8 / 29
プロローグ
日本で魔法はどうなるの
しおりを挟む
ほんの少し金策に思いを馳せらせていると、ふと思い出したことがあった。
「そういや、俺、日本で1度魔法試したんだけど、問題ないのか」
「ん。問題ないのぉ」
聞いた疑問に、即座に返答がある。
「このペンダントのおかげか」
胸に下げられたペンダントを持ち上げ、三太が問う。
「まぁのぉ。そうじゃな、そのペンダントが、魔法を使える結界を張っていると考えてくれればいいんじゃよ」
すぐに肯定を告げられた。
「まぁ、なんとなくは理解してるんだが、魔法、いや魔力か。向こうでの行動にも影響があるから詳しく教えてくれないか」
「うぅん。少し困ったのぉ」
説明を求めると困惑されてしまったようだ。
しばしの沈黙の後、考えがまとまったのか、神が教示し始める。
「例えば、そうじゃなぁ。まずは、思い浮かべてくれんかのぉ。
せっかくじゃから、おぬしの暮らしておった実家でいいのぉ。
おぬしの部屋と居間に水槽がある。そう思い浮かべるんじゃ。
その2つ、おぬしの部屋の水槽をA、居間の水槽をBとする。
Aには、大量の水が入っており、1cmくらいと小さい元気な魚1匹が泳ぎ回っておる。
Bは空っぽじゃ。ここまでは良いかのぉ」
「ああ」
三太は、簡単なイメージをし、頷く。
「では、次じゃ、Aの小魚は、自由に行動できておるじゃろ。何処に泳いでいこうが、呼吸しようが、食事しようが、どうとでもできておるはずじゃ」
「まあなっ」
「では、小魚を捕まえて、Bに移してくれ。まぁ、特別に網は使ってよいじゃろ」
「できたぞ。別に手掴みでもよかったんじゃないのか」
「まぁ、網であろうが、手掴みであろうが、はたまたサイコキネシスであろうがのぉ。
Bに移す時、おぬしが網で掬って、それを居間に持っていって、水槽に移す。つまり、小魚にとっては、他からの助力なりが必要になってしまうんじゃ。
結果、Aの中では普通に生きておったのに、Bに移るとなっただけで、魚はAで生きるのに必要な労力以上の力を必要としたのじゃ。ここまで良いかのぅ」
「まぁ、なんとなくな」
連続する神の指示に従う三太。
「要は、AからBに移る。これが、こっちから日本に転移すると考えてほしいんじゃ」
「なるほどなぁ。で」
ふむと頷き、先を促す。
「ああ、さっき言わんかったが、例えば、Aの水槽の中で、右の壁から左の壁へ行く。まぁ、これが、この星リロンでの転移だと考えてくれてよい。
Aの水槽の中では、何処へ行こうが、その元気がある、その力がある。それだけで自由にできるということじゃ」
「なにが言いたい」
話が急に戻って、少しばかり理解に苦しんだ。
「なぁに、Aはこっちの世界じゃ。小魚がおぬしだと考えてみると、魔法使おうが何しようが、自由にできると言いたかっただけじゃ」
「ああ、分かった。で」
「そこでじゃ、先ほどのBに移った魚は、どうなるんじゃ」
「水も無いから、すぐ死ぬだろ」
当然だと、答える三太。
「まぁのぉ。そのとおりじゃなぁ。いくらか生き延びたところで死んでしまうのぉ」
「……」
無言で先を促し、神を見る。
「では、先ほどの網の代わりに、うむ、何がいいかのぉ。そうじゃ、ビールジョッキを使ってよいとするかのぉ。そうするとどうじゃ」
「網で掬うよりは、水がある分ちょっとはマシになっただけだ」
三太は脳内で、自分の部屋の水槽に、大きめのジョッキを突っ込み、小魚を掬い、ソレを居間に運んで、そこの水槽に注ぐイメージを済ませ、その結果だけを口にした。
「なるほどのぉ。では、溢さず、そのままジョッキを水槽の中に置いたらどうじゃ」
