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ゲーム。②
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「俺さ…このまま誰にも恋せず、付き合うこともなく死んでいくのかな…」
「拓也…」
「今までは仕事で精一杯だったけど、最近体調が悪くなるたびに思うんだ…恋して死にたいって…」
「だけどもしものことがあったら…琴音が悲しむんじゃ…」
「お前がいるじゃん。」
「俺?」
「俺が死んでもお前がいつもの通り拓也になればいい。そしたら琴音は悲しまないよ。」
「そう…だけど…」
確かにそうだけど…
だけど本当にそれでいいのか?
琴音には会いたい
だけど和也として俺を愛してほしいのに
拓也がいなくなっても拓也として愛されるって…
琴音にまで拓也として愛されるなんて…
残酷すぎる
だけど拓也は次の日――
「琴音と付き合うことになった。」
「…は?」
会いたいからってこんなにも早く琴音に拓也から会いに行くなんて思ってもいなかった
それにまさかこんなにすんなりと琴音と付き合うことになるなんて…
「琴音に…何言ったんだよ!」
そんな簡単に付き合うなんて…
「…琴音の前で血を吐いちゃったんだよ。俺はもう長くないから、23歳になるまででいいから付き合ってって…そしたらOKしてくれたよ。やっぱり琴音は優しいね。」
「何で…何でそんな期間限定みたいな…」
「だって俺はもう長くて一年だよ…医者だし自分の体だからわかる。21歳で花嫁になりたいっていう琴音の願いは叶えられない。それに和也だって…」
「俺…?」
「俺が死んだあとずっと俺の代わりをするのはしんどいだろう?」
そうだけど…そうだけど拓也なりに俺を考えてくれたのかもしれないけど
残された琴音はどうなる…?
「とりあえず体調が悪いのは隠せよ。琴音があまりに可哀想だ。それに移植すればまだ治る可能性があるんだし。医者が諦めんなよ。」
「うん…そうだね。じゃあ俺が体調悪いとき和也代わってよ。」
「…」
「俺だって本当は自分が琴音と一緒にいたいよ。だけどこんな体じゃ…和也が羨ましいよ…双子なのに。」
もう聞き飽きたんだよそのセリフ
俺だって
お前の代わりして名前を呼ばれない気持ちわかんないだろ
だけど好きなことができないお前のことを思ったら
何も言えない――
あの手術で拓也が成功して俺が失敗していたら
逆の人生だったと思うと…
俺達は双子だから
「わかった…今までどおりやる。」
「和也ならそう言ってくれるって思っていたよ。」
そうだ…今までどおり拓也を演じて…
あの日和也の名前を捨てたのだから
今までだって何年も拓也って言われてきて
自分が誰だかもわからないぐらいだったのに――
『和也、今から映画館きて…』
『拓也?どうしたんだよ?』
『体調がちょっと…また血を吐いたら桜が心配するから…ちゃんと死ぬわけじゃないって言ったから…』
『…わかった。薬もって今からそっち行く。』
『拓也先生…』
琴音に拓也と呼ばれるたびに怒り、悲しみ、憎悪…
今まで経験したことのないような色んな感情がこみ上げてくる――
もう拓也なんて…
呼ばれたくもない
和也って琴音に呼んでもらえたら
もう何もいらない
和也という人間がこの世にいるってことを琴音に知ってもらえたら…
ゲームオーバーでもいい…
「拓也…」
「今までは仕事で精一杯だったけど、最近体調が悪くなるたびに思うんだ…恋して死にたいって…」
「だけどもしものことがあったら…琴音が悲しむんじゃ…」
「お前がいるじゃん。」
「俺?」
「俺が死んでもお前がいつもの通り拓也になればいい。そしたら琴音は悲しまないよ。」
「そう…だけど…」
確かにそうだけど…
だけど本当にそれでいいのか?
琴音には会いたい
だけど和也として俺を愛してほしいのに
拓也がいなくなっても拓也として愛されるって…
琴音にまで拓也として愛されるなんて…
残酷すぎる
だけど拓也は次の日――
「琴音と付き合うことになった。」
「…は?」
会いたいからってこんなにも早く琴音に拓也から会いに行くなんて思ってもいなかった
それにまさかこんなにすんなりと琴音と付き合うことになるなんて…
「琴音に…何言ったんだよ!」
そんな簡単に付き合うなんて…
「…琴音の前で血を吐いちゃったんだよ。俺はもう長くないから、23歳になるまででいいから付き合ってって…そしたらOKしてくれたよ。やっぱり琴音は優しいね。」
「何で…何でそんな期間限定みたいな…」
「だって俺はもう長くて一年だよ…医者だし自分の体だからわかる。21歳で花嫁になりたいっていう琴音の願いは叶えられない。それに和也だって…」
「俺…?」
「俺が死んだあとずっと俺の代わりをするのはしんどいだろう?」
そうだけど…そうだけど拓也なりに俺を考えてくれたのかもしれないけど
残された琴音はどうなる…?
「とりあえず体調が悪いのは隠せよ。琴音があまりに可哀想だ。それに移植すればまだ治る可能性があるんだし。医者が諦めんなよ。」
「うん…そうだね。じゃあ俺が体調悪いとき和也代わってよ。」
「…」
「俺だって本当は自分が琴音と一緒にいたいよ。だけどこんな体じゃ…和也が羨ましいよ…双子なのに。」
もう聞き飽きたんだよそのセリフ
俺だって
お前の代わりして名前を呼ばれない気持ちわかんないだろ
だけど好きなことができないお前のことを思ったら
何も言えない――
あの手術で拓也が成功して俺が失敗していたら
逆の人生だったと思うと…
俺達は双子だから
「わかった…今までどおりやる。」
「和也ならそう言ってくれるって思っていたよ。」
そうだ…今までどおり拓也を演じて…
あの日和也の名前を捨てたのだから
今までだって何年も拓也って言われてきて
自分が誰だかもわからないぐらいだったのに――
『和也、今から映画館きて…』
『拓也?どうしたんだよ?』
『体調がちょっと…また血を吐いたら桜が心配するから…ちゃんと死ぬわけじゃないって言ったから…』
『…わかった。薬もって今からそっち行く。』
『拓也先生…』
琴音に拓也と呼ばれるたびに怒り、悲しみ、憎悪…
今まで経験したことのないような色んな感情がこみ上げてくる――
もう拓也なんて…
呼ばれたくもない
和也って琴音に呼んでもらえたら
もう何もいらない
和也という人間がこの世にいるってことを琴音に知ってもらえたら…
ゲームオーバーでもいい…
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