遥かなる物語

うなぎ太郎

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第2章

真夏の愛

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翌朝、目を覚ました僕は、モロー家の領地であるプリンポンに向かうことを決めた。マリーがプリンポンの屋敷にいることは確かだ。僕は彼女にプロポーズする覚悟を決めていた。

プリンポンはボルフォーヌから馬車で2日の距離にある。ボルフォーヌから見て、ポリアーヌとはほぼ真反対の方角に位置する。僕は家族に帝都に用事があると言って出かけることにした。

朝食を済ませた僕は、家族に「少し用事があるので帝都に行ってくる」と伝えた。母上はやさしく微笑み、「シャルル、行ってらっしゃい。きっと順調に行くといいわね」と言ってくれた。

屋敷を出て馬車に乗り、プリンポンへ向かう道中、心はマリーのことでいっぱいだった。彼女はきっと僕のプロポーズを受け入れてくれるだろう。しかし、マリーの父であるギャスパー・モロー侯爵は、僕と彼女の結婚を許してくれるだろうか。ただ結婚が成立すれば、ベルタン家とモロー家の間には友好関係が生まれる。モロー侯爵にとって決して悪い話ではない筈だ。最近多いと言う貴賤結婚というのに比べれば…

馬車の中で僕はうとうと微睡んでしまった。

その夜は、運転手のエマニュエルと共に街道筋の宿に泊まった。
食堂で夕食を済ませた僕たちは、部屋に戻り寛いだ。
「そういえばシャルル様、帝都に行くと仰っていましたが、この街道は帝都とは方角は違いませんか?」エマニュエルが尋ねた。

僕は一瞬ギクッとしたが、すぐに微笑んで答えた。「ええ、その通りだ。実は今回は帝都では無くて、プリンポンに向かうんだ。」
エマニュエルは興味深そうに訊いた。「プリンポンですか?なにか特別な用事があるのですか?」
しかし当然僕はプロポーズの計画を明かすつもりはなかった。
「プリンポンは静かな町だからね。たまには僕一人で旅行しようと思って。と言ってもエマニュエルは連れて行かなきゃならないけどね、ハハハハ…」

なんとか誤魔化した僕は、次の日も、その次の日もプリンポンへの道を進んでいった。

プリンポンの町に着いた時、そこは静かな朝の光景だった。町の人々が仕事に忙しそうに行き交い、商店が開店し、日常の営みが始まっていた。

宿に着いた僕たちは、少し部屋で寛いでから、ダイニングで昼食を済ませた。
昼食後、僕たちは表に出て、プリンポンの中心街を走る大通りを歩いて行った。

「済まないが、ここから先は一人にして欲しいんだ…」僕はエマニュエルに言った。
「分かりました。では私は宿で待っております。」
僕はマリーの住むモロー家の屋敷へと向かう。

屋敷は美しい庭園に囲まれており、煉瓦造りの重厚な建物が佇んでいた。マリーの姿が見えたら、声を掛けよう。決心して門の影に隠れ、庭の様子を窺っていた。
すると、マリーが庭で花を摘んでいる姿が目に入った。

「マリー!」僕が声をかけると、彼女は驚いたように振り向いた。そして、顔に嬉しそうな表情が広がった。
「シャルル!あなた、ここにいたの?どうして?」彼女の声には喜びが込められていた。
「ああ、実は君に会いたくて仕方が無くて、こっそり来たんだ。」僕は正直に言った。

僕は彼女の近くに歩み寄り、深呼吸をしてから続けた。「マリー、実は僕は今日、君に何か大切なことを伝えたいんだ。」
彼女は驚きと期待に満ちた目で僕を見つめ、微笑んだ。

僕は今までの人生で恐らく一番緊張していたが、勇気を出して言った。「君と出会ってから、僕の人生は本当に変わった。君がいなければ、こんなに幸せになれなかったと思う。だから、マリー、君と一緒に未来を歩みたい。結婚してくれるかな?」

彼女は少し目を潤ませながらも、喜びに満ちた笑顔を見せた。「シャルル、私もずっと待っていたわ。もちろん、喜んで。」
その言葉を聞いて、僕の心は安堵と幸福で満たされた。彼女との未来が始まる瞬間だった。

僕たちは結婚の約束を交わした後、近くの公園で穏やかな時間を過ごすことに決めた。

公園には青々とした木々が立ち並び、小さな池があり、人々が散歩を楽しんでいた。僕たちは手をつなぎながら、ゆっくりと歩き始めた。

「シャルル、こんな素敵な日を過ごせるなんて、本当に嬉しいわ。」
僕は彼女の手を優しく握り返し、微笑んで答えた。
「僕もだよ、マリー。君と一緒にいると、何もかもが幸せに感じるんだ。」

その後、僕たちはプリンポンの町にある小さなレストランでランチを取った。美味しい料理と共に、僕たちは幸せな時間を過ごした。

「マリー、君はお父上とお母上に、結婚のお許しを頂くことはできるかな?僕も家族を説得してみるよ。」
マリーは頷いた。「シャルル、私もそうしたいわ。父上と母上に私たちのことを話してみましょう。」

僕は別れ際、マリーの唇に優しく口付けをした。
「愛してるよ、マリー」

数日後、ボルフォーヌに帰還した僕は、母上に全てを話すことに決めた。
その夜、居間で二人きりで落ち着いて話すことができた。

「シャルル、あなたがマリーとの結婚を望んでいること、そしてその決断に至った経緯を聞いていますわ。」母上は私の手を取り、優しく微笑んだ。

私は少し緊張しながらも、母上に向かって話し始めた。「はい、母上。マリーとの出会いは私の人生にとって大きな幸せでした。彼女と共に歩む未来を考えると、心からの決意が湧き上がりました。」

母上は私の言葉をじっと聞いていた後、「シャルル、あなたの決断を尊重します。マリーとの結婚があなたにとって幸せであり、またベルタン家にとっても良い関係を築くことができるならば、私は全力で支持しますわ。」

その言葉に私は安堵の息をついた。
「ありがとうございます、母上。マリーと共に、私たちは幸せな未来を歩んでいくつもりです。」私は母上に深く頭を下げた。

翌朝、マリーからの手紙が届いた。手紙には次のようなことが書かれていた。

ーーーー

シャルルへ、

昨日、父上と母上に私たちの結婚について話をしました。最初は緊張しましたが、父上は私たちの幸せを応援してくれると言ってくださいました。母上も同様でした。彼らは私たちが互いに愛し合っていることを理解してくれて、喜んでくれました。

私たちの結婚式の日程についても話し合い、今後の計画を進めることになりました。シャルル、私たちの未来が本当に楽しみです。あなたと一緒に歩む日々がどれだけ幸せで満たされるものか、想像するだけで胸が高鳴ります。

愛を込めて、マリー

ーーーー

僕は手紙を読み終えると、心の奥から湧き上がる心からの安堵と幸福を抑えきれなかった。僕の目に涙が溢れ、視界が滲んでいくのがわかった。この手紙が僕にとって、マリーとの未来が確かなものとなった証だった。

続く
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