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黒の章
黒の章20★
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フェイロンは葵を見ると、大きく目を見開いた。
「お前はっ……!?」
葵が更に寝台に一歩近づくと、フェイロンは大声で叫び声をあげる。
「くっ、来るな!やめろっ。近付かないでくれ……っ!」
フェイロンの全力の拒絶を目の当たりにし、葵は頭から冷水を浴びせられた気分だった。
よく考えたら当たり前の事だ。
得体の知れない男が突如寝室に現れて、朦朧としているのを良いことに襲いかかろうとしているのだ。
フェイロンにとっては、先程の孫娘と葵は等しく不本意な侵入者にしか過ぎない。
(よく来たと、抱き寄せられ、キスでもしてくれると思っていたのか?)
自分の甘い考えに自嘲した。だが、それでも──。
葵はそのまま歩みを止めず、一歩ずつ寝台に近づく。
「止めろっ!こっちに来ないでくれっ……!」
フェイロンは必死に腕をあげて距離を取ろうとするが、オメガの誘惑香でうまく動けないようだった。
オメガの誘惑香を間近に嗅いで抗えるアルファは基本的に存在しない。実際、元の世界では、オメガが故意に誘惑香をアルファに嗅がせて行為に及ぶと、逆レイプとして性犯罪に問われる事もあった。
「やめろっ!やめてくれぇ!」
フェイロンの悲痛な叫びが、部屋中に響き渡る。ナイフのようなその叫びを、葵は全身で受け止めながら、なおも寝台に上った。
きつくシーツを握っている手にそっと自分の手を添える。途端そこから甘い痺れが全身に広がった。
至近距離で嗅ぐフェイロンの発情した香りは、全身をとろとろ煮詰めた蜂蜜のように溶かし、息を吐き出すだけでも感じてしまう。
あさましい奴だな、とクロの声が聞こえた気がした。
(そうなんだ。俺はあさましい奴なんだよ)
フェイロンを救うためとか、いくら言い訳したって、結局、一回でもいいから好きな人に抱いてもらいたいだけ──。
「クソッ!くるなぁっ……!」
いちいちフェイロンの言葉に傷ついて、でも、これからもっとフェイロンを傷つける。
「っ!フェイロン、抱いて……」
震える手でフェイロンの頬に手を添える。ビクリと固まったフェイロンの唇に、自分のそれを重ねた。わずかに開いた唇をそっと食むと驚くほど甘い味がする。もっと味わいたくなって唇の間からフェイロンの舌を探し当て、チュっと吸い上げた。
「っん……っん……」
葵はそのあまりの甘さに、赤ん坊がミルクを吸うように夢中になった。蕩けるような甘さと濃厚な香りが口いっぱいに広がって、堪らなく気持ちいい。
これが人の唾液とは、とてもじゃないが信じられない。禁断の果実の汁は、こんなにも甘いのか。
途端、フェイロンの喉の奥からグゥゥーと唸り声が聞こえたかと思うと、葵を寝台に乱暴に押し倒し、噛み付くように口付けられた。
歯と歯が当たり、痺れるような痛みに驚いたところに、舌が捻じ込まれ、上顎から歯の裏まで縦横無尽に貪られる。
吸っていたはずの舌も、逆に執拗に吸われ、溢れる唾液も全て啜られ葵は息苦しさに思わず顔を左右に揺らそうとするが、顎をがっしり掴まれ、まったく許してもらえない。
濃厚すぎる口付けに、本当に食べられてしまうのではないかと錯覚し、思わず必死にフェイロンの肩に爪を立てた。
フェイロンはそれでも全く動じず、ますます傍若無人に口の中を支配し、葵の膝の間に乱暴に足を入れ込むと、腰を痛いほど強くかき抱く。
苦しくて、辛いのに、葵はその全てにどうしようも無いほど感じてしまった。
口づけだけで達してしまいそうだ。
腰に回された手があやしく蠢き、尻たぶを強く掴まれると、とうとう葵は腰を弾ませ、先端部分から白濁を吐き出した。
「っんあぁぁ!」
「お前はっ……!?」
葵が更に寝台に一歩近づくと、フェイロンは大声で叫び声をあげる。
「くっ、来るな!やめろっ。近付かないでくれ……っ!」
フェイロンの全力の拒絶を目の当たりにし、葵は頭から冷水を浴びせられた気分だった。
よく考えたら当たり前の事だ。
得体の知れない男が突如寝室に現れて、朦朧としているのを良いことに襲いかかろうとしているのだ。
フェイロンにとっては、先程の孫娘と葵は等しく不本意な侵入者にしか過ぎない。
(よく来たと、抱き寄せられ、キスでもしてくれると思っていたのか?)
自分の甘い考えに自嘲した。だが、それでも──。
葵はそのまま歩みを止めず、一歩ずつ寝台に近づく。
「止めろっ!こっちに来ないでくれっ……!」
フェイロンは必死に腕をあげて距離を取ろうとするが、オメガの誘惑香でうまく動けないようだった。
オメガの誘惑香を間近に嗅いで抗えるアルファは基本的に存在しない。実際、元の世界では、オメガが故意に誘惑香をアルファに嗅がせて行為に及ぶと、逆レイプとして性犯罪に問われる事もあった。
「やめろっ!やめてくれぇ!」
フェイロンの悲痛な叫びが、部屋中に響き渡る。ナイフのようなその叫びを、葵は全身で受け止めながら、なおも寝台に上った。
きつくシーツを握っている手にそっと自分の手を添える。途端そこから甘い痺れが全身に広がった。
至近距離で嗅ぐフェイロンの発情した香りは、全身をとろとろ煮詰めた蜂蜜のように溶かし、息を吐き出すだけでも感じてしまう。
あさましい奴だな、とクロの声が聞こえた気がした。
(そうなんだ。俺はあさましい奴なんだよ)
フェイロンを救うためとか、いくら言い訳したって、結局、一回でもいいから好きな人に抱いてもらいたいだけ──。
「クソッ!くるなぁっ……!」
いちいちフェイロンの言葉に傷ついて、でも、これからもっとフェイロンを傷つける。
「っ!フェイロン、抱いて……」
震える手でフェイロンの頬に手を添える。ビクリと固まったフェイロンの唇に、自分のそれを重ねた。わずかに開いた唇をそっと食むと驚くほど甘い味がする。もっと味わいたくなって唇の間からフェイロンの舌を探し当て、チュっと吸い上げた。
「っん……っん……」
葵はそのあまりの甘さに、赤ん坊がミルクを吸うように夢中になった。蕩けるような甘さと濃厚な香りが口いっぱいに広がって、堪らなく気持ちいい。
これが人の唾液とは、とてもじゃないが信じられない。禁断の果実の汁は、こんなにも甘いのか。
途端、フェイロンの喉の奥からグゥゥーと唸り声が聞こえたかと思うと、葵を寝台に乱暴に押し倒し、噛み付くように口付けられた。
歯と歯が当たり、痺れるような痛みに驚いたところに、舌が捻じ込まれ、上顎から歯の裏まで縦横無尽に貪られる。
吸っていたはずの舌も、逆に執拗に吸われ、溢れる唾液も全て啜られ葵は息苦しさに思わず顔を左右に揺らそうとするが、顎をがっしり掴まれ、まったく許してもらえない。
濃厚すぎる口付けに、本当に食べられてしまうのではないかと錯覚し、思わず必死にフェイロンの肩に爪を立てた。
フェイロンはそれでも全く動じず、ますます傍若無人に口の中を支配し、葵の膝の間に乱暴に足を入れ込むと、腰を痛いほど強くかき抱く。
苦しくて、辛いのに、葵はその全てにどうしようも無いほど感じてしまった。
口づけだけで達してしまいそうだ。
腰に回された手があやしく蠢き、尻たぶを強く掴まれると、とうとう葵は腰を弾ませ、先端部分から白濁を吐き出した。
「っんあぁぁ!」
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