sweet!!-short story-

仔犬

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夏の気持ち

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「ひゃーーーー!!!!さいっこーーーーーー!!!!」


さっきまでのぐったりはどこへやら、端から端まで綺麗なクロールで泳ぐ秋を優様がプールの縁で足だけ水につけながら優雅に言った。

「わあ、水を得た魚だ」

「元気で良かった良かった」

おれはドーナツ柄の美味しそうな浮き輪で流されている。秋のたてる波がいい感じに移動してくれていた。

水着なんて持ってきてないなとか思ったけどクローゼット探したらこれまた揃ってるんですよ。

「椎名にも泳がせたい~」

優の元までスイスイ移動すると優もおれの浮き輪に腕を乗せてドーナツ乗りの仲間入り。

「呼びたいって言ったらオーケーしてくれるんじゃない?」

「聞いてみる!椎名水着もお揃いが良いって言ってたから着てあげよ」

「それを断らないのはさすが唯……それじゃあ春さんにも呼ぼう」

それじゃあなのか?
もちろん来てくれたら嬉しいけど。春さんなら驚くどころか可愛いねぇで終わりそうだ。ああ、イメージするだけで癒される。
日は傾きつつあるけどまだまだ暑いから水遊びは長引き、しまいには水鉄砲なんて見つけてしまってきゃっきゃと遊んでしまったよ。暗くなってくると水の底のライトが光ってイメージが少し大人に変わるのだ。なんて贅沢空間。

浮き輪はたぶん瑠衣先輩の変な形のがたくさんあって、よく見るワニ型を追加。高級プールにはミスマッチ。
優と2人で仲良く乗っていると肩に優の顔が置かれた。

「なんか、本当に使いきれてなかったのが悔しいくらい良いプール。バーベキューしながらとかも良いね」

「そう!最高と思ってバーベキュー用の材料軽く下拵えしたんだけどバーベキューセットを見つけられず……」

「さすが準備いい。ありそうだけどな、聞いてみるか。唯端まで戻ってー」

「ほいほい」

テーブルとか椅子とかは元々あるけどバーベキュー道具なんて探したこと無かったから、家全体見てみたけど発見できず。
まあ無ければなかったで、キッチンで作ってこっちに持ってくれば良いんだけどね。あるならそっちの方が楽しい。

足でぱしゃぱしゃ移動して優がプールから上がるとスマホで電話をかけ始める。多分暮刃先輩だ。氷怜先輩と瑠衣先輩はいまいち持ち物把握が出来ていないような気がする。いつも何か探すと暮刃先輩に聞いてるんだよね、それはそれで可愛いんですよこれが。



「そうです。あるかなって……え、外のガレージ……なるほど!ああ、良いです急がなくて、熱冷ましで始まったプールのついでで……いや、元気ですよ。今鮭の遡上並みに泳いでます」

「ぶわ!」

「遡上いうな!!」

「ぎゃ!!」


いつのまにかおれの足元まで潜って泳いでいた秋が突然出てきた。横からズバンと顔を出すからビックリしてワニから落ちそうになって変な声が出たし、しかもちょうど遡上が聞こえたらしく耳元で叫ぶからまた叫んでしまったし、絶対色々暮刃先輩に聞こえたし。


「び、ビックリした!絶対聞かれたし!」

「脅かそうと思って水から頭出したら鮭の遡上だったからつい……悪いって唯~」

「こんな感じで元気なので……え、ちょっと笑いすぎです……あ、氷怜先輩?はい、19時くらいですね、了解です。いや準備はほとんど終わってあと器具だけなのですぐですよ。はい、はい、あはは。分かりましたってちゃんと休憩しますから」

最後はどうやら氷怜先輩に電話が変わったらしい。しかもまた心配してくれているようでほっこりな会話だ。19時ならあと一時間くらい、下準備は終わってるしちょうど良い。

秋とワニを交代して泳いでプールから上がると優がちょうど通話を終えたところだった。

「聞こえてた?」

「うん!準備しよっかな!」

「りょーかい」

手元のタオルでおれを巻きつける優とガレージに歩き出す。後ろで秋が材料運んどくなーとのんびりとした声が聞こえてきた。
今夜も楽しくなりそう。




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