初恋の人。

かのん

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二人で寄り道

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自分の家まで歩いて1時間…



夜で暗いが歩いて帰ることにした。



「お姉さん♪」



後ろから花音と同じぐらいの体型の中年の男が話しかけてきた。



「な、何ですか?」



「ちょっとあっちで話そうよ。モロタイプなんだよ。」



そういって男がさした方向は街灯がついていない暗いベンチだった。



「いや…急いでいるんで。」



「そんなこと言わずに…いいじゃん、ね?」



男は花音の前に立ちはだかった。



“クンクンクン…”



「な、何ですか!?」



男が急に犬のように匂いを嗅いできた。



「いい匂い~」



“ゾォォォォッ…”



男の言葉が気持ち悪くて一気に鳥肌が立った。



「何やってんだよ。」



翔が花音の頭に手を乗っけてきた。



「え!?伊集院さん!?」



男は翔を見るなりそそくさに逃げて行ってしまった。



「カノンさんは…?」



「あのな~今日倒れた奴を一人で帰すかよ。しかもこんな暗いのに歩きやがって。女の子なんだから気をつけろって言っただろ。」



「そう…だけど。」



カノンさんには悪いけど翔が追いかけてくれたことが嬉しかった…



「車で送るから。」



「え?だってお酒…」



「俺はノンアル。」



「…ありがとう。でも今日は歩いて帰りたいんだ。だから伊集院さんは車で帰って。」



「わかった…じゃあ俺も付き合う。」



「え!?いいよ!」



「俺と歩くのがそんなに嫌なのかよ。ほら、行くぞ。」



翔はスタスタと歩いていってしまった。「…歩くのはダイエットのため?」



「…うん。」



「あんまり無理すんなよ。また倒れるぞ。」



「うん。」



「…そいつどんな奴なの?」



「え?」



「お前が好きな奴。」



「わ、私の!?」



「私の好きな人は…」



あなたです!とはまだ言えない…



「初恋…の人。」



「初恋!?」



「…久々に会って…好きになった。」



「へ~じゃあ俺と同じか。」



「…」(違う人だからそれ涙)



「で久々に会って好きになったからダイエットするってわけ?」



「…その人私のこと気づいてないから。」



「は?そうなの?」



「…気づいてほしくて…努力しようと思って。」



花音がモジモジしながら答えた。



「うん…じゃあ俺が協力してやるよ!」



「え!?」



「ダイエットとか…男の気持ちとか…手伝ってやるよ!」



「う…うん…ありがとう。」(ありがとうでいいのかな?)



「あの幼稚園…」



翔と通った幼稚園が目の前に見えてきた。



「俺、あの幼稚園に通ってたんだ。懐かしい…まだ在ったんだ…」



「え!?何やってるの!?」



翔は幼稚園のしまっているドアを登って幼稚園の中に入った。
※よい子の皆さんはしないでください。



「お前も来いよ。ホラッ。」



翔が手を差し出してくれた――



「よいしょッ――」



25年前は母親に手伝ってもらわないと登れなかったのが、大人の今では簡単に登れた。



「あ、ありがとう。」



差し伸べられた手に手を添えて飛び越えた。



一瞬だったけど、翔とまた手を繋げたことが嬉しかった…



しかもこの幼稚園で、25年もの月日がかかっても――



「あ、俺、この木が好きだったんだよな…」



真っ暗な幼稚園に大きな木が一本



あの頃より自分たちも成長したはずなのに



この木はあのころよりもなぜかもっと大きく見えた。



木のほうが私たちより成長は遅いと思っていたけど、意外と私たち体だけ成長して心は成長していないのかもしれない――



翔は木に寄りかかって空を見上げていた。



花音も真似して木に寄りかかって空を見上げてみた――



「すごい…星キレー!」



幼稚園も真っ暗だし、周りは高い建物もないため星が綺麗に見えた。



その時キラッと流れ星が流れた――



「ねぇ、ねぇ!今の見た!?流れ星初めてみた!」



花音は翔の袖を引っ張りながら話しかける。



「袖破けそう――」



翔も花音のほうを振り向いたため、二人の顔の距離は近かった。



この時暗闇でよかったと心底思った――



いつも明るい電灯の下のオフィスで働いているが、そんなオフィスでこんな急接近したら顔が明るいのがバレバレだ。



「あ、ごめん!」



花音は手を離して顔も反対方向を向く。



「流れ星…初めてだったから興奮しちゃて。」



「袖が破けるかと思った…」



「あ!また流れ星!」



花音は必死にお願いごとをする



“いつか翔が初恋の人だと打ち明けられますようにと――”



「…フッ…」



「な、何?」



「必死にお願いしてるからさ。」



必死にお願いしたくなるよ!と心の中で叫んだ。



「じゃあ、帰るか。」



「…うん。」



「何、帰りたくないの?」



「え…あ、ほら、流れ星もっと見たかったなって。」(もっと一緒にいたいって言えればいいのに…)



「じゃあ、また今度ここに来て流れ星見るか?」



「え!?いいの!?」



「あ…でもお前の好きな奴に悪いか。」



「いい!全然いい!」



「じゃあまた今度な。」



「うん!」







今度流れ星を見るときは



もっと翔と距離が縮まるように



ダイエットを頑張ろう!



そう決意した――



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