上 下
30 / 31
epilogo

終幕※

しおりを挟む
「良い子にしてたかい。俺のツバメちゃん」
「ああっ」

 ベッドの上の恋人に優しく語りかけ、つややかな黒髪を撫でる。
 フェルドは器具で自分を慰めるのをやめ、潤んだ瞳で俺を睨みつけてきた。

「……っ、入ってくるなら、ノックをしろ……っ」
「お前が気付いてなかっただけじゃねぇかい?」

 まあ、実際しなかったんだけどな。ノック。
 真っ赤なフェルドが可愛いし、言わねぇでおくけど。

「む……夢中になどなっていない! こ、これはあくまで治療行為だッ!」
「へいへい。そうデシタネー」
「聞いているのか!?」

 服を脱ぎつつ、フェルドの抗議を聞き流す。
 実際、フェルドが使ってるのは快楽中毒を治すための器具ではある。魔力で動く器具で、中で震えたり伸縮したりする……まあ、言ってしまえば張形ディルドだ。本来はクスリを入れて気持ちよくなるためのブツらしいが、今入れてる薬は、医者に頼んで調合したちゃんとしたモンを使ってる。

「魔力、欲しいかい?」
「……君が、『手を出したい』の間違いじゃないのか」
「俺は手を出したい。お前は魔力が欲しい。……イイねブラーヴォ。相性抜群だ」
「……調子のいい男だ。まったく」

 普段は安静にさせて、時々薬飲ませるなり器具使わせるなりセックスするなりで、快楽中毒の方も、ぶっ壊れた肺の方もゆっくり治療中だ。

 大親分カーポはわざわざ地中海沿岸の、空気が良い場所を療養所に用意してくれた。……ま、ウチのファミリアにとってはかなり有益な「客人」だ。丁重にもてなさなきゃならねぇ。
 そんな重要人物を連れてきた功績で、俺は「調査員」から「世話係」に格上げになった。厳密には格上げなのかどうかはよく知らねぇが、少なくとも俺としちゃ役得だ。

「あ、ぁあっ、じゃぐ、あーろっ」
「……っ、美味しそうに仕上がったな。フェルド……」

 ベッドの上のフェルドにキスをし、トロトロになった蜜壷を指でかき回す。そのまま覆いかぶさり、胸の紋章を撫でた。
 甘い吐息が漏れ、互いの熱が高まっていく。

 海の向こうのトスカーナ王国侯爵領アリネーラでは、三男のフィリポが跡を継いで領主になったらしい。見せてもらったフェルドへの手紙には、「こちらのことは気にせず、療養に専念して欲しい」と殊勝しゅしょうなことが書かれていた。ちなみに長男の方……フェデリコの手紙は、定期的に俺の方に届く。大半が俺とフェルディナンドの仲についての詮索せんさくで、三割くらいが趣味に関する語りだ。肺の静脈がどうとか、卵巣の形状がどうとか、聞いてねぇし知らねぇよ……。

 まあ、それはそうとして、二人とも案外チョロ……じゃねぇ。情に脆そうなところがある。このままダリネーラとの繋がりを維持できりゃ、ファミリアにとっても得になるだろう。
 ……つまり、ビアッツィの中にゃ、俺らの関係に水を差す奴らはいねぇってことだ。

「フェルド……愛してる」
「ンッ……あぁっ、入って……っ」

 指を引き抜いて、喉元にキスを落とす。
 俺が中に入ると、フェルドは縋り付くよう俺の背に手を回した。

「ぅ、ぁあっ、あぁあっ」
「……ッ、好きだ、フェルド……! 好きだっ!!」

 めいっぱい愛を囁きながら、腰を打ち付ける。ほぐれた中から蜜が溢れて、より深く、より近くまで繋がれるようになる。

「んぁっ、ジャグ……あっ、ロ……っ、イク……も、イク……ッ」

 きゅうきゅうと締め付けてくる秘所が愛しくて、律動も自然と速くなった。

「や、ぁっ、アッ、は……っ、う、あぁあぁあっ!」
「……! イッたか。イッたよなぁ? 俺に抱かれて……っ、イッたんだよなっ!」

 中に精を注ぎ、喘ぎを漏らす唇に口付ける。
 月の紋章を優しく撫で上げれば、フェルドは蕩けた表情で俺を見上げ、自分の手を俺の手に重ねた。

「今はゆっくり休めよ。軍に戻るか、それとも俺らの同胞フラテッロになるか……そんなのは、後で考えりゃいい」
「……ああ……」

 医者の話によると、フェルドの身体はゆっくりとはいえ、確実に良くなっているらしい。
 喧嘩をすることもまあ……それなりにあるが、この生活が少しでも長く続くのなら、他に何も望むことはねぇ。

