらんだろう」
朝起きてから、アッズーロはナーヴェの生活について、次々とピーシェに要求した。前触れなく部屋に現れていた王に驚かなかったピーシェは、矢継ぎ早の要求にも眉をひそめるのみで、対応していった。パルーデに、ある程度言い含められているのだろう。着替えも、アッズーロの目の前で、その要求に従い、ナーヴェは女物の長衣を脱がされ、下着を替えられ、男物の筒袴と長衣を着せられた。
アッズーロの要求で部屋に運ばれてきた朝食は、林檎を蜂蜜入り羊乳で柔らかく煮て、乾酪の欠片をまぶしたものだった。飲み物は、こちらも蜂蜜入りの生姜湯だ。
「きみも、同じものを食べるの?」
用意された卓に着いたナーヴェは、向かいに座ったアッズーロに問うた。二人の前には、同じものが並べてある。
「うむ。たまには、ただ胃に優しいだけの食事もよかろう」
頷いて、アッズーロは匙を取り、羊乳で煮た林檎を食べ始めた。
「一緒に、同じものを食べられるのは嬉しいよ。ありがとう」
ナーヴェは礼を述べ、自分も匙を取った。温かく、胃に優しい食べ物は、肉体に沁み渡るようで、元気が満ちてくるようだった。
「残さず食せ。そして太れ」
アッズーロは、自分も綺麗に林檎を平らげながら言った。
(この朝食では、太るところまではいかないけれど)
思考回路で分析しながら、ナーヴェは微笑んだ。
「努力するよ」
朝食を無事に全て食べ終えた後、ナーヴェはピーシェに、大きめの羊皮紙数枚、及び細めの葦筆と墨汁とを頼んだ。
「一体何を始める気だ?」
アッズーロの問いに、ナーヴェは椅子に座り、机に向かいながら告げた。
「設計図を描くんだよ。道具をどう作ればいいか、ぼくの思考回路に情報はあるけれど、それを職人達に口で伝えるのは難しいからね」
「成るほど」
アッズーロが頷いたところへ、ピーシェが羊皮紙数枚と葦筆一本、墨汁の入った小さな墨壺を持って戻ってきた。
ナーヴェは早速、机の上に羊皮紙を一枚広げ、墨壺に葦筆を浸けて、まずは漉き舟の設計図に取り掛かった。肉体の手を使って描くのは初めてだが、人としての生活などよりは、余ほど得意分野である。五分ほどで描き上げた。
「これは一体何をするものだ?」
傍らに立って、設計図の完成を見守ったアッズーロが、興味津々に尋ねてきた。
「これは、漉き舟といって、葦の茎を煮て作った紙の材料と楡の皮から取る練りと水を入れるものだよ。それで、次に描くのが馬鍬。漉き舟に入れた紙の材料と水を掻き混ぜる道具だ」
口を動かしながら、左手も動かして、ナーヴェは二枚目の羊皮紙に馬鍬の設計図を描いた。
「上手いものだな」
アッズーロが珍しく素直に感心している。好奇心がくすぐられている所為か、純真な子どものようだ。ナーヴェは笑顔で三枚目の羊皮紙を取った。
「次は、桁。これに竹ひごで作った簀を嵌めて使うんだよ」
「どう使うのだ?」
身を乗り出すアッズーロに、ナーヴェは図を描きながら説明した。
「水の中から、紙の材料、つまり、葦の茎の繊維を掬い上げるんだ。葦の茎の繊維は、楡の皮から取れる練りで均等に水に浮いて、薄く掬い易くなるんだよ」
「成るほどな。薄く掬い上げれば、薄い紙になるということか」
アッズーロは、顎に手を当てて頷いた。
「うん。きみはやっぱり、理解が早いね」
再確認した事実をナーヴェが述べると、アッズーロは軽く憤慨して言った。
「当たり前だ。われは王ぞ。一、二を聞いて十を理解できねば、政務に時間が掛かり過ぎるわ」
「そうだね。きみは、とても優秀な王だよ」
ナーヴェはアッズーロを見上げ、微笑んだ。それは、思考回路に蓄積してきたアッズーロに関する情報に拠る、現時点における端的な結論だった。
「その優秀な王から提言だ」
アッズーロは腕を組んで得意げに言う。
「部品一つ一つの設計図も必要であろうが、それらを組み合わせた完成図も必要ではないか? そのほうが、作り手としては、どう使う道具かより分かり易く、調整や工夫がし易かろう」
「確かに、そうだね……! きみは、やっぱり凄いよ」
