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涙のキス。③

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唇に残る感触が本当に誠二さんなら……
私が目覚める前に誠二さんが姿を消したなら
誠二さんがこの部屋に来たかもしれないってことは伏せたほうがいい気がした。



「誠一…さん?」



部屋から出て行こうと開けた扉を後ろから誠一さんに閉められる。
背中から誠一さんの体温の高さが感じられる。
首にかかる吐息も温度が高い。



「この部屋にいたってことは……まだ誠二のことを忘れていないのか?」



「ただ……換気していただけです。」



閉められたドアノブをもう一度握ると今度は私の手に誠一さんの手が重なってくる。
誠一さんにこんな風に手を重ねられるのはいつぶりなんだろう…?



「誠一……さん?」



左手は私の手に重ねたまま
右手はシャツの中に手をスルリといれてくる。
パチンとブラのホックを外されて、そのまま胸を触ってくる。
熱い吐息とは正反対に、誠一さんの指は冷たかった。



「あの、永一が起きてますから……それに家庭教師の先生だってっ…」



どうして…今なの?
10年間夜のベッドでこういう風に触る機会はあったはずなのに
こんなの……嫌だ。



「君が声を出さなきゃ聞こえないよ。永一の部屋からこの部屋は遠いし。」



「そういう問題じゃっ……お願いです。やめてください……」



やめてほしい。
だけど、私は誠一さんの妻だ。
昔はあんなに受け入れてきたのに――



「どうしてなんだっ!!」



「誠一さん…ごめんなさい、ごめんなさい……私誠二さんのことがっ…」



何度もこの気持ちは嘘だと
これは愛情ではなく同情だと
言い聞かせては自分の気持ちに蓋をしてきた。



答えはずっと出せなかったけど
やっぱりこうやって誠二さんの話を聞くと胸が高鳴る。



10年経っても忘れられない。
誠二さんに……会いたい。



「誠二とは…数日しか過ごしていないのに。俺とは15年も一緒に過ごしてきたのに……」



誠一さんの言う通りだ。
誠二さんとは誠一さんに比べるとほんの少ししか過ごしていないのに
誠二さんに惹かれてしまった。



誠二さんの中にある暗闇や悲しみ、そして温かい心に惹かれたの。



「はい……誠二が会社に!?」



一目会いたくて
誠一さんの電話を聞いたらいてもたってもいられなくて
気づいたら何も持たずに走っていた。



誠二さん……私の気持ちを聞いてほしい。
この溢れる思いを聞いてほしいの。



「誠二さん!!!」



「美緒……」



誠二さんのスーツ姿初めて見た。
まるで誠二さんが社長のようにも見える。
ぼさぼさだった髪も綺麗に整えていて端正な顔がさらに目立つ。



「誠二さっ……」



誠二さんに再会したら何を言いたいんだっけ?
でも涙で言葉が発せれない。
こんな日がくるなんて夢にも思ってもみなかったから……



「お兄さんの奥さん?」



「え…?」



スラリと伸びた手足だけどグラマラスで妖艶な雰囲気を漂わせる女性が誠二さんの背後から現れた。
初対面だけど目が合うとすぐにニコっと笑顔になって……可愛らしい女性だ。



「は、初めまして。」



「義理の弟にあって泣いてくれるなんて……いい人ですね!」



誠二さんは義理の弟で私は兄の嫁――
現実が一気に突きつけられて今度は息がうまくできない…
だけど、今から誠二さんから言われる言葉は
もっと私をどん底に突き落とす。
誠二さん……嘘だと言って。



「…お義姉さん、紹介するよ。円花(まどか)とはアメリカで隣の部屋に住んでいたんだ。」



「初めまして~たまたま隣が日本人だったなんて驚きましたけどね♪」












「美緒……いや、お義姉さん。円花と俺結婚したいんだ。」





「婚約と入籍するために日本に帰ってきたんだ。」















誠二さん、10年は決して短くなかったよ?
私にとって誰かを恋しく思いながらずっと待つ10年は本当に長く感じた。
なのに……こんなことって…こんなことって……















誠二さん、10年は決して短くなかったよ?
私にとって誰かを恋しく思いながらずっと待つ10年は本当に長く感じた。
なのに……こんなことって…こんなことって……











ただ、あなたが好きなだけなのに――





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