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no name
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チームに名前はないが、世間では彼らをno nameと呼んでいる。
その由来は根城にしているクラブすらどこにも名前が書かれておらず、看板も存在しないと言う事、そして彼ら自身がチーム名は存在しないと公言している事から、no nameとつけられたのだ。
最近さらに規模を増やしつつある彼らはその巨大組織を細かくチームわけし、それぞれまとめる者がいる。それは幹部と呼ばれ、氷怜、瑠衣、暮刃の3人が認める事によって任命されるのだ。
3人としては好きにしていいと思っているのだが、チームメンバーとしてはお墨付きの称号が欲しいと言う。
「上に立てるやつなら誰でも良いけどな」
「強ければヨクナイ?」
「頭の回転かなぁ」
「それってつまり全部ですね……」
がっくりと項垂れた式に氷怜が笑った。大きな手が式の頭にくると忠誠心が大きく震える。
それぞれ何でも良いと言う割にはハイレベルな答えはわがままだ。それでも式はこれだけ才能がある人間がトップなのだから当たり前かと納得してしまう。
「なんだ、お前だってその素質があるから幹部やらせてる」
珍しく式が踏み入った話をするので、氷怜は式を座らせ話を聞く。チームの人間がその話を聞く姿勢にどれほど感銘を受けているのか式は知っていた。
「まだまだ至らないって部分が多くて、桃花もあれでもともとトップに立ってた人間なんでよけいにそう感じることが多くて……」
「お前とあいつじゃやり方がちげえだろ」
「まあ、そうなんですが」
式の下にはもともと40名ほど付けさせたが、志願すればどの幹部の下にも付くことが出来る。彼の人気も上がって人数が膨れてきた事によりうまく立ち回れない、そう言う話だった。
「あんま、気にした事ねぇんだよな」
ソファに長い足を組んだ氷怜がタバコを取り出す。式が火をつけると目元が小さく笑った。
「氷怜ちっこい頃からこんな感じだしネー」
「根っからの王様気質だよね」
ケーキを今日もホールごとフォークで食べ進める瑠衣がケラケラと笑い、微笑んだ暮刃も同意した。
「うるせえよ」
「まあ、氷怜さん達は俺たちにとっては神様みたいなものですから、教えてもらったとしても簡単には真似できませんが……」
困ったように笑った式に氷怜は煙を一度吐くと視線を宙に向ける。
「俺だって人間だ。負けを認めたことだってある」
「……そう言う時はどうして来たんですか」
どこまで聞いていいのかわからない式だったが、ここまで来ればと質問を投げる。氷怜はその様子に小さく笑い答えた。
「確かに全く同じ事が他人に出来ねぇって事は存在するけどな、そのやり口は知識になる。糧にすんだよ。一言一句逃すな」
強い視線は迷った事がないと思わせるほど真っ直ぐで、どこまでも見通している。胸が熱くなり、式は大きく頷いた。
「氷怜さん、唯達拾ってきたやついるので1時間ほどでこっちくるかと」
VIPルームに顔を出した紫苑はそれだけ告げるとすぐにフロアに戻っていく。唯達が来るとなればまた騒がしくなるだろうし人員が変わるはずだ。
「俺後で行きます」
「ああ、頼む」
氷怜が笑うとまたドアを開ける人が1人。幹部の彼は趣味で料理を作っていてそれがまたその辺のレストランよりおいしいとの事でいつも作らされているのだ。穏やかで気前がいい彼はここでは古株で、氷怜達に臆する事はあまり無い。
そんな彼はやはり今晩のディナーの話を口にした。
「唯斗さん達来るんですか?食べたいものとかありますかね?」
「しらねぇよ……直接聞け」
「うーん、旬ものだと鮭かなぁ」
独り言を言いながら部屋を後にした彼に氷怜は眉間にシワを寄せた。
「……いつからここはあいつらの食いたいもんで料理出すようになったんだ?」
苦笑する式も最近思い始めていた。
あいつらに甘すぎる、だが自分も例外では無いので何も言えない。すると瑠衣がいつも通りゲラゲラと笑い出す。
その由来は根城にしているクラブすらどこにも名前が書かれておらず、看板も存在しないと言う事、そして彼ら自身がチーム名は存在しないと公言している事から、no nameとつけられたのだ。
最近さらに規模を増やしつつある彼らはその巨大組織を細かくチームわけし、それぞれまとめる者がいる。それは幹部と呼ばれ、氷怜、瑠衣、暮刃の3人が認める事によって任命されるのだ。
3人としては好きにしていいと思っているのだが、チームメンバーとしてはお墨付きの称号が欲しいと言う。
「上に立てるやつなら誰でも良いけどな」
「強ければヨクナイ?」
「頭の回転かなぁ」
「それってつまり全部ですね……」
がっくりと項垂れた式に氷怜が笑った。大きな手が式の頭にくると忠誠心が大きく震える。
それぞれ何でも良いと言う割にはハイレベルな答えはわがままだ。それでも式はこれだけ才能がある人間がトップなのだから当たり前かと納得してしまう。
「なんだ、お前だってその素質があるから幹部やらせてる」
珍しく式が踏み入った話をするので、氷怜は式を座らせ話を聞く。チームの人間がその話を聞く姿勢にどれほど感銘を受けているのか式は知っていた。
「まだまだ至らないって部分が多くて、桃花もあれでもともとトップに立ってた人間なんでよけいにそう感じることが多くて……」
「お前とあいつじゃやり方がちげえだろ」
「まあ、そうなんですが」
式の下にはもともと40名ほど付けさせたが、志願すればどの幹部の下にも付くことが出来る。彼の人気も上がって人数が膨れてきた事によりうまく立ち回れない、そう言う話だった。
「あんま、気にした事ねぇんだよな」
ソファに長い足を組んだ氷怜がタバコを取り出す。式が火をつけると目元が小さく笑った。
「氷怜ちっこい頃からこんな感じだしネー」
「根っからの王様気質だよね」
ケーキを今日もホールごとフォークで食べ進める瑠衣がケラケラと笑い、微笑んだ暮刃も同意した。
「うるせえよ」
「まあ、氷怜さん達は俺たちにとっては神様みたいなものですから、教えてもらったとしても簡単には真似できませんが……」
困ったように笑った式に氷怜は煙を一度吐くと視線を宙に向ける。
「俺だって人間だ。負けを認めたことだってある」
「……そう言う時はどうして来たんですか」
どこまで聞いていいのかわからない式だったが、ここまで来ればと質問を投げる。氷怜はその様子に小さく笑い答えた。
「確かに全く同じ事が他人に出来ねぇって事は存在するけどな、そのやり口は知識になる。糧にすんだよ。一言一句逃すな」
強い視線は迷った事がないと思わせるほど真っ直ぐで、どこまでも見通している。胸が熱くなり、式は大きく頷いた。
「氷怜さん、唯達拾ってきたやついるので1時間ほどでこっちくるかと」
VIPルームに顔を出した紫苑はそれだけ告げるとすぐにフロアに戻っていく。唯達が来るとなればまた騒がしくなるだろうし人員が変わるはずだ。
「俺後で行きます」
「ああ、頼む」
氷怜が笑うとまたドアを開ける人が1人。幹部の彼は趣味で料理を作っていてそれがまたその辺のレストランよりおいしいとの事でいつも作らされているのだ。穏やかで気前がいい彼はここでは古株で、氷怜達に臆する事はあまり無い。
そんな彼はやはり今晩のディナーの話を口にした。
「唯斗さん達来るんですか?食べたいものとかありますかね?」
「しらねぇよ……直接聞け」
「うーん、旬ものだと鮭かなぁ」
独り言を言いながら部屋を後にした彼に氷怜は眉間にシワを寄せた。
「……いつからここはあいつらの食いたいもんで料理出すようになったんだ?」
苦笑する式も最近思い始めていた。
あいつらに甘すぎる、だが自分も例外では無いので何も言えない。すると瑠衣がいつも通りゲラゲラと笑い出す。
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