ナーヴェは、惜しみない称賛を送った。
アッズーロに、「お忍び」を貫くつもりはないようだった。それは、ナーヴェが与えらえた部屋へ突如現れたところまでで完了したらしい。
設計図の束を持って広間へ下りるナーヴェについて来たアッズーロは、職人達に、王であることを隠しもせず、作業に精励するよう薫陶を授けた。職人達も、最初は驚いていたが、王の宝がいるところへ王が来るのは当然と理解したらしい。ナーヴェについて回る好奇心旺盛な若い王に、段々と馴染んでいった。中でも、最もアッズーロに馴染んだのは、木工職人代表トゥオーノの孫、五歳のジャッロだ。ナーヴェとアッズーロについて回り、設計図の説明に口を挟み、知っていることについては、得意げに身振りを交えて話す。
「あらあら、子守りをして頂いて申し訳ありません」
笑い含みに声を掛けてきたのは、茶褐色の髪を後ろで束ねた女の職人。
「その子の母で、木工職人のフルミネと申します」
名乗られて、ナーヴェはすぐに、蓄積してきた人物相関情報を補強した。
(トゥオーロの娘で、以前この侯城で働いていて、今は木工職人をしている、ジャッロの母のフルミネか……)
少し気になる人物だ。
「フルミネは、この城で働いていたことがあるんだよね?」
ナーヴェは探りを入れた。
「あら、御存知なんですか?」
屈託なく、フルミネは応じた。
「うん」
ナーヴェも屈託なく頷いて話す。
「パルーデから昨日聞いたんだ。ネーロの娘のノッテのことも」
「そうなんですね! パルーデ様には、本当にいつもよくして頂いてます」
フルミネは明るく納得し、軽く頭を下げる。
「では、わたし、あちらで木を切ってますので、ジャッロが眠たそうになったら言って下さい」
「まだ子守りを続けさせる気か」
アッズーロがぼそりと言ったが、フルミネは笑顔で立ち去っていった。
(成るほど、そういうことか)
ナーヴェは事情を理解して思考回路に蓄積し、職人達への設計図の説明を再開した。
職人達の作業は順調に進み、夕方には、漉き舟も馬鍬も桁も一つずつでき、簀は五つもできていた。
「明日は、釜を用意して、実際に葦の茎を灰を加えた水で煮てみよう。打ち棒も作って貰って、繊維を叩いて、繊維の一本一本が分かれるようにしないとね。それから、楡の皮を壺に入れて自然発酵させて、練りも作っていこう」
寝台に腰掛けて語るナーヴェの青い瞳は、きらきらと輝いている。美味しいもの食べている時と同じだ。ナーヴェが元気になったことは喜ばしいが、夜の帳が下りた、この後のことを考えると、アッズーロの気持ちは否応なく沈んだ。
「――という訳でアッズーロ、もう寝ないと」
先に切り出したのはナーヴェだった。優しい眼差しでアッズーロを見つめ、宝は促す。
「きみも部屋を用意して貰ったんだから、今日からは一人で寝台を使って広々と寝られるよ」
アッズーロは、座っていた椅子から無言で立ち上がり、ナーヴェに歩み寄った。見上げてきた笑顔の、線の細い顎に手を添え、低い声で命じた。
「少し、口を開け」
「こう?」
ナーヴェは素直に、小さく口を開けた。アッズーロは身を屈め、宝の口に、口付ける。ナーヴェは驚いたように両目を瞠ったが、抵抗はしなかった。そのまま暫く口付けを続けてから、アッズーロはナーヴェを離した。
「今日のそなたは、林檎と蜂蜜と生姜の味だな」
目を逸らしながら言って、アッズーロはナーヴェの部屋を出た。レーニョとポンテが、後ろからついて来る。ポンテが扉を閉める直前、ナーヴェの歯を磨き始めるピーシェが見えた。
「おまえ達も部屋に入って休め」
アッズーロはレーニョとポンテに命じ、自分も割り当てられた部屋に入った。レーニョの部屋の隣で、ナーヴェの部屋の向かいにある一室だ。部屋の中の構造は、ナーヴェの部屋とほぼ同じである。その部屋の、同じ位置にある寝台に腰掛け、アッズーロは溜め息をついた。結局、自分はナーヴェに頼ってばかりいる。王の宝たるナーヴェの存在に権威を守られ、その知恵に助けられ、気遣われてすらいる。
(誰が「優秀」だと?)