「ジャグアーロ」

 ……と、腕の中のフェルドが俺の名前を呼ぶ。

「うん? 何だい、アモーレ」

 髪を撫でながら顔を覗き込むと、真っ赤になって黙っちまった。

「……。……いいや、やっぱり、なんでもない」
「何だよそれ。気になるだろ」

 深く突っ込むと、正拳突きが胸のド真ん中に飛んでくる。

「うるさい。僕に構うな」
「~~~~、……ッてぇー!!? なんで殴るんだよ!?」

 さすがにこの流れは理不尽じゃねぇ!?
 俺、なんか悪いことしたか!?

「君はずるい! すぐに愛してるだの好きだの、よくも簡単にペラペラと……!」
「なるほどな……つまりは『僕もそれくらいたくさん好きって言いたい』って……あいてててて絞め技はやめろって! 病人だよなお前……!?」
「……ッ、人の! 心を! 勝手に読むな……ッ」

 ったく……。相変わらず、素直じゃねぇところはとことん素直じゃねぇな、こいつ!
 ……ま、いいや。可愛いから許す!



***



In seguito, la famiglia Biazzi "di qua" fu insignita del titolo di conti per i servizi resi nella guerra d'indipendenza siciliana...

(その後、『こちらの世界の』ビアッツィ家はシチリア独立戦争での功績を称えられ、伯爵の地位を得ることとなった……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

獅子帝の宦官長

ごいち
BL
皇帝ラシッドは体格も精力も人並外れているせいで、夜伽に呼ばれた側女たちが怯えて奉仕にならない。 苛立った皇帝に、宦官長のイルハリムは後宮の管理を怠った罰として閨の相手を命じられてしまう。    強面巨根で情愛深い攻×一途で大人しそうだけど隠れ淫乱な受     R18:レイプ・モブレ・SM的表現・暴力表現多少あります。 2022/12/23 エクレア文庫様より電子版・紙版の単行本発売されました 電子版 https://www.cmoa.jp/title/1101371573/ 紙版 https://comicomi-studio.com/goods/detail?goodsCd=G0100914003000140675 単行本発売記念として、12/23に番外編SS2本を投稿しております 良かったら獅子帝の世界をお楽しみください ありがとうございました!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【R指定BL】下剋上な関係を集めた短編集

あかさたな!
BL
◆いきなりオトナな内容に入るのでご注意ください◆ 全話独立してます! 年下攻めや下剋上な関係の短編集です 【生徒会長になってた幼馴染による唇攻め】【弟からの指による快感で服従してしまった兄】【sub/dom世界の勇者と魔王】【VRゲームが進化した先にスライムに負ける受けがいてもいい】【脳イキさせる大学の後輩】【両片思いが実った】【むしろ胸を開発されてしまう話】【嫉妬を抑えれない幼いご主人様】【悪魔に執着してしまう腹黒神父様】【ただただ甘々なオメガバース世界のお話】【キス魔な先生を堪能する双子】 2022/02/15をもって、こちらの短編集は完結とさせていただきます。 ありがとうございました。 ーーーーーーーーーーー 感想やリクエスト いつもありがとうございます! 完結済みの短編集 【年下攻め/年上受け】 【溺愛攻め】 はプロフィールから読めます!

くっころ勇者は魔王の子供を産むことになりました

あさきりゆうた
BL
BLで「最終決戦に負けた勇者」「くっころ」、「俺、この闘いが終わったら彼女と結婚するんだ」をやってみたかった。 一話でやりたいことをやりつくした感がありますが、時間があれば続きも書きたいと考えています。 21.03.10 ついHな気分になったので、加筆修正と新作を書きました。大体R18です。 21.05.06 なぜか性欲が唐突にたぎり久々に書きました。ちなみに作者人生初の触手プレイを書きました。そして小説タイトルも変更。 21.05.19 最終話を書きました。産卵プレイ、出産表現等、初めて表現しました。色々とマニアックなR18プレイになって読者ついていけねえよな(^_^;)と思いました。  最終回になりますが、補足エピソードネタ思いつけば番外編でまた書くかもしれません。  最後に魔王と勇者の幸せを祈ってもらえたらと思います。 23.08.16 適当な表紙をつけました

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

処理中です...