11 / 16
ある犬の物語
前編 犬と出会う※
しおりを挟む
都鳥さまに描いていただいた四コマ漫画からインスピレーションをいただき、サイドストーリーを書いてみました。
元ネタ → https://www.pixiv.net/artworks/94128631
四コマ通りほのぼのストーリーになるはずが、なぜかガッツリ濡れ場が入りました。そんな番外編です。
***
これは、とある冬の出会い。
煩悶の日々の只中にあった、ささやかな記憶。
逃避行の最中のこと。
とある事情から、私は生まれ育った故郷に戻ることとなった。
その頃には、追手は私を教義や正義のために、というよりは……「面子のために」排除せんとしていることが判明していた。
つまりは、顔見知りがいる土地ほど、表立っては戦闘をしかけにくいということ。そのために故郷に向かう決断をしたものの、家族の元に戻るのにはためらいがあった。
結論を言えば、後にエルンストに見つかり強引さに押し負け、あっさりと実家で過ごすようになったのだが……当時は祖父の顛末を思い出したのもあり、迷惑をかけられないと二の足を踏んでいたのだ。
ヴァッサーシュピーゲルの駅を出、ヴィルと手分けをして宿を探すことに。
そこで、一匹の子犬と目が合った。
毛並みはそれなりに整っていたし、程よく肥えた体格を見たところ栄養状態も悪くなさそうだった。
その上、私を見た途端、怯えるでもなくパタパタとしっぽを振ってくる。人に慣れていなければ、こうはなるまい(厳密に言えば、私はヒトではないのだが……)。
……おそらくは、捨てられたばかりなのだろう。
「……っ」
茶色のもふもふとした毛並みは愛らしく、向けられた瞳が胸に突き刺さる。
純粋な光が、誰かを彷彿とさせる。……弟か……? いや、少し違うような……。
私とて、見捨てたくはない。だが、逃避行の最中に飼ってやることなどできない。
何より……
哺乳類の血液は、吸血鬼の糧になる。
「……たくましく生きるのですよ」
やはり、ダメだ。
未練を振り切り、背を向ける。
この体躯では、少量の吸血でも命取りになりかねない。
野良犬として生きるのは、過酷な道だろうが……それでも。
私には、祈ることしかできはしないのだ。
***
見つけた宿にて、くたびれた身体を寝台に沈める。
昼間に動いたせいか、身体がひどく重く感じた。
「大丈夫っすか?」
「ん……あぁ、大したことではない」
ヴィルの問いに、そう返しておく。
太陽光を浴びたせいだろう。怠くはあるが、この程度は慣れておかねば今後に支障が出る。
「無理すんなって言ったじゃないすか」
ヴィルは呆れたように言うと、横になった私の肩に触れ、自分の方を向くように伝えてくる。
「飲みます?」
躊躇いなく差し出された手には、以前に噛んだ痕がまだ残っていた。
断ろうとは思った。思ったのだが……疲れた肉体は、間違いなく血を欲していた。
「……っ、う……」
言葉を発する前に、思わず喉が鳴ってしまう。……と、唇に生ぬるい感触が触れた。
口付けられたと気付いた瞬間、扉を叩くように舌が唇の隙間を舐めた。
「待っ、ぁ……!」
薄く開いた唇に舌をねじ込まれ、口の中いっぱいに求めていた味が広がる。
「ん、ふ……っ」
肩を押し返そうとするが、私の肉体は間違いなくそれを待っていた。
唇を離すと、真剣な表情のヴィルと目が合う。
「……神父様……」
瑪瑙の瞳が、欲望を映してぎらりと輝く。
思わず、胸が高鳴る。
彼の武骨な指先が、そっと私の腿に触れた。
「どうっすか?」