「んなもん。さっきよりもずっと生きられるぞ」
神の指示によるイメージで、水槽の中に大きいジョッキをそのまま立てて置いた。
当然、小魚はその中だ。
「そうじゃな。じゃが、今、重要なのはソコじゃないんじゃ。ジョッキの中で小魚はどうしておる」
「ん、泳いでいるが……そうか」
神の言いたいことに三太は勘付いた。
「おお、気付きおったか。お主が考えているように、ジョッキの中で小魚は自由じゃ」
「ってことは、俺も日本で魔法は自由に使えるってことか」
「そういうことじゃな」
「このペンダントがジョッキってことか。実は、すげぇんだなっ、このペンダント」
そう、冒頭でもあったように、
「ふぉっふぉっふぉっ」
高笑いで答える神である。
さらに、三太は疑問をぶつける。
「魔力の上限、いや、魔法は何回くらい使えるんだ」
「三太よ。おぬし、さっきの話、ちゃんと聞いておったのか」
神は、きちんと伝わってなかったのか。と、声を細める。
「聞いてたが」
失礼だなとばかりに、憮然と答える三太。
神は、釈然とはしないものの、話を始めた。
「ふぅぅ。まぁよい。Aの中でもジョッキの中でも小魚は元気じゃな。ジョッキじゃと範囲は狭いが、息をしようが、泳ごうが。Bに移す労力に比べれば、無いにも等しい力じゃ」
「ってことは、どんだけ魔法使おうが上限はないってことか」
「そういうことじゃの。おぬし自身が異世界転移や世界創造を自由にできるとなると、話は変わってしまうがのぉ。まぁ、おぬしには、そんな魔法もスキルもないから心配はいらんのぉ。自由に使うといいんじゃ」
そうまとめると、神は三太に安心しろと告げた。
「おお、さすが神さん。これで何とかなりそうだ」
自分の中での計画に支障がないばかりか、却ってうまくいきそうだと、神に礼を告げた三太であった。
「そういや、俺、日本で1度魔法試したんだけど、問題ないのか」
「ん。問題ないのぉ」
聞いた疑問に、即座に返答がある。
「このペンダントのおかげか」
胸に下げられたペンダントを持ち上げ、三太が問う。
「まぁのぉ。そうじゃな、そのペンダントが、魔法を使える結界を張っていると考えてくれればいいんじゃよ」
すぐに肯定を告げられた。
「まぁ、なんとなくは理解してるんだが、魔法、いや魔力か。向こうでの行動にも影響があるから詳しく教えてくれないか」
「うぅん。少し困ったのぉ」
説明を求めると困惑されてしまったようだ。
しばしの沈黙の後、考えがまとまったのか、神が教示し始める。
「例えば、そうじゃなぁ。まずは、思い浮かべてくれんかのぉ。
せっかくじゃから、おぬしの暮らしておった実家でいいのぉ。
おぬしの部屋と居間に水槽がある。そう思い浮かべるんじゃ。
その2つ、おぬしの部屋の水槽をA、居間の水槽をBとする。
Aには、大量の水が入っており、1cmくらいと小さい元気な魚1匹が泳ぎ回っておる。
Bは空っぽじゃ。ここまでは良いかのぉ」
「ああ」
三太は、簡単なイメージをし、頷く。
「では、次じゃ、Aの小魚は、自由に行動できておるじゃろ。何処に泳いでいこうが、呼吸しようが、食事しようが、どうとでもできておるはずじゃ」
「まあなっ」
「では、小魚を捕まえて、Bに移してくれ。まぁ、特別に網は使ってよいじゃろ」
「できたぞ。別に手掴みでもよかったんじゃないのか」
「まぁ、網であろうが、手掴みであろうが、はたまたサイコキネシスであろうがのぉ。
Bに移す時、おぬしが網で掬って、それを居間に持っていって、水槽に移す。つまり、小魚にとっては、他からの助力なりが必要になってしまうんじゃ。