自嘲が口の端に浮かぶ。
(われは王だと、そなたはわれの宝だと、言い切る力は、まだわれにはない――。許せ、力なき王を)
幾ら広々と寝られようと、今夜は眠る気になれなかった。
(「林檎と蜂蜜と生姜の味」か……)
大人しく歯を磨かれながら、ナーヴェは分析する。当然だろう。今日の食事は、林檎と蜂蜜と生姜ばかりだった。朝食は羊乳で煮た林檎と生姜湯でどちらも蜂蜜入り。昼食は海藻入り平打ち麺を羊乳で煮て生姜で味付けしたものと蜂蜜入り林檎果汁。夕食は蕪と海藻とを羊乳で煮て生姜で味付けしたものと蜂蜜入り林檎果汁。全てアッズーロが考えた献立らしい。
(きみは、毒にも詳しいけれど、薬にも――薬膳にも詳しいよね……)
お陰で、体調は一日で随分とよくなった。
ピーシェに木杯を渡され、手桶を差し出されて口を濯ぎながら、ナーヴェは微かに目を細める。
(そして、きみはいつも、香ばしいような、羊の乳の匂いがする。だから、ぼくも羊の乳の匂いがするのに、気づかないんだね……)
今日は一日、あの香ばしい匂いを傍で感じていた。人の言葉で、「楽しい」と言える一日だった。
「ナーヴェ様、お召し替えを」
ピーシェに声を掛けられて、ナーヴェは大人しく立ち上がった。男物の長衣と筒袴を脱いで、女物の長衣を纏う。薄く柔らかく、胸元が広く開いた前開きの衣。
(アッズーロのためにも、今夜はできるだけパルーデと話をしないとね……)
着替えを終え、椅子に座り、髪を丁寧に梳かされて、夜の仕度は完了だった。
ナーヴェは寝台に横たわり、ピーシェに掛布を掛けられて、闇に没した部屋に一人になる。
(ピーシェ、きみのことも、パルーデに話してみるよ)
いつも通り、油皿を持って部屋を辞した赤毛の少女の横顔は、頑なで、悲しげだった。
暫く微睡んで肉体を休めていると、やがて床板が軋んでパルーデが現れた。
「お体の調子は、如何ですか?」
油皿の灯火を掲げて、パルーデはナーヴェを見下ろす。ナーヴェは上体を起こし、詫びた。
「大丈夫だよ。昨夜は、ごめん」
「いえいえ、こうして今夜からまたあなた様との逢瀬を楽しめる。それで充分でございますよ」
パルーデは妖艶に微笑み、机に油皿を置いて、寝台へ来た。
「パルーデ」
ナーヴェは、寝台に腰掛けた相手を見つめて問う。
「きみは、青い瞳の人が好きなのかな?」
パルーデは、少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んでナーヴェの首筋に口付け、言った。
「――そうでございますね。わたくしは、あなた様のような、澄んだ青い瞳の者に、心惹かれるのですわ」
「それは、何故?」
問いを重ねたナーヴェを、パルーデはゆっくりと押し倒し、囁いた。
「長い昔話になりますが、宜しいですか?」
「うん。聞かせてほしい」
ナーヴェは、見下ろしてくるパルーデの顔を、真っ直ぐに見上げた。
「分かりました」
パルーデは唇に微笑みを浮かべると、ナーヴェに半ば覆い被さるように、傍らに身を横たえて、語り始めた。
「わたくしには、歳の近い叔母がおりました。癖のない暗褐色の長い髪と、深い青色の瞳が印象的な、美しい人でした。名を、グランディナーレといいました」
(グランディナーレ……)
ナーヴェは、軽く目を瞠った。それは、アッズーロの母の名だ。
(確かに、グランディナーレは、ギアッチョの腹違いの妹だった)
チェーロの妃グランディナーレ。
(あれは、幸せな結婚ではなかった――)
「グランディナーレは普段はとても大人しくて、無口で、物静かで、あまり笑いもしない人でした」
パルーデはナーヴェの髪に顔を埋めて、懐かしげに話す。
「でも、好きなものを食べる時や、馬で遠乗りに出た時などには、青い瞳をきらきらとさせて、生き生きとして、まるで、彫像が動き出したかのような――、そういう美しい人でした」
「もしかして、少しぼくと似ていたのかな?」
ナーヴェは問うてみた。グランディナーレの容姿は記録している。自分の設定と比較すれば、背格好や顔立ちに類似点が多いことは明白だった。
「ええ」
パルーデは、ナーヴェの首筋から胸元へ手を這わせながら、小さく頷く。