誘いの言葉に、静かに頷く。
寝台が、二人の重みでぎしりと軋んだ。
***
ヴィルは私の服を脱がし、自らも裸になる。
たくましい肉体と反り勃った肉棒が目に入り、腹の奥が疼くのを感じた。
「もう、そんなになっているのか……」
「誰のせいだと思ってるんすか」
ヴィルは手慣れた様子で私に口付け、その位置を下へ、下へと徐々に落としていく。
「……ぅ、あ……ぁあっ」
ヴィルの唇が私の首筋を、鎖骨を、胸の突起を啄む。時に軽く吸われ、時に執念深く舐られ、身体の芯が熱を持つ。
ゆるく起き上がった私自身を握られ、上下に扱かれる。……が、そんな刺激ではもう、私は満足できない。
「ん……っ、ふ、ぅ……くぅっ」
「は……っ、物欲しそうな顔っすねぇ」
図星を突かれ、顔がかぁっと熱くなる。
「大丈夫っすよ。ちゃーんと、可愛がってあげますんで」
節くれだった指が孔に沈められ、弱い箇所を指の腹で擦られる。
「んぁあっ、ぁ、あ、そこは……っ」
「エロい孔っすねぇ。オレの指、そんなに美味しいっすか」
「だ……誰のせい、だと……っ、く、ぅ、ぁあっ」
欲しい。
奥まで欲しい。
貫かれたい。
指を引き抜かれ、代わりに怒張が秘所に宛てがわれる。
先走りで潤った先端に口付けられ、入口がひくつくのがわかった。
「あぁああっ」
ずぷりと差し挿れられ、嬌声が漏れた。
今や、私は挿入されるだけで快感を得る身体なのだ。
浮き出た雁首が私の弱い箇所を抉り、浅黒い指が傷痕の上を這い回る。
「ぅ……っ、く、ぅう、あぁっ」
「は……ぁ、エロすぎ……ッ」
奥へ奥へと、ヴィルが入ってくる。
強い快感が脳天を駆け抜け、思わずたくましい背中にしがみついた。
「アッ、ぁ、あぁあっ! そこ、は……っ」
「あー、ココ、知っちまいましたもんねぇ」
「やらっ、へんにな……っ、ぁ、あ、んんんんっ」
「……ッ、大丈夫っすよ。女のコになっちゃうだけって聞いたし」
ごくりと息を飲む音と、舌なめずりの音が耳を犯す。
最奥をずんっと突き上げられ、一瞬、呼吸が止まる。
「あ……っ、ンッ、────────ッ」
激しい快感の波に襲われ、目の前が真っ白になる。
わななく胎内に精が注がれ、腹の奥からじわりと養分が染み渡っていく。
「は……ァ、……あ……」
ずるりと肉棒を引き抜かれた孔が、名残惜しいとばかりに疼いた。
ぐたりと寝台に身を預ければ、たくましい腕が私を抱き留め、髪に、額に、頬に、口付けの雨が降ってくる。
「おやすみ、神父様。ゆっくり休んでくれな」
甘い囁きに身を委ね、私の意識は微睡みの中へと沈んだ。
***
目を覚ますと、ヴィルは部屋にいなかった。
……何かを探して来ると言っていた気もするが、ぼんやりしていたせいかよく覚えていない。
裸の身体を起こすと、収まりきらなかった精がたらりと腿を伝う。
「勿体ない」と即座に思ってしまった愚かな思考を、無理やり振り払った。
とはいえ、どちらからも糧を与えられたからか、身体の調子は間違いなく回復している。
身体を起こし、寝台脇に放られていた服を着込んだ。
毎回思うのだが、剥ぐなら剥ぐでもう少しまとめて置いておけないのだろうか。
……いや、私から脱いでおけばいい話でもあるのだが。
「神父様ー!」
……と、元気な声が扉の向こうから響いて来る。
どうやら、ヴィルが帰って来たらしい。
内鍵を開き、招き入れ……ようとしたところで、無邪気な報告が聞こえた。
「犬拾いました!」
ヴィルの腕には、先刻見かけた子犬が抱えられている。
「わふっ」
