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夏の気持ち
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しおりを挟む「いいから着替えろよ」
「えーもう今更じゃん」
「楽ですよー、水着のが絶対」
秋がワニを引きずりながらプールから上がると氷怜先輩の横に立つ。ワガママ雰囲気を悟って秋お兄ちゃんが発動したのだ。氷怜先輩の横に立ってほらほらと促すとニヤリと笑った瑠衣先輩はようやく立ち上がった。
「みんなオレの水着が見たくてタマラナイらしい」
「こっちは1、2時間前から半裸見てんだ。大差ねえしさっさと履き替えろ」
「ひーノリ悪ーい。アッキー盛り上げて~」
「え?!着替えを盛り上げるってなんだ……」
「これはもうコールだね!」
飲み会を盛り上げるコールがあるなら着替えを手伝うコールがあっても良いよね。優も巻き添えにして秋とおれと短く打ち合わせ、手拍子付きで声をそろえる。
「瑠衣先輩のーいーところー!はい!見てみたいー!白い水着がよく似合う!ハイハイ!ご機嫌なー!お着替えホイホイ!レッツゴー!」
「瑠衣先輩笑うんじゃなくて着替えるとこです」
「着替えるからちょっと待って……プフッ」
振り返ったら氷怜先輩も暮刃先輩も肩震わせて笑いを堪えていた。何がそんなにツボだったのか分かんないけど盛り上げは成功したと思うので良し。瑠衣先輩もヒーヒー言いながら着替えてくれたからミッションコンプリート。
目に涙を溜めながらも氷怜先輩がおれを手招いた。
「唯斗も、これ着ろ」
「およ」
「お前冷えてる」
その言葉にハッとする。氷怜先輩がおれの体温を知るとしたらさっきほっぺ撫でた時しかない。
それも持ってくるって言葉にはおれの分まで含まれていたのか。念のため優のほっぺを触ったら別に冷えていない。優がビックリして目を丸くした。
「唯手冷た!……準備してる時に冷えた?さすが氷怜先輩」
「戯れてないで着ろって」
触診みたいに優がおれのほっぺを触り始めると横から氷怜先輩にフード付きのパーカーを被せられた。おっきいから氷怜先輩のだ。腕も通すと暖かい空気が籠ったような感じがして冷えていたのを改めて実感する。
「あったかい」
へにゃりと笑ったらつままれたほっぺ。
「……ご機嫌は良いけど風邪ひくなよ」
「はい!」
シャッとジッパーを、勢いよく上げたら流石に笑われたのでそのまま氷怜先輩に飛びついた。
この優しさがたまらなく好きだ。
プールはご飯食べて身体あっため直したらまた入ろ。
ようやく全員テーブルを囲む。
バーベキューのいい香りと水辺がまさしく夏らしい。みんなお腹が空いていたのかすぐに食事開始。急遽だったから凝ったものは作れなかったけど、簡単でも美味しいし、楽しさもスパイスだ。
当然のようにお酒を飲む先輩を見ないふりしておれたちはコーラで乾杯。
「先輩達最近忙しいですね。夏休みなのに」
「夏だからってのもあるけどな」
「イベントが多いしね」
瑠衣先輩が秋にお肉あーんさせながら、聞いてよ~と訴える。
「今日だって22時くらいまでとか聞こえてきたカラさーこれもう帰るしかないよネ。てゆかオレ別に参加しなくても良い~、興味ないし」
「一応クラブの顔なんだから、瑠衣は少し我慢覚えなよ。サクラさんが今日引き継いだけど多分怒られるよあとで」
「今日サクラちゃんのお得意サマばっかだからダイジョブ」
「……そう言うのは覚えてんだな」
暮刃先輩と氷怜先輩同時に呆れ顔。瑠衣先輩に振り回される2人を見るの実はツボなのだけど、言ったらほっぺつねられそうなので黙っておこう。兄弟みたいで可愛いんだよもう。
「それにしても、どうして突然このプールに入ろうと思ったの?」
暮刃先輩の言葉に優が首を傾げた。
「暑くて、今こそプールかなと……?」
優が不思議そうに答えたのは改めて聞かれたからだ。熱冷ましだと伝えていたから少し不思議だった。この家はプレゼントされたシェアハウスだからもちろん好きに使って良いと言われていたけど、もしかしてプールは事前に伝えていた方が良かったのだろうか。
「も、もしやだめでした?」
「まさか。てっきり君たちこのプールはお気に召さなかったと思ってたから」
暮刃先輩の言葉にびっくりしてお肉で喉を詰まらせた。
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