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jealousy
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「ほら、グラス持って」
カウンターキッチンに集まった6人はそれぞれグラスを合わせる。
口元にグラスを持ってくれば少し匂いは強め、だが喉の通りがいい。最後に鼻に抜ける香りは上品で氷怜は満足そうに頷いた。イノ達と出会う前からこの楽しみを知っていた3人だが味をより覚えさせたのはイノ達のせいでもある。ふと昔を思い出しイノは眉間にシワを寄せた。
「お前らも出会った当初はまだ身体も出来上がって無いし少しは可愛げあったんだけどなぁ。日が経つにつれ図体と態度が並行してデカくなるし」
「氷怜は出会った時からイノより大きかったけどね」
「うるせえ鹿野。俺は今の身体気にってんだよ」
「そうそう、顔もそのままが良いよ」
「お前は近え、近えよ」
胡蝶がイノを間近でにこにこと見つめるので居心地の悪さから胡蝶の顔を無理やり鹿野へと向ける。目が本気で恐ろしい。
「そっちは出会った頃から変わんないネー?そのコントもさー」
「コントじゃねぇよ!貞操守ってんだよ!」
3人は出会った頃からこの調子で胡蝶はとにかく可愛い人間に弱く、鹿野は頭が良く気も効くがいまいち掴みどころがない、その2人をなんだかんだまとめるイノ。それでも夜の世界の面白さを知ってからは息の合い方は褒められたものだとイノ自身も思う。
「鹿野は同棲してるんじゃ無かった?」
「ああ、もう別れてる。元々割り切ってた気楽な関係だったから、向こうがそろそろ家庭ってものに本腰入れたいって。だから円満にさよならだ」
「そう」
なんの気もない返事だ。どうもこのメンバーは情緒が欠けているとイノは常々思うのだが、それが彼らの良し悪しでもある。
瑠衣がつまみに手を伸ばすついでに質問する。
「2人はー?」
「俺は今の仕事始めてから決まった相手作ってねぇよ」
「俺も」
イノの言葉に胡蝶も手をあげると微笑んだ。
「まあ、作るとマイナスの方が多いしね」
「作る気ねぇ奴が言うとムカつくな」
「そうでもない、俺だって本気ってものを持ってるよ。今だって唯を襲いたくてたまらないのに必死に押さえてる」
にっこり笑って言う言葉でないが鹿野は小さく笑っているし暮刃も微笑みを絶やさない。氷怜はグラスを空にすると真顔のまま胡蝶を見つめ、瑠衣は心底楽しそうにニヤついている。こいつらの神経をたまに疑いたくなるがこれを止めるのが俺の使命とイノが口を挟む。
「喧嘩売るな胡蝶」
「だってああもタイプだと隠すのも難しいよね。1日で良いからさ、貸してくれない?落とす自信あるんだけどな」
畳み掛ける胡蝶に氷怜が視線を唯斗向けた。そこでようやくふっと笑う。
「貸しても良い」
「え、ほんと?」
喜ぶ胡蝶に驚くイノ。でも氷怜の顔を見れば納得した。こう言う時の氷怜の自信は出会った時から変わらない。
「あいつは絶対俺しか選ばねぇよ」
「強気だね相変わらず」
この返しは胡蝶の範疇だったようだ。胡蝶は空になったグラスに注ぐと氷怜と2人でグラスを合わせた。なんだかんだでお互いの事は信用しているらしい。
音が響くとソファで唯斗が身動ぐ、起きたわけではなく体制をすこし変えただけのようだ。
「唯斗上で寝かせなくて良いのか?」
「横で話してる分には1時間くらい起き無いと思う」
「子供みたいだな……」
呆れるイノをよそに部屋をぐるりと見渡した胡蝶。片付いてはいるが所々にゲーム機、服、大きな犬のぬいぐるみ、明らかに唯達のである。
「生活感があるの新鮮かも。瑠衣の家は色々あるけど氷怜も暮刃も物持つの嫌いだったのに」
「あの子たち反応良いから、余計に渡してしまうんだよね」
「全部あいつらのね、へーへー」
ここまで来ると家に来たのは間違いだったのではないかとイノは思い始める。口を開けばノロけばかりだ。ふと、テレビの画面横に置かれるゴールデンレトリバーの小さな置物と目があった。そう言えば玄関にも犬のパズルで出来た絵が飾ってあった。
「にしても……何か犬のグッズ多くねぇか?」
「あの子ら大好きだからネ、ほら見るー?犬耳つけて遊園地行ったヤツ」
瑠衣のスマホ画面に映るのは唯、秋、優の3人だ。それぞれ違う犬種の耳がついたカチューシャをつけている。イノだって知っている犬がモチーフの遊園地。3人らしく思わず笑ってしまう。
ふと、これを撮っているのが本人達でないことに気がつく。
「待った、まさかお前らが行ったのか」
「ウン」
他に誰が行くの?とでも言いたげな瑠衣に驚愕した。瑠衣はギリギリ、かろうじて、気分さえ乗れば行くだろうという予測はつく。だが、氷怜と暮刃に限ってはこの先一生想像すらしなかっただろう。
