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抱いてください……③
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「キャッ!」
「ごめん!」
「なんだ、誠二じゃない。」
「あの……」
「あ、誠二、さっきリップがとれているって言ってきたけど全然とれてなかったよ~」
「そっ……か。」
「……素直に美緒さんの具合見てきてほしいっていえばいいのに。まぁお義兄さんたちの前でそんなこと言えないか。」
「それで美緒は…?」
「ストレス性のものだと思う。ねぇ、誠二、本当にこれでいいの…?あんなに辛そうな美緒さんを見ていたら私っ…」
「ごめんな円花、巻き込ませて……」
「それは私が巻き込ませてって言ったから、後悔はしていないけど、でも美緒さんが……」
「いいよ、これで……お前だって俺の気持ちに共感してくれたじゃないか。同じ経験した者同士として。」
「そうだけど……でもこれじゃ美緒さんきっと後悔するよ。」
「兄さんがいるから…」
誠二から渡された水はぬるくて、私がトイレに立ったあとすぐ追いかけてきて
ここにずっと立っていたんだろうな。
美緒さんのことが心配で――
「円花さん?」
「あ、美緒さん…」
「もしかして待っていてくれたの?」
「あ……はい。あ、水どうぞ。もうぬるくなっていますけど。」
「ありがとう。飲みやすくてちょうどいいよ。」
ただ、ただ一人の男が好きなだけなのに…
美緒さんこんなにもいい人なのに
私という婚約者なんかがいても頑張ってほしい。
「この水、本当は誠二が美緒さんにって持ってきたんです。」
中途半端な優しさは美緒さんにとっては辛いものかもしれない。
だけどそれでも知っていてほしい、感じてほしい。
誠二は……本当は美緒さんのことを思っているんだってこと。
「そっか……」
誠二が買ってきた水を愛おしい表情で大事に抱く姿を見ると胸がチクリと痛む。
本当に…ただ、ただ誠二のことが好きなんだ。
「美緒…大丈夫か?」
「誠一さん…はい、大丈夫です。」
「もう今日は終わったから帰るところだ。父さんたちはもう帰った。俺は車を用意してもらうから。」
「お父様、僕も一緒に行きたい。」
「じゃあ、一緒に行こう。円花さん美緒をお願いします。」
「美緒さん、ここで座って待ってましょう。」
「円花さん…本当に色々とありがとう。」
「お礼はいいですから…ね?」
「今日のこともだけど……結婚のことも…」
「どういうこと……ですか?」
「……覚悟が決まったって感じかな。」
覚悟って……それは誠一さんとずっとこれから共に生きていくってこと?
誠二さんのことはもう完全に忘れるってことなの?
私がいなきゃ諦めなかったってことなの…?
「美緒さん、あの…」
「お義姉さん。」
「誠二さん…」
「具合大丈夫?」
「ごめんなさい、せっかくの席で…あ、お水ありがとう。」
「……俺も飲みすぎただけだから。」
嘘。
誠二さんお酒が入ったグラスには一口も口をつけていなかった。
いくら私が酔っぱらっていたからってそれぐらいはキチンと記憶にある。
誠二さんの優しさが心臓を一突きされるぐらい痛い。
だけど…この優しさにもう少し浸っていたい。
これぐらいは……いいかな?
「誠二さん……遅くなったけどおめでとうございます。」
フラフラの体でソファから立って笑って言っているつもりだった。
大丈夫、ちゃんと唇の端は上に上がっている。
「危ない…!」
時間が止まったかのように…スローモーションで今でも記憶としてよみがえる。
誠二さんが私の右腕と腰を支えて倒れそうな私を支えてくれた。
倒れゆく瞬間、涙の粒が瞳から離れていった。
そっか……私泣いていたんだ。
誠二さんのことを忘れるってさっき自分で決めたのに――
久しぶりの誠二さんの温もり、心臓の鼓動、吐息を感じれて
それだけで私のカラダはもう疼いてしまう。
カラダが誠二さんを欲して仕方ない。
誠二さん、
どうか、私を抱いてください。
「ごめん!」
「なんだ、誠二じゃない。」
「あの……」
「あ、誠二、さっきリップがとれているって言ってきたけど全然とれてなかったよ~」
「そっ……か。」
「……素直に美緒さんの具合見てきてほしいっていえばいいのに。まぁお義兄さんたちの前でそんなこと言えないか。」
「それで美緒は…?」
「ストレス性のものだと思う。ねぇ、誠二、本当にこれでいいの…?あんなに辛そうな美緒さんを見ていたら私っ…」
「ごめんな円花、巻き込ませて……」
「それは私が巻き込ませてって言ったから、後悔はしていないけど、でも美緒さんが……」
「いいよ、これで……お前だって俺の気持ちに共感してくれたじゃないか。同じ経験した者同士として。」
「そうだけど……でもこれじゃ美緒さんきっと後悔するよ。」
「兄さんがいるから…」
誠二から渡された水はぬるくて、私がトイレに立ったあとすぐ追いかけてきて
ここにずっと立っていたんだろうな。
美緒さんのことが心配で――
「円花さん?」
「あ、美緒さん…」
「もしかして待っていてくれたの?」
「あ……はい。あ、水どうぞ。もうぬるくなっていますけど。」
「ありがとう。飲みやすくてちょうどいいよ。」
ただ、ただ一人の男が好きなだけなのに…
美緒さんこんなにもいい人なのに
私という婚約者なんかがいても頑張ってほしい。
「この水、本当は誠二が美緒さんにって持ってきたんです。」
中途半端な優しさは美緒さんにとっては辛いものかもしれない。
だけどそれでも知っていてほしい、感じてほしい。
誠二は……本当は美緒さんのことを思っているんだってこと。
「そっか……」
誠二が買ってきた水を愛おしい表情で大事に抱く姿を見ると胸がチクリと痛む。
本当に…ただ、ただ誠二のことが好きなんだ。
「美緒…大丈夫か?」
「誠一さん…はい、大丈夫です。」
「もう今日は終わったから帰るところだ。父さんたちはもう帰った。俺は車を用意してもらうから。」
「お父様、僕も一緒に行きたい。」
「じゃあ、一緒に行こう。円花さん美緒をお願いします。」
「美緒さん、ここで座って待ってましょう。」
「円花さん…本当に色々とありがとう。」
「お礼はいいですから…ね?」
「今日のこともだけど……結婚のことも…」
「どういうこと……ですか?」
「……覚悟が決まったって感じかな。」
覚悟って……それは誠一さんとずっとこれから共に生きていくってこと?
誠二さんのことはもう完全に忘れるってことなの?
私がいなきゃ諦めなかったってことなの…?
「美緒さん、あの…」
「お義姉さん。」
「誠二さん…」
「具合大丈夫?」
「ごめんなさい、せっかくの席で…あ、お水ありがとう。」
「……俺も飲みすぎただけだから。」
嘘。
誠二さんお酒が入ったグラスには一口も口をつけていなかった。
いくら私が酔っぱらっていたからってそれぐらいはキチンと記憶にある。
誠二さんの優しさが心臓を一突きされるぐらい痛い。
だけど…この優しさにもう少し浸っていたい。
これぐらいは……いいかな?
「誠二さん……遅くなったけどおめでとうございます。」
フラフラの体でソファから立って笑って言っているつもりだった。
大丈夫、ちゃんと唇の端は上に上がっている。
「危ない…!」
時間が止まったかのように…スローモーションで今でも記憶としてよみがえる。
誠二さんが私の右腕と腰を支えて倒れそうな私を支えてくれた。
倒れゆく瞬間、涙の粒が瞳から離れていった。
そっか……私泣いていたんだ。
誠二さんのことを忘れるってさっき自分で決めたのに――
久しぶりの誠二さんの温もり、心臓の鼓動、吐息を感じれて
それだけで私のカラダはもう疼いてしまう。
カラダが誠二さんを欲して仕方ない。
誠二さん、
どうか、私を抱いてください。
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