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幻の魔石は君だ
蒼の君
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その日からオリヴィエお気に入りの休憩場所に、あの胡散臭い男も現れるようになった。
めんどくさいことに巻き込まれている気がするのは、気のせいか。
「また来たんですか」
「悪いね。休憩がてら俺の話し相手になってくれると嬉しいのだが、どうだろうか?」
オリヴィエが男の姿を認め嫌味を言えば、男は改まってオリヴィエにそう言った。
昨日までは問答無用で居座っていたくせに、何の心境の変化だろうか。少々面食らいながらも片眉を上げ、男をじっくり見てやった。…気のせいかもしれないが、疲れている…ようである。オリヴィエは魔術師と言うだけあって直感に優れていた。人の機微には敏感だ。
「面倒事を持ってこないのならば、相手になりますよ。私も休憩に来ていますし、気持ちは分かりますから」
「…努力しよう」
男はほんの少し思案すると、笑顔でそう言い切った。オリヴィエは顔が引きつる。
面倒事をもってくる可能性あるのかよ!
「ええ、奮励努力して下さい。私の安寧のために!」
平和こそ幸せ!
「魔術師殿」
「なんだ、そう呼ぶようにしたんですか」
しばらく何日か男の話し相手になっていると、男がオリヴィエを魔術師殿と呼び始めた。
お互い、名前や身分といった個人情報を自ら名乗りあっていないのだから、オリヴィエが魔術省所属の魔術師の制服を着ていることからそう呼び始めたのだろう。
例え、男がオリヴィエのことを知っているのだとしても。だが、堅苦しいったらありゃしない。
「ああ。君の呼称になるようなものを探したんだが、魔術師しか思いつかなくてな」
「あなたにネーミングセンスはありませんね。却下します」
「なら、呼び名を教えてくれ」
「オリヴィエで結構ですよ。私の場合、素性を隠したところで意味がありませんから」
今更名乗るまでもなく、知ってるだろうに。知っていて知らないふりをするのは大変だろうな。
オリヴィエは手にしていた大判の本を開きながら、欠伸をかみ殺す。やはり徹夜はダメだったか。眠い。
「…そうか、オリヴィエだな」
眠気と戦っていたオリヴィエは、男が面食らったのちに嬉しそうな表情をしていたのだが…幸か不幸か、見ていなかった。
「はい。そうです。私はあなたのこと"蒼の君"と呼ばせていただきますね」
「…由来は?」
「そんなもん、あなたの瞳が青いからに決まってます。この呼び名については異論は認めません」
「君こそネーミングセンスがないぞ」
「うるさい!異論は認めないって言った!」
分かっている。オリヴィエだってこの名が浮かんだときは笑った。
だが"蒼の君"だなんてイタそうな呼び名をこの胡散臭いイケメン男につけてやりたいと思ったのだ。
「分かった分かった。そうがなるな」
めんどくさいことに巻き込まれている気がするのは、気のせいか。
「また来たんですか」
「悪いね。休憩がてら俺の話し相手になってくれると嬉しいのだが、どうだろうか?」
オリヴィエが男の姿を認め嫌味を言えば、男は改まってオリヴィエにそう言った。
昨日までは問答無用で居座っていたくせに、何の心境の変化だろうか。少々面食らいながらも片眉を上げ、男をじっくり見てやった。…気のせいかもしれないが、疲れている…ようである。オリヴィエは魔術師と言うだけあって直感に優れていた。人の機微には敏感だ。
「面倒事を持ってこないのならば、相手になりますよ。私も休憩に来ていますし、気持ちは分かりますから」
「…努力しよう」
男はほんの少し思案すると、笑顔でそう言い切った。オリヴィエは顔が引きつる。
面倒事をもってくる可能性あるのかよ!
「ええ、奮励努力して下さい。私の安寧のために!」
平和こそ幸せ!
「魔術師殿」
「なんだ、そう呼ぶようにしたんですか」
しばらく何日か男の話し相手になっていると、男がオリヴィエを魔術師殿と呼び始めた。
お互い、名前や身分といった個人情報を自ら名乗りあっていないのだから、オリヴィエが魔術省所属の魔術師の制服を着ていることからそう呼び始めたのだろう。
例え、男がオリヴィエのことを知っているのだとしても。だが、堅苦しいったらありゃしない。
「ああ。君の呼称になるようなものを探したんだが、魔術師しか思いつかなくてな」
「あなたにネーミングセンスはありませんね。却下します」
「なら、呼び名を教えてくれ」
「オリヴィエで結構ですよ。私の場合、素性を隠したところで意味がありませんから」
今更名乗るまでもなく、知ってるだろうに。知っていて知らないふりをするのは大変だろうな。
オリヴィエは手にしていた大判の本を開きながら、欠伸をかみ殺す。やはり徹夜はダメだったか。眠い。
「…そうか、オリヴィエだな」
眠気と戦っていたオリヴィエは、男が面食らったのちに嬉しそうな表情をしていたのだが…幸か不幸か、見ていなかった。
「はい。そうです。私はあなたのこと"蒼の君"と呼ばせていただきますね」
「…由来は?」
「そんなもん、あなたの瞳が青いからに決まってます。この呼び名については異論は認めません」
「君こそネーミングセンスがないぞ」
「うるさい!異論は認めないって言った!」
分かっている。オリヴィエだってこの名が浮かんだときは笑った。
だが"蒼の君"だなんてイタそうな呼び名をこの胡散臭いイケメン男につけてやりたいと思ったのだ。
「分かった分かった。そうがなるな」
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