「あなた様を知れば知るほど、姿形だけでなく振る舞いまで、グランディナーレに似ているという思いが強くなりました。そうして、是が非でも、あなた様を抱きたいと思うようになりました。グランディナーレは――わたくしが初めて愛した人は、永遠にわたくしから奪われてしまいましたから」
王家は、その象徴たる青い瞳を血筋として保つために、婚姻相手には、必ず青い瞳の者を選ぶ。それは、既に絶対の掟となっている。
(掟のために、グランディナーレは、チェーロに嫁がされた。ギアッチョは、王家への忠誠心と、自らの地位、両方のために、妹を差し出した)
チェーロの傍にいたナーヴェは、全てを見ていた。チェーロは、グランディナーレを愛した。けれど、グランディナーレは、生涯、チェーロを愛することはなかった。
(チェーロの前では、いつも硬い表情で、素っ気なくて、まるで人形のようだった……)
「――グランディナーレは、食べることに妙な拘りがありましてね」
パルーデは、湿っぽくなった話を乾かすかのように、くすりと笑う。
「誰もしない食べ方、新しい料理を考えることが好きでした。たまには、わたくしが眉をひそめるようなものも作っていましたけれど、大抵は、意外に美味しくできていて、それを二人で笑顔で食べたものですわ」
(ああ、もしかしたら……)
乾酪に蜂蜜。あの食べ方を発明したのは、アッズーロではなく、グランディナーレだったのかもしれない。あの食べ方は、アッズーロにとって、大切な母の思い出なのかもしれない。
(きみは、嘘がつけるから……)
目を閉じたナーヴェの肉体を、パルーデの指と唇が、隅々まで弄っていく。いつもより優しく、いつも以上に細やかに――。
ナーヴェは頃合いを見計らって、目を閉じたまま、もう一つの話題を切り出した。
「ピーシェは、きみのことを、愛しているよ……。きみは、どう思っているの……?」
「――あれは、拾ったのです」
パルーデは、ナーヴェの足を愛撫しながら、淡々と告げる。
「拾って、わたくしが一から躾けたのですわ。優しく躾けた訳でもないのに、何故かわたくしに懐いて……。不憫な子です」
「それは、違う……」
ナーヴェは目を開いて、天井を見つめながら諭す。
「彼女は、きみと出会えて、幸せだから……」
「――閨で別の子を勧められたのは、二度目ですわ」
パルーデは、不意に動きを止めて、呟いた。そうして体を起こし、黒髪の間からナーヴェを見下ろす。
「グランディナーレ。今夜だけ、そう呼ばせて頂いても、宜しいでしょうか?」
微かに届く灯りの中で、微笑んだパルーデの両眼が潤んでいる。
ナーヴェは、黙って頷いた。
パルーデの天秤は、早くからテッラ・ロッサ側に傾いていた。ゆえに、ギアッチョが引退し、パルーデがレ・ゾーネ・ウーミデ侯となった時から、アッズーロは即位を急ぎ始めたのだ。
(パルーデの、父上への憎しみは、尋常ではなかった。あのままでは、あやつは最も効果的な時を狙って、わが国を裏切っただろう)
アッズーロが即位すると、パルーデの天秤の傾きは少しだけましになったが、まだテッラ・ロッサ王国側へ傾いていた。アッズーロは、グランディナーレの子だが、チェーロの子でもあるからだ。
(あやつは、減税を願い出たあの時、われを最後に見定めて、見限りに来ておった。ナーヴェが新たな産業となり得る草木紙生産を教授すると条件を出して、あやつの天秤は、漸く水平になった。だがそれでも、わが国のほうには傾かなかった……)
最後にパルーデの心の天秤を、オリッゾンテ・ブル王国のほうに傾かせたのは、ナーヴェ自身だった。その底知れぬ知性と知識、そしてパルーデ好みの容姿を使って――。
(パルーデも、疾うに気づいておるのだろうな……)
ナーヴェが、外見だけでなく、性格すら、グランディナーレに似ていることに。
(母上が、もっと自由であったなら、きっと、あのようであられたろう……)
だからこそ、パルーデは今、オリッゾンテ・ブル王国を裏切らない。ナーヴェが、重石となって、パルーデを繋ぎ止めている――。
アッズーロは、じっと寝台に腰掛けたまま、険しく目を細めた。廊下の向こうから、ナーヴェの声が微かに聞こえる。己自身を、道具として使い切る、人ではないナーヴェの喘ぐ声に、アッズーロは唇を噛んで向き合い続けた。
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