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瑞木歌乃

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第一章

1 男子高校生の日常

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    俺の名前は桐生きりゅうゆう。特に紹介することもない平凡な高校生だ。でもまぁ、強いて言うのなら──
「悠くーん!今日一緒に帰らないっ?」
「いやいや、私と帰ろ?」
「あたしも一緒に帰りたいんだけど!」
    自分で言うのも違うと思うが、はっきり言って俺はモテている。勉強ができるわけでもないし、性格も良い方ではない。それでも俺はたくさんの女の子にチヤホヤされるから、なかなか楽な人生を送れているのだ。
「ねぇ悠くん、私と帰るよね?」
「なんでー?昨日あたしと帰るって言ってたじゃん!」
    ただ一つ、欠点としては、女子の争いが目の前で起こることが多々ということ。今日もそうだ。別に俺は誰と帰っても特に何も変わらないというのに、女子たちはみんな無駄な争いをする。そういうのが実に面倒臭いのだ。
「悠、今日も一緒に帰るの?」
「あぁ、頼む。」
    でも結局俺は、毎回幼馴染みの美香みかと一緒に帰路に着いている。それは美香が俺に好意を寄せているわけではなく、ただ単に俺が美香に頼んでいるからだ。そう、この女子同士の面倒臭い言い合いを避けるために、俺は毎回幼馴染みである美香に助けを求めているのだった。
    それに美香は気が強く、リーダーシップがあるため、俺と話していても女子を上手く抑えられるから都合がいい。そのため俺は美香を都合よく利用して、面倒事から逃れているのだ。

    いつもと変わらず、二人で着いた帰路。美香といると沈黙が続いても気まずくないし、女子も寄ってこないし、何より楽。そう、好都合な事がたくさんあるのだ。
    かといって美香を彼女にしたいかというと、実はそうでもない。何故かというと、美香はやたらと気が強く、がゼロなのだ。別に乙女タイプが好きというわけではなく、ただ俺はギャップが大好物なのだ。一見で中身は超美人とか、そんな漫画のようなギャップでも大歓迎。
    まぁ俺が評価することでもないのだが、正直美香は見た目と性格がそのまますぎるのだ。
「悠、今心の中であたしに何か文句つけてたでしょ?」
「げっ、なんで分かんだよ?なんか気持ちわりーな。」
「ちょっと?気持ち悪いって何よ?」
    俺たちはこの時、平和に笑い合っていた。それは、この後に待つの存在を知らなかったからに等しいから。この日が、俺のの最終日であった。
 
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