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プロローグ
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少し前。私が学校を卒業し、社会人として働き迎えた冬の日の事だった。
薄暗い路地、冷たい雨が降る日であった。その路地を通って帰る途中、ダンボールに入った2人の子供を見つけた。2人とも中学生くらいの見た目をしていた。姉と弟…… ? きょうだいの様であった。
「『ひろってください』…… ?」
ダンボールに書いてある字をぽつりと呟いた。
「はい…… ! そうです。ぼk 私たちはしがない身分のものでございます。」
少年の声が返ってきた。返ってくると思っていなかった返事にびっくりしてしまう。続けざまに姉と思われる少女が喋る。
「元々2人で住んでいた家が燃えてなくなってしまったのです。」
会話を切り上げて通り過ぎようとするが、2人のしょんぼりとした顔が浮かぶ。良心が痛めつけられる。
とりあえず話してみようと思った。
「名前は? 」
そう私は咄嗟に答えてしまう。
「名前は、僕がセデクと言います。こちらのお姉さんはサキです。」
会話を続ける。
「両親は? 」
「ここにはいません。」
雨に濡れた可哀想な子供たち。
このまま放っていたら冷たい雨に濡れて風邪をひいてしまいそうだ。どうしよう。
私は冗談交じりに言葉を放った。
「うちに来ない? 」
「「本当ですか!? 」」
2人の顔がパッと明るくなる。
うぅ、雨上がりの太陽のような、純粋そうな眼差しがこちらを向いている。
家に上げない、という選択肢は無さそうだ。
こうして、小さな子供二人を家に上げることになってしまった。
しかし、そこにはひとつ問題があった……。
「どうぞ、入ってください。そんなに綺麗じゃないけど……。」
ドアを開いてエスコートする。
「「おじゃましま~す。ふぅ。」」
家に上げた途端、リラックスした表情の2人から悪魔のしっぽと角が生えてきた。
「わわぁ!! と……とりあえずお風呂貸させて貰っていいですか?」
セデクはとてもあたふたした様子でそう言った。
「あ、はい。」
私は状況が整理出来ないままそう答えてしまった。
「おい、どうすんだよ! 」
コソコソとセデクは喋る。
「とりあえず、身なりを整えてから彼女に説明しましょ。」
「……まぁ、そういうことにしておこう。」
「風呂は?」
「僕が先に入るよ。」
サキが風呂場から出てきた。
「弟が先にお風呂に入るそうなので、出てきちゃいました。」
「そうなんだぁ。そういえば…… さっきのしっぽと角って何? 悪魔? 」
サキはギクッとした表情をする。
「まぁ、バレちゃったのでしょうがないですね~。私たちは悪魔なんですぅ~。」
あ、あっさり言っちゃうんだ。
「あ、別に悪いことはしませんよ~。ヨイことしかしません。」
「へー。」
私は気になっていたことがあったので尋ねた。
「ところで、サキちゃんが持ってたそのスーツケースは何? 」
サキは木製のスーツケースを持っていっていた。A3程の大きさで、幅は20センチ程だった。
「ただ着替えとか貴重品を入れてあるだけですよ~。」
サキは笑顔ではぐらかす。
私は菓子を戸棚から出して、二人でしばらく談笑した。
……
そうこう話しているうちにセデクが出てきた。
改めて見るととてもよく出来た顔つきだ。金髪ショートのふわっとしたの髪の毛に、翠色の目が宝石のようだ。
それに似つかない、中学生のような芋ジャージ。
サキが風呂に入っている間に、
セデクとの会話を試みる。
「ドライヤーありますか? 」
「ここにあるよ。髪、乾かしてあげようか? 」
「うん。」
あ、案外素直。
私はいつも使っているトリートメントを彼の髪の毛に付けてわしゃわしゃと乾かす。ブローもしてあげた。
「同じ香り……僕の恩人の……大切な香り……。」
彼はつぶやく。少しにやける。
そこから少し時間が経って……
サキが出てきた。
「お風呂お借りしましたぁ~。気持ちよかったですぅ~。」
こちらも改めて見ると、見た目の良さが分かる。セデクと似た髪色と目の色、ふわふわロングの髪の毛、真っ白なお肌。そして、なんといってもたわわな胸。
芋ジャージで更に強調されてる気がする。
サキはドライヤーで髪を乾かした。セデクの時に出しっぱなしだったので、探さずに済んでいた。
暫くたった。もう19時だろうか。この子達をどうしようか。
客人用の布団もない。そう思っていると、2人は私の前に近づいた。
「コホン。えー。今日はありがとうございました。」
「僕達は本来人の家に住み込む悪魔です。ですが、主人を上手く見つけることが出来ず、主人の居ない空き屋敷に2人で住んでいました。」
「そして、家が天ぷらで全焼して閉まったんですぅ。」
天ぷらで全焼した館なんて聞いたことないぞ。
「まぁ館って言ってもあっちの世界の館なんですけどね。」
「あっちの世界? 」私は首をかしげる。
「人間の皆さんにとって異界と呼ばれる場所から、私たちは降りてきます。
ここまで降りてヨイこと悪いことをするのが悪魔ですから。」
「家が燃えちゃったので、ついでにご主人様も探してみようと思って~」
「段ボールの中に入ったら拾ってくれるかなぁ~って思ってやったらあなたが見つかりました~。」
「多分あなたが拾ってくれなければ、私たちは主人を見つけることなく暗い生活をしていたでしょう。」
二人はぎゅっと私の手を握ってこう言った。
「「貴方は命の恩人です! 」」
「というわけで~。」
二人は同時にパチンと指を鳴らした。格好は一瞬にして変わった。メイドだ。
「「ここに住まわせてくださいご主人様!」」
えぇ……!?
びっくりした。
いや、なんでもお金と場所が取れない。この子達の衣、食、住全てを保証できる気がしない。
セデクは続ける。
「服は沢山あります。」
「寝る時は繭(クレードル)に入るので大丈夫です。特に何も無ければ。」
サキも続ける。
「お金はそれなりにあります。」
「だから、住ませてください! 家事でもなんでもしますから! 」
土下座をして嘆願していた。
「「お願いします!」」
仕方ない……住ませるか……。
そうして1LDKの私の部屋に、2人は住むことになった。
薄暗い路地、冷たい雨が降る日であった。その路地を通って帰る途中、ダンボールに入った2人の子供を見つけた。2人とも中学生くらいの見た目をしていた。姉と弟…… ? きょうだいの様であった。
「『ひろってください』…… ?」
ダンボールに書いてある字をぽつりと呟いた。
「はい…… ! そうです。ぼk 私たちはしがない身分のものでございます。」
少年の声が返ってきた。返ってくると思っていなかった返事にびっくりしてしまう。続けざまに姉と思われる少女が喋る。
「元々2人で住んでいた家が燃えてなくなってしまったのです。」
会話を切り上げて通り過ぎようとするが、2人のしょんぼりとした顔が浮かぶ。良心が痛めつけられる。
とりあえず話してみようと思った。
「名前は? 」
そう私は咄嗟に答えてしまう。
「名前は、僕がセデクと言います。こちらのお姉さんはサキです。」
会話を続ける。
「両親は? 」
「ここにはいません。」
雨に濡れた可哀想な子供たち。
このまま放っていたら冷たい雨に濡れて風邪をひいてしまいそうだ。どうしよう。
私は冗談交じりに言葉を放った。
「うちに来ない? 」
「「本当ですか!? 」」
2人の顔がパッと明るくなる。
うぅ、雨上がりの太陽のような、純粋そうな眼差しがこちらを向いている。
家に上げない、という選択肢は無さそうだ。
こうして、小さな子供二人を家に上げることになってしまった。
しかし、そこにはひとつ問題があった……。
「どうぞ、入ってください。そんなに綺麗じゃないけど……。」
ドアを開いてエスコートする。
「「おじゃましま~す。ふぅ。」」
家に上げた途端、リラックスした表情の2人から悪魔のしっぽと角が生えてきた。
「わわぁ!! と……とりあえずお風呂貸させて貰っていいですか?」
セデクはとてもあたふたした様子でそう言った。
「あ、はい。」
私は状況が整理出来ないままそう答えてしまった。
「おい、どうすんだよ! 」
コソコソとセデクは喋る。
「とりあえず、身なりを整えてから彼女に説明しましょ。」
「……まぁ、そういうことにしておこう。」
「風呂は?」
「僕が先に入るよ。」
サキが風呂場から出てきた。
「弟が先にお風呂に入るそうなので、出てきちゃいました。」
「そうなんだぁ。そういえば…… さっきのしっぽと角って何? 悪魔? 」
サキはギクッとした表情をする。
「まぁ、バレちゃったのでしょうがないですね~。私たちは悪魔なんですぅ~。」
あ、あっさり言っちゃうんだ。
「あ、別に悪いことはしませんよ~。ヨイことしかしません。」
「へー。」
私は気になっていたことがあったので尋ねた。
「ところで、サキちゃんが持ってたそのスーツケースは何? 」
サキは木製のスーツケースを持っていっていた。A3程の大きさで、幅は20センチ程だった。
「ただ着替えとか貴重品を入れてあるだけですよ~。」
サキは笑顔ではぐらかす。
私は菓子を戸棚から出して、二人でしばらく談笑した。
……
そうこう話しているうちにセデクが出てきた。
改めて見るととてもよく出来た顔つきだ。金髪ショートのふわっとしたの髪の毛に、翠色の目が宝石のようだ。
それに似つかない、中学生のような芋ジャージ。
サキが風呂に入っている間に、
セデクとの会話を試みる。
「ドライヤーありますか? 」
「ここにあるよ。髪、乾かしてあげようか? 」
「うん。」
あ、案外素直。
私はいつも使っているトリートメントを彼の髪の毛に付けてわしゃわしゃと乾かす。ブローもしてあげた。
「同じ香り……僕の恩人の……大切な香り……。」
彼はつぶやく。少しにやける。
そこから少し時間が経って……
サキが出てきた。
「お風呂お借りしましたぁ~。気持ちよかったですぅ~。」
こちらも改めて見ると、見た目の良さが分かる。セデクと似た髪色と目の色、ふわふわロングの髪の毛、真っ白なお肌。そして、なんといってもたわわな胸。
芋ジャージで更に強調されてる気がする。
サキはドライヤーで髪を乾かした。セデクの時に出しっぱなしだったので、探さずに済んでいた。
暫くたった。もう19時だろうか。この子達をどうしようか。
客人用の布団もない。そう思っていると、2人は私の前に近づいた。
「コホン。えー。今日はありがとうございました。」
「僕達は本来人の家に住み込む悪魔です。ですが、主人を上手く見つけることが出来ず、主人の居ない空き屋敷に2人で住んでいました。」
「そして、家が天ぷらで全焼して閉まったんですぅ。」
天ぷらで全焼した館なんて聞いたことないぞ。
「まぁ館って言ってもあっちの世界の館なんですけどね。」
「あっちの世界? 」私は首をかしげる。
「人間の皆さんにとって異界と呼ばれる場所から、私たちは降りてきます。
ここまで降りてヨイこと悪いことをするのが悪魔ですから。」
「家が燃えちゃったので、ついでにご主人様も探してみようと思って~」
「段ボールの中に入ったら拾ってくれるかなぁ~って思ってやったらあなたが見つかりました~。」
「多分あなたが拾ってくれなければ、私たちは主人を見つけることなく暗い生活をしていたでしょう。」
二人はぎゅっと私の手を握ってこう言った。
「「貴方は命の恩人です! 」」
「というわけで~。」
二人は同時にパチンと指を鳴らした。格好は一瞬にして変わった。メイドだ。
「「ここに住まわせてくださいご主人様!」」
えぇ……!?
びっくりした。
いや、なんでもお金と場所が取れない。この子達の衣、食、住全てを保証できる気がしない。
セデクは続ける。
「服は沢山あります。」
「寝る時は繭(クレードル)に入るので大丈夫です。特に何も無ければ。」
サキも続ける。
「お金はそれなりにあります。」
「だから、住ませてください! 家事でもなんでもしますから! 」
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