結果、Aの中では普通に生きておったのに、Bに移るとなっただけで、魚はAで生きるのに必要な労力以上の力を必要としたのじゃ。ここまで良いかのぅ」
「まぁ、なんとなくな」
連続する神の指示に従う三太。
「要は、AからBに移る。これが、こっちから日本に転移すると考えてほしいんじゃ」
「なるほどなぁ。で」
ふむと頷き、先を促す。
「ああ、さっき言わんかったが、例えば、Aの水槽の中で、右の壁から左の壁へ行く。まぁ、これが、この星リロンでの転移だと考えてくれてよい。
Aの水槽の中では、何処へ行こうが、その元気がある、その力がある。それだけで自由にできるということじゃ」
「なにが言いたい」
話が急に戻って、少しばかり理解に苦しんだ。
「なぁに、Aはこっちの世界じゃ。小魚がおぬしだと考えてみると、魔法使おうが何しようが、自由にできると言いたかっただけじゃ」
「ああ、分かった。で」
「そこでじゃ、先ほどのBに移った魚は、どうなるんじゃ」
「水も無いから、すぐ死ぬだろ」
当然だと、答える三太。
「まぁのぉ。そのとおりじゃなぁ。いくらか生き延びたところで死んでしまうのぉ」
「……」
無言で先を促し、神を見る。
「では、先ほどの網の代わりに、うむ、何がいいかのぉ。そうじゃ、ビールジョッキを使ってよいとするかのぉ。そうするとどうじゃ」
「網で掬うよりは、水がある分ちょっとはマシになっただけだ」
三太は脳内で、自分の部屋の水槽に、大きめのジョッキを突っ込み、小魚を掬い、ソレを居間に運んで、そこの水槽に注ぐイメージを済ませ、その結果だけを口にした。
「なるほどのぉ。では、溢さず、そのままジョッキを水槽の中に置いたらどうじゃ」
「んなもん。さっきよりもずっと生きられるぞ」
神の指示によるイメージで、水槽の中に大きいジョッキをそのまま立てて置いた。
当然、小魚はその中だ。
「そうじゃな。じゃが、今、重要なのはソコじゃないんじゃ。ジョッキの中で小魚はどうしておる」
「ん、泳いでいるが……そうか」
神の言いたいことに三太は勘付いた。
「おお、気付きおったか。お主が考えているように、ジョッキの中で小魚は自由じゃ」
「ってことは、俺も日本で魔法は自由に使えるってことか」
「そういうことじゃな」
「このペンダントがジョッキってことか。実は、すげぇんだなっ、このペンダント」
そう、冒頭でもあったように、
「ふぉっふぉっふぉっ」
高笑いで答える神である。
さらに、三太は疑問をぶつける。
「魔力の上限、いや、魔法は何回くらい使えるんだ」
「三太よ。おぬし、さっきの話、ちゃんと聞いておったのか」
神は、きちんと伝わってなかったのか。と、声を細める。
「聞いてたが」
失礼だなとばかりに、憮然と答える三太。
神は、釈然とはしないものの、話を始めた。
「ふぅぅ。まぁよい。Aの中でもジョッキの中でも小魚は元気じゃな。ジョッキじゃと範囲は狭いが、息をしようが、泳ごうが。Bに移す労力に比べれば、無いにも等しい力じゃ」
「ってことは、どんだけ魔法使おうが上限はないってことか」
「そういうことじゃの。おぬし自身が異世界転移や世界創造を自由にできるとなると、話は変わってしまうがのぉ。まぁ、おぬしには、そんな魔法もスキルもないから心配はいらんのぉ。自由に使うといいんじゃ」
そうまとめると、神は三太に安心しろと告げた。
「おお、さすが神さん。これで何とかなりそうだ」
自分の中での計画に支障がないばかりか、却ってうまくいきそうだと、神に礼を告げた三太であった。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる