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jealousy
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しおりを挟む「いつから犬飼ったの?」
家をあげたと聞いた時は流石に驚いた。
氷怜達が家を買うこと自体は不可能でも無ければ買えて当たり前。それだけの地位と財力があるのだから。
つまり驚いたのは買ったことではなくそれを他人のために与えた事だ。しかも氷怜達にはおよそイメージすらできなかった恋人などと言う存在に。
お昼の柔らかい日差しにさらに柔らかそうな頰が照らされている。丸くなって眠る唯斗の頰に形のいい指が近付いた。
「さわんな」
不機嫌そうな氷怜の声に胡蝶はくすくすと笑う。
「やだねぇ、嫉妬深い男は嫌われるよ。それに目の前に可愛くて堪らない最高の子がいるんだから触りたくもなる。あ、ねえイノも着ない?買ってあげるよこれ」
「ぜってえ嫌だ」
ソファですっかり眠りに落ちている唯斗が着ているのは母親の椎名がプレゼントしたものである。垂れ耳犬のような耳がついたもこもこのパーカーに丈が短い同じ素材のパンツとゆるゆるのソックス。全てがもこもこで可愛らしいがどう見ても女の子用である。それでも唯斗が纏っても違和感が全く無いのは、もはや不思議とも思わない。
「似合うのに」
「顔はそりゃ似合うだろうけど」
ふんと自慢げに言うイノだが自身の胸板をトントンと叩いて頭を振る。
「身体はこいつとは流石にちげえよ。鍛えてるって本当か?氷怜。影も形も無いけど」
「それ、きっと本人に言ったら泣くかもよ。頑張ってるんだろ?」
隣で鹿野が言えば氷怜はそうだなと頷き小さく笑みを見せる。こんなに柔らかく笑うなんて人は変わるものだなとイノは呆れた。
「アレー、早いじゃん来るのー」
「意外と久しぶりだね。こうやって集まるの」
まだ眠そうな顔で瑠衣が階段を降りてくると続いて後ろで暮刃が微笑んだ。
「秋と優は?」
「そこのワンコと同じく上で寝てる。スヨスヨー」
「お前も一緒になって寝てただろ」
瑠衣を起こしにいった暮刃が苦笑しながらキッチンに向かう。瑠衣はあくびをしつつソファに座ると寝ている唯斗の服の耳を持ち上げた。
「だってこれモコモコだからー抱き枕に丁度良くてサー」
「待った、これを秋と優も着てんのか?」
椎名の趣味に付き合うのは唯の親友の定めかもしれない。形はそれぞれ違うらしいが可愛い部類から外れる事はない。
暮刃は冷蔵庫を開け、まずは軽いつまみをいくつか選別するとキッチンカウンターに並べる。ソファ横のローテーブルに座っていた鹿野は持ってきていた紙袋を暮刃に渡す。
少し重たいその中身は箱に入ったシャンパンだ。
「最近うちの店でも人気のやつ。飲んだことあるか?」
「いやない。そういえばこのシリーズは随分と飲んでないかも」
「そりゃ良かった」
若い割に随分と舌が肥えているせいですっかり飲み仲間となった氷怜達とイノ、胡蝶、鹿野はこうして定期的に集まる。
誰かしらの家に集まることが多いが今回は噂のシェアハウスをどうしても拝みたくなったのだ。いわゆる愛の巣を茶化しに来たはいいが存外居心地も良く、何から何まで生活しやすさが伝わってくる。
「また良い家にしたなぁ」
「そりゃもう、あの子達が自然に帰ってきたくなるようにしてるから」
「こわ……」
出会った時から綺麗な顔で微笑みを絶やさない暮刃にイノは顔を引きつらせる。腹の企みがよく見えるからだ。ここに優でもいたなら少しは可愛げのある表情が見えただろうに。
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