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見つめて
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しおりを挟む「で、ずっとメモしてるの」
リビングに降りれば4人はすでに起きていてローテーブルを囲み朝のティータイムを始めていた。
朝からメモを取るおれに優がアホだなあと言っている。いや口にはしてないけど目が言っているんだ確実に。でもおれはめげない、やると決めたからには全力がモットー。
秋は笑いながらも興味があるのか、見せて見せてとソファから手を伸ばしているのでスマホを渡す。
「ほうほう、なるほどねー……え、氷怜先輩の目は左右で色の感じがすこし違うって書いてありますよ。見たい!」
「感じた事ねぇけど……?」
秋がいるソファまで近づくと腰だけを曲げて瞳を見せる先輩。
「うわあ、近づくと美形が余計に威力あるな……」
「……お前らは他人褒めるときの素直さにもう少し色つけたらどうだ?」
おれら3人とも思いがぽろっと出やすくてすみません。いやあ癖で……とか言いながら秋は光が当たる方向を探し覗き込む。
「言われてみれば若干左目が明るいかも……でもそれこそ言われないと気がつかないくらいの」
氷怜先輩が苦笑気味に笑った。
「飼い主が不機嫌な面してんぞ」
「え?」
視線の先ではいつも通りの暮刃先輩と明らかにワザと不機嫌な瑠衣先輩。
「ちょっとアッキー!」
「な、なんすか!」
「そういうのはオレの目も覗いてからデショ!」
「……また謎のわがままを」
それでも瑠衣先輩の方に向くと膝の上に乗せられて瞳を眼医者さんに見せるように差し出される。秋が両手で瑠衣先輩の顔を包みまた光を探して覗き込む。
「そうだなぁ、瑠衣先輩の瞳は別に左右差は無いけど……でも本当綺麗な目してますよね。俺普通の茶色だから唯みたいに明るくないし、優みたいに黒が強いわけでも無いんで羨ましい」
「そ?普通とか知らないケド、アッキーの目はーフチの色が強くてイイヨー?」
「へーそんな目なんすか俺。意外と気づかないもんだよな自分のことなのに……唯のしてる事理にかなってるかも」
「ふふーん、みんなもやったらいいよ」
「朝から元気だね……」
優が紅茶を飲みながら言う。目がぼんやりしてるから彼は多分まだ眠い。その状態に暮刃先輩も気付いているのかおれに向かって言う。
「最近バイトとクラブ行き来してるから、流石に疲れが出たのかな」
「うーん、体使って筋肉痛なのはたしかですけど」
もう少ししたら目が覚めると思いますと優が言えば暮刃先輩はそうと微笑んだ。朝から優雅なのはこの2人の特徴かもしれない。
「じゃあおれ朝ごはんをつく」
「シャワー浴びてくるわ」
「えええ」
キッチンに向かおうとしたおれとバスルームに向かう氷怜先輩。変な声をあげたので氷怜先輩が振り返る。
「何」
「観察しないといけないから朝ごはん作ったら別々になってしまう……」
「お前……あほか」
くくっと笑われてしまったが今日の使命なのだから諦めるわけにはいかない。同じく笑っていた暮刃先輩が緩く手を振った。
「今日は俺が作るから、行っておいでよ唯も」
「暮刃先輩……!」
朝から優しさに溢れている。誰がご飯作るなんて決まってたわけじゃ無いけど朝は最近おれがいる時はおれが作る流れになっていたのだ。お弁当とか作るしね。
でも暮刃先輩が作る料理も絶品だから楽しみだ。未だ笑っている氷怜先輩に引っ張られながらお風呂についていく。
「お前は入んのか」
「メモできなくなっちゃうので見てます」
「へえ」
バサリと脱いでバスルームに入った氷怜先輩。相変わらず鍛え上げられた筋肉は美しいとメモしながら、おれはドアを閉めず入り口に座って見守る。
シルバーのシャワーヘッドを掴んだ氷怜先輩にすかさず挙手。
「あ、おれすでに知っています!」
「何を」
「氷怜先輩は頭から洗うって」
「そうかもな」
また笑いながら頭を洗い始める氷怜先輩。シャンプーもトリートメントもおれが選んだやつを使ってくれている。ほんとにおすすめだから嬉しいよねぇ。
「先輩って美容室とかどこ行ってるんですか?いつも綺麗に同じ暗めのトーンでさらさら……」
「ああ、知り合いがやってる店で……お前も今度行くか?」
「え!行きまーす!」
ふむふむ知り合いのお店に通っているのか。それは大発見、チームの人以外の繋がりって案外おれの知らない事だ。
「そしてシャワーが終われば湯船に浸かるっと」
「それ、大体のやつがそうだろ」
「えーでも暮刃先輩はすぐ出ますよ?」
「言われてみれば、あいつは熱いの嫌いだしな」
「幼馴染にも詳しい……と」
メモがすでにかなりの量になってきた。水の音がして顔を上げれば髪をかきあげる氷怜先輩。色気、そして身体がさらに絞られた気がするのは気の所為では無いはず。
「先輩最近ジムとか行ってます?」
「いや」
「え、それでその体……?」
奇跡の人間ですか?あんなにお酒飲んでるのに?神様って先輩達のことお気に入りすぎる。
「どっかの誰かさん達が今ですらここにいる時間少ねえのに俺らがさらに時間減らしてもな」
「あははー、すみませーん……」
これはもはや何も言えまい。必死にメモを取りつつ話を聞く役に徹する事にした。氷怜先輩は浴槽に寄りかかると足を組んで話出す。
「まあ必要なら地下にでもトレーニング器具とか置いて……後は踊れるようなスペースでも作るか。秋裕も使えんだろ」
「ん、地下……?え、ストップです!」
「なんだよ」
浴槽に腕を乗せて氷怜先輩が首をかしげた。あれ驚くおれがおかしいの?と言いたくなるがとにかく一旦ストップだ。そんなサラッと言われてわーい!と喜ぶだけでは済まされない。
「ほ、ほんとに?」
「嘘ついてるつもりはねぇけど」
日常会話が非日常。
この人にはサプライズのつもりはなくても驚かされる事があるとメモに追加した。
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