子犬はヴィルの言葉に呼応するよう、どこか嬉しそうに鳴いていた。
元ネタ → https://www.pixiv.net/artworks/94128631
四コマ通りほのぼのストーリーになるはずが、なぜかガッツリ濡れ場が入りました。そんな番外編です。
***
これは、とある冬の出会い。
煩悶の日々の只中にあった、ささやかな記憶。
逃避行の最中のこと。
とある事情から、私は生まれ育った故郷に戻ることとなった。
その頃には、追手は私を教義や正義のために、というよりは……「面子のために」排除せんとしていることが判明していた。
つまりは、顔見知りがいる土地ほど、表立っては戦闘をしかけにくいということ。そのために故郷に向かう決断をしたものの、家族の元に戻るのにはためらいがあった。
結論を言えば、後にエルンストに見つかり強引さに押し負け、あっさりと実家で過ごすようになったのだが……当時は祖父の顛末を思い出したのもあり、迷惑をかけられないと二の足を踏んでいたのだ。
ヴァッサーシュピーゲルの駅を出、ヴィルと手分けをして宿を探すことに。
そこで、一匹の子犬と目が合った。
毛並みはそれなりに整っていたし、程よく肥えた体格を見たところ栄養状態も悪くなさそうだった。
その上、私を見た途端、怯えるでもなくパタパタとしっぽを振ってくる。人に慣れていなければ、こうはなるまい(厳密に言えば、私はヒトではないのだが……)。
……おそらくは、捨てられたばかりなのだろう。
「……っ」
茶色のもふもふとした毛並みは愛らしく、向けられた瞳が胸に突き刺さる。
純粋な光が、誰かを彷彿とさせる。……弟か……? いや、少し違うような……。
私とて、見捨てたくはない。だが、逃避行の最中に飼ってやることなどできない。
何より……
哺乳類の血液は、吸血鬼の糧になる。
「……たくましく生きるのですよ」
やはり、ダメだ。
未練を振り切り、背を向ける。
この体躯では、少量の吸血でも命取りになりかねない。
野良犬として生きるのは、過酷な道だろうが……それでも。
私には、祈ることしかできはしないのだ。
***
見つけた宿にて、くたびれた身体を寝台に沈める。
昼間に動いたせいか、身体がひどく重く感じた。
「大丈夫っすか?」
「ん……あぁ、大したことではない」
ヴィルの問いに、そう返しておく。
太陽光を浴びたせいだろう。怠くはあるが、この程度は慣れておかねば今後に支障が出る。
「無理すんなって言ったじゃないすか」
ヴィルは呆れたように言うと、横になった私の肩に触れ、自分の方を向くように伝えてくる。
「飲みます?」
躊躇いなく差し出された手には、以前に噛んだ痕がまだ残っていた。
断ろうとは思った。思ったのだが……疲れた肉体は、間違いなく血を欲していた。
「……っ、う……」
言葉を発する前に、思わず喉が鳴ってしまう。……と、唇に生ぬるい感触が触れた。
口付けられたと気付いた瞬間、扉を叩くように舌が唇の隙間を舐めた。
「待っ、ぁ……!」
薄く開いた唇に舌をねじ込まれ、口の中いっぱいに求めていた味が広がる。
「ん、ふ……っ」
肩を押し返そうとするが、私の肉体は間違いなくそれを待っていた。
唇を離すと、真剣な表情のヴィルと目が合う。
「……神父様……」
瑪瑙の瞳が、欲望を映してぎらりと輝く。
思わず、胸が高鳴る。
彼の武骨な指先が、そっと私の腿に触れた。
「どうっすか?」
誘いの言葉に、静かに頷く。
寝台が、二人の重みでぎしりと軋んだ。
***
ヴィルは私の服を脱がし、自らも裸になる。
たくましい肉体と反り勃った肉棒が目に入り、腹の奥が疼くのを感じた。
「もう、そんなになっているのか……」
「誰のせいだと思ってるんすか」
ヴィルは手慣れた様子で私に口付け、その位置を下へ、下へと徐々に落としていく。
「……ぅ、あ……ぁあっ」
ヴィルの唇が私の首筋を、鎖骨を、胸の突起を啄む。時に軽く吸われ、時に執念深く舐られ、身体の芯が熱を持つ。
ゆるく起き上がった私自身を握られ、上下に扱かれる。……が、そんな刺激ではもう、私は満足できない。
「ん……っ、ふ、ぅ……くぅっ」
「は……っ、物欲しそうな顔っすねぇ」
図星を突かれ、顔がかぁっと熱くなる。
「大丈夫っすよ。ちゃーんと、可愛がってあげますんで」
節くれだった指が孔に沈められ、弱い箇所を指の腹で擦られる。
「んぁあっ、ぁ、あ、そこは……っ」
「エロい孔っすねぇ。オレの指、そんなに美味しいっすか」
「だ……誰のせい、だと……っ、く、ぅ、ぁあっ」
欲しい。
奥まで欲しい。
貫かれたい。
指を引き抜かれ、代わりに怒張が秘所に宛てがわれる。
先走りで潤った先端に口付けられ、入口がひくつくのがわかった。
「あぁああっ」
ずぷりと差し挿れられ、嬌声が漏れた。
今や、私は挿入されるだけで快感を得る身体なのだ。
浮き出た雁首が私の弱い箇所を抉り、浅黒い指が傷痕の上を這い回る。
「ぅ……っ、く、ぅう、あぁっ」
「は……ぁ、エロすぎ……ッ」
奥へ奥へと、ヴィルが入ってくる。
強い快感が脳天を駆け抜け、思わずたくましい背中にしがみついた。
「アッ、ぁ、あぁあっ! そこ、は……っ」
「あー、ココ、知っちまいましたもんねぇ」
「やらっ、へんにな……っ、ぁ、あ、んんんんっ」
「……ッ、大丈夫っすよ。女のコになっちゃうだけって聞いたし」
ごくりと息を飲む音と、舌なめずりの音が耳を犯す。
最奥をずんっと突き上げられ、一瞬、呼吸が止まる。
「あ……っ、ンッ、────────ッ」
激しい快感の波に襲われ、目の前が真っ白になる。
わななく胎内に精が注がれ、腹の奥からじわりと養分が染み渡っていく。
「は……ァ、……あ……」
ずるりと肉棒を引き抜かれた孔が、名残惜しいとばかりに疼いた。
ぐたりと寝台に身を預ければ、たくましい腕が私を抱き留め、髪に、額に、頬に、口付けの雨が降ってくる。
「おやすみ、神父様。ゆっくり休んでくれな」
甘い囁きに身を委ね、私の意識は微睡みの中へと沈んだ。
***
目を覚ますと、ヴィルは部屋にいなかった。
……何かを探して来ると言っていた気もするが、ぼんやりしていたせいかよく覚えていない。
裸の身体を起こすと、収まりきらなかった精がたらりと腿を伝う。
「勿体ない」と即座に思ってしまった愚かな思考を、無理やり振り払った。
とはいえ、どちらからも糧を与えられたからか、身体の調子は間違いなく回復している。
身体を起こし、寝台脇に放られていた服を着込んだ。
毎回思うのだが、剥ぐなら剥ぐでもう少しまとめて置いておけないのだろうか。
……いや、私から脱いでおけばいい話でもあるのだが。
「神父様ー!」
……と、元気な声が扉の向こうから響いて来る。
どうやら、ヴィルが帰って来たらしい。
内鍵を開き、招き入れ……ようとしたところで、無邪気な報告が聞こえた。
「犬拾いました!」
ヴィルの腕には、先刻見かけた子犬が抱えられている。
「わふっ」
子犬はヴィルの言葉に呼応するよう、どこか嬉しそうに鳴いていた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる