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どっちと姫初めするだよ!?

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「陛下、お疲れさまでした。これにて本年の政務は終了でございます」

 俺がひたすらサインしまくった書類を抱えて、宰相がほっとした顔で頭を下げた。やっと終わったか。革張りの椅子に深くもたれかかり、大きなため息をを吐く。
 俺も疲れたが、宰相も疲れただろう。今年は大きな災害こそ無かったが、隣国同士が戦争を始めそうになったりとなかなかハードな年だった。
 五年前にこのタイロン国の王に戴冠してから、まあまうまくやっている俺だが、流石に今年はやばいと思った。とはいえ、なんとかなったから年を越せるのだが。
 ねぎらいの言葉を発しようとした俺に、宰相が言いにくそうに切り出した。

「それで……侍従長から、姫初めの儀をどちらのお方と過ごすか、いい加減決めてくれと催促されておりまして……」
「あぁ、姫初めの儀かぁぁぁ」

 さらに深いため息をついてしまった。そうだ。それがあった。
 
 俺には二人の妃がいる。
 資源豊富な南隣の国、ジャイロのオメガの王子、ユーフィリア。
 長い歴史を持つ北隣の国、ピーインのオメガの王子、月白。
 どちらも我がタイロンにとって大事な友好国だったが、両国は仲が悪く、今年のはじめに一時期戦争にまで発展しそうになった。
 間に挟まれた俺の国にしてみればたまったもんじゃない。必死に仲裁に入った結果、俺が両国から妃を貰う事で一応決着が着いたのだ。
 だが、本来ならどちらも唯一無二の正妃におさまるべき、貴人。どちらかを寵愛、贔屓にするなどもってのほか。伽の回数や、順番にもめちゃくちゃ気を使い、常に平等になるように心がけてきた。
 だが、姫初めの儀だけは――。
 新しい年明けの後、初めて王が閨を共にする相手だけは、万国共通で正妃が務めると決まっている。この儀を一緒に過ごした相手が、肩書はどうあれ実質の正妃となってしまうようなものなのだ。
 今まで、常に平等を心がけてきたのに……。なんて、厄介な風習なんだ。
 
「一晩に順番にお伺いします。じゃあ駄目、だよなぁ」
「性豪な我が君なら可能かと思いますが、恐らく一番目のお相手から、あの手この手で引き止められるでしょう。実際問題一晩にお二人を平等に、というのは難しいかと……」
「だよなぁ」
 
 思いきり、真鍮の机に突っ伏す。
 宰相はそんな俺を追い詰めるように畳み掛けた。
 
「敵国同士の王子達にそれぞれ夜這いをかけて、性交でたらしこむという、奇抜な仲裁方法を思いついた我が君なら、なにか名案を思いつかれるのでは」
「人聞きの悪い事言うなよ。密会で説得しようとしたんだろ」
「えぇ、密室で身体で説得されたようで……」
 
 胡乱な目で見てくる宰相から、思わず目を逸らす。
 国王と王子の結婚ともなれば、国同士の結婚だ。何年も前から準備しておくのが常だが、それをこの一年で二度もほぼ同時に行った宰相の負担は計り知れない。
 
「でも、それで戦争が無くなったんだから。むしろ、褒めてもらいたいくらいなんだけど」
 
 じっとりとした視線を感じながら、俺は目を合わせないよう羽根ペンを手持ち無沙汰にクルクルとまわす。
 
「えぇ、我が君は本当に凄い方です。ですから賢王である陛下なら、姫初めの儀についても私が思いもつかないような奇想天外な策をお持ちなのではと思うのですが」
 
 なんとなく言葉に棘がある。大変だったのは分かったら、もう少し優しくして欲しい。こっちだって、仕事納めしたばかりで、めちゃくちゃ疲れているのだ。そりゃ、宰相だって同じだろうけど。
 
「そうだなぁ………」
 
 羽根ペンを鼻と口の間に挟んで、むむむ、と考えたふりをしていた俺を宰相が諌める気配がした時、政務室の扉が勢いよくバタンと開いた。
 
「ロイっ、仕事終わった!? 終わったな!! よし、オレと姫初めするぞっ」
 
 ドーンッと効果音が聞こえてきそうな登場をしたのは、南の国ジャイロから来た妃、ユーフィリアだ。健康的な小麦色の肌に、金色の短髪。形の良い小さな耳には、赤い貝の耳飾りが揺れ、癖のある長めの前髪は、触るとふわふわで心地よいのを俺は知っている。
 ジャイロ特有の風に舞うような薄い布を重ねた衣装は、ユーフィリア以外の人間が着れば道化師にも見えかねないド派手なピンク色だが、ユーフィリアが着るとそのくっきりとした顔立ちによく似合っていた。長いまつげに、愛嬌のある二重の瞳、厚ぼったい珊瑚色の唇。
 カーテンのようにひだが多い裾は、本来は床を引きずるほど長いものらしい。だが、ユーフィリアは自慢の足を隠すのが嫌だと、特注で前の部分だけ、ばっさりと太ももで切ってある。ユーフィリアは足を見てほしいみたいだが、俺は後ろだけ、しっぽみたいに長い裾がちょっと可愛いと思っている。
 可愛い嫁がわざわざ会いに来てくれたのは嬉しい限りだが、俺はわざとらしく眉を顰めてユーフィリアを諌めた。

「ユフィ、政務室に来ちゃだめだって何度も言っているだろ」
「だって、お前が全然オレに会いに来ないのが悪い」

 赤い唇を突き出し、拗ねるユーフィリア、もといユフィの可愛さに思わずぐっときてしまった。いかんいかん。

「どうせ明日からは新年祭で三日間政務は休みだよ。たっぷり一緒にいられるじゃないか」
「そうだ! 新年っ! 姫初めっ! 陰険ギツネが来る前にオレとしろ。すぐしろ。父様から絶対陰険ギツネには負けるなって手紙が来たんだ」
「いやいや、まだ新年になってないし……無理だよ」
「えぇ~!」

 ユフィが可愛く駄々をこねる。一応成人男子な筈なんだが、なんでこんなに可愛いんだろうな。キャンキャン騒ぐと、八重歯がのぞくのもまた可愛い。

「じゃあ、新年になるまでずっとオレといよう! そうすれば、陰険ギツネに先を越される事ないだろ?」
「いや、無理だよ」
「やだやだ、一緒にいようよ。オレがこんなに頼んでるのにぃ。じゃあ、特別にオレの膝で耳掻きしてあげる♡ 好きだろ? オレの耳掻き」
「う……っ」

 裾を掴まれ、グイグイとショッキングピンクの布貼りがされた寝台の方に引っ張られる。
 政務室に置くには明らかに浮いているそれは、ユフィが勝手に持ち込んだものだ。政務ばかりで忙しい俺が仮眠を取れるようにという優しさから運び込んでくれたものだが、実際には専ら妃達とイチャつくのに使用されている。

「ほらほら、こっちにおいで♡」

 優しく耳元で囁かれ、脳が痺れるように蕩けてくる。疲れた脳に、ユフィのハート声はやばい効く。
 
「そこまでじゃ。そこな山猿、早よう主様から離れろ。阿呆が感染る」

 ユフィといちゃついていると、またしても、ドーンという効果音つき(幻聴)で扉が開き、陰険ギツネ、こと月白がやってきた。 
 細面に切れ長の黒い瞳。確かに狐に似ているが、ならば狐は随分色っぽい動物だ。
 長い黒髪を簪一本で綺麗に結い上げ、白い頸を見せつけるように小首を傾げている。月白の独特の癖だが、袖の長い絹織物で作られた衣装によく合って色気が五割増しだ。黒と赤を重ねて着た花模様の衣装は、すでに年が明けたかのように華やかで艶やかだ。
 黒い扇子で口元を隠しているが、その薄い唇の下に黒子があるのを俺は知っている。はっきり言ってエロい。

「出たな陰険ギツネ。なんでお前がここにいるんだよ。妃は政務室には来ちゃいけないんだぞ」

 自分のことは棚に上げて、ユフィが月白に突っかかる。月白はそれを鼻で笑って反論した。

「山猿が主様の政務室で暴れていると聞いたのでな。主様の邪魔をするものは、排除するのが正妃の役割というもの。こうやって、馳せ参じたのじゃ。それ、邪魔だ、どけ」

 月白が扇子を俺とユフィの間に割って入れながら、肩に頭を乗せて擦り寄ってきた。うう、いい匂いする……。

「正妃はオレだ! 邪魔なのはお前だろうが。オレは今からロイと姫初めするんだよっ」

 ユフィも負けじと反対側から俺の腕に身体を押し付けるように手を絡ます。うう、やわこい……。
 しかし、これはまずいことになった。いくら妃達に挟まれて幸せな気持ちになっても、このままではまずい。俺の政務室で戦争が始まってしまう。
 俺は宰相に助けを求めようとしたが、その宰相はというと丁度扉からそそくさと出ていくとことだった。
 あいつ、逃げたな……。
 恨むように扉を睨んだが、その間にも妃達のキャットファイトはエスカレートしていく一方だ。

「ほほっ、猿の世界ではわからんが、人間の世界では姫初めは年が明けたら行うのじゃ。分かったら早くそこをどけ。主様には私が今から身体を揉んで解して差し上げるのじゃ」

『揉む』という言葉にドキリとする。まさか、月白。やめてくれよ。
 月白に目で、変なこと言うなよ、と念を送ってみるが、こんな時だけツンと済ました顔で全くこっちを見ない。――わざとだな。

「ロイは今から、俺の膝枕で耳掻きされるんだよっ」
「猿の毛だらけの膝枕で耳掻きされたくらいで、主様の一年の疲れが取れるとでも? 山猿は殿方の本当の疲れの取り方も知らんようだの」

 扇子で口元を隠しながら、月白がホホッと笑う。なんだか、嫌な予感する。

「なんだよそれ。どういうことだ?」

 ユフィが訝しげに首を傾げた。

「やめよう、この話は。ユフィ、聞いちゃ駄目だよ」

 俺はユフィの両耳を手で覆った。

「聞いちゃ駄目って何がだよっ。余計気になるわっ」

 ユフィが目を吊り上げて怒った。そりゃ、そうだ。そりゃ、そうだんだけどさ。

「いいではないか、主様。山猿に教えて差し上げれば? 主様の疲れが一番取れる方法を」

 俺が両手をユフィの耳を塞いでいるのをいいことに、月白が扇を置いて、俺のトラウザーズをずらす。中からにょっきりと現れた俺のものを見て、月白はふふっと頬を赤らめて微笑んだ。

「主様ったら、すでに期待で頭をもたげているではないか」
「月白っ、まずいって」

 そうは言うが、思いきり拒否できない男の性よ。駄目だ。今すぐ立ち上がって、逃げるのだ。だが、そう思えば思うほど、俺の違うところが勃ち上がっていく。

「なっ、なっ」

 ユフィが顔を真っ赤にして、目を白黒させた。

「主様は仕事で疲れたとき、ここでこうして、ここを揉んで差し上げるのが、一番疲れが取れるのじゃ」

 んふふ、と笑いながら月白が細い指を俺のすっかり勃ち上がったペニスに絡める。

「ここで!? オレが置いたこの寝台で!?」
「そうじゃ。趣味は悪いが使い勝手はよい。そこだけは褒めてやろう」

 俺が言いわけしようとしたところで、月白がべろんと赤い舌で俺のものを舐めあげた。
 ぐぅうぅ、めちゃくちゃ気持ちいいよぉ。

「だって、ロイ、オレが膝枕して耳掻きするのが、一番疲れが取れるよって、そう言ってたのにぃ」

 ものすごいショックを受けているユフィに、月白が鬼の首をとったように笑っている。

「耳掻きごときで疲れが取れるわけ無かろう」
「オレが耳掻きしている間に、陰険ギツネとこんなエッチな事を何回も何回もしてたなんて……」
「耳掻きも凄い疲れが取れるのは本当だぞ、ユフィ。そ、それに、な、何回もはしてないっ」

 息も絶え絶え誤解を解こうとする俺を尻目に、月白が本格的にフェラをはじめながら言い放つ。

「んふぅ、一日に三回こうしてお慰めしたこともあるぞぇ」
「三回……」

 顔にガーンと書いてるユフィにめちゃくちゃ罪悪感が募る。
 違うんだ。ユフィの耳掻きもめちゃくちゃ癒やされるんだけど、それとは違う男の生理現象の部分を月白に握られているというか。この月白は陰険ギツネというよりも、淫乱ギツネと言ったほうがいいんじゃってくらい、普段は清楚ぶっているが性に奔放でやばい奴なのだ。そこがまたいいんだけど。
 ユフィとはジャンルが違うのだ。ユフィは俺のサンクチュアリで、一緒にいるとキュンキュンするんだが、月白は一緒にいると常に股間がギュンギュンする感じだ。
 なんとかその事を分かってもらいたいと何か言おうとしたが、ユフィの様子がまたちょっとオカシイ事に気がついた。
 瞳が少し潤んでいるのは、悲しくてかと思ったが赤く充血している目は見覚えがあった。モジモジと太ももを擦り合わせて、月白が俺のものをジュボジュボと吸い上げる湿った音が響くたびに、ビクンと肩が震えている。

 こ、これはもしや……ユフィたん発情してるのか?

 まだ発情期ではない筈だが、覚えのある発情香がふわりと辺りに漂う。ちなみに月白はとっくに香っている。
 二人の発情香が疲れた脳にもろに効いてきた。クラクラと倒れ込みそうなほど、興奮してくる。
 俺は、悪くない。悪いのは仕事納めのめちゃくちゃ疲れてるときにのこのこやってきたユフィたんと、えっちな月白。そう結論付け、俺はユフィの耳を抑えたままだった手に力を入れ引き寄せた。

「――えっ、なに!? んふぅん……っ」

 月白にフェラされながら、俺はユフィに深く口付ける。甘い口内を思う存分味わい、弱い八重歯の裏をくすぐると、きゅうん、と可愛い声を出すユフィをますます夢中で貪った。
 月白はというと完全に面白そうにこちらを上目遣いで観察している。こいつは淫魔なので、新しい刺激の登場に喜んでいるのだ。
 余裕そうなのがムカついて、片手を月白の頭に乗せて、思いきり喉奥まで突き刺す。

「んぐぐッ!」

 喉奥にペニスが吸い付くようで、やばい気持ちいい。慣れているので、ちょっと無茶をしても大丈夫なはずだ。

「ぐっ、出るッ」

 最後に思いきり喉に突っ込んでから、引き抜いて月白の顔にぶっかける。これも、いつものパターンだ。顔にかけられたほうが酷くされている感じがして好きらしい。
 案の定、月白はハァハァと頬を紅潮させて、簪を引き抜き髪をバサリと下ろした。ペロリと舌舐めずりして俺の精液を美味しそうに味わう。完全にエロスイッチが入った顔だ。
 ユフィを見ると、またしてもカルチャーショックを受けて固まっていた。
 そりゃそうだ。顔にぶっかけた事なんてないどころか、フェラだってまともにさせた事もない。
 昨日やっとハイハイが出来るようになった赤子が、目の前で綱渡りを見せられるようなもんだ。
 ユフィは派手な外見をしているが、見た目に反してエロいことにはとても奥手で純情だ。それがまた可愛いのだが、陰険ギツネ、もとい淫乱ギツネの痴態はさぞかし驚いただろう。
 
「なんで……なんで、ロイ、そんなことするの?」

 あ、俺!? 俺が悪いの!?
 いや、もう俺が悪いんでいいや。
 ぶっちゃけ言おう。
 俺は今の状況にめちゃくちゃ興奮している。
 無言でユフィの胸の合わせをグイッと広げると、小麦色の肌にツンと尖った乳首が鎮座していた。

「ほぉ、山猿の乳輪はちと大きめじゃのう」
「やぁんッ」

 隣から月白が手を出して、ユフィの乳首をキュッ摘んだ。こら、やめなさい。そのビジュアルは股間がやばい。

「そこがいいんだよ。純情なのに、おっぱい大きめなのエロいだろ。可愛いだろ」

 俺は月白に反論しながら、ユフィの乳首をぺろんと舐める。

「あひぃん♡」

 感度も抜群の乳首に俺の股間は再度熱くなっていく。はぁ、かわえぇ。

「なるほどのぉ。可愛いかは分からぬが、確かにエロいの。主様が乳首を舐める度に、腰が揺れておるぞぇ」

 そう言うと、月白はユフィの短い裾に下から手を入れた。

「なっ、あっ! 嘘ぉっ! いやぁ、あっ、あっ♡」
「お、おい、まさか」
「ふむ、下の蕾も感度抜群じゃ。これはさぞかし主様も気持ち良かろう」

 ユフィが喘ぎながら、座っていられなくなり後ろに膝立ちで倒れ込む。短い裾からは、月白の長い指がユフィの後蕾を思う存分犯しているのがばっちり見えた。出し入れする際、ユフィが後ろから出す蜜液で細い指がじっとり濡れて泡立っている。やばい。めちゃくちゃエロい。
 
「あ、ぁぁ、あっ、キちゃうッ! ぁぁあッ、んふぁ♡」
 
 俺はもう辛抱堪らずユフィのおっぱいをめちゃくちゃ揉みしだきながら、狂ったように舌でユフィの口内を犯す。ここまで激しいキスは今までした事がないかもしれないってくらい貪った。
 ユフィが喉の奥で悲鳴を上げ身体を痙攣させる。後ろでイッたのだ。ハァハァと誰のものとも分からない熱い吐息が室内に立ち込めた。
 ユフィは深くイき過ぎて、焦点が合ってないようだった。やっぱり淫乱ギツネは手マンも上手いんだなぁと感心していると、その淫乱ギツネが不穏な事を言い出した。
 
「人間ひとつくらい長所があるものというが、猿にもあるのか。これは名器じゃな。主様、私も山猿に入れてみたい」

 さすが性の権化。とんでもない事を思いつくな。

「駄目に決まってるだろ。万が一孕ませでもして、ユフィがお前似の赤子を産んじゃったらどう言いわけするんだよ」
「えぇ~、ワタクシさんぴぃというものを、どうしてもしてみたぃぃ」

 ケーキが食べたいみたいな口調で言われてもとても困る。なんとかこの場を収める為、セックスで誤魔化そうと月白の腰を掴もうとしたところで、そうじゃ、と名案を閃いた顔をした。
 またしても、とても嫌な予感がする。

「じゃあ、主様が真ん中をやるのはどうじゃ? 主様が山猿に突っ込んでるお尻に、私のを入れるのは?」

 なんて恐ろしい事を言い出すんだコイツは!

「ダメダメダメダメ。無理無理無理無理」

 全力で拒否をする俺に、月白が耳元で囁く。

「主様が受け入れてくれたら、姫初めは山猿に譲ってもよい」
「なっ!?」
「どうするのじゃ。悪い条件ではないであろう」

 まさか、こいつ。初めからそのつもりでだったんじゃないだそうな。俺の事を抱いてみたいとは、常々月白から言われていたことだ。その度にセックスで誤魔化しながらここまで来たのだが。それもとうとうここまでか。
 俺がお尻に入れられるのを我慢するだけで、めちゃくちゃ難しい国際問題が解決する――。
 目を細めて返答を待つ月白に、俺は悔しさを滲ませながら答えた。

「……分かった」
「やったぁ♡」
「ただし一回だけだぞっ」
「分かっておる。私も主様のおちんちんを入れてもらうのは大好きじゃからな。ただ、私は主様の全部が欲しいだけ♡」

 月白は、んふふ、と笑いながら身体をくねらせユフィの尻を両手でつかむ。くぱぁと穴が見えるように大きく開かせた。

「そうと決まれば、ほれ、主様♡どうぞ♡」
「……やぁん♡ なぁに?」

 なにがなんだか分かっていないユフィだが、お尻の穴はヒクヒクと期待に震えているのが丸見えだ。やばい。勃起しすぎて痛くなってきた。
 俺はいつもより若干大きくなっているペニスを、ユフィのそこにあてがう。

「あッ」

 いつもより固くて大きい俺のそれにびっくりしたようにユフィの身体がビクッと跳ねた。俺は構わず前から伸し掛かるようにゆっくりと身体を沈める。

「あっ、あっ、おっきぃ、ぁ――ッ」

 涙を滲ませて喘ぐユフィの両手に指を絡ませ、落ち着かせるようにぎゅっと掴んだ。

「はぁ、ユフィ、可愛い……」
「あっ、あっ。ろい、ろぃぃ♡」

 感じすぎて舌が回らなくなっているユフィが可愛すぎて、奥まで入れてグリグリしながらキスを貪る。

「はぁんっ♡は、むっ♡」
「はぁ、はぁ、はぁッ”?」

 夢中になりすぎて忘れていた月白が、俺の背後にぴとっとくっつき指を尻穴に入れてきた。

「主様は勝手に濡れないからの。潤滑剤代わりに私の蜜液をたっぷり絡ませておいた」

 そう言って、しとどに濡れた指が俺の尻をジュボジュボと侵しだす。なんだそのエッチな潤滑剤は!?

「はぁ、はぁ、主様の引き締まったお尻♡ 主様の処女まんこ♡ 我慢できん、はぁはぁ」

 背後で荒い息遣いが聞こえたかと思うと、固いものが俺の尻にメリッと入り込んでくる。

「おい!? さっきユフィに手でしたときより随分雑じゃないか!?」
「そんな事言っても、我慢できんのじゃ。はぁはぁ、主様♡ 主様♡」

 ぐっと一気に奥まで侵された。ぐえっと思ったがそこまで大きくない。なんとか我慢出来そうだと思ったところで、月白が俺の腰を掴んで夢中で腰を振りだす。

「お、おいっ、ペース早いって」
「主様♡主様♡」
「あっ、あっ」

 伝わる振動でユフィも身悶える。うぅ、ここまで来たら腹を括るか。

「ほら、月白。落ち着け。呼吸合わせて、皆んなで気持ちよくなろう」

 首を捻って、月白の頬に手をやる。若干体勢がきついがそのまま軽いキスをしてやると、月白がやっと落ち着いてきた。

「よしよし。ほら、折角だから楽しむぞ。こんなのはどうだ」

 腰をゆっくりグラインドさせ、尻穴をきゅっと締めてやった。途端、下と上で喘ぎ声が聞こえる。やばい。ちょっと楽しいな、これ。

「ろい、ろいぃ♡」
「ぬしさまぁ♡」

 ユフィもいつもよりキュンキュン締め付けてくる気がする。月白のものも、たまにグリッと俺のやばいところを擦り、思わず声が出そうになるほど気持ちいい。
 ゆっくりと、それでも確実に俺達はヒートアップしていき、三人の吐息が、熱が、絡まり合う。汗なのかなんなのか分からないが、腹も背中もビショビショになっていった。

「やばい、イきそう……」

 限界が近づき思わず呟く。ちなみに二人はすでに二回イッている。

「ろい、ろいぃ♡ また、いっちゃうぅッ――♡」
「ぬしさまぁ♡ わたしも、駄目ぇ♡♡♡」

 喘ぐ嫁たちの声は最高に可愛い。

「皆んなで、いこう。そら……ッ」

 俺は思いきり腰を穿ち、ユフィの中に精を放つ。反射で銜えこんだ月白のモノも思いきり締め付けると、どくんと質量が増したそこから熱いものが放たれた。
 
「ああぁぁぁ――ッ」
 
 誰のものかも定かでない喘ぎ声が、濃厚な空気に溶けていった。
 
 その後意識を手放して――なんてことは全く無く。

 俺はどちらが夫なのか分からセックスを、月白と励んだ。そんな、俺と月白の激しいセックスを呆然と見るユフィが可愛くて、これまたユフィとラブラブセックスに励んだ。そんなユフィと俺のセックスの途中でまた、俺の尻を弄りだしたやつがいたので、また分からセックスに励んだ。途中何回か果物と飲み物が机に置かれているのに気づき、セックスしながら摂取したのは覚えている。
 覚えているのだが――。


「あの……非常に言いづらいのですが……」

 気付くと宰相が目の前に立っていた。
 俺はというと、ユフィに正常位で突っ込みながら、ユフィの上に立った状態で跨っている月白の尻を突き出させて、尻穴を舐めていたところだった。
 
「もう、新年が明けて、三日経っておりまして」

 宰相が視線を泳がせながら申し訳無さそうに言った。いや、視線を泳がせたいのも、申し訳ないのも俺なんだが。
 ん、待てよ。という事は?
 
「姫初めは――」
「とっくに終わっております」

 俺の問いに、宰相が溜息まじりに答えた。
 
「流石。陛下はいつも予想だにしない解決方法で。驚きしかありません」

 呆れて仕方ありません、のニュアンスで言われたので全く褒められていない事は分かった。とりあえず、この苦労性の宰相に俺が言うべ台詞はひとつだな。
 
「今年もよろしく」
 
 にかっと笑っていう俺に、宰相が海よりも深い溜息をついたのは言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
 
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