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58. 日記を読むんです

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 その夜、私は日記をまた読み込んでいました。
 当時の文化や息遣いがとっても生き生きと、そして時に両親への不平不満、兄弟への愛や憎しみの感情が、すごく親しみのある言葉で書かれています。
 昔も今もあまり言語の変化はないようで、私にも読むことができ、その点とても助かりました。
 この日記に書いてあるお婆様が語ったことによると、建国より以前、ここはお世辞にも豊かとはいえない土地だったようです。
 さるお方が開墾してようやっと食べていくことができるようになり、また、徐々に緑豊かになっていったようでした。
 開墾、というよりもしかしたら、これは魔法によるものだったかもしれません。
 だから国を起こすことができたと考えると、しっくりくるのです。

 お婆様の名前が、リリア、だというのもわかりました。
 そのリリアさん自身も、魔法をかなり使える手練れだったようです。
 魔法を使って、いろいろ不思議で楽しいことをしてもらった、とこの日記には彩り鮮やかにしてもらった事の色々が綴られていて。
 調べ物をしているというのに、思わずほっこりとした気持ちになりました。

 その日はそこまでで時間切れでしたので、あったかい気持ちを胸に、素敵な夢が見れそうな予感と共に眠りにつきました。



 翌日は雨でした。
 しとしとと振る雫が、街中を少しきらきらと装飾しています。
 ガリューシュと一緒に学校へ着くと、レイドリークス様が待ち構えていました。

「おはよう、ルル。今時間はあるかい?」
「殿下、おはようございます。はい、大丈夫ですよ。昨日の件ですか?」
「そうなんだ、昨日早速話をしに行ってね。驚かせてしまったようだったけれど、許可はもらったよ。その時他の男子生徒からも声がかかってね、俺は特に否はなかったから、勝手だけれどメンバーに入ってもらうことにしたから、その報告をね」
「そうですか、他に誘うあてもなかったので私も問題ないですよ。カシューには昨日返事をもらいました、ぜひ入れてほしいそうです」
「そうか、では五人揃ったから先生に申請しておくよ。顔合わせはまた日程を決めてから伝えるけど、いいかい?」
「わかりました」

 早速書類を作らなくては、と彼は言うなりたったか走っていってしまいました。
 なんだか忙しないです。
 しょうがないですね、メンバーは時に途中でかっ攫われることもあるとか。
 時間との戦い、根回しの練習でもあるので私も特に何も言わずその背中を見送りました。

 もう少しお話ししたかったな。

 っていう私の我儘な気持ちは内緒、です。

「そういえば、ガリューシュはもう誰かのグループに入りましたか?」
「おう、俺はもうダチんとこ入り済みだぜ。後もう一人入れば申請出せる感じ」
「そうですか」

 グループ決めは後半になると難儀するので、今日明日が勝負です。

「私、人脈はないですけど友人には恵まれましたから、決まらなくて困ったら相談してくださいね?」
「姉上ありがと。ま、ダチが有能だから大丈夫だよ」

 ガリューシュは頭の後ろで両手を組みながら、晴れ晴れとした笑顔を見せました。
 弟は良い友人を持ったようです。
 私も、しっかりと今ある縁を大切にしなくては。
 そう思いました。
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