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プロローグ

日本で魔法はどうなるの

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 ほんの少し金策に思いを馳せらせていると、ふと思い出したことがあった。

 「そういや、俺、日本で1度魔法試したんだけど、問題ないのか」
 「ん。問題ないのぉ」
 聞いた疑問に、即座に返答がある。

 「このペンダントのおかげか」
 胸に下げられたペンダントを持ち上げ、三太が問う。
 「まぁのぉ。そうじゃな、そのペンダントが、魔法を使える結界を張っていると考えてくれればいいんじゃよ」
 すぐに肯定を告げられた。

 「まぁ、なんとなくは理解してるんだが、魔法、いや魔力か。向こうでの行動にも影響があるから詳しく教えてくれないか」
 「うぅん。少し困ったのぉ」
 説明を求めると困惑されてしまったようだ。

 しばしの沈黙の後、考えがまとまったのか、神が教示し始める。
 「例えば、そうじゃなぁ。まずは、思い浮かべてくれんかのぉ。
  せっかくじゃから、おぬしの暮らしておった実家でいいのぉ。
  おぬしの部屋と居間に水槽がある。そう思い浮かべるんじゃ。
  その2つ、おぬしの部屋の水槽をA、居間の水槽をBとする。
  Aには、大量の水が入っており、1cmくらいと小さい元気な魚1匹が泳ぎ回っておる。
  Bは空っぽじゃ。ここまでは良いかのぉ」
 「ああ」
 三太は、簡単なイメージをし、頷く。
 
 「では、次じゃ、Aの小魚は、自由に行動できておるじゃろ。何処に泳いでいこうが、呼吸しようが、食事しようが、どうとでもできておるはずじゃ」
 「まあなっ」

 「では、小魚を捕まえて、Bに移してくれ。まぁ、特別に網は使ってよいじゃろ」
 「できたぞ。別に手掴みでもよかったんじゃないのか」

 「まぁ、網であろうが、手掴みであろうが、はたまたサイコキネシスであろうがのぉ。
 Bに移す時、おぬしが網ですくって、それを居間に持っていって、水槽に移す。つまり、小魚にとっては、他からの助力なりが必要になってしまうんじゃ。
 結果、Aの中では普通に生きておったのに、Bに移るとなっただけで、魚はAで生きるのに必要な労力以上の力を必要としたのじゃ。ここまで良いかのぅ」
 「まぁ、なんとなくな」
 連続する神の指示に従う三太。

 「要は、AからBに移る。これが、こっちから日本に転移すると考えてほしいんじゃ」
 「なるほどなぁ。で」
 ふむと頷き、先を促す。

 「ああ、さっき言わんかったが、例えば、Aの水槽の中で、右の壁から左の壁へ行く。まぁ、これが、この星リロンでの転移だと考えてくれてよい。
 Aの水槽の中では、何処へ行こうが、その元気がある、その力がある。それだけで自由にできるということじゃ」
 「なにが言いたい」
 話が急に戻って、少しばかり理解に苦しんだ。

 「なぁに、Aはこっちの世界じゃ。小魚がおぬしだと考えてみると、魔法使おうが何しようが、自由にできると言いたかっただけじゃ」
 「ああ、分かった。で」

 「そこでじゃ、先ほどのBに移った魚は、どうなるんじゃ」
 「水も無いから、すぐ死ぬだろ」
 当然だと、答える三太。

 「まぁのぉ。そのとおりじゃなぁ。いくらか生き延びたところで死んでしまうのぉ」
 「……」
 無言で先を促し、神を見る。

 「では、先ほどの網の代わりに、うむ、何がいいかのぉ。そうじゃ、ビールジョッキを使ってよいとするかのぉ。そうするとどうじゃ」
 「網で掬うよりは、水がある分ちょっとはマシになっただけだ」
 三太は脳内で、自分の部屋の水槽に、大きめのジョッキを突っ込み、小魚を掬い、ソレを居間に運んで、そこの水槽に注ぐイメージを済ませ、その結果だけを口にした。

 「なるほどのぉ。では、溢さず、そのままジョッキを水槽の中に置いたらどうじゃ」
 「んなもん。さっきよりもずっと生きられるぞ」
 神の指示によるイメージで、水槽の中に大きいジョッキをそのまま立てて置いた。
 当然、小魚はその中だ。

 「そうじゃな。じゃが、今、重要なのはソコじゃないんじゃ。ジョッキの中で小魚はどうしておる」
 「ん、泳いでいるが……そうか」
 神の言いたいことに三太は勘付いた。

 「おお、気付きおったか。お主が考えているように、ジョッキの中で小魚は自由じゃ」
 「ってことは、俺も日本で魔法は自由に使えるってことか」

 「そういうことじゃな」
 「このペンダントがジョッキってことか。実は、すげぇんだなっ、このペンダント」
 そう、冒頭でもあったように、

 「ふぉっふぉっふぉっ」
 高笑いで答える神である。

 さらに、三太は疑問をぶつける。
 「魔力の上限、いや、魔法は何回くらい使えるんだ」

 「三太よ。おぬし、さっきの話、ちゃんと聞いておったのか」
 神は、きちんと伝わってなかったのか。と、声を細める。

 「聞いてたが」
 失礼だなとばかりに、憮然と答える三太。

 神は、釈然とはしないものの、話を始めた。
 「ふぅぅ。まぁよい。Aの中でもジョッキの中でも小魚は元気じゃな。ジョッキじゃと範囲は狭いが、息をしようが、泳ごうが。Bに移す労力に比べれば、無いにも等しい力じゃ」

 「ってことは、どんだけ魔法使おうが上限はないってことか」

 「そういうことじゃの。おぬし自身が異世界転移や世界創造を自由にできるとなると、話は変わってしまうがのぉ。まぁ、おぬしには、そんな魔法もスキルもないから心配はいらんのぉ。自由に使うといいんじゃ」
 そうまとめると、神は三太に安心しろと告げた。

 「おお、さすが神さん。これで何とかなりそうだ」
 自分の中での計画に支障がないばかりか、却ってうまくいきそうだと、神に礼を告げた三太であった。
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