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その後の話

包まれた愛⑦

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「美緒さん、誠二、絶対、絶対幸せになるんだよ!おめでとう!!」


「誠二、美緒、ありがとう。本当にありがとう」


「お母様、誠二おじさん、僕のわがままを聞いてくれてありがとう!」


「みんな、ありがとう。俺、絶対美緒を幸せにする。苦労はさせると思うけど……俺がどれだけ美緒のことを愛しているか、ずっと伝え続けるよ」


「うん、誠二、頑張れ!頑張れ!!」


2人の幸せな姿をたくさん写真に撮って
あとは私達の写真も自撮り棒で撮ったりして
穏やかな時間を過ごした。


きっと誠一さんとの結婚式は派手だったと思う。
それに比べたら、地味かもしれない。
海しかなくて、波の音しか聞こえなくて
だけど、みんなが笑いあう声がよく聞こえて
私達、今、世界で一番幸せな気がする。



「円花さん、受け取ってください」


美緒さんに手渡されたのは、ブーケ。
ブーケを受け取った人は
幸せな結婚ができると言われている。
そんなブーケをもらえるなんて、思ってもみなかった。


「ありがとう、美緒さん。ん?」


カシャっという音が鳴った方向を見ると
誠一さんが写真を撮っていた。
だけど、きっと美緒さんのことを撮ったんだろう。
そう思っていたら――


「あまりにも円花さんが綺麗だったから、つい――」


「え?」


私のことを写真撮っていたなんて――


「誠一さん、携帯かしてもらえますか?」


「え?」


「円花さんと写真撮りますよ」



「もう少し2人とも寄ってください」


「お父様、笑顔!円花さんも笑って!」


永一君が一生懸命私達を笑わせようと
不器用ながらも変顔をしている姿が愛おしくて
私も誠一さんも自然と笑顔になった。


「いい笑顔です!」


美緒さんて本当に素敵な人だ。
今日は美緒さんが主役なのに
常に周りの人のことを気にしてる。


「お父様、今日はお母様と一緒にご飯を食べたい」


「え?いや、でも…」


「私は大丈夫ですよ。永一の好きなハンバーグ作ろうかな」


「やった!お父様、後で迎えに来て!」


永一君と美緒さんの2人で
誠二の車いすを押している姿を見て
自然と涙が出てきた。
本当に今日は幸せな気持ちが溢れ出て
止まらない、素敵な日だ。



「今日、この後の予定は?」


「私?私は今日は缶ビール飲んで、今日の幸せな一日を思い出しながら、寝るぐらいですけど」


「じゃあ、よかったらディナーとか…どうですか?」


「え?」


「永一も食べてくるみたいだし」


「あぁ、なるほど!じゃあお付き合いしますよ、ご飯」


「いや、そういう意味ではなくて」


「え?」


「円花さんとご飯を食べたいなって思って」


「本当に?」


「よかったらなんだが…デートに誘いたいなと。永一のお迎えまでの時間だけど」


「私でいいんですか?」


「美緒のことは、大事に思っているけど…もしかしたら、俺も美緒も、最初から愛していなかったのかもしれない」


「そんなことないでしょ」



「美緒と誠二の2人を見ていると、愛だと思っていた感情は違ったものだったんだろうなと思うんだ。俺は紗英を失った隙間を、美緒は異性を意識した感情を、お互いそれを愛だと思ってしまったんだと思う。だけど愛は......離れても、自分が傷ついても、相手のことを常に思うこと。それを2人から学んだんだ」


「うん……」


「この1年、円花さんのことが忘れられなくて……少ししか会話していないのに、君の明るい笑顔を何度も思い出したよ。また会って君の笑顔がみたいって。それで美緒のドレスのことを頼んだんだ。また会いたくて」


「誠一さん、本当?」


大きい身体をしているのに
耳まで赤くなって照れている誠一さんは
子供のようですごく可愛い。


「行きましょう、ディナー。あ、フレンチとかじゃなくて、私の常連のお店の居酒屋でいいですか?」


「居酒屋?」


「お酒飲みながら、たくさん話して、たくさん笑いたいんです!ゆっくりでいいから......お互いを知っていきましょう」






ゆっくり、私達のペースでいい。


各々の歩幅は全然違うんだけど
お互いを思いやって
私は誠一さんの歩幅に
誠一さんは私の歩幅に
近づけていければそれでいい。


もし、それが苦痛になったら
その時にまた2人で話し合えばいい。


答えが出ない話し合いになるかもしれない。
もしかしたら喧嘩するかもしれない。


だけど、そんな時に
今みたいにお互いが寄り添うあうこと
初心の心を忘れずにいたい。


誠二が美緒さんのことを愛している姿を見て
美緒さんのことを羨ましいと思った。
私も美緒さんみたいに誰かに愛されたいと――


だけど、実際に美緒さんに会って分かったことがある
誰かにあれだけ愛されるってことは
その人も、深く愛しているってこと。


私もこれからは
誠一さんに愛されたい。
だから、誠一さんを
たくさん愛していきたい。


【完】



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