「ホラ」
だからその写真を見てイノ達が吹き出したのは言うまでもない。
カウンターキッチンに集まった6人はそれぞれグラスを合わせる。
口元にグラスを持ってくれば少し匂いは強め、だが喉の通りがいい。最後に鼻に抜ける香りは上品で氷怜は満足そうに頷いた。イノ達と出会う前からこの楽しみを知っていた3人だが味をより覚えさせたのはイノ達のせいでもある。ふと昔を思い出しイノは眉間にシワを寄せた。
「お前らも出会った当初はまだ身体も出来上がって無いし少しは可愛げあったんだけどなぁ。日が経つにつれ図体と態度が並行してデカくなるし」
「氷怜は出会った時からイノより大きかったけどね」
「うるせえ鹿野。俺は今の身体気にってんだよ」
「そうそう、顔もそのままが良いよ」
「お前は近え、近えよ」
胡蝶がイノを間近でにこにこと見つめるので居心地の悪さから胡蝶の顔を無理やり鹿野へと向ける。目が本気で恐ろしい。
「そっちは出会った頃から変わんないネー?そのコントもさー」
「コントじゃねぇよ!貞操守ってんだよ!」
3人は出会った頃からこの調子で胡蝶はとにかく可愛い人間に弱く、鹿野は頭が良く気も効くがいまいち掴みどころがない、その2人をなんだかんだまとめるイノ。それでも夜の世界の面白さを知ってからは息の合い方は褒められたものだとイノ自身も思う。
「鹿野は同棲してるんじゃ無かった?」
「ああ、もう別れてる。元々割り切ってた気楽な関係だったから、向こうがそろそろ家庭ってものに本腰入れたいって。だから円満にさよならだ」
「そう」
なんの気もない返事だ。どうもこのメンバーは情緒が欠けているとイノは常々思うのだが、それが彼らの良し悪しでもある。
瑠衣がつまみに手を伸ばすついでに質問する。
「2人はー?」
「俺は今の仕事始めてから決まった相手作ってねぇよ」
「俺も」
イノの言葉に胡蝶も手をあげると微笑んだ。
「まあ、作るとマイナスの方が多いしね」
「作る気ねぇ奴が言うとムカつくな」
「そうでもない、俺だって本気ってものを持ってるよ。今だって唯を襲いたくてたまらないのに必死に押さえてる」
にっこり笑って言う言葉でないが鹿野は小さく笑っているし暮刃も微笑みを絶やさない。氷怜はグラスを空にすると真顔のまま胡蝶を見つめ、瑠衣は心底楽しそうにニヤついている。こいつらの神経をたまに疑いたくなるがこれを止めるのが俺の使命とイノが口を挟む。
「喧嘩売るな胡蝶」
「だってああもタイプだと隠すのも難しいよね。1日で良いからさ、貸してくれない?落とす自信あるんだけどな」
畳み掛ける胡蝶に氷怜が視線を唯斗向けた。そこでようやくふっと笑う。
「貸しても良い」
「え、ほんと?」
喜ぶ胡蝶に驚くイノ。でも氷怜の顔を見れば納得した。こう言う時の氷怜の自信は出会った時から変わらない。
「あいつは絶対俺しか選ばねぇよ」
「強気だね相変わらず」
この返しは胡蝶の範疇だったようだ。胡蝶は空になったグラスに注ぐと氷怜と2人でグラスを合わせた。なんだかんだでお互いの事は信用しているらしい。
音が響くとソファで唯斗が身動ぐ、起きたわけではなく体制をすこし変えただけのようだ。
「唯斗上で寝かせなくて良いのか?」
「横で話してる分には1時間くらい起き無いと思う」
「子供みたいだな……」
呆れるイノをよそに部屋をぐるりと見渡した胡蝶。片付いてはいるが所々にゲーム機、服、大きな犬のぬいぐるみ、明らかに唯達のである。
「生活感があるの新鮮かも。瑠衣の家は色々あるけど氷怜も暮刃も物持つの嫌いだったのに」
「あの子たち反応良いから、余計に渡してしまうんだよね」
「全部あいつらのね、へーへー」
ここまで来ると家に来たのは間違いだったのではないかとイノは思い始める。口を開けばノロけばかりだ。ふと、テレビの画面横に置かれるゴールデンレトリバーの小さな置物と目があった。そう言えば玄関にも犬のパズルで出来た絵が飾ってあった。
「にしても……何か犬のグッズ多くねぇか?」
「あの子ら大好きだからネ、ほら見るー?犬耳つけて遊園地行ったヤツ」
瑠衣のスマホ画面に映るのは唯、秋、優の3人だ。それぞれ違う犬種の耳がついたカチューシャをつけている。イノだって知っている犬がモチーフの遊園地。3人らしく思わず笑ってしまう。
ふと、これを撮っているのが本人達でないことに気がつく。
「待った、まさかお前らが行ったのか」
「ウン」
他に誰が行くの?とでも言いたげな瑠衣に驚愕した。瑠衣はギリギリ、かろうじて、気分さえ乗れば行くだろうという予測はつく。だが、氷怜と暮刃に限ってはこの先一生想像すらしなかっただろう。
「ホラ」
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