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たまには甘えるのも悪くない
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しおりを挟む「秋って瑠衣さんに甘える時あるの?」
麗央が少しわくわくした顔で聞いてくるから答えないわけにもいかない。
今日はクラブに着くとフロア横の個室が空いてるから使っていいと言われたのでいつもより少し小さめの部屋で集まっていた。俺と唯と優、そして桃花、式、麗央と最近クラブの時はよくあるメンバーになりつつある。
「あるよねぇ」
「あるよ」
「あるけど2人が即答すんのね」
親友2人の返答速度に俺への配慮は無しだ。そりゃもちろんこの2人は知っている。俺が恋人に甘える時があるかなんてそりゃ当たり前に存在するし、親友2人にだって甘える事あるしな。とゆか暮刃先輩も氷怜先輩も恋人ではない俺たちまで甘やかしてくれちゃうのだから余計に。
俺が止めないのをいい事ににこにこの唯が続ける。
「秋は基本お兄ちゃんタイプだけど、そもそもおれたちだけならお互い甘えるよね。支え支えられの関係だよおれたち」
人と言う字はなんとやら。
麗央は会話に頷くと今度は矛先を優に変えた。
「唯はともかく優もある?」
「何でおれはともかくなの麗央~」
また仲間はずれ~なんて麗央に抱きつく唯。
「いや、そういうところでしょ」
麗央がこの人たらし甘え上手が!とデコピン発射。唯が泣き真似するとあーもーごめんって!とか言いながら頭を撫でる麗央と最後はけらけら笑い出す唯。本当にそう言うとこだよ唯よ。
優が桃花の方を向いて唯に手のひらを向ける。
「桃花なんてこれに1番その被害あってるでしょ」
「え、いや俺は唯斗さんに甘えられ足りないと言うか頼ってくれないのでまだまだ足りないって言うか」
「唯まずここどうにかしろって」
「え、え?!」
桃花の付き人スイッチを押してしまい、美人の眉間に皺を寄せてしまった。唯にとって桃花は癒し対象だからか唯は唯でなんでもしてあげたいモードに入ってしまうのだろう。だから桃花はもっと頼られたいって思うんだろうな。
麗央が会話が逸れてしまったことに気が付き、はいと軽く手を鳴らす。
「ともかく、唯は置いといて。秋の甘える時の事聞かせてよ。あと優のも、そう言うの気になる!唯はもう氷怜さん相手だから想像できるけど」
「想像容易いってなんかそれ恥ずかしいんですが……」
恥ずかしがる唯を他所に麗央はとてもキラキラとした目だ。麗央はどうやら恋バナが大好きなようで流石アゲハさんの大親友だけあって女子トークの方がメインみたい。
「んんん、改めて聞かれると自分じゃ思いつかないなぁ。なんか最近あった?」
「えー……確かにそう言われると」
甘えるってわざとやるもんでも無いしな。だから流れというか、あー甘えてるなあ今。なんてじわじわ実感する物だ。
「秋じゃねえけど……この前」
それまで黙っていた式がなんとも言えない顔をすると、優が秋じゃないなら俺かなと視線を合わせた。
「暮刃さんと他のチームのところに顔出したことあったんだけど、2人だったから暮刃先輩がバイクの後ろ乗せてくれたんだわ」
「すごいよね、暮刃さんが人後ろに乗せるなんて」
「俺もちょっと流石に戸惑った」
式と桃花の会話に驚いたのは俺たちもだ。
「え、そうなの?あの人達バイクの後ろ乗せないの?」
「奇跡に近い」
そうなのか。
思えば車出してもらってばっかだし、俺たち相手じゃよくバイクに乗せてくれていたから驚きだ。
「そ……の変化は俺たちのせいっぽいなぁ」
「それ以外ねえよ」
式が今更何をと呆れたようにため息をつく。
「まあ、とにかくさ光栄な事に乗ってもらったんだわ。あーてか一応聞くけど優的にこれはOKなんだよな?」
「え?……ああ、暮刃先輩とタンデムがってこと?」
優が首を傾げながら聞き返すと頷く式。
優しい式は念の為の確認してくれるがもちろん優はそんな事気にしないだろう。むしろ嬉しそうに微笑んだ。
「もちろん、先輩ちょっと潔癖入ってる気がするからみんなどんどん乗って欲しいくらい」
「いやそれは多分無理だろ……」
「でもマキオくん乗せてもらった事あるって言ってたし」
「そりゃお前迎えに行くためだからな、目的がちげえだろ。さらに俺乗せたのがまず時代の幕開けだから」
「ええ大袈裟な……」
やっぱり俺たち相手と他の人とはまだまだ違いがあるらしい。話を戻すように式が軽く咳払いをした。
「まあとにかく、後ろ乗せてもらったんだわ。走ってる最中はインカム付けてるわけじゃないから話しずらいけど、信号で止まった時ふいに小さく笑い出して、何かと思ってあとで聞いてみた。そしたらさ……」
さっき……?ああ、優を後ろに乗せたあとなんだか悪い顔してた時の事思い出してさ。
あとで聞いたら「バイクで後ろから抱きついてると、暮刃先輩俺が落ちたら心配だから何しても抵抗出来ないでしょ?悪戯し放題だなって思っちゃって」って、あの子いつも冷静なのにそう言う時に限って子供みたいに笑って言うから、こっちも笑っちゃって「頼むからよしてくれ」っていうと「ごめんなさい」って笑って抱きついて甘えるの。ずるいよね。
「だってよ」
式が飲み物片手に苦笑気味に笑う。
「ずるいっつうか、流石天然人たらし小悪魔が近くにいるやつはちげえよな」
式の隣で無自覚小悪魔が嬉しそうに言う。
「小悪魔がいるの?」
「その小悪魔の名前唯斗さんって言うんですよ」
「ん?」
にこやかに桃花が教えてあげても何で小悪魔なの?で唯は終わってしまうから流石だ。その横で優が目を手で覆っている。
「そんなの式に話さなくても……」
あ、ちょっとこれは照れてますね。
暮刃先輩も式の事気に入ってるみたいだからポロッと出ちゃったんじゃないですかね。そしてまあさすが優様ですよね、そういう時のギャップの可愛さ無敵のなのよなぁ。
「普段は優様だけどたまーに子供みたいに笑うよね」
「……優って結構可愛いとこあるんだ」
「麗央、そんなキラキラの目で見ないで……はいはい、もういいから。次秋のね、ほら」
麗央の目の輝きに耐えきれなくなったのか無理やり話を進めようと優が俺の腕を掴む。
「んんん、なんかあったかなぁ」
「あ、あるよ」
珍しく桃花が積極的に手を挙げる。
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