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青の章
青の章28
しおりを挟む「えっ」
「なにっ!?」
葵とフェイロンが同時に声を上げると、白虎は不思議そうな顔をしてなおも言った。
「違うのか? まだのようだが、その男と番うのだろう? そうすれば当然赤子を産むのだからいっぺんに何人もの赤子の面倒は大変だろう」
まるで何人も産むような口ぶりに、葵は動揺しておかしな汗が止まらない。思わずフェイロンの方にチラリと目線をやると思った以上に深刻な顔で葵をじっと見つめている。
「葵」
「ひゃ、ひゃい!」
動揺して変な声が出てしまった葵だったが、そんな事には気にも止めず、フェイロンは赤子を抱く葵の肩にそっと大きな手を置き真剣な口調で聞いてきた。
「お前は赤子が産めるのか」
「う、うーん、可能性としてはゼロでは無いというか、発情期はずっと無かったから産めないと思っていたんだけど、この間発情期が来ちゃったし、なんとも言えないんだけど」
「産む可能性はあるのだな?」
「う、うん──そう、かも」
怖いくらい真剣なフェイロンに、思わず葵は正直に答える。それを聞いたフェイロンは天を仰いで片手で目を覆った。
「フェ、フェイロン?」
暫く沈黙が続いた後、ぼそりとフェイロンが呟いた。
「……なんなのだ、お前は──」
フェイロンの言葉にびくりと葵の肩がはねた。気味が悪く、薄気味悪いと思われたのかもしれない。元の世界で毎日のように自分の体を呪っていた日々が一瞬思い出され、目の前が暗くなる。
「俺は、今度こそ順を踏んで……毎朝自分で紫龍草を摘んで届け、夜には愛を囁き、怖がらせずに少しずつお前に受け入れてもらおうと色々と考えていたのに……何なのだ、お前は。俺の劣情を煽る女神なのか?」
チラリと葵を見るその瞳は、驚くほど熱を帯びていた。
腰骨にゾクリとしたものが走り、力が抜けそうになるのを必死に抑える。
「葵、色々と順番がおかしくなってしまったが、お前が何者であろうと、とにかく俺は目の前にいる葵が愛しくて愛しくて愛しくて今すぐ抱きたくしてしかたない。これ以上自分を抑える事は不可能だ」
「正直すぎるでしょ……」
千尋が後ろで何か言っているが、葵はもうフェイロンの声しか聞こえていない。
「だが、お前が嫌がるなら、何もせずに側にいてくれるだけでいい。それでも、いつかお前と番(つがい)というものになる事を俺は諦めたくない。お前という存在を愛している。どうすればいいか分からないほどに。どうかずっと俺の側にいてくれ。いや、側に居させて欲